10/25/2022

営業力強化 (2)価値ある提案をするために⑤

強制的に改めさせるには、業績評価の中身を変えていきながら、雇用形態の見直し、就業規則を変更していくことが必要になると思います。幸いなことに、日本の人事制度が、職能から職務へ、ジョブ制度へと、ながれが変わりつつあります。

この点においては、筆者の考えはかなりラディカルなほうですので、あまりご参考にはならないかと思いますが、役職定年制の大幅な引き下げや、雇用のあり方(正社員、契約社員、転勤や残業の有無、真のプロフェッショナル制度の導入など)を、入社後10年以内くらいにいったん見直すといったものが良いと個人的には思っています。

ただ、大多数の会社では、なかなかそういうわけにもいかないでしょうから、結局は教育研修を繰り返し行っていくことになるといえるでしょう。ただ、やりっぱなしでは、頑張る人とそうでない人にはっきり分かれてしまいますので、eラーニング含め、履修すべき必修科目を目的に応じて設定し、合格点をとるまで、毎月毎月テストを行い、その過程は透明性を保つようにする。たとえば、結果は全て公開、ガラス張りにするなど、思いきったやり方が(一時的にせよ)必要になると思います。(ただ、頑張る人はふだんから頑張っているため、会社による半ば強制的な研修は不要かもしれませんが・・・)

その研修ですが、(繰り返しとなりますが)最も重要なものは、やはりコミュニケーション関連のものに行き着きます。というのも、そもそも社内のコミュニケーションさえ、難しくなってきている企業が多いなかで、クライアント/顧客に対して、的確なコミュニケーションなど、できるはずがないからで、交渉力以前の状況といわざるをえない会社も少なくありません。

また、商談にのぞむにあたり、チェックシートを作って、事前に必ず確認し、結果は事後に自身と上司で評価する、そういったことなども併せてすべきでしょう。

そこまではとてもとてもという営業の責任者や担当の方もいらっしゃるはずです。そういう場合は、当該企業における営業パーソンのタスクを全て洗いだし、顧客への直接対応(面談)以外のところ、たとえば営業事務などを、社内か社外かはともかく、他者に委託できるようにすべきです。狙いは、当然のことながら顧客対応時間を増大させること。そのために現状の業務負荷をできる限り軽減することです。事業規模が大きければ、十分可能です(適切に機能しているかどうかはともかく、実際、そのようにしている会社は少なくありません)。

仕事のやり方、業務のすすめ方については、営業パーソンによって違いがあるでしょうが、できる限り標準的なプロセスや型を作る。また、そのパターンは極力ひとつにすることが、最終的には成果を得やすく、且つ過程を測定しやすいといえます。ただ、会社や営業パーソンによって、合う合わない(もしくは、どれだけ頑張ってもできるできない)というのがありますので、組織文化などを考えながら、適用させていくことが重要です。

外資系のコンサルティング会社の提案で、比較的よくあるのは、ハイパフォーマンスな人材の行動様式を分析し、それに寄せていくというのがありますが、やり方を間違えたら、かなり危険(悲惨?)なことになりますので、慎重に検討することが必要です。


10/24/2022

営業力強化 (2)価値ある提案をするために④

広告代理店が、今以上に、価値ある提案をするためには、どうすればいいのでしょうか。シンプルに考えれば、コミュニケーションマネジメントと、プロジェクトマネジメントを、まずは、営業パーソン各人がしっかり自分のものにすることだといえます。

但し、前者のコミュニケーションマネジメントについては、テクニック的なことも重要ですが、何より、クライアントの話をしっかり聞くこと。素直な気持ち謙虚な態度で、顧客と向き合うことから始める必要があります(勿論、全ての営業パーソンがこうしなければいけないというわけではありませんが、少々、わがままな人が多いと思いますので、あえてこのように書いています)。とにかく、自分の考えは、いったん胸の内に秘めておくこと。

その上で、顧客課題に対する仮説を、自分の頭で考えていくという二段構え的なものが必要だと思います。

話は少しそれますが、聞く話す読む書くのなかで、一番難しいのが、聞くこと。その次が、話すことだと筆者は思います。読んだり、書いたりするのは、意外とそう難しくない。何故なら、基本的に自分自身で、その行為が完結するからです。聞いたり、話したりするのは、相手が存在するため、そう簡単ではない。

いずれにせよ、まずはしっかり相手/クライアントの話を聞くこと。これができるかどうかが、最初の関門になります。とはいえ、相手が会ってくれなかったらどうするか。その時は、相手が欲している情報を考えて、それを提供していく。仮に、それが自社で提供できるものではなかったとしても、まずは提供できるようにすることを考えてみるべきしょう。とにかく、相手のことがわかるようになるまで、考え続けることが必要です。はじめのうちは、間違えることも多々あるでしょうが、続けていくことが重要です。

そして、自身で各商談の場に対して、起承転結のイメージを描いてみることが必要になります。自分(自社)の狙いや思惑と、相手/クライアントの状況や理解などについて、イメージしていく、それを膨らませていく、改良を加えていくといったことを商談前の時点ですべきでしょう。商談は1回限りではないでしょうから、都度、行うことが必要になります。

