11/01/2025

ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その24

マーケティングミックス2番めのPの価格について、半年間、論じてきました。その内容を簡潔に要約すると、次の5つの原則に集約されます。


1. 価格は、コストプラス法にみられるような生産コスト上乗せ方式ではなく、プロダクトが買い手に提供する価値に基づいて設定する必要がある。


2. 価格は、買い手がプロダクトに見出す価値の相違によって、カスタマイズすべきである。


3. 価格は、買い手の心理(特に参照価格とその変化)を考察して設定する必要がある。


4. 価格は、買い手の価格心理の理解に加えて、競合他社がどのような長期目標と戦略を立てているかを慎重に分析し、且つ自社の動きに対して、競合がどのように反応するかを見極めて設定する必要がある。


5. 上記4つを実践するためには、はじめに自社プロダクトの市場におけるポジショニングを明確にして、自社の目標と整合性のある価格を設定しなければならない。


マーケティングミックスで、収益を直接生み出すのは、2つめのPである価格だけで、それ以外は全てコストといえます。

価格以外のマーケティングミックスの変化、つまりプロダクト・プレイス・プロモーションの中身を変えることによる利益と売上げへの影響、特に短期的なインパクトについては、価格の変更による影響よりも、はるかに小さなものです。価格の変更・調整は、プレイスやプロモーションにおける方針転換、プロダクトの新規開発・導入よりも、ずっと短い期間で実行できるのは明らかです。


市場は複雑化しています。社会のデジタル化と共に、販路は多様化し、市場のセグメント化は一段と進行しています。ひとつのタイプやブランドだけを提供して事足りるという時代は終わっています。企業は製品やブランドの組み合わせ、それらの相互依存性を考慮して価格を設定しなければ、もはや競争に勝ち抜くことはできません。グローバル競争であれば尚更であることから、プライシングの重要性はかつてないほど大きなものになっているといえるでしょう。


上記原則1については、買い手がプロダクトに対して支払ってもよいと考える価格、つまり買い手が得られる価値で、プロダクトの価格は決めなければならないということを表しています。というのも、通常買い手は、ある商品がほかのものと大差ないと感じた場合、安いほうを購入(または利用)するのが普通です。そのため、ほかとの差異を感じられる価値が重要になります。


買い手は、プロダクト特性の違いから生じるベネフィットを理解することで、満足感をおぼえます。経済性は無視しえないものですが、B2Bの場合は、経済的価値に加え、機能的価値を重視する傾向が一般的です。B2Cの場合は、経済性の次に、情緒的価値または自己表現的価値が、今日ますます重要になっています(ブランディング (3)セグメンテーション ②消費者市場R&Dと組織横断型活動 (1)はじめに③)。

このことから、価格がコストを決定するのであって、コストが価格を決めるものではないということがわかります(ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その7)。なお、価格の測定については、 価格その13価格その15をご覧ください。



原則2の価格カスタマイズ(プライス・カスタマイゼーション)は、非常に重要な考え方です。というのも、プロダクトの購入/利用に対して、買い手を取巻く環境や、態度・嗜好は様々であるため、必然として買い手がプロダクトに見出す価値も異なります。買い手のセグメントが違えば、プロダクトを同一価格で提供するよりも、違いのある分だけ異なる価格で提供するほうが効果的であるのは明白です。

また、プロダクトを全ての市場に対して同一価格で提供することは、全ての市場を同質的なものと捉えているともいえ、買い手や、サプライヤーなどの協力企業、従業員や経営者、株主に対して、価値創造の機会を逸していることにもなるといえるでしょう。

このように非常に重要なプライス・カスタマイゼーションについては、主に、ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その16価格その17価格その18で、また、価格その19価格その20価格その21で詳説しています。



原則3の買い手の価格心理、特に参照価格とその変化を考察することは、マーケティング/ブランディング活動の成否を左右すると言っても過言ではありません。効果的なマーケティング/ブランディング活動を計画し実行するためには、買い手の購買心理(広くは購買行動)の理解が欠かせません。とりわけ一般消費者を対象にするB2Cの場合では尚更です。

参照価格を中心とした買い手の価格心理については、ブランディング (7)マーケティングミックス③価格その10 価格その11 価格その12で述べています。


原則4と5については、長くなるため次回にしたいと思います。





ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その24

マーケティングミックス2番めのPの価格について、半年間、論じてきました。その内容を簡潔に要約すると、次の5つの原則に集約されます。 1. 価格は、コストプラス法にみられるような生産コスト上乗せ方式ではなく、 プロダクトが買い手に提供する価値に基づいて設定 する必要がある。 2. ...