11/11/2022

組織文化 (3)文化の形成要素における論点①

前々回の本ブログ(組織文化の捉え方①)では、組織文化の形成要素には、以下の6要素があると述べました。

(1)ビジョン・目的・戦略、(2)競争環境、(3)リーダーの行動、(4)組織構造、(5)社員の行動、(6)業績評価


(1)については、ビジョン・目的・戦略等、組織のあり様を表すものとその形成のされ方が問われます。ここでの論点は、集約すれば次の3点になります。

  • あなたの組織の存在理由は何か。ビジョンに沿った行動をしているか。
  • ビジョンはわかりやすい言葉で表現されているか。組織に浸透しているか。
  • 戦略は合目的か。誰が、どのように策定しているのか。


(2)は、市場、法的規制、顧客、競合他社に対する向き合い方、組織内部における変化対応力と捉えます。論点は、

  • 外部の競争環境は激しいか。変化しているか。
  • それを受けた内部の対応力は健全か。機能しているか。

  • 顧客期待や社内の要求を満たしているか。それらに向き合っているか。


(3)は、リーダーシップのあり方、リーダーの自発的行動、リーダーとフォロワーの関係などが該当します。論点の幾つかは、次のようなものです。

  • リーダーは実行するか。状況に合せてスタイルを変えているか。
  • リーダーの発言を遮れるか。批判的な態度は受容されるか。
  • 積極的に提案する機会は設けられているか。採用されるか。


続けて記述していくと、長くなってしまいますので、続きは次回にしたいと思います。

読者の方の中にも思い当たるところがあるかもしれませんが、自由競争が事実上、制限されている業界では、某大手有名メーカーなどが謳っているビジョンと、そこで働く社員(特に正社員)の行動が、まったく真逆の場合があります。ちょっと信じがたいことではあるのですが、内弁慶と言えばいいのでしょうか・・・。そういった企業は、一見するだけではわからないかもしれませんが、衰退が進行し、いずれ市場から退出せざるをえなくなるのだろうと思います。



組織文化 (2)文化の捉え方②

組織文化の全体構成のうち、2つめの組織文化の発現については、(1)規範、(2)理念、(3)信念、(4)価値観、(5)シンボル、などに組織文化が現れると捉えることができます。

規範とは、行動や判断をするときの依って立つ基準です。

理念とは、普遍的に共通する考えや道理のことをいいます。

信念は、強い気持ちで信じる考え、目標などを達成する・できるという強い気持ちのこと。

価値観は、ものごとの良し悪し、評価のもととなる見方です。

シンボルとは、象徴的なもの、たとえば立居振る舞い、社内手続き、文書の作成方法、オフィスのレイアウト、議論の仕方などが含まれます。


3つめの組織文化から影響を受けるものについては、(1)意思決定と、(2)動き・アクションで捉えます。

ここでいう意思決定とは、容認されている意思決定スタイルのみならず、決定事項の伝達方法を含んでいます。

動き・アクションとは、決定事項に対する反応や向き合い方のことを指しています。

 

4つめの結果は、業績になりますので、触れるまでもないでしょう。

次回は、組織文化に大きな影響を当たる形成要素について、論点などを述べていきたいと思います。文化の発現と影響を受けるものに関する論点は、その後に続けます。今回は少し短いですが、これで終わりにしたいと思います。


11/07/2022

調達/購買コストの削減③ 何故、コストが削減できるのか

何故、コストが削減できるのでしょうか。
何回か取り組んだことのある方なら、ご存知かと思いますが、価格には、次のような2つの特徴があります。

  • 価格を客観的に決定する基準は存在しない。(つまり、絶対的に正しい価格は存在しないということがいえます)

  • 価格は多様な需給の要因が関係し合って決定されている。(品質、納期、量、企業体質、経営方針、取引先との力関係、販促資金の利用、固定費の回収、利益幅など)

従って、たぶん下がらないだろうというような思い込みや、一度やってみたが下がらなかったという理由は、(全社的な)コスト削減の取組みをしない理由には、まったくなりません。

