7/05/2025

ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その10

マーケティングミックス2つめのP、価格についての10回めで、今回は消費者の価格概念について取り上げます。

ブランディング(7)マーケティングミックス③ 価格その1(価格の多様性)その2(価格検討3つのレベル)その3(プロダクトレベルでの検討)その4(先発企業の価格戦略①)その5(先発企業の価格戦略②)その6(先発企業の価格戦略③と後発企業の価格戦略)その7(経営の意志)その8(ライフサイクル①)その9(ライフサイクル②)


消費者の価格概念には10以上のタイプがあります。なかでも、参照価格、心理的財布、価格階層理論(または価格帯理論)、留保価格、名声価格、プロスペクト理論、グーテンベルク仮説、端数価格については、しばしば取り上げられるため、以下に簡潔にまとめてみることにします。


参照価格: 消費者の心の中にある価格イメージのことで、内的参照価格と外的参照価格の2種類があり、前者は所謂、値頃価格または値頃感という言葉に置き換えることができます。なお、参照価格については、次回で詳しく述べることにします。

 

心理的財布: お金を支出をする時、消費者は自らが持つ幾つかの心理的な財布から行うという考え方。たとえば、日常の買物用財布、プチ贅沢用の財布、自己啓発用の財布(最近ではほぼ死語になりましたが・・・)、旅行用の財布等々、挙げればたくさん出てきます。ここで重要なことは、プロダクトを提供する側が、消費者のどの財布にアプローチしていくか、どの財布の支出として認知してもらうかということです。とりわけ、コモディティ関連のプロダクトについては、ワンランク上の財布、またはコモディティの中でもカテゴリーをより細分化することで、消費者に価格の値頃感やお得感を感じもらえるようにすることが重要なポイントになります。

 

価格階層理論: 上位のブランドをいつも買っている消費者は、中低位ブランドの価格が大幅に値下げされたとしても、それを購入することはないという考え方。同様に、下位ブランドを割り引くことで下位の更に下のブランドを買う消費者を獲得することは出来ても、中位ブランドの消費者の需要を奪うことはできないという意味にもなります。 

たとえれば、上位ブランドをナショナルブランド、中位をプライベートブランド、下位をノーブランドということができます。 

また、たとえば日常でA5ランクの神戸牛を買っている人は、ほかの値下げされた和牛のA5ランクを買うことはないともいえるでしょう。売上げを拡大したい企業は、その売上げをどういった消費者から、いくらくらい持ってこれるかを考えなければならず、単に大幅値下げをしても、売上げは思ったようには伸びないということになります。なおここでの価格は、品質に置き換えて考えることも可能です。

 

留保価格: 消費者の価格に関する受け入れ可能な範囲の幅のことをいい、この範囲を超えると、消費者は価格に敏感になるという考え方。範囲の幅の下限を下回ると、品質への不信感が生じ、上限を超えると支出増、予算オーバーとなり購入を見送ろうとする現象を捉えたものです。

 

名声価格: 高価格ゆえにより大きな需要を獲得できるという考え方で、高品質のプロダクトで用いられる価格戦略。宝飾雑貨や高級ファッションの分野に多く、他者に高価なものだと認めてもらうことが主な用途で、象徴価格とも言われています。

 

プロスペクト理論: 心理学のフレーミング理論が土台となって、考えられたもので、価格の高低に関する消費者の反応の違いを表した考え方です。参照価格に照らして、高価格で損をしたと感じるほうが、低価格で得をしたと感じるよりもインパクトが強いとされています。(参考: 問題解決力 (2)問題とアプローチを考える ③思考の罠vi)


グーテンベルグ仮説: 需要でmonopolistic interval(独占的範囲)と呼ばれるものを含んだ価格反応関数のことで、端的にいうと、プロダクトの売上げには価格の変化があまり影響しない範囲/価格帯があるという仮説が、グーテンベルグの仮説と呼ばれるものです。この仮説に従えば、価格が一定程度の範囲内で変動することを、消費者はさほど気にしない(または気づきにくい)ということになります。これは、プロダクト提供側からすれば、価格を少しくらい上げても需要がさほど変わらない範囲を把握することが非常に重要であるということになります。

独占的範囲を外れれば、需要は急に変化するわけですが、留保価格の受容可能範囲との違いは、 上田隆穂氏によると、その独占的範囲の外で、価格が低ければ売上げやマーケットシェアは突然伸びることになり、リピート購買など消費者が当該プロダクトの品質を熟知している時に生じるということです。


端数価格: 端数で価格を表示することで、消費者に割安感のイメージを与えようとする価格設定で、たとえば98円、498円などになります。、ふだんから私たちがいつも目にするものですが、これだけ至るところで目にしていると、今日、効果としてどこまで有効なものかは少々疑問です。


次回は、参照価格について詳説します。


ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その10

マーケティングミックス2つめのP、価格についての10回めで、今回は消費者の価格概念について取り上げます。 ブランディング(7)マーケティングミックス③ 価格その1(価格の多様性) 、 その2(価格検討3つのレベル) 、 その3(プロダクトレベルでの検討) 、 その4(先発企業の価...