12/06/2022

R&Dと組織横断型活動 (3)マーケティング機能③

製品/商品開発に携わった方なら、計画は予定どおりには進まないとか、問題は組織/部門間の結節点で起こることが多いといったようなことを、少なくとも一度は感じられたことでしょう。このため、プロセスなんてしっかり作ったとしても機能しないことがしばしばあるのだから、作ること自体、あまり意味がないんじゃないかというようなことを仰られる方が時々いらっしゃいます。ですが、それはまったくの誤りです。実際はその逆で、だからこそ、プロセスは要所をおさえてしっかり作ることが重要なのです。ここでは、その要所になるのが、企画、設計、製造の3品質が該当するところになります。

一方で、プロセスを作り込んだら、それを頑な守り続けようとする人がいます。律儀でいいという見方もできるかもしれませんが、世の中は動いていますし、顧客ニーズは時に大きく変化します。顧客自身もどこまで自分の嗜好をわかっているかというと、モノにもよるでしょうが、半分くらいのケースではよくわかっていないというのが実情ではないでしょうか。

製品/商品開発においては、硬直した業務の進行は避けなければなりません。プロセス遵守も、程度の問題です。このため、製品開発プロセスをダイナミックなものにするためには、チーム編成を慎重に考えなければなりません。プロセスに命を吹き込むという感じでしょうか。勿論、作り上げたプロセスがいつも完璧に機能すれば、組織についてはあまり考えなくてもいいのかもしれませんが、そんなことは、まずありえません。特に、活動の前半部分にあたる企画や開発のところなど、変更が発生しないほうがどうかしています。それでは、柔軟性に富む製品開発プロセスとは、環境変化にしなやかに反応できる体制とはどういったものなのでしょうか。

チームについてはいろいろ述べる点がありますが、ここで最も強調しておきたいことは、R&D(技術)と営業からエキスパートが参画し、且つ経営層からやり手のエグゼクティブが加入することを担保させ、いわばリレーションシップマネージャー、またはリレーションシップチャンピオンといったような役割を担ってもらうこと。この技術は最高のものだ、これなら絶対売ってやる、会社は責任をもってバックアップするといったことを、周囲の目を気にすることなく言い放ち、実際それを確実に実行する人たちが必要です。そういったイメージが、リレーションシップマネージャーやチャンピオンです。

なかでもエグゼクティブの力は本当に必要で、どれだけ現場が頑張っても、会社の支援がなければ、大きな成功につなげることは難しく、またそうでなければイノベーションを組織的に生み出すことなどありえないといえるでしょう。

あと重要な点として、メンバーのスキルと行動様式が挙げられます。メンバーが必要なスキルを持っていなければ実行などそもそも無理なことは当たり前のことですし、スキルがあったとしても、たとえばリスクばかり気にしているようでは、新しいことなどできるはずもありません。

イノベーションを継続的に創出していくことができる組織というのは、端緒は、個人単位でのスキルの磨き込みや探求心を再現なく追求していくといったような謂わば上昇志向にあるのだろうと思います。その後、そういった個々人の姿勢や取組みを仕組み化していこうとする組織文化、そして、その背景にある各人が共有している組織全体のビジョンがしっかりあることだと筆者は考えます。

日々の仕事に流され続け、新しいことにトライすることもなく、毎日同じことの繰り返しで緊張感がない、マンネリ化してしまっているよう組織からは、イノベーションが生まれないのは当たり前のことです。未だコロナ禍にある現状では、いつもと違う新しい何かに取り組もうとする人が一人でもいる組織であれば、上席の人はその芽を大事にして、組織的につながる場を提供していくことから、イノベーションに向けた第一歩が、大変ささやかではあるでしょうが、始まるのだろうと思います。

やったことがないからやるのです。わからないからやるのです。やったことがあるのであれば、予めわかっているのであれば、敢えてやる必要はないといえます。やったことがないから面白い。やったことがないから、取り組む価値があるし、意味がある。やったことがないからと言って、向き合わない、やらないというのは、実はまったく逆のことなのです。それにそもそも、今、やっていることの一番最初の時は、誰もやったことがなかった。でも、誰かがやったから、今がある。そう捉えるべきだと思います。