そもそも、各社にとっての適正価格(もしくは、ベストプライス)え、検証したり、追求していないことは珍しくありません。

ボリューム集約による交渉力強化や、調達/購買エリアの拡大(グローバルソーシング含む)などは、これまで比較的取組みが進められてきたかもしれません。

原材料などの仕様変更は、開発を中心にメーカーであればふつうに行われてきたかと思いますが、調達/購買部門を巻込んでとなると、状況は変わってくることが多いといえ、この点において、改善や改革の余地があるでしょう。

業務や意思決定などのプロセス変更や、サプライヤーなどとの戦略的なパートナーシップを結ぶといったことを、あまり検討されてこなった企業は、是非、この機に取組まれることをお薦めします。このようなことを全て、もしくはひとつかふたつだけでも、着手するだけで、相応の成果を得られるはずです。

商談の仕方をアナログからデジタルに変える交渉力強化に向けた様々トレーニングを行うというのは、言うまでもないでしょう。交渉力強化については、別途触れたいと思います。


調達/購買コストの削減② 何故、支出が多くなるのか

何故、支出が多くなるのでしょうか。

単価が高くなる理由に、毎回同じものを習慣的に見直すことなく発注しているというのがあります。ほかにも、代替品や代替サプライヤーを知らないとか、調べないというのもあります。発注者のコスト意識が希薄というか、殆どないというのは明白ですが、意外とサプライヤーとどのようにコミュニケーションしたらいいのか、何を話せばいいのか分からないという人が結構います。これらは、全て調達/購買に直接関係する問題(または事象)です。

直接材であれば、所謂、開発購買に関係する問題、該当する原材料の特性を理解していないか理解しようとしないために、値段が上がるというのがあります。調達/購買担当者によっては、思いきって開発領域に踏み込んでいく人もいらっしゃいますが、そういう方は非常に稀だと思います。

調達/購買を除くサプライチェーンに関係する問題として、需要予測の精度が甘かったり、在庫管理の仕方に問題があるなどして、必要以上に、完成品や仕掛品、または原材料を持つ、または足りなくなるというケースがあります。

調達/購買における直接材の仕事は、ことさら開発や製造との結節点として重要な役割を担っており、最終製品価格や営業利益に大きな影響を与えるにも関わらず、意外と軽視されているのは不思議なことです。

間接材も同様です。間接コストを配賦するわけですから、支出額の大きい電力やガスなどは勿論のこと、工場で使用する各種備品も、価格の適正さについて再確認が必要です。

同じ間接材であるコピー用紙などに見られる事務用品については、総務部門が関係する場合が多いでしょうが、規格の見直し含め、あらためての確認が必要でしょう。たとえば、電子カタログで発注できているから便利、それでよしとしていて本当にいいのかどうか。企業によっては、利便性を最優先させている状況では、もはやなくなってきているのが明らかなところもあるはずです。

最後に、先日、某中堅製造業の社長が、もっとコスト削減できないのかと役員に問うたら、担当常務は一言も発しませんでした。後で尋ねたら、自分はサラリーマンだから、聞かれてもそんなことは言えないとのこと。自分が何も考えていない、知らなかったのがバレるのが怖かったのかもしれませんが、後でバレるほうがよほど、問題になると思います。上司は知っていて、見て見ぬふりをしている、試しているということは少なくなく、こういったことは現場のみならず、役員クラスでも同じことだといえるでしょう。



調達/購買コストの削減① 何故、今、コスト削減の取組みが必要なのか

モノの値段がどんどん上がっています。電気製品などは、一部メーカーのものがニュースで取り上げられはしましたが、驚嘆するほど値上がりしています。いつのものと比べるのかにもよりますが、聞くところでは、2年前と比較すると、1.5-1.8倍程度くらいにはなっているとのこと。住宅に至っては、大手ハウスメーカーがこれまでの戦略を変えなければならないほどになっているとか。食料品、日用雑貨や化粧品などは、日々のことですので、言うまでもないでしょう。

周知のとおり、原材料価格の高騰というのが主な理由ですが、全ての製品やサービスが、実際そのとおりなのかというと、少々疑問が残りますし、便乗値上げが行われているのは、一部ではあるにせよ事実です。ですが、それよりも、ここで問題にしたいのは、本当にサプライヤーと交渉しているのかということについてです。

