プレイスの2回めで、前回(プレイスその1)同様、チャネルに絞って進めます。
前回で述べたとおり、チャネル戦略を考える時に重要なことは、ターゲット市場セグメントの需要の特徴を把握することです。
買い手が一般消費者の場合であれば、その需要の規模や大きさ、たとえばそれは地理的に分散しているのか、一定の地域に集中しているのかといったことなどを考えていかなければなりません。仮に、一般消費者が地理的に広く分散しているのであれば、リアルでいえば卸売企業、ネットであればアマゾンのような総合的な品揃えをしている小売企業のようなチャネルパートナーを活用することが前提になるでしょう。
ターゲット市場セグメントの需要の規模や特徴が掴めたら、次はそのセグメントに属する顧客は、自社のプロダクトをどのように購入/利用したいと思っているのかをおさえなければなりません。
たとえば、その顧客は幅広い品揃えを有する小売業態たとえば百貨店のようなところで、販売員と会話し、他社商品と比較検討しながら、購入したいと思っているのか。或いは、価格重視で、比較検討はさほどせずに、買物に費やす時間や手間をできる限り省きたいと思っているのか。この2つだけでも、購買行動は随分と異なります。
また、当該小売企業が立地する地域でも違いはあります。SMB(Small and Medium-sized Business/中小規模のビジネス)でよくあるパターンとして、地元での消費もほどほどにして(十分刈り取ることなく)、いきなり首都圏に進出しようとする企業が少なくありません。多くのケースにおいて、大規模市場にはたくさんの競争相手が存在し、また消費行動の変化もかなり激しいものがあります。そういった市場で、そもそも自社商品を目立たせ、購入/利用してもらい、リピート顧客を掴むといったことは、簡単ではありません。実際、自社商品が全体の中で埋没してしまい、1日にひとつも売れなかったというのは、そう珍しいことではないからです。
さらに、自社が希望する立地に店を構える小売企業が売上げを増やしたいために、値下げ販売を度々奨励するといったこともありえます。こういう場合には、そもそも自社の考え方、商品戦略やプライシングポリシーにまったくそぐわない可能性さえあるため、事前に確認しておくことが重要になります。
あと、選定したチャネルに対する商品供給に必要なコストは、どれくらいかかるのかということも検討しなければなりません。当たり前のことですが、自社が獲得できるであろう市場規模が経済的にかなり魅力あるものであれば、自ら進出することもありえるでしょうが、そうでない場合は、適切なチャネル仲介業者を活用して進出すべきです。ただ、チャネル仲介業者たとえば卸売企業の場合は、扱い品目が膨大な数になり、自社が売り込みたい商品は、当該卸売企業にとって多くの中の一つに過ぎません。そのため、積極的に売ってもらいたければ、それなりの販促金や、場合によっては卸売企業に対する投資的な活動といったような出費も必要になるでしょう。
チャネルとは、自社のプロダクトを買い手まで流通させる手段です。チャネルを介して、買い手に自社のブランドをしっかりと認知してもらい、ブランドのイメージを向上させるためのものでなければなりません。そのために、チャネルをどう活用し、管理していくかということです。
ケビン・レーン・ケラーは、ダイレクト・チャネル(郵便、電話、デジタル媒体、訪問、自社が単体で運営するリアルまたはネットの店舗)は、プロダクトの幅と深さ、プロダクトの多様性や、プロダクトの個性、明快な特性といったものを、買い手に十分認識してもらうことで、そのブランドエクイティを高めることができると述べています。
イン・ダイレクト・チャネル(卸売/流通企業、代理店、仲買人、自社が運営していない小売企業など)の場合は、小売業を含めた仲介企業による活動と支援、及び仲介企業が所有しているイメージや連想を、自社ブランドに移転することで、ブランドエクイティに良い影響を与えることができるとしています。
このように、チャネル戦略は自社が確立したい(またはもっと強固なものにしたい)ブランドイメージと、イン・ダイレクトの場合であれば小売企業のようなパートナー企業のイメージを最大限うまく組み合わせて、二次的ともいえるブランドイメージや連想を作り上げることが必要であることがわかります。そうするためには、チャネルの検討は、もっと慎重に、より幅広い選択肢から検討することが重要になるといえます。