R&Dと組織横断型活動 (3)マーケティング機能②

3つの品質の2つめにあたる設計品質は、企画品質を技術用語で開発資料(設計図や配合/調合書など)に落し込んだ品質、所謂、狙いの品質のことで、機能や性能について書かれたものです。開発における製品仕様の設計プロセスの中に位置付けられます。

ここでは、要素技術を樹形図化して、後工程の製造品質のところで展開しやすいものにしておく必要があるでしょう。また、前工程の企画品質でいうところのものが、設計品質においてどういうものに変換されているのかを、技術の専門家以外でも、理解できるよう平易な言葉で記述すべきです。インプットには、品質情報に関するもの以外に、コンセプトテストの報告書などのような顧客の声が反映されたものがあるのが望ましいといえます。

3つめの製造品質は、出来栄えに関する品質です。設計品質を目標にした製造上の品質、製品品質を指し、製造、生産技術、生産管理、品質管理などが担当します。設計に適合できているかどうかがポイントですが、元々到底製品化が不可能な場合もあるでしょうから、問題の原因が設計品質にあるのか、製造品質にあるのかといったことを見極め、該当するプロセスにおいて行うことが必要です。

ところで、顧客が認識する満足や不満には、どういった特徴があるのでしょうか。顧客満足とは、顧客が知覚できたもの(期待の充足)から、顧客の期待を差し引いたものといえます。

該当する商品のカテゴリーが市場において成熟しているものであれば、新商品に対する顧客の期待値は高くなるのが一般的です。一方で、カテゴリーの成熟度が低いものについては、相対的に期待値もそう高いものにはならない傾向があります。このため、成熟度が高い場合は、顧客が自身の好みにぴったり合っているか否かが重要になってくるため、注意が必要です。

また、顧客満足は、顧客が支払う費用と顧客が得られる価値の合算として捉えることもできます。費用は、活動の最後に発生するのではなく、活動の進行に伴い、費用が実態として積みあがっていくものです。

このような活動の動きに従えば、顧客価値も、最終段階で突然、発生するものとして捉えるべきではありません。アイデア段階から、価値が孵化していくと考えるべきです。その後、その価値はコンセプトで形成され、活動の進行に沿って価値が伝達されていくといえるでしょう。

この考え方に基づけば、部門横断型活動が円滑に進まない場合は、価値の伝達が社内でうまくできず、結果として、社外の顧客にその価値が伝わらなくなる(または伝わりにくくなる)といえます。組織横断型の活動をこのように捉えるならば、組織やその構成員次第で、見方や向き合い方、取組み姿勢、結果を求めてやり抜く態度やスキル、能力全般が変わってきますので、はじめのメンバー編成や、誰を責任者に配置するかといったことが、非常に重要になります。


12/05/2022

R&Dと組織横断型活動 (3)マーケティング機能①

R&Dと組織横断型活動におけるマーケティング機能とは、該当する領域のプロセス(業務、意思決定/評価)組織に、マーケティングの要素である市場/顧客志向の考え方を組み込むことをいいます。

このためには、はじめに、対象範囲にある活動全体の姿をはっきりと見えるようにすることが前提として必要になります。(全体像の具体的な作成方法については、本ブログの記載する内容や範囲を超えることになりますので、ここでは見送らせていただきますが、R&Dと組織横断型活動(1)はじめに②の後半で少し触れていますので、一度ご参照ください。また、詳しくお知りになりたい方は、info@truerisep.comまでお問合せください。)

全体像が明らかになったら、その全てを同じようにマネジメントするのは、現実的ではありませんので、濃淡をつけて行うことになります。マーケティング思考を取り入れて活動を進めていくわけですから、メリハリをきかせるべきは、顧客が認識できるところ(または、顧客に認識してもらいたいところ)になります。ここでは、R&Dを起点とした活動を対象にしていますので、品質で考える品質がもたらす顧客のベネフィットで考えることが必要であり、それを明確にしていくことが非常に重要となります(R&Dと組織横断活動型活動(1)はじめに③)。

ここでの主たる対象は、3つの品質を考察するプロセス、企画、設計、製造の各品質になります。なかでも、企画品質は活動の出発点になるため、特に重要ですので、関係者全員が理解できる、イメージすることができる言葉で表現することが不可欠です。

企画品質は、コンセプト開発に該当するプロセスの中に位置付けられます。当該プロセスをどのように構成するかは、各企業や担当責任者次第のところはありますが、一般的にいえばおよそ次のようばながれの中で捉えていくべきと考えます。