サプライヤーも苦しいので、何でも交渉できるというのでは勿論ありませんが、同一製品で、大幅に値上げされているにも関わらず、製造業や小売業によって、その同一製品の割引幅が大きく異なるものがあります(販促金などでは説明がつきません)。さすがに、ここで具体的に社名や製品名を記載することはできませんが、そういう会社が一定数存在しています。

いろいろな理由があるのは、十分想像できます。その中のひとつに、うちは大手じゃないから(または、大手だからそう簡単にはできない)というのがあります。大手じゃないケースでいえば、所謂(広義の)部品メーカーで、この機に大手の完成品メーカーとつきあいたいと思っているようなところです。

おかしなことに、最近は一般消費者でさえ、モノによってはウェブ検索すれば、ある程度は適正的な価格がすぐにわかるようになっているにも関わらず、そういった理由を平然と口にするのは、驚き以外の何物でもありません。

せっかく大きな事業成長の機会、業界における位置づけや序列?などを変えられるかもしれないのに、そういった発想は一切せず、他社とまったく同じの横並びの姿勢で、日々ものごとを処理しています。相対的に言えば、大手完成品メーカーほど、実は価格に対してシビアであるにも関わらず、それさえ知ろうともしていないところが少なくない・・・。

また、削減できたコストを、次の成長投資の原資に充てるということも、可能です。ですが、大変残念なことに、有名メーカーや大手小売業であっても、近年、あまり成長していない企業には、このような考えは存在しないことが多いようです。デジタル投資にお金がかかるからといって、組織的なコスト削減の取組みや努力は殆どせず、むしろ何もしないか、或いは、非常識極まりない言い回しで、言いやすい相手/サプライヤーにだけ言うわけですから、不良品や粗悪品が、混じるのはやむをえないのかもしれません(決して、あってはならないことではあるのですが)。

こういった時期だからこそ、全社を挙げて、戦略的にコスト削減の取組みを行う。先に取り組んだ企業が、集団から一歩早く抜け出せるのは間違いありません。過去に一度やったから、もういいやではなく、時期を見て、再度取り組むのが当たり前であり、今まさに、そのタイミングであると筆者は思います。また、組織的且つ戦略的に行うわけですから、退室時にはとにかくこまめに電気を消すとか、少々寒くても(暑くても)エアコンのスイッチは入れないという類いのものではないことは言うまでもありません。


11/01/2022

営業力強化 (2)価値ある提案をするために⑨

繰り返しとなりますが、価値ある提案をするためには、顧客課題に対する仮説を持つことが前提で、この課題仮説が落としどころの検討につながりますこの一連の動きを的確に行うためには、スキルも勿論重要ですが、まずは、自分ごととして考える。そして、この考える行為をルーチン化していくことが必要です。

そのためには仮説が非常に重要となりますが、仮説はどうすればうまく作れるのでしょうか。私たちは、日々の生活では、無意識のうちに、仮説をもって行動しています。たとえば、厳冬になりそうであれば、前もって厚手の服を早めに出したり、乾燥がひどくなりそうであれば、今年は大きめの加湿器の購入を検討しようとか、体を温める鍋メニューを増やそうとか、そういったことを考え、備えることが多いはずです。

ビジネスも同様です。ある時点で、可能性が高いと考えられるものを仮説として位置づけ、いったんは結論づける見た目の現象や会話した時点で、何が言えるのか(⇒仮説)。データからどういったことが導き出せるのか(同左)。こういったことを短時間のうちに、意識して繰り返す。仮説を作ったり、壊したりしながら、検証していく。そういった仮説ベースの思考方法が、価値ある提案を行うためには必要です。

ここでいう価値提案の価値については、両者(顧客と自分)で創造していくという姿勢が重要です。どちらか一方の要求が他方の譲歩になるような関係、ゼロサム的な関係というのでは、関係性は長く続きません。価値を分配するのではなく、価値を創造していき、両者のパイを大きくするといった向き合い方が必要です。逆に言えば、一方的なことばかり、自分のことだけを要求する顧客と接することになれば、さっさと見切りをつけて、別の顧客と会う時間に充てたほうがいいということになります。