なお、後者のプロジェクトマネジメントについては、紙数の関係もありますので、この場では行わず、別の機会にしたいと思います。

旧来の領域で実績をあげてきた営業パーソンほど、コミュニケーションについては、大きな壁が立ちはだかるのではないでしょうか。時には、ロールプレイングも取り入れて、教育を繰り返し行っていくのが、最終的な近道になるだろうと思います。ただ、時間はそう長く待ってくれませんので、何はともあれ、少し乱暴な言い方になりますが、強制的に行動様式を改めさせることが必要になる場合が少なくありません。大ナタを振るうというのであれば、ここから全てが始まるのだろうと思います。続きは、次回とさせていただきます。


営業力強化 (2)価値ある提案をするために③

ここまでの「営業力強化」の「価値ある提案をするために」では、顧客課題に対する仮説を持つことは前提で、課題(仮説)があって、はじめて落としどころ(相手と自分の間での合意形成)を考えることができる。そのためには、まずは、顧客の課題や現状について、自分ごととして考える。それを癖づける、ルーチン化することだと述べました。

ただ、営業といっても、業種、業界によって様々ですので、ここでは、広告代理店(B2B営業)、ハウスメーカー(B2C営業)、対面販売の小売業(店頭販売のB2C営業)で、ひとまず考えてみたいと思います。

広告代理店は、これまでの収益源であったテレビCMや、イベント企画・集客が、主なものでした。ですが、デジタル化の進展と、コロナ禍での在宅時間の増大などから、近年、相対的にいえば、業績が厳しい状況になっています。大手の電通や博報堂などは、10年以上前から、広告宣伝、ブランディング、販促に加え、デジタルマーケティングやアナリティクスなどを活用した広義のビジネスコンサルティング領域へと、業容を広げています。ただ、大手や準大手、総合系やハウスエージェンシー、ネット系など各社を十羽一絡げに捉えることはできませんが、総じて、当初のプランどおりに、業績が伸びていないところが多いのではないでしょうか。

何故、そうなるのか。理由は幾つか考えられますが、従来の広告宣伝領域などは除き、顧客のビジネス課題を、クライアントの立場で考えることができない(または、できなくなってしまっている)から、クライアントにとっての有用性や実効性などを顧みることなく(同様に、自社にとっての再現可能性を考慮することもなく)、提案・実行しているから、というのが大きな理由ではないかと思います(電通や博報堂がそうだと言っているのではありません。あくまでも相対的にいえば、このようなことが言えるのではと書いていますので、誤解されないようにお願いいたします)。

そもそも広告代理店の営業には、メディア、プランナー、クリエイティブ等の各担当とのプロジェクトマネジメント、チームマネジメント、コミュニケーションマネジメントといったスキルが求められます。ただ、現状は、およそ不十分であるばかりでなく、会社としての教育・育成計画も殆どない。感性が強く求められるようで、実はロジカルなものが非常に要求されている。このため、この2つのバランスをどうとるか。そして、営業パーソン各人にとってキャリアアップをいかにはかっていくかが、会社個人双方にとって、重要な課題になっていると考えます。

なんでも、まずは自分でやらなければいけない。そういったことがどんどん増えて、時間に追われていく。上述のような問題が根底にあるため、自ら考えて、主体的にクライアントに働きかけていくことが難しくなり、結果的に御用聞き化してしまう。或いは、左脳と右脳をうまく組み合わせて顧客課題に向き合うのではなく、勢い、感性的なものに強く依存してしまう。こういったことが多いのではないかと思われます。また、これとは別に?顧客課題のことなど、見向きもしない担当営業も少なからず存在し(理由はともかくとして)、自分のことだけしか考えないようになっていく・・・。

このような環境下では、価値ある提案をすることは、ほぼ不可能といえるのではないでしょうか。少し長くなってきましたので、続きは次回とさせていただきます。


10/20/2022

営業力強化 (2)価値ある提案をするために②

自分ごと」として考えるためには、どのようにすればいいのでしょうか。

絶対的な正解があるわけではありませんが、少なくとも、自分ならどうするか、自分がお客様の立場であればどのように考えるのか。そういったことを、常日頃から考えるようにする、いつも思い描く、想像する。いつも、そのような癖づけ、半ば訓練(のようなもの)をし続けるということに尽きるのではないかと思います。

そうすることで、はじめはできなくても、徐々にできるようになり、いずれ意識せずとも、自然にできるようになると筆者は思います。これは、自身がそうだったからです。事業会社時代、大手経営コンサルティング会社在籍時代、いずれもそうでした。

自分自身が興味あることであれば、まだ比較的簡単なはずです。故に、仕事が好きであれば、身につきやすい(というか、自然と身につくことが多い)でしょう。ところが、自分の好きなことを仕事にしている人は、そう多くはいないはずです。となると、どうすればいいか。筆者の結論は、上記のように「癖づける」ということになりました。今だから、言えるようにも思いますが、はじめの事業会社時代は、元々自身が希望していた業界ではなかったため、癖づけるように至るまでは、正直、少々苦痛ではありました・・・。

癖づけるという表現では、あまりコンサルタントらしくないため、言葉を変えると、「ルーチン化する」ということになります。

対象顧客(=お客様企業、一般消費者)の課題と、相手先担当者の課題感について、訪問前、商談前、或いは電話やメールで連絡を入れる前に、要は、何らかの行為をする前に、少し考えてから、行動を起こすということです。

そんなことは当たり前だと言われる方も多々いらっしゃるだろうと思いますが、要は、考える広さと深さをどこまで行うか、また、それを瞬時にできるかということが重要です。B2B系の営業担当の方であれば、まだやりやすいかと思いますが、B2C系となると、パターンがいろいろ増えるため、大変だろうと思います。筆者のイメージでは、最初の段階は、B2Bは深さが必要で、B2Cは広さが重要だと感じています。

