2/17/2025

ブランディング (5)ポジショニング ⑦リ・ポジショニング

ジャック・トラウトは、競争、変化、危機への対処として、リ・ポジショニングを挙げ、消費者の頭の中(または心)を変えるのではなく、消費者の頭の中の認識を少しずつ調整していくことが、リ・ポジショニングだと述べています

リ・ポジショニングは、競合企業やme-too企業の増大、世の中を一変させるような技術革新による大きな環境変化をはじめ、自社の成長に伴い進行する組織の肥大化や官僚化、製品/サービスの品質不良やトラブルなどによる自社への誹謗中傷、さらには市場の長期トレンドを見誤った時や、短期事業計画の大幅未達の場合など、様々な状況で行われます。

トラウトは、リ・ポジショニングは競合他社を念頭において行うものであって、自社が何をしたいかではなく、競合が自社に何をさせるかが重要だと述べています(ポジショニング自体がそもそもそういうものです)。というのも、競合他社の打ち手次第で、自社のリ・ポジショニングがうまくいかなくなることがあるためです。

リ・ポジショニングには相応の時間がかかります。ただ、そのリ・ポジショニングの狙いには、消費者の当該ブランドに対する当たり前となった認識を再度、強みを強調することで改めさせるといったようなこともあれば、品質は良いがややもすると時代遅れの感となってしまったようなイメージを今日的なものにアップデートさせる場合であったり、より強い差別化ポイントを作り出すためであったりというように様々なため、はじめにリ・ポジショニングの主旨を明確にして、関係者の間で間違いのないようにしっかり確認しておくことが不可欠となります。


ブランド要素を少し変えることで、イメージがかなり変わるということは少なくなありません。ブランド要素には、名称、ロゴ、シンボル、スローガン、キャラクター、パッケージデザイン、サイネージ、URLなどが挙げられます。ケビン・レーン・ケラーは、自社製品やサービスを他社のものと差別化するための言語的或いは視覚的な情報がブランド要素になると定義しています。

ブランド要素を変更することは、イメージが良くなる場合もあれば、悪くなることもあるため、注意が必要です。ケラーは、ブランド要素の選択基準には、記憶可能性、意味性、選好性、移転可能性、適合可能性、防御可能性の6つがあると述べています。


リ・ポジショニングで最も気をつけなければならないことは、自社の独自性、差別化ポイントをないがしろにして、万人受けを狙うようなことは決してしないことです。何のためのリ・ポジショニングなのか、そもそも自社のポジショニングとはどういったものだったのかということを思い返せば、こういった間違いは起こらないはずですが、残念なことにリ・ポジショニングの失敗は少なくありません。

トラウトは、ポジショニングも、リ・ポジショニングも、考えすぎ、調査のしすぎは禁物、単純でわかりきったことがうまくいくといっています。そのためには、ふだんから、現実に向き合い、観察を怠らないということに尽きるのだろうと思います。

ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その1

現在、景気は大きな後退局面にあると言えるのではないでしょうか。 賃上げにより(賃上げがあったとして)、名目賃金は増えても、モノの多くが1.5倍くらいはふつうに値上がりしているようなこの 異常な価格高騰により、所得は 実質目減りしています。 消費者は価格に敏感にならざるを得ず、価格...