価値を創造していくためには、相手との論点を増やしていくことがポイントになります。論点がひとつだけとか、少なすぎる場合は、双方で創造していくことが難しくなるからで、創造できる余地をできる限り多く作っていけるようにすることが重要です。

たとえば、価格や利益、または契約の内容や期間などに関係する経済的価値、モノ本来の働きを表す機能的な価値品質を維持したり納期を厳守するといったような謂わば安定的な価値、双方の協力機会を継続的に創出していくような協調的価値といったような、いろいろな価値が考えられます顧客が何を最も重視するのか、予め価値を洗い出しておいて、仮説を立てていく。商談をとおして検証し、仮説の精度を上げながら、双方にとって最良の合意形成がはかれるようにすることが、営業としての面白さであり、また、難しい点でもあると思います。


営業力強化 (2)価値ある提案をするために⑧

B2Bの広告代理店や、B2Cの注文住宅を扱うハウスメーカーなどとは異なり、店頭販売の小売業は、不特定多数の客を、その場で(基本的に)短時間のうちに、対象にします。扱う商品にそれほど難しいものがあるわけではないと思いますが、種類が非常に多くなるのが特徴的です。百貨店を例に挙げてみましょう。

いきなりで恐縮ですが、何故、百貨店がここまで低落してしまったのか。少々ストレートな物言いで恐縮ですが、主な理由のひとつに、あまりにも百貨店の営業(店頭販売の現場にいる百貨店の社員)が、思考することなく、店頭に立っている(もしくは、店頭にさえ立たない)からだと筆者は思います。そうでない方もいらっしゃるでしょうが、基本的には大半の百貨店の社員が、考えなく、店頭にいるからだといえます(取引先の社員の方々の多くは違うと思いますが)。

店頭で何かを尋ねても(たとえば店内に入っているメーカーの場所とか、扱い商品のようなことでも)、素早く答えられないことが多い。店によっては、社員をまったく見かけないか、ひどい店だと社員が肩で風を切って歩き、お客が避けているなんてこともある始末です。さすがに東京の日本橋の百貨店では、お客を睨みつけたり、品定め的なことをしている社員はいないようですが・・・。

価値ある提案をするために、食品売場などは格好の場所といえます。来店客が衣料品売場などと違って多数いるわけですから、お客を見て、様々な疑問を自分に投げかけることができるからです。たとえば、何故、あの客は他店の食品の袋を持って、当店に来ているのだろうか。何故、あの客は、あそこの売場でしかめ面をして、商品を眺めているのか。何故、あの客は、あそこの売場で店員と笑顔で話をしているのか。何故、あの客はあんなに急ぎ足で売場から去ろうとしているのか、何故、あの商品は買って、これは買わないんだろうか、等々。

全て、理由があるのです。仮説をもって考える必要があります。たとえば、他店の袋を持って来店している客であれば、他店にはない品揃えが当店にあると考えるのが自然ですが、要はそれが何で、何故そうなっているのかを考えることが重要です。通常、袋の中身まで読み取ることはできませんが、想像していくことは十分可能でしょう。

具体的に書くのは少々差し障りがあるため控えますが、日々、店頭は仮説検証の場であり、アイデア(接客改善、商品改廃、売場変更等)の宝庫です。

改革や変革レベルとはいかなくても、改善レベルだと、毎日できます。1日、10人のお客様に対して、疑問を抱き、仮説を立てて考えてみる。これをルーチン化して店頭に立つと立たないでは、1年後、少なくも3年後には、それをしない社員との差は、大きなものになるのは間違いありません。

店頭では、お客だけが知っていて、百貨店の社員が知らないことが多すぎます。極端なことを言うつもりはないですが、少なくとも次のようなことは防げるのではないでしょうか。たとえば、まったく同じ商品(たとえば京野菜の青ネギで生産者は同じ)でも、目と鼻の先にある2つの百貨店で、3倍ほどの価格差(いずれも通常の販売価格!)があれば、誰も高いほうの店では買わないでしょう。そればかりか、その青果売場、ひいてはそういった生鮮の売場には、お客は二度と近寄らないことにならないとも限りません。