少し長くなりそうですので、今回はここで終わりにし、次回は、B2B、B2Cの営業で、もう少し具体的に考えていきたいと思います。


10/19/2022

R&Dと組織横断型活動 (1)はじめに③

2点目の顧客ベネフィットの明確化については、Dアーカーの3つのベネフィット(機能的、情緒的、自己表現)に沿って、考えることが有用です。

機能的ベネフィットとは、商品が有する一次機能的価値のことを指し、食でいえば所謂五感に関係するものや安全安心、簡便性や価格などが該当します。情緒的ベネフィットは、商品を使用することで得られる感情や感覚などの心理的満足感を与える価値のことをいい、気分転換や幸福感の演出、愛情表現などがあてはまります。自己表現ベネフィットは、商品を使用することで表現したい自分の価値観、人から見られたいと思う姿などを表します。

R&Dの場合、機能的ベネフィットとなる技術の中身/用途について、まずは社内で検討し明確にします。ただ、技術に関することですから、通常、顧客には翻訳をして伝達する必要があり、これが情緒的ベネフィットになると捉えるのが良いと思います。つまり、顧客には情緒面での便益、必要に応じて自己表現面での便益も添えて説明していくことになります。また、敢えていえば、機能的ベネフィットは、一歩間違えれば、自社の技術だけを提供する、謂わば下請けに甘んじることにもなりかねず、この点は注意が必要です。

たとえば、分かりやすい例として、秋から冬にかけて出荷されるぶどうで考えてみましょう。ぶどうを絞った天然100%のグレープジュースは、飲みやすく(体に吸収しやすい)、カリウムを多く含んでいるため、高血圧予防によいとされています。ナトリウムを排出して、体内の塩分を調整することから、血圧を安定させるためですが、ほかにも、ポリフェノールを含んでいるため抗酸化作用(アンチエイジング)も期待されているのはよく知られているところです。また、ポリフェノール成分の一種であるアントシアニンも含んでいることから、最近ではスマホ疲れなど、眼精疲労の回復にも役立つことなどから、シニアから若者まで、幅広い人気を誇っています。

グレープカラーのところが、機能的ベネフィットに該当しますが、これを情緒的ベネフィットに変換すると、もっと健康的で、若々しい自分になれるというような表現ができると思います。これを自己表現ベネフィットに押し上げると、人それぞれかとは思いますが、自分らしくいられるとか、自分の理想に近づけるといった言い回しになるのではないでしょうか。仕事にたとえれば、幾つになっても、フットワークよく、効率的で、スマートなビジネスパーソンになれるなどといえるのかもしれません。

これら3つのベネフィットが、どの業務機能で検討され、形作られていくのかは、先述の機能全体一覧次第ではありますが、およそコンセプト開発における品質コンセプトの確認や企画品質、設計品質のところといえるでしょう。この企画品質を設計や適合の品質に、うまく落し込んでいくところが、R&Dの腕の見せどころになります。

いずれにせよ、R&Dにおいて、マーケティング思考で顧客ベネフィットを明確化していく以上は、顧客の立場で考え、且つ顧客に伝わらなければ意味がありません。そのためには、機能的ベネフィットから、情緒的さらには自己表現ベネフィットへと、意味を変換させていくことが必要です。こういったマーケティング思考を組込んだ業務機能と組織体の構築については、次回以降の本ブログで簡潔に述べていきたいと思います。


R&Dと組織横断型活動 (1)はじめに②

前回のブログで、以下3つのHowについて考えていくと述べました。

  • 全体最適に向けた活動の全体俯瞰
  • マーケティング思考による顧客ベネフィットの明確化
  • マーケティング思考を組込んだ業務機能と組織体の構築(マーケティング機能と部門横断型組織の構築)

マネジメント視点で、上記3点を考える際、最も重要なことは、何はともあれ、まずは、およそだいたいこうなっているという概観を掴んでおくことです。ところが、現実は、まったく知らないとか、やたら精緻に理解しようとされる方が、意外と多い・・・。

まったく知らないというのは、マネジメントで如何なものかとなりますし、精緻にというのはおよそ現実的ではないでしょう。営業出身の経営者の方であれば、やたら営業のやり方に口を出したり、自分のやり方や実績などと比較してとやかく言うにも関わらず、それ以外の領域については、殆どといっていいくらい口を挟まないか、もしくは、分からないから、何処までも細かいことまで報告を上げさせる、または自分の考え?などを押しとおしたり、押しつけようとする、等々。

当事者や関係者以外には見えづらいですが、世襲や権力闘争などが絡むなどして、問題視?(注目?)されている経営者のいる会社ほど、意外?と現場の方々は、的確に、しかも対外的な対応をしっかりされている場合が少なくないと感じます(だから、会社がもっているのでしょうが・・・)。こういうケースでは、大変残念なことに、経営はあまりにも事業の実像や、現場をご存知ないことが多い。

マネジメントは、現場の実態や、業務がどのような機能やタスクで構成されているかといったことを理解しておくことは非常に重要で、的確な意思決定云々の前に、管理や執行の前提として、事業活動の全体を俯瞰して、自社の強みや特徴、課題を、ハイレベル(ざっくりとしたレベル、概要レベルや要点など)で掴んでおく必要があります。