はじめに市場/顧客のセグメンテーション、次にそのターゲティングと課題仮説の設定、その後、競合の把握と差別化要因の特定、そして明確な顧客ベネフィットの構築、最後は評価と商品化の方向導出となります。この差別化要因の特定とベネフィット構築のところは、行きつ戻りつしながら、顧客にとってのベネフィットを明確にしていくというイメージです。

マーケティング思考で行うわけですから、たとえば、顧客は何を好んで買うのか、技術的な特徴は何か、市場で成功する重要なR&D上の要素は何かといったようなことについて、はっきりさせて記述することが必要です。また、コンセプトを構成する要素ごとに競合商品との比較を行い、各要素別に強みと弱みを明確にすることも重要なタスクとなります。

顧客が何を好んで買うかについては、まず顧客ニーズを分解し、系統図的なものにして、視覚的に分かりやすくするのがよいでしょう。たとえば、顧客ニーズは、機能、経済、環境、情緒/心理などに分類できます。そして、それぞれを更にブレークダウンしていきます。

機能であれば、性能や効能または味覚など、信頼性、操作性や取扱いの良さ、保守性や作業の効率性などにすぐ分けられますし、それぞれをより細かく分けていくことも必要です。経済であれば、商品/サービスのタイプにもよりますが、本体価格以外に、ランニングコスト、ライフサイクルコストなどに区分できます。環境であれば、省エネ、リサイクル、CO2フリー・・・。情緒/心理であれば、快適性、社会的な信用やステータスはじめ、様々なものに分けて捉えることができますし、そもそもその快適性の特性を、種類ごとに分けるだけでも、相当のパターンが考えられます。

要は、顧客がどういったベネフィットを求めているのか。また、どのようなベネフィットを提供したいのか、当社の価値提案は何なのかを突き詰めていくことです。100%正解などというのはありませんから、初期的段階では仮説ベースで作っていくことが、何より重要です。

少し長くなってきましたので、続きは次回とさせていただきます。

12/01/2022

R&Dと組織横断型活動 (2)マーケティング思考②

後工程との共創以外に、R&Dが活動に着手する前に、その方向づけを他部門と共創することも、非常に効果的です。また、あるべき姿を追求するのであれば、むしろこちらを優先させるべきです(前回に述べた、後工程と一緒になって創り上げていくことは、付随的なものになります)。

方向づけは、R&Dとしての戦略的な意思表明と、勝ちパターンの設定で構成されます。

方向づけには、R&D部門を中心に、調達、生産、営業、マーケティングなど、製品開発とその上市に関わる部門の関係者に参画してもらい、共創できる環境の前提を整えます。必要に応じて、事業部のトップや、企業の経営陣も巻込みます。

戦略的な意思表明では、R&D部門が、研究の誇りであるシーズの具現化に関する考えを述べると共に、ポリシーとしてのあるべき姿を明示することで、関係者に対して、意識と行動の統一をはかるようにしていきます。

言い方を変えれば、責任の所在をあいまいにすることなく、方向づけの場で、戦略的な意思決定と勝ちパターンの設定以降の踏むべきプロセスを明らかにして、売れるか否かを上市前にはっきりとさせるということになります。勿論、上市前に本当に売れるかどうかを100%見極めることは不可能ですが、あいまいさを排除すると共に、万が一にも失敗した場合には、何故うまくいかなかったのかを検証できるようにする意図も含まれます。

勝ちパターンの設定では、連戦連勝できる謂わば勝ち癖のようなもの、勝利の方程式といったものを、関係者全員が理解できる言葉で表したものになります。勝ちパターンには、該当するプロダクトやビジネスのデザインを、端的に記載する必要があります。(新規事業の場合は、Reflectionsのイノベーションマネジメントにおける新規事業創出、事業デザインI事業デザインIIを参照してください。)

R&Dを起点としたデザインでは、勝つためのシーズ/技術ターゲット顧客(または市場)ターゲット顧客のニーズを満たす機能機能を実現するコアプロセス、ならびに顧客のニーズ、以上5点をセットで表記することが重要です。

