今回は、コミュニケーション開発を効果的に行うための8つのステップの5番目と6番目についてです。4番目までのステップについては、以下をご覧ください。1「市場の理解とターゲットオーディエンスの明確化」、2「コミュニケーション目的の設定」、3「コミュニケーションの設計」、4「コミュニケーション・チャネルの選択」
5「コミュニケーション予算の決定」
マーケティング・コミュニケーションの予算は、業界によって、企業によってまちまちですが、多くは売上高の1%から20%くらいを占めています。ただ、化粧品業界の場合、国内企業であれば売上げの15-20%くらいを占めている一方で、海外企業では30-50%にもなるとのことで、業界特性があるとはいえ、その大きさには驚かされます。
コミュニケーション予算の決め方は、前年度の予算を一定割合で増額する増額予算法、現在の売上げまたは予測売上げに対して一定割合をコミュニケーションにあてる売上高比率法、競合他社の支出割合に合わせる競争者対抗法などがあります。
これら3つの手法は、コミュニケーション支出が売上げやキャッシュにどのような影響を及ぼすかということは考慮していません。とはいえ、キャッシュフローベースで予算編成を行うやり方では、キャッシュの確保を重視しがちになるために、積極的なコミュニケーション投資が抑制され、機会損失を招く可能性が高まったり、そもそも計算自体が複雑になるといったデメリットがあります。そこで、妥当性のある予算設定の方法として挙げられるのが目標基準法です。
目標基準法は、コミュニケーションの具体的な目標を設定し、目標達成のために行うタスクを考え、その実行に要するコストを推計するというやり方です。目標基準法のすすめ方は、次のようなものです。
①市場シェアの目標値を定める。②コミュニケーションで到達可能な市場比率を決める。③新しいプロダクト/ブランドを認知し、実際に試用してもらう見込み客の比率を設定する。④試用率1%あたりのコミュニケーションの露出回数を決める。⑤GRP(Gross Rating Point)を決定する。⑥GRPに基づいた必要予算を確定する。
目標基準法の問題は、多くの場合、どのタスクがどの目標を達成するかを明確にすることが難しく、市場シェアの目標値、試用率、目標GRP等の設定に正当性を持たせることが容易ではないとされています。けれども、経営者は取り組まなければならないということにはなります・・・。
6.「コミュニケーションミックスの選択と予算配分」
予算は、広告、SP(セールスプロモーション)、PR、人的販売、ダイレクトマーケティングなどの様々なコミュニケーション・チャネルに配分します。IMCの考え方に基づけば、多様なプロモーションは、その組み合わせが調和を保てるように統合されなければなりません。広告、SP、PR、人的販売、ダイレクトマーケティングについての特徴は、次のブログをご覧ください(ブランディング (7)マーケティングミックス⑤ プロモーションその1、プロモーションその2)。
ところでマーケティングの大家の一人であるアルライズは、2002年に米国で著した『ブランドは広告でつくれない』の中で、消費者からの信頼獲得と購入(または利用)の動機づけを狙いとしたブランド構築において、広告はもはや不適格なもので、PRこそがより優れたコミュニケーション手段であると述べています。また、ブランド構築を成功させるためには、PRのあらゆる可能性を試した後でなければ、広告は絶対に使用するなとまでいっています。
広告業界で頻繁に使われている言葉に、クリエイティビティがあります。ライズは、クリエイティビティの一般的な定義(新しくて今までになかったものを探求すること)に触れ、つまるところクリエイティビティは独創性を非常に重視するものだと指摘しています。けれども、この「新しくて、今までにはなかったもの」ではブランドを守ることはできず、消費者がブランドをひとたび認識すれば、消費者心理に共鳴することこそ必要であり、独創的であるクリエイティビティはブランドには不要であると述べています。
その事例(広告ではなくPRによるマーケティングの成功例)として、ライズはマイクロソフト、インテル、アマゾン・ドットコム、ヤフー、リナックス、スターバックス、ザ・ボディ・ショップなど、今日、世界的に知られているブランドの数々を挙げています。今となっては四半世紀前の主張ですが、現在でも十分通用するばかりか、ライズの主張を立証するより多くのエビデンスがあるように思います。
コミュニケーションミックスの予算配分については、次回にしたいと思います。