では、どのようにすれば把握できるのか。これをこのブログの場でわかりやすく述べていくことは、少々無理があるのですが、極力シンプルに記載すると次のようになります。

まず、バリューチェーンの主だった機能を列挙します。たとえば、商品企画、研究開発、調達、生産、物流、営業、あと経営支援(経営企画、総務人事、財務会計、法務、広報など)として、それぞれ(商品企画、研究開発など)をレベル1とします。次に、各レベル1を1段階ブレークダウンして、各機能(レベル2)を抽出します。この際、視覚的に分かりやすくなるように工夫して一覧化します。この一覧化は、紙1枚、それもできる限りA4サイズで1枚に収まるようなかたちで一覧化します。

そして、この1枚を持って、マネジメント層や部長クラス、または現場などが、現状や問題点などを議論し、その1枚の中身を詰めていく。各機能(レベル1と2)の特徴や傾向をあぶりだしていきます。

少し長くなってきましたので、続きは次回とさせていただきます。


R&Dと組織横断型活動 (1)はじめに①

RとDは、まったく異なる活動であるのはいうまでもありません。Rは研究で拡散的思考で活動をすすめ、Dは開発で収束的な思考で、謂わば着地点を見出すというのは、よく知られるところです。

比較的大きな企業でも、Rが事実上存在せず、DがRも行っているところが少なくありません。現実的で、且つ効率的でよいという捉え方もできますが、業務が一体化してしまっているため、しばしば混乱がみられます。活動のすすめ方、技術的なアプローチや思考法自体が異なるにも関わらず、同じ担当責任者(または同じ担当者)が行っているため、結果的にどっちつかずになってしまうようです。

魔の川死の谷ダーヴィンの海は、はじめが研究と開発の谷間、次が開発と事業化の谷間、最後が事業化と産業化の谷間ですが、このブログでは、如何に魔の川と死の谷を乗り越えていくかについて、マネジメント視点で、できる限り簡潔に触れていきたいと思います。

各企業における研究や開発の大家やベテラン社員の方々というのは、本社管理職や営業サイドからみれば、(失礼ながら)とっつきにくいという印象を与える方が多く、研究は言うに及ばず、開発も象牙の塔になりがちです。実際、研究所や工場勤務が普通でしょうから、尚更コミュニケーションが疎遠になりがちで、これがそもそも最終の製品化や事業化を難しくしてしまっている一因になっているのは明白でしょう。

事業規模の拡大に伴い、組織が縦割り化していくことは多く、自部門の利益を優先させ(部門長であれば、ある意味当たり前のことかもしれません)、所謂、部分最適の寄せ集めとなり、結果的に全体最適どころか、当初企図したとおりに製品が完成せず、関係者全員が不幸なことになるといったことも起こりがちです。

どのようにすればそうならないか、または少なくとも、なりにくいか。古くて、新しいテーマでもありますが、ここは、やはり、第一には、全体の活動を俯瞰して、組織全体として、企業にとって、全体の最適化を考える

第二に、最適化検討のためには、マーケティング思考で、顧客にとってのベネフィットを明確にして、それを拠りどころにする。但し、自社ビジョンやミッションとの整合性が担保されることが前提です。ところで、マーケティング思考という言葉ですが、これはセールス/営業思考でも構わないと思いますが、製品がまだできていないという点において、マーケティング思考という表現にしています。一部、例外もありますが、およそこのような見方でいいのではないでしょうか。

ターゲットカスタマーの嗜好や行動などを読み解き、売れるものを作っていく、または売れるものにしていくのがマーケティング。この定義に従えば、製品/商品(またはサービス)ができあがっていない段階ではマーケティングになります。一方、セールスはできあがったモノを扱う、つまりセールスパーソンが具体的に担当するのは売る行為そのものということになります。マーケティングは今日よりも明日、現在の姿よりもあるべき姿や形を追い求める。営業は、来年よりも今年の売上、明日よりも今日の売上をつくる、あるべきよりも今日を、今週や今月をどうするかを具体的に考え、行動を起こす。どちらが、良いか悪いかの話ではなく、役割の違いです。

第三に、マーケティング思考を埋め込んだ業務機能と組織体を設計し、運用していくこと。その責は、事業部長や、R&D出身のトップ、またはトップに準ずる人が行うこと。

全体最適化を推進するためには、通常は上記3点に尽きるのではと思います。そんなことは分かっている、当たり前じゃないか、問題はどうするかだよという声が一部の方から聞こえてくるようです。これら3点のHowについて、次回以降のこのブログで考えていきたいと思います。



10/09/2022

組織文化 (2)文化の捉え方①

組織文化については、英国経営学の大家であるチャールズ・ハンディ、競合価値観フレームワークで有名な米国経営学者のキムS.キャメロン&ロバードE.クイン、組織文化インベントリーの研究で知られるロバートA.クーク&デニスM.ルソー、人間の基本的な価値観を体系化した学者のシャロームH.シュワルツ等、様々な考え方や捉え方があります。なお、弊社では、エドガーシャインの考え方を参考に、概念化・方法論化しています。

組織文化とは、組織における物事のすすめられ方と捉えることができます。織文化は、組織構成員の思考や行動様式に長期にわたり強く影響を及ぼし、日常業務や意思決定などに反映されていきます。

また、現象面で認知される組織文化は、リーダーの行動や企業ビジョン、評価の仕方などの要素が作用し合い形成されると考えられます。従って、組織文化を変革していく場合は、文化の形成に大きな影響を与える要素を変えることで、組織や個人に影響を与え、結果的に文化の変革を促進していくことができるようになります。