このように書くと、これは大変だなと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、最初の段階でフレームワーク化や、ワークシート化しておくと、2回目以降はそれに沿って検討することで済みます。また、最初の段階では、R&D単体で行うことでも構いませんが、マーケティングや経営/事業企画部門などの協力が得られれば、意外とスムーズにいくのではないかとも思います。ここで大事なことは、100点のシートを目指すのではなく、まずやってみること。60点でもまったく問題はありませんので、とにかくまずは作成に着手し、その後改良を加えながら精度を上げていくことが大事な点になります。

但し、他部門にお任せ、或いは丸投げ的なことにはならないように。マーケティング思考の主旨は、関係者が一同に介して、より優れた商品/サービスを創出していくことですので、これには、まず議論を尽くすことが必要です。本末転倒になっては、元も子もありません。


R&Dと組織横断型活動 (2)マーケティング思考①

企業サイドからマーケティングを定義すると、マーケティングミックス(プロダクト、プライス、プレイス、プロモーションの4つのPの組合せ、通称4P)を最適化して、収益、販売量、マーケットシェアの最大化を実現するための組織的な活動全般ということができます。

ですが、今はこれだけでは十分とはいえません。ひとつ間違えれば、顧客を顧みない一方的なプロダクトアウト的な活動になりかねず、受容性の面で大きな課題を残す可能性があります。

デジタルの時代、顧客(消費者、企業)への商品/サービス提供はどのように行うのが適切か。R&D活動を的確に進めていくためには、何をすればよいのか。R&Dにとっての組織横断型活動の肝は何か。

これには、上述のマーケティングミックスの概念に、4Cの考え方を加える(または代替する)ことが、ひとつの答えになるといえるでしょう。4Cとは、Co-creation/共創、Currency/通貨、Communal activation/共同活性化、Conversation/会話、を表しています(フィリップコトラーのマーケティング4.0)。R&Dと組織横断型活動におけるマーケティング思考には、この4Cのエッセンスを取り込みます話をシンプルにするために、ここでは共創について考えてみましょう。

ここでの共創は、後工程と一緒になって創り上げることと同義として捉えます。つまり、研究は比較的早い段階から、開発を巻込んで活動を進めます。研究対象にもよりますが、基本的に研究が単体で、期日をあまり明確にすることなく活動を行うのではなく、研究体制とその期間を明示し、開発を巻込んで評価します。できれば、評価の責任者に開発の責任者も加えるのがよいでしょう。これには、少なくとも1年毎で評価するのは勿論のこと、研究テーマによっては、もう少し短い時間軸で行うべきで、製品化を見据えた研究を行う契機として捉えていきます。

開発の場合は、調達は勿論のこと、開発の初期的段階から生産と営業を巻込んで進めていきます。大事なことは、各部門がそれぞれお互いの領域まで踏み込むようにして、相手のタスクとゴールを理解すること、少なくとも理解するように努めることが必要です。量産試作の前の段階から共同で検討することが、より早く、より確実に製品化(商品化)する素地が整うはずです。

簡単なことのように見えて、異なる部門同士が共同で業務を進めることは、意外と難しい。個人ベースだとうまくいっても、利害が異なる部門同士が共創するには、議論を尽くす必要があるでしょう。どのようにすれば、縦割組織の弊害を未然に防止し、企業としてのゴールを素早く達成できるかは、後工程をケアするマインドが重要であり、独りよがりにならないようにすることが重要です。

バリューチェーンの最後(または最初)には、必ず営業またはマーケティングが控え、最終顧客の声や姿を反映させた見解を、前工程の部門と議論しながら、製品/サービスを仕上げていく。このようなことによって、マーケティング思考全体が整うことになります。


11/11/2022

組織文化 (3)文化の形成要素における論点①

前々回の本ブログ(組織文化の捉え方①)では、組織文化の形成要素には、以下の6要素があると述べました。

(1)ビジョン・目的・戦略、(2)競争環境、(3)リーダーの行動、(4)組織構造、(5)社員の行動、(6)業績評価


(1)については、ビジョン・目的・戦略等、組織のあり様を表すものとその形成のされ方が問われます。ここでの論点は、集約すれば次の3点になります。

  • あなたの組織の存在理由は何か。ビジョンに沿った行動をしているか。
  • ビジョンはわかりやすい言葉で表現されているか。組織に浸透しているか。
  • 戦略は合目的か。誰が、どのように策定しているのか。


