2/02/2026

ブランディング (7)マーケティングミックス⑤ プロモーションその4

前回までは、プロモーションミックスの5つの要素(ブランディング (7)マーケティングミックス⑤ プロモーションその1その2)と、効果的なコミュニケーションを行う上でのおさえるべき事柄(その3)について概説しました。今回からは、幾つかのプロモーションを組み合せたコミュニケーションの開発とながれについて述べていきたいと思います。


開発とながれを検討する前に、コミュニケーションを構成する基本的な要素について、はじめに明らかにしておいた方がいいでしょう。フィリップ・コトラーとケビン・レーンケラーは共著『マーケティングマネジメント第12版』で、コミュニケーションプロセスのマクロモデルにおける要素を、以下のように9つ挙げています。

マクロモデルのフローは、発信者→エンコーディング→メッセージと媒体→デコーディング→受信者→反応→フィードバック→発信者、というサイクルです。


発信者とは、受信者にメッセージを送る者を指し、ビジネスの場合は多くが企業になります。受信者は、発信者から送られてきたメッセージを受け取る者で、消費者であったり、法人の顧客にあたります。

メッセージは、発信者が受信者に送る表現形態であり、企業のロゴやシンボルマークなども含まれます。メディアは、コミュニケーション媒体のことをいい、コミュニケーションツールであり、紙の雑誌やデジタルカタログなども含みます。

エンコーディングとは、データを一定の規則に基づいて目的の情報に変換する符号化のことで、発信者の思考を表現形態に変換する過程を表します。デコーディングは符号化された情報を元の状態に戻す処理のことをいい、受信者が言葉や絵などの表現形態を理解する過程を表します。

反応は、受信者が表現形態を理解した後に示す反応のことで、好きや嫌い、賛同や拒絶などで、その結果としてプロダクトを購入/利用したり、また、何もしないといったことを含みます。なお、表現をそもそも理解することができないといったことも、反応にあてはまります。

フィードバックは、受信者が受け取ったことについての反応を発信者に伝達するものを表します。

9つめのノイズというのは、発信者が意図したものとは異なるかたちで受信者にメッセージが伝達されてしまうような現象や、コミュニケーションを妨害するおそれのあるランダムな(規則性のない)主張であったり、競合他社のメッセージなどを指します。つまり、媒体や反応などに影響を与えるもののことをいいます。


このマクロモデルは、発信者がターゲットにする受信者に対して、どのような媒体をとおして、メッセージを伝達するのか、そのメッセージは受信者が理解できる内容に編集されているのか、また、その反応を得られるようにコミュニケーションのフィードバックチャネルは作られているのか、といったことなどを取り上げています。


ところで、マーケティングでは現実よりも知覚のほうが重要であるとコトラーとケラーは述べています。コトラーは、知覚とは、情報を選択、整理、解釈し、何らかの意味ある世界観を形成するプロセスだと説いています。


ここで重要な点は、同じ現実に対しても、人によって知覚は様々だということです。それ故、人がどのように行動するかは、現実をどのように知覚するかによって決まるということになります。このように、知覚は人の行動に影響を与えるため、マーケティングでは、知覚の方が現実よりも重要であるということになります。


この知覚には、選択的注意選択的歪曲選択的記憶という3つのタイプがあるとコトラーは述べています。


選択的注意というのは、日々膨大な量の情報を受け取る消費者(または法人企業の担当者)は、その全てに注意を払うことができないため、その多くを意識的、無意識的に除外している行為のことをいいます。このため、マーケティング/ブランド担当者は、人々の注意をひくことに、相当な注意を払う必要があります。

どういった情報や刺激に、人が最も反応するかということについては、コトラーとケラーは、「人は現在のニーズに関係のある刺激に反応する傾向がある」、「人は予想していた刺激に反応する傾向がある」、「人は通常よりも刺激の強いものに反応する傾向がある」の3つを挙げています。

なおここで言われている刺激とは、大別すれば2つあります。ひとつにはマーケティングによる刺激で、プロダクト・プライス・プレイス・プロモーションの4Pです。もうひとつは、その他の刺激として、経済的・技術的・政治的・文化的というものです。


選択的歪曲とは、受け取った情報や刺激を、受け手が自分に都合の良いように解釈することをいいます。これには先入観や思い込み、固定観念、プロダクトやその作り手またはその提供者に対して抱いているイメージなどであって、人は自分に合うように情報を歪曲するというものです。

この選択的歪曲は、強いブランドを持つ企業にとっては、消費者が好意的に情報を捉えてくれるため、有利に働くとされています。そのため、さしておいしくもないものをおいしいと感じたり、性能が凡庸な製品であっても、強いブランドを表すロゴがついているだけで、高性能だと捉えてしまうといったことが代表例として挙げられます。

つまるところ、人はいかにバイアスで物事を捉えているかということになってきますが、マーケティングを超えて、ビジネス全般のことでいえば、こういった現象は、認知バイアスと呼ばれています。認知バイパスとは、自身の経験による固定概念や先入観、思い込みなどによって、認識が偏って、合理的に行われなくなる心理現象のことをいいます(問題解決力 (2)問題とアプローチを考える ③思考の罠ii)。


選択的記憶とは、人は多くのことを忘れるが、自分の態度や信念を裏付けてくれる情報は記憶している傾向があるということを表します。この選択的記憶も、選択的歪曲同様に、強いブランドには有利に働きます。お気に入りのプロダクトの良い点はしっかり記憶している一方で、競合するプロダクトの長所は忘れてしまうといったことなどが挙げられます。このため、ターゲットオーディエンスの記憶に留まるために、メッセージは何度も何度も発信する必要があるということになります。

以上述べてきた知覚は、マーケティング上、消費者心理の1つの要素として数えられています。ほかの消費者心理である動機、学習、記憶については、次回で簡単に触れることにしたいと思います。


ブランディング (7)マーケティングミックス⑤ プロモーションその4

前回までは、プロモーションミックスの5つの要素( ブランディング (7)マーケティングミックス⑤ プロモーションその1 、 その2 )と、効果的なコミュニケーションを行う上でのおさえるべき事柄 ( その3 )について概説しました 。今回からは、幾つかのプロモーションを組み合せた ...