その組織文化の形成要素とは、次の6つになります。

(1)ビジョン・目的・戦略

(2)競争環境

(3)リーダーの行動

(4)組織構造

(5)社員の行動

(6)業績評価

それぞれの内容とその論点については、(本ブログ自体が長くなり過ぎるため)別途、述べることにします。

なお、組織文化全体については、1.組織文化の形成要素、2.組織文化の発現 、3.組織文化から影響を受けるもの、4. 組織文化がもたらす結果(営利企業の場合は業績)、で構成されるものとしています。

次回の本ブログ(組織文化)では、組織文化の発現から始めたいと思います。


地方創生 沿線価値の向上②

沿線価値に、サステナビリティの要素を加えることは言うまでもないでしょう。サステナビリティで最も重要なことは、各施策をアライメントさせることに尽きると、筆者は考えます。要は、会社として、また沿線として、打ち手がチグハグであれば、沿線価値を決めるお客様は混乱します。ですので、全体を俯瞰して、細部を決めていく。または、細部を決めながら、全体とのバランスをとるといったことが必要です。

また、サステナビリティに限ったことではありませんが、複数のタイプの沿線を保有する企業であれば、グループ本社が各事業会社の施策をうまくマネジメントすることが必須となります。所謂ステークホルダー(たとえば、利用客や一般消費者、投資家など)にどう映っているか、また、どう見せていきたいか、そういったことをコントールするのが本社の役割であるのは明白です。そして、このためには、各社、各取組みの現状がしっかり見えているかが、前提として必要になります。

加えていえば、投資家とのコミュニケーションツールとして位置付けられている統合報告書の作成を考えれれば、尚更、統合的な思考で、サステナビリティをとおして、沿線価値を検討することが必須といえます。

サステナビリティには、少なくとも気候変動対応と、生物多様性を外すことはできません。前者には、ネットゼロ(CO2フリー)ヘ向けた様々な打ち手、電力調達の見直しに留まることなく、オペレーションの見直しや、プロダクト/サービスの見直しが必要になってきます。

この見直しのためには、サーキュラーエコノミー(CE)の考え方を取り入れた沿線開発が有効といえるしょう。ただ、ここで気をつけたいのは、日本本来の循環型経済の営みをしっかり活かしながら、投資家向けのコミュニケーションを的確に行うことだと筆者は考えます。つまり、欧米型サーキュラーエコノミーの考え方のみに拘泥することなく、日本独自の、或いは日本がはるか以前から行ってきた循環型経済/サーキュラーエコノミーの良さを、分かりやすく、且つ明確に伝えていくことが重要になります。

生物多様性については、風力や水力といった再生可能エネルギーの活用方法も、一部再考する必要があるように思われます。沿線に、海や山などの大自然があれば、多様性と再エネのバランスを保つことが必要です。

以上のようなことから、沿線価値向上を目的としたサステナビリティについては、ガバナンスを如何に効かせるかといった、持ち株会社のリーダーシップが強く期待されているといえます。





営業力強化 (2)価値ある提案をするために①

お客様に対して価値ある提案をするためには、何をすればよいのでしょうか。

ひたすらお客様の声に耳を傾け続け、お客様の意見に振り回されている方がいます。そうかと思えば、お客様から説明を受けたにも関わらず、まったく何も聞いていなかったかのように、対応しない人がいます(説明事項が何も反映されていないこと自体が信じられませんが)。また、はじめから一方的に自社や自分の都合を言い続ける人もいます。或いは、途中までは、お客様の要望に対応できていたとしても、突然、対応不可になったりする人もいます。ほかにもいろいろあります・・・。

何故、このようなことになるのでしょうか。顧客を理解するというのは、昔からよく言われていることです。理解することを軽視している人は、そう多くはないはずです。では、何故、上記のようになるのか。それは、その人に、顧客が抱える課題や悩みなどに対する思いや気持ち、考えなどがないか、またはかなり希薄だからなのではないかと筆者は思います。要は、「自分ごと」して捉えることができないということ。

営業職を極めていくためには、顧客課題に対する仮説は前提です。課題(仮説)があって、はじめて落としどころを考えることができます。

落としどころが何か、何処かは、通常、そう簡単には分かりません。ですから、仮説を必ず持つことが必須となり、都度、自分で描いた仮説を検証していくことが必要です。検証とは、その仮説が実際に正しいか、正しければ、もっと精度の高い仮説にできないか、正しくなければ、それでは何が正しいのかを、仮説ベースで考えることになります。

それでは、お客様に聞けばいいじゃん、という方が時々おられますが、常にそれがうまく働くかというと、そうでもありません。何故ならば、お客様は意外と自分の本当の思いを分かっていないケースがあるばかりでなく、真の課題に気づいていないことが多々あるからです。

落としどころは、両者が合意する地点といえますですので、もう少しきれいな言い方に変えれば、合意形成に対する仮説をしっかり持つことが必要不可欠ということになります。

若手の営業パーソンで、これを意識せずに行っている人がいる一方で、40や50を過ぎて、十分な経験を有している人が、まったくできていない場合が珍しくありません。こういった組織では、様々な機会逸失や、リスクを内在していますので、組織の長には相当の注意力が必要となります。

一度きりの面談/商談で、両者が合意を形成できればいいですが、そういうケースは言うまでもなくそう多くはありません。ましてや、モノ/サービス提供の対価として支払われる価格が高額なもので、且つ購入/使用決定まで、相応の時間がかかるものであれば尚更です。