百貨店が商品を買い取らないから、百貨店は衰退していくなどといった説は、明らかに誤りだと筆者は思います。場所貸しでもいいのであって、要はお客様をまったく見ていない応対、正確に言えば、お客様の行動を注視しない、思考することなく応対することが衰退を招いているのであって、これではコミュニケーション以前の問題といえます。スキル習得には、かなりの長い時間がかかります。ただ、ここまで来ると、できた暁には、残念ですが多くの百貨店がなくなっているのではないかと思ってしまいますし、また、そう思うのは筆者だけではないと思われます。


営業力強化 (2)価値ある提案をするために⑦

商談の場で、会話を途切れさせないための短い会話のショートトークには、「傾聴と問いかけ」と「常套句」の2つがあります(ショートトークというのは、弊社が使用している名称です。一般的にショートトークと呼ばれるものがこのようになっているわけではありません)。

傾聴と問いかけは、5つのステップで構成します(①から始め、②、③と順に進めます)。

①切り返し、②ショートクエスチョン、③課題/ニーズの確認、④解決法の提示、⑤効果の訴求/見極め

①は、たとえば「〇〇ということですね「、とか「つまり△△ということですね」、または「それは××ということでしょうか」というように、相手の発言に対して、その場ですぐに反応し確認することを、切り返しと呼びます。

商談や会話に主体的に入り込んでいたら、自然にでるリアクションといえますが、他人ごととして聞いていたり、そもそも話を理解できなければ、このようなリアクションにはならず、意識して、切り返すことが必要になります。切り返しにより、確認モレが防げるばかりでなく、相手が自分の話をちゃんと聞いてくれているなという安心感にもつながり、話をポジティブにすすめられるようになります。

②は、「少しお尋ねしてもよろしいでしょうか」、「購入するにあたり、重視されていることは何ですか」、「〇〇はどなたがされるのですか」と、短いフレーズで端的に質問します。

③は、ショートクエスチョンを繰り返すことで、最も重視すべき課題/ニーズを確認することにつなげます。所謂、QCD(Quality, Cost, Delivery)や、QFD(Quality, Function, Deployment)などで、見極めるのが良いでしょう。できる限り、モレなく、ダブリなく絞り込んでいきます。

④は、③の具体的な落としどころになります。もし、具体的なものを提示できそうにない場合は、「それでは、どのようにすればよいでしょうか」とか、「何かよい解決策はないですか」などといって、相手/顧客に直接尋ねてみるのが良いと思います。思わぬ解決策を、相手が提示してくれる場合があります。また、相手が自分でも提示できないとわかれば、求めてくるのを変える(たとえば要望を一段階下げたり、それ以上、無茶なことを言わなくなるなど)ことにもつなげやすくなります。

最後の⑤については、④を選択したことによって顧客が得られるベネフィットや、実現できるであろうゴールなどについて訴求したり、見極め、確認を行います。

常套句とは、ある場面に来たら、定型的な言い回しを使うことをいいます。相手との関係性(たとえば一般消費者か、法人顧客など)にもよりますが、常套句の使い道は、以下のような4つに分けることができます。

 (a)論点を外すことなく、好意的な態度で接する場合

 (b)解決の道筋のあたりをつけたり、意思決定の基準を直接尋ねる場合

 (c)単純化することで、ものごとを理解しやすくする場合

 (d)基本に立ち返り、理詰めで攻めていく場合

たとえば、一例として、(a)は「こういう解決策は考えられませんか」とか「〇〇について、何か方法はありますか」などがあります。(b)は「それでは、判断の基準は何かを教えて下さい」。(c)は「〇〇と△△では、どちらが良い(または大きい、長いなど)でしょうか」。(d)は、たとえば「ビジネスの原理原則に従って、お客様の問題を解決したいと考えています」などが挙げられます。


営業力強化 (2)価値ある提案をするために⑥

ハウスメーカーの注文住宅ほど、コミュニケーション力が問われる営業はそうないのではないでしょうか。同じ戸建てでも、建売と注文では全く違います。注文住宅はまさにその名のとおり、顧客が注文する住宅ですので、基本的にフルカスタマイズです。通常、商談は1年程度かけて行われることが多く、この間、営業が顧客を理解することは当然といえるでしょうが、顧客も営業の癖や考え方を理解することが暗に求められるといえます。というのも、少し考えてみればすぐにわかることですが、注文住宅づくりは、顧客と営業の一種の共同作業のようなものですので、双方の理解が深まらなければ、両者が納得できる家は完成しないといえるからです。