(2)は、市場、法的規制、顧客、競合他社に対する向き合い方、組織内部における変化対応力と捉えます。論点は、

  • 外部の競争環境は激しいか。変化しているか。
  • それを受けた内部の対応力は健全か。機能しているか。

  • 顧客期待や社内の要求を満たしているか。それらに向き合っているか。


(3)は、リーダーシップのあり方、リーダーの自発的行動、リーダーとフォロワーの関係などが該当します。論点の幾つかは、次のようなものです。

  • リーダーは実行するか。状況に合せてスタイルを変えているか。
  • リーダーの発言を遮れるか。批判的な態度は受容されるか。
  • 積極的に提案する機会は設けられているか。採用されるか。


続けて記述していくと、長くなってしまいますので、続きは次回にしたいと思います。

読者の方の中にも思い当たるところがあるかもしれませんが、自由競争が事実上、制限されている業界では、某大手有名メーカーなどが謳っているビジョンと、そこで働く社員(特に正社員)の行動が、まったく真逆の場合があります。ちょっと信じがたいことではあるのですが、内弁慶と言えばいいのでしょうか・・・。そういった企業は、一見するだけではわからないかもしれませんが、衰退が進行し、いずれ市場から退出せざるをえなくなるのだろうと思います。



組織文化 (2)文化の捉え方②

組織文化の全体構成のうち、2つめの組織文化の発現については、(1)規範、(2)理念、(3)信念、(4)価値観、(5)シンボル、などに組織文化が現れると捉えることができます。

規範とは、行動や判断をするときの依って立つ基準です。

理念とは、普遍的に共通する考えや道理のことをいいます。

信念は、強い気持ちで信じる考え、目標などを達成する・できるという強い気持ちのこと。

価値観は、ものごとの良し悪し、評価のもととなる見方です。

シンボルとは、象徴的なもの、たとえば立居振る舞い、社内手続き、文書の作成方法、オフィスのレイアウト、議論の仕方などが含まれます。


3つめの組織文化から影響を受けるものについては、(1)意思決定と、(2)動き・アクションで捉えます。

ここでいう意思決定とは、容認されている意思決定スタイルのみならず、決定事項の伝達方法を含んでいます。

動き・アクションとは、決定事項に対する反応や向き合い方のことを指しています。

 

4つめの結果は、業績になりますので、触れるまでもないでしょう。

次回は、組織文化に大きな影響を当たる形成要素について、論点などを述べていきたいと思います。文化の発現と影響を受けるものに関する論点は、その後に続けます。今回は少し短いですが、これで終わりにしたいと思います。


11/07/2022

調達/購買コストの削減③ 何故、コストが削減できるのか

何故、コストが削減できるのでしょうか。
何回か取り組んだことのある方なら、ご存知かと思いますが、価格には、次のような2つの特徴があります。

  • 価格を客観的に決定する基準は存在しない。(つまり、絶対的に正しい価格は存在しないということがいえます)

  • 価格は多様な需給の要因が関係し合って決定されている。(品質、納期、量、企業体質、経営方針、取引先との力関係、販促資金の利用、固定費の回収、利益幅など)

従って、たぶん下がらないだろうというような思い込みや、一度やってみたが下がらなかったという理由は、(全社的な)コスト削減の取組みをしない理由には、まったくなりません。

そもそも、各社にとっての適正価格(もしくは、ベストプライス)え、検証したり、追求していないことは珍しくありません。

ボリューム集約による交渉力強化や、調達/購買エリアの拡大(グローバルソーシング含む)などは、これまで比較的取組みが進められてきたかもしれません。

原材料などの仕様変更は、開発を中心にメーカーであればふつうに行われてきたかと思いますが、調達/購買部門を巻込んでとなると、状況は変わってくることが多いといえ、この点において、改善や改革の余地があるでしょう。

業務や意思決定などのプロセス変更や、サプライヤーなどとの戦略的なパートナーシップを結ぶといったことを、あまり検討されてこなった企業は、是非、この機に取組まれることをお薦めします。このようなことを全て、もしくはひとつかふたつだけでも、着手するだけで、相応の成果を得られるはずです。

商談の仕方をアナログからデジタルに変える交渉力強化に向けた様々トレーニングを行うというのは、言うまでもないでしょう。交渉力強化については、別途触れたいと思います。