落としどころの仮説の精度を高めるためには、まずは、「自分ごと」として考えてみる。少し長くなってきましたので、続きは次回へまわしたいと思います。


サーキュラーなオペレーション

サーキュラーなアプローチでは、主としてサーキュラービジネス機会の検討を対象にしました。

一方、このサーキュラーなオペレーションでは、前提としておさえておくべきオペレーションについて、簡潔に記載したいと思います。

オペレーションでは、まずはサプライチェーン、特に、廃棄物管理と、使用する資源の効率性が焦点になります。

廃棄物管理では、ゆくゆくは廃棄物をゼロにしていく、そういった企業姿勢に注目が集まります。これはメーカーであっても、小売業であっても、サービス業であっても同じことです。とはいえ、完全にゼロにすることはあまりにも現実的でないと思いますので、リサイクルができないものについては、エネルギーの回収がポイントになると思われます。

廃棄物管理におけるエネルギー回収とは、ZEB(Zero Energy Building)を指します。つまり、高断熱化や電力消費量などエネルギーを省く、太陽光発電などによるエネルギーを創る、燃料電池などによるエネルギーを蓄えるといったことなどになります。

使用する資源の効率性では、資源を無駄にしないオペレーション、ひいてはビジネスモデルを追求していくことが、社会的使命を帯びてくるといえるでしょう。サプライチェーン領域では、特に、より精度の高い生産計画とこれに連動する在庫管理及び需要予測、ならびに物流(たとえば配車計画)が重視されます(ひいては、自ずと使用する原材料なども関係してきますので、ここまで来ると、前提となるオペレーションを超えていくことにはなりますが・・・)。

このようなことを、ホームページなどで、数値を用いて公開していく情報開示の姿勢も、早晩求められると思います。このような観点にたてば、一部でみられる循環型経済をうたった、耳障りの良い商品訴求(たとえば、モノを回収してモノを作るといったような商品)だけでは十分とはいえません。透明性を保持した企業全体の取組みが、社会から求められることになります。

10/05/2022

今、何をすべきか。電気料金⑥

電気料金が上がり続けています。以前のブログ(電気料金)で、電気代が売上に占める割合は、大きい場合で10%程度と記載しましたが、今であれば、さらに大きなものとなり、経営に与える影響はもはや看過できません。死活問題といっても、差し支えないでしょう。

このような状況下では、電気料金、電力調達を見直すことは必須です。とはいえ、在、大多数の電力会社が新規見積の提示に応じないため、選択肢は限られます

電力は、2016年4月に実施された小売全面自由化によって、制度が大きく変わりました。電力は発電、送配電、小売の3事業に分類され、地域電力(沖縄を除く国内9社は北から順に、北海道、東北、東京、北陸、中部、関西、中国、四国、九州)各社は、3事業を保有しています。

たとえば、関東圏の電力を担う東京電力の場合であれば、発電事業は東京電力フュエル&パワー、送配電事業は東京電力パワーグリッド、小売は東京電力エナジーパートナーになります。ちなみに、東京電力の場合は、ほかに再生可能エネルギー事業を担当する東京電力リニューアルパワーという会社もあり、これら4社を親会社である持株会社の東京電力ホールディングスが統括しています。

ところで、前回のブログ(電気料金⑤)で、最終保障供給料金が市場連動型になると記載しました。

最終保障供給とは、高圧または特別高圧で電力供給を受けている需要家が、万が一、電気の安定供給を受けられない事態が発生した場合に、当該地域における送配電事業者(関東圏では東京電力パワーグリッド社)が、電気料金標準価格の20%増で、電力を通常1年間限定で供給するという取り決めのことをいいます。

この最終保障供給で約束されている電気料金が、標準価格を上回っているのであれば、問題はないといえるのでしょが、逆転現象(つまり、標準価格のほうが最終保障供給料金よりも高くなる)が発生したため、小売電力事業者などは、従来どおりの継続取引が困難になるところが続出しました。

地域電力からであろうと、新電力からであろうと、相応の安価で電力を調達してきた需要家の多くが、今、最終保障供給料金で電気の供給を受けています。また、最終保障供給には至らずとも、契約更改時などに、電気代が大幅増になっている事業者が大半のことでしょう。一方、国挙げての脱炭素への取組みは加速することはあっても、やむことをありません。

原材料価格の高騰は未だ出口が見えず、商品代金やサービス料金に上乗せして値上げするにも限界があることは言うまでもありません。電気料金ひいては電力調達を見直すことが、今、経営の喫緊課題であり、コストが大きい品目の削減は、待ったなしの状況です。電気料金でお困りの方は、是非、お問い合わせください。info@truerisep.com

トゥルーライズパートナーの電力調達見直しサービスは、こちら


10/01/2022

組織文化 (1)競争力の源泉

組織文化こそが、他社が模倣できない、最強の企業競争力の源泉になりうると、筆者は随分前から考えるようになりました。(故に、弊社トゥルーライズパートナーは、事業設立の根幹に、組織力強化をおいています。)

どれだけ優れた戦略を策定したとしても、実行できなければ何の意味もありません。実際、今日、似たような戦略は偏在しているといっても過言ではないでしょう。

バブル経済崩壊後、企業における各組織の要員数は減らされ、一人当たりの業務負荷が高まりました。これだけが理由ではないですが、結果的に仕事の質的低下が起こってきたのは明らかでしょう。