また、担当営業は、社内の設計や開発、生産、インテリアコーディネーター、外部の住宅設備機器メーカーや金融機関などとも連携する必要があります。全てを細かく決めていかなければならず、仕事量は相当なものになります。コミュニケーションだけでできるわけでは当然ありませんが、コミュニケーション力、そのマネジメントができなければ、仕事が進まないことは明白です。

先の顧客との共同作業ですが、残念ながら、うまくいくケースはさほど多くないようです。というのも、(客の勝手な振舞いはここで除くとして)担当営業は家に関する知識は勿論のこと、顧客の要望に向き合い、そのニーズを満たしていく、ある意味底なしともいえる処理能力のようなものを、備えておかなければなりません。顧客ニーズは多様化し、技術革新や、社会上の要請などもあって、製品(製品そのものである家、部材、サービス等)は進化し続けています。

ですが、そのような進化に対応し続けられる能力を持っている営業など、そう多くはありません(もしかすると、統計上エラーか、それに近い割合かもしれません)。このため、会社の教育もさることながら、自身で絶えず努力し続けなければならず、そこにはかなりの忍耐力も必要となります。

営業にとって、おそらく最もハードルが高いことは、顧客の気持ちや望み、考えなどを理解しつつ、いろいろな制約条件(たとえば顧客が用意できる購入予算)をおさえて、具体的な家にして提示することでしょう。考えればすぐにわかることですが、顧客のほうが、その方面(自分自身が望む理想的な暮らしや住まいなど)については長けています。ましてや、顧客が資産家で、海外暮らしも長く、国内外から時々、知人を招待しパーティを催すなどともなれば、ふつうそのようなことに即、対応できる日本人はそう多くはいないでしょう。ましてや、ハウスメーカーの担当営業は、通常、会社勤めですから、そのような志向や態度などをはじめからちゃんと理解しろというほうが、無茶なことです。

それでも、顧客に向き合い、注文住宅を完成させていかなければならないわけですから、それはもうかなり凄いことだといえます。それでは、何故、それができるのかというと、不断の努力やスキル、センスといったこともありますが、何はともあれ担当営業が顧客のことを自分ごととして捉え、考えていくことができるからということに尽きると筆者は思います。頭がいいとか、そういうことではなく、家づくりに対する情熱と、あと強いていえば使命感のようなものでしょうか。

どのハウスメーカーも、個人の努力に大きく依存しているのが実情のようです。ただ、属人的な取り組みだけでは、いずれ注文住宅は殆ど姿を消すことにもなりかねませんから、メーカーサイドとしてはどうにかしなければいけません。

ではどうすればいいのか。対顧客の観点では、AIやアナリティクスで解を導き出すというのは、建売住宅なら実現可能ですが、注文住宅の場合はそう簡単にはいかず、下手をすれば顧客の怒りを買うだけとなります。現時点での筆者のお薦めは、ショートトークと、過去事例などからFAQを細かく作り、チェックシートで備えを十分にすること。あと、適度なスピード感も要求されますから、契約や書類送付等に伴う営業事務のしっかりした専門家を養成し、プロセスを標準化・共通化して、インハウスでシェアードサービス化すること。加えていえば、商談シナリオのようなものを作っておき、幾つかのパターンに対応できるようにしておくことだと思います。

あと、広告代理店同様に、少なくともプロジェクトマネジメントに関するスキルが必要です。少し長くなってきましたので、ショートトーク(商談の場で、会話を途切れさせないための短い会話)などについては、次回以降に触れたいと思います。



ブランディング (4)ターゲティング ②セグメントの評価i

市場特性は、様々な要因に左右されます( ブランディング (4)ターゲティング ①セグメントの評価項目 )。 規模と成長率だけを考慮すればいいというわけでは決してありません。 大規模で右肩上がりに成長を続けるセグメントが有望であることは事実ですが、それ以外の要因が同じであることはめ...