3/03/2024

ブランディング (3)セグメンテーション ④実行の成否を左右するポイント

セグメンテーションは、次のステップであるターゲティングにつなげることが必要です。そのためには、セグメンテーションの段階から、ターゲティングしていく先(落としどころ)を、漠然としたものでもいいので、イメージしながら行っていくことが重要です。

一般的にいえば、変数は主に以下のようなものになるでしょう。

  • 地理的/ジオグラフィック変数(居住地、気候、地域特性や都市化の進展度)
  • 人口動態/デモグラフィック変数(性別、年齢、家族構成、所得、職業)
  • 心理的/サイコグラフィック変数(社会的階層、ライフスタイル、性格)
  • 行動/ビヘイビアル変数(購買経験の有無など過去の購買状況、ヘビー・ライトなどの使用頻度)


このような変数を組み合わせて、攻略したいターゲットセグメントを考えていくわけですが、その際、以下の点は必ずおさえて行わなければいけません。それは、(3)セグメンテーション①主旨と要件に記載した5つの可能性です。

当該セグメントは、

  • 規模と潜在購買力が測定できるか(測定可能性)
  • 最低限の売上げと利益を獲得することができるか(維持可能性)
  • 当該セグメントに働きかけることができるか(到達可能性)
  • 自社の経営資源でうまくアプローチすることができるか(実行可能性)


米国MBAの古典的なケースに、ブルドーザー市場のキャタピラー社とジョンディア社のスタディがあります。大企業のキャタピラー社と競っていたジョンディア社は、地域ディーラーネットワーク・低価格・サービスサポートの3つを武器に、小型ブルドーザー市場にマーケティング資産を集中させ、自社のマーケットポジションを確立しました。このスタディで重要な点は、大型と小型のブルドーザーでは、顧客企業の要求が異なることから、ジョンディアにとって独自のセグメンテーション、つまり差別化可能性を成立させることができたということです。

大半の市場において、セグメンテーションをプロダクトの用途と顧客が求めるベネフィットに基づいて行えば、有益な結果は得られます

そもそもセグメンテーションは、潜在顧客のうち同じような属性を持ったグループを識別するために行うものです。ですが、セグメンテーションは単に市場の異質性を認識するだけの手段ではありません。セグメンテーションは、あるマーケティングミックスで、見込み客を、同じように反応する幾つかのセグメントに切り分け、効果的で効率的なマーケティング戦略を立案する視点を与えるものであり、また、そうでなければ良いセグメンテーションとはいえないでしょう。

ところで、セグメンテーションはマーケティングの中心的なトピックであるにも関わらず、あまり適切に行われてこなかったのではないでしょうか。冒頭でも記したとおり、セグメンテーションはターゲティングにつなげていくために行うものです。どれだけ、どこまでセグメントしていくのが適切かは、当事者の考え方次第です。プロダクトの提供者がターゲットのイメージを、何処まで具体的に(想像力を駆使して)行っているかで、セグメンテーションの成否が変わってくるといえるでしょう。つまり、事前の仮説が非常に重要になってくるわけです。

プロダクトの提供者は、狙いたい単一のセグメントを選択し、ほかのセグメントに対しては有効でないマーケティングミックスを行うのか、或いはセグメント毎にニーズが異なっていようとも、セグメント全体に対して有効であろうマーケティングミックスを行うのか。ざっくりいって、このどちらかしか方法はありません。というのも、セグメント毎に、リソースを分散して投下できるような体力のある企業、しかも策は必ず的確に打てる、そういったことができる企業は極めて少数(または皆無?)だからです。

多くの企業が、規模の経済を得たいと思っています。この場合、ひとつの同じマーケティングミックスで、効率よく行いながら、可能な限り多くのセグメントに訴求し、できる限り多くの顧客を惹きつけていく、そういった大規模な企業集団が存在します。ですが、セグメントを絞り込み、それに適したマーケティングミックスを行う企業が突如として現われたとしたら、先の企業集団にとっては脅威な存在として映るはずです。

セグメントするかしないか、するのであれば何処までセグメントするのが適切かといったことは、異質な市場において共通のニーズがあるかどうかが検討の前提となり、そのうえで規模の経済と複数のマーケティングミックスを用いる場合のコストのバランスが問題となります。

たとえば、B2C市場における小麦粉や食用油などの食料品、肌着・靴下などのインナーウェア、防虫剤などの日用雑貨品等々、所謂コモディティ化した消費財関連の商品などの需要は、多くの場合、極めて同質的といって差し支えないでしょう(とはいえ、筆者は食用油や肌着類などはかなり拘っているのですが・・・)。

このため、各企業が提供する製品は、同じようなものに収斂していき、各社いずれもできる限り幅広い顧客を惹きつけられるマーケティングミックスを行うことになります。こういった製品カテゴリーにおいても、セグメント市場は存在するでしょうが、それぞれ別個に対応しなければならないほどの違いや必要性といったものは、存在しないといえるでしょう。少なくとも、各市場における主力企業にとっては、そのはずです。(B2B市場については、顧客の要望に合わせカスタマイズした商品とサービスは、上記のようなB2C市場のものとは異なります)

但し、マーケットシェアの小さい企業や事業規模が大きくない企業などは、セグメントすることで、シェアを拡大させたり、新たに参入する機会を獲得するといったことが珍しくありません。それ故、こういったタイプの企業は特に、まずは市場をセグメントしてみることで、大きなビジネスチャンスのヒントをつかめる可能性があるといえるでしょう。


ブランディング (4)ターゲティング ②セグメントの評価i

市場特性は、様々な要因に左右されます( ブランディング (4)ターゲティング ①セグメントの評価項目 )。 規模と成長率だけを考慮すればいいというわけでは決してありません。 大規模で右肩上がりに成長を続けるセグメントが有望であることは事実ですが、それ以外の要因が同じであることはめ...