このような状況が常態化するにつれ、そこで働く集団の実行力の高低が、企業間競争の結果を決定づけるようになり、かなりの時間が経過しました。そして今はデジタルの時代。この傾向は、ますます顕著になっています。

組織文化の大家、エドガーH.シャインは、組織文化を「ある集団がその歴史の中で環境に対して生き残り、またお互いが協力していく中で蓄積していった知識」としています。

ヘンリーミンツバーグは、「マネジャーが組織文化を強化する目的は、メンバーのコミュニティ意識を高めることにより、メンバー一人ひとりが適切な行動をとるものと期待できる状態をつくりだすこと」としています。

日本の経営学の分野では、伊丹と加護野の両教授が、組織文化とは「組織のメンバーが共有するものの考え方、見方、感じ方」と定義しています。

本ブログでは、この組織文化について、弊社の考え方や向合い方などを盛込みながら、具体的に説明していきたいと考えています。

最後に、シャインは組織文化の重要性を、次のように述べています。リーダーが行う真に重要な唯一の仕事は、文化を創造し管理すること。リーダーとしての独自の資質は、文化を操作する能力

組織文化こそ、今、あらためて我々が考えなければならない最重要なテーマといえるのではないでしょうか。



地方創生 沿線価値の向上①

地方創生に、交通機関が果たす役割は非常に大きく、特に電車はバス以上に、集客・送客含め、より広域への影響力が大きく、重要であることは言うまでもないでしょう。

地方創生には様々なテーマがありますが、上記のような理由から、まずは沿線価値について考えてみたいと思います。沿線の価値を高めるためには、何を、どのようにすればいいのか。どういった視点や切り口が適切なのか。今日の大きなテーマである脱炭素やサステナビリティについて、沿線の認知度や注目度を上げていくためのアプローチは何か、等々。

価値は、お客様が決めるものです。およそ全てのビジネスがそうであるように、沿線の価値も同様です。ただ、どういったお客様に、その価値を決めてもらいたいのか。そのためには、お客様のことをいろいろ知る必要があります。

ですが、その前に、自分たちは、どういう沿線でありたいか。そこで、どのような価値を提供していきたいのかを、事前に明らかにしておく必要があります。

自分たちが思い描く沿線の価値と、お客様が実際に認識する沿線の価値が、合致してこそ、優れた沿線、適切な価値を創出できます。本ブログ(地方創生)の沿線価値については、こういった観点で考えていきたいと思います。少し短いですが、区切りがよいため、続きは次回とさせていただきます。


営業力強化 (1)はじめに その3

業界を問わず、ソリューションビジネスへの転換が国内で叫ばれて、もう20年近く経ったのではないでしょうか。

この点において、国内外でのIBMの取組みは、今でも大いに参考になると筆者は思います。自身が在籍し、当事者でもあったわけですから、当然といえば当然なのかもわかりませんが、先んじていたのは事実でしょう。

国内で、よく知られたものに、小松製作所の事例があります。ご存知の方も多々いらっしゃるでしょうから、詳細は省きますが、要は、世界中で展開する建機をネットワークでつないで、GPSで建機1台ごとに個体認識し、メンテナンスや、遠隔操作で盗難防止などをはかる。そういったことを実現するシステム(KOMTRAX/コムトラックス)を構築し、運用したという事例です。これが、(単なる)製品の販売から、ソリューションへの転換、顧客課題を解決した、日本発の先駆的な事例で、もう20年以上も前のことになります。昨今IoTが取り上げられていますが、これなどは、時代を考えればまさに革命的といっても、差し支えないでしょう。

そして、今は同じ製造業ならブリジストンが、少し前なら金融ではメガバンクが、よくニュースに取り上げられました。

少し話が飛躍するかもしれませんが、コロナ禍で、従来のビジネスモデルが崩壊し始めている業界が少なくありません。

先の住宅・不動産業界もそうですが、化粧品業界、特に高級化粧品などが該当します。百貨店などでの店頭販売/カウンセリングが基本的にできない状態(または、相当の制約を受け続けている状態)が3年以上続いているわけですから、当然といえば当然です。特に、外資系のトップメーカーであるクリスチャンディオールやエスティローダーなどは、大変な状況下で、想像を超える努力を、営業パーソン(店頭販売員)の方々はされていらっしゃいます。ただ、経営層が見落としてはならないことのひとつに、個人個人の努力ではもはやどうしようもない状況にあるということ。

そういった企業や業界と比べて、口でどれだけ危機感を唱えていても、事実上、何も実行していないような企業(さすがに固有名詞を述べることはできませんが)は、衰退、事業縮小、場合によっては清算されてもやむをえないことですし、また、そうなるべきだろうと、筆者は思います。

組織として、営業力を強化していくためにはどうすればいいか。あまり大上段に構えすぎると、日常のささいなこと、でも非常に重要なことを見落としてしまいがちです。ですので、次回の本ブログ(営業力強化)では、まずは個人ベースでできることから、考えていきたいと思います。


営業力強化 (1)はじめに その2

随分前の話になりますが、ある大手小売業のIT部門責任者の方がこう仰られました。SI(システム導入)について「こちらから連絡をする前にすでに来ているのがNEC、連絡したら来るのが富士通、連絡しても来ないのがIBM」。ことの真偽はともなく、筆者もそのイメージ感は共有可能です。

これを持って、NECは良く、IBMが駄目というのではありません。同じサービスを提供していたとしても、会社によって、やり方、また、当該お客様企業への向き合い方は異なります。(とはいえ、昔?のNECが凄いのは事実ですが。)

ただ、問題は、各社がこれを意識して、やっているかということです。おそらく上記3社は、意図的にこれをやっていると理解しておいて問題ないと筆者は思っていますが、世の中には、何もわからず、結果的にそうなってしまっている個人や企業が、意外にもかなり多いと感じています。業界によっては、トップ企業群(リーダー企業またはリーダー的企業の一団)に属する会社であってもそうですから、かなり驚かされます。コロナ過では、それが、簡単に見えるようになってしまいました・・・。

見方を変えれば、それだけ業界や産業におけるポジショニングが重要といえなくもないですが、この変化激しい環境下では、一度築いたポジショニングがそう長く続くことはありません。

筆者は、デジタルの時代こそ、営業の時代だと思っています。営業力を強化することこそ、今、企業が取組むべき最優先課題と言いきっても差し支えないのではないでしょうか。

営業力強化は、他の取組みと異なり、かなりの時間を要します。各社各様ばかりでなく、各人各様な一方で、営業の成否こそが、企業業績の良し悪し、時には企業イメージ全体に対する実際の評判を決定づけることもあるからです。

特に、B2B企業なら、一般消費者には見えづらいですが、B2C企業、特に高額品を時間をかけて扱う住宅・不動産業界であれば、尚更でしょう。自動車や家電、IT製品であれば、同じB2Cでも、プロダクトやブランドのイメージ、広告宣伝などによって、また、販売店の優劣によって、営業力がそこまで要求されないこともしばしばあると言えるでしょうが、住宅・不動産は、なかなかそういうわけにはいきません。

また、B2Bでも、サービスを扱う業界なら、同様に、お客様企業が考えていることを瞬時に把握し、提案するものに反映させる必要があります。特に、契約形態において、請負をビジネスの中心に据えている会社が、委託や委任のビジネスを取り扱う際などには、細かい注意が必要となります。大手広告代理店が、何故、コンサルティングビジネスをうまくできないのか、原因のひとつはここにあるでしょう。どちらがいい悪いというのではなく、両者の相互理解が少なくとも前提として必要になることに、留意する必要があります。

ほかのブログでも触れたことではありますが、今までと同じやり方で異なる成果を得ようとするのは正気の沙汰ではありません。何故ならば、そんなことはできるはずがないからです。

このような状況下においても、業界や産業を問わず、現状をブレークスルーしていく力となれるのが営業職だと、筆者は思います。営業は体力勝負と心底思っておられる方が、時折、企業の上層部に今でもいらっしゃることには、失望します。ご自身の経験や、成功体験から、そう信じておられるのかもしれませんが、自社を取巻く外部環境のみならず、当然のことながら、営業パーソン自身も変わってきています。

営業の方とお話をしていて、強い愛社精神をお持ちの方に時々出会います。ご自身でいろいろ優れた取組みや試みを実践されている一方で、組織として、どのようにすればいいのか、悩まれているのがはっきり伝わってきます。そういった方々のお役に、このブログがなればとも思っています。


営業力強化 (1)はじめに その1

デジタルの時代といわれ、何処もかしこもデジタル一色の感があります。そして、今、物が売れなくなってきています。価格高騰がその要因のひとつであることは間違いありません。

言うまでもなく、営業という職務はあらゆる仕事に必要です。

筆者には、営業関連のプロジェクト経験が幾つかあります。また、仕事で、社内外の営業パーソンの方々と、行動を何回も共にしました。加えて、当然のことですが、生活のいろいろな場面で、メーカーや小売業(店頭販売員)の営業の方々と接してきています。

営業の方には、これまで驚かされることがたくさんありました。たとえば、

もう随分前のことになりますが、大手電機メーカーの方とお昼に丼ものをご一緒した際、その人は丼をほぼ1分かからずに、全て平らげました。前職では、他業界で営業をしておられ、その時は1日200社外回りしているとのこと。「信じられないでしょうが、やろうと思えばできるんです」と仰っておられました。筆者には到底できませんが、どうすればそれが実現できるのかはわかります。

ITサービスを扱う外資系勤務の営業パーソンの方の得意先(企業数)は800社。自分で工夫しないと、到底、外資系のチャレンジングな予算を毎回達成できるはずはありません。ですが、その人は、ほぼいつも達成するばかりでなく、休みもちゃんととっておられました。

大手精密機械メーカーの営業部長、若い頃は担当先のお客様企業は1社だけ。ただ、競争環境が非常に厳しい上に、決裁権を持つ責任者が研究所に常駐。毎日、長時間をかけて日参し、購入してもらうまで、そこに居座り続けたとのこと。研究所の入口を通過するだけでも、一工夫いるのは想像に難くなく、ただ、単に、そこに座り込んでいたのではないのは言うまでもありません。

こういった話はまだまだほかにもあります。筆者個人としては、こういった方々は凄い人たちだと思いますし、また、頭が下がる思いです。

ただ、このような人たちは、通常、組織の構成員においてはほんのごく一部で、大半の人には真似はできないでしょう。ではどうすればいいのか?

本ブログ(営業力強化)で、少し時間をかけながら、考えていきたいと思います。


ブランディング (4)ターゲティング ②セグメントの評価i

市場特性は、様々な要因に左右されます( ブランディング (4)ターゲティング ①セグメントの評価項目 )。 規模と成長率だけを考慮すればいいというわけでは決してありません。 大規模で右肩上がりに成長を続けるセグメントが有望であることは事実ですが、それ以外の要因が同じであることはめ...