調達/購買コストの削減② 何故、支出が多くなるのか

何故、支出が多くなるのでしょうか。

単価が高くなる理由に、毎回同じものを習慣的に見直すことなく発注しているというのがあります。ほかにも、代替品や代替サプライヤーを知らないとか、調べないというのもあります。発注者のコスト意識が希薄というか、殆どないというのは明白ですが、意外とサプライヤーとどのようにコミュニケーションしたらいいのか、何を話せばいいのか分からないという人が結構います。これらは、全て調達/購買に直接関係する問題(または事象)です。

直接材であれば、所謂、開発購買に関係する問題、該当する原材料の特性を理解していないか理解しようとしないために、値段が上がるというのがあります。調達/購買担当者によっては、思いきって開発領域に踏み込んでいく人もいらっしゃいますが、そういう方は非常に稀だと思います。

調達/購買を除くサプライチェーンに関係する問題として、需要予測の精度が甘かったり、在庫管理の仕方に問題があるなどして、必要以上に、完成品や仕掛品、または原材料を持つ、または足りなくなるというケースがあります。

調達/購買における直接材の仕事は、ことさら開発や製造との結節点として重要な役割を担っており、最終製品価格や営業利益に大きな影響を与えるにも関わらず、意外と軽視されているのは不思議なことです。

間接材も同様です。間接コストを配賦するわけですから、支出額の大きい電力やガスなどは勿論のこと、工場で使用する各種備品も、価格の適正さについて再確認が必要です。

同じ間接材であるコピー用紙などに見られる事務用品については、総務部門が関係する場合が多いでしょうが、規格の見直し含め、あらためての確認が必要でしょう。たとえば、電子カタログで発注できているから便利、それでよしとしていて本当にいいのかどうか。企業によっては、利便性を最優先させている状況では、もはやなくなってきているのが明らかなところもあるはずです。

最後に、先日、某中堅製造業の社長が、もっとコスト削減できないのかと役員に問うたら、担当常務は一言も発しませんでした。後で尋ねたら、自分はサラリーマンだから、聞かれてもそんなことは言えないとのこと。自分が何も考えていない、知らなかったのがバレるのが怖かったのかもしれませんが、後でバレるほうがよほど、問題になると思います。上司は知っていて、見て見ぬふりをしている、試しているということは少なくなく、こういったことは現場のみならず、役員クラスでも同じことだといえるでしょう。



調達/購買コストの削減① 何故、今、コスト削減の取組みが必要なのか

モノの値段がどんどん上がっています。電気製品などは、一部メーカーのものがニュースで取り上げられはしましたが、驚嘆するほど値上がりしています。いつのものと比べるのかにもよりますが、聞くところでは、2年前と比較すると、1.5-1.8倍程度くらいにはなっているとのこと。住宅に至っては、大手ハウスメーカーがこれまでの戦略を変えなければならないほどになっているとか。食料品、日用雑貨や化粧品などは、日々のことですので、言うまでもないでしょう。

周知のとおり、原材料価格の高騰というのが主な理由ですが、全ての製品やサービスが、実際そのとおりなのかというと、少々疑問が残りますし、便乗値上げが行われているのは、一部ではあるにせよ事実です。ですが、それよりも、ここで問題にしたいのは、本当にサプライヤーと交渉しているのかということについてです。

サプライヤーも苦しいので、何でも交渉できるというのでは勿論ありませんが、同一製品で、大幅に値上げされているにも関わらず、製造業や小売業によって、その同一製品の割引幅が大きく異なるものがあります(販促金などでは説明がつきません)。さすがに、ここで具体的に社名や製品名を記載することはできませんが、そういう会社が一定数存在しています。

いろいろな理由があるのは、十分想像できます。その中のひとつに、うちは大手じゃないから(または、大手だからそう簡単にはできない)というのがあります。大手じゃないケースでいえば、所謂(広義の)部品メーカーで、この機に大手の完成品メーカーとつきあいたいと思っているようなところです。

おかしなことに、最近は一般消費者でさえ、モノによってはウェブ検索すれば、ある程度は適正的な価格がすぐにわかるようになっているにも関わらず、そういった理由を平然と口にするのは、驚き以外の何物でもありません。

せっかく大きな事業成長の機会、業界における位置づけや序列?などを変えられるかもしれないのに、そういった発想は一切せず、他社とまったく同じの横並びの姿勢で、日々ものごとを処理しています。相対的に言えば、大手完成品メーカーほど、実は価格に対してシビアであるにも関わらず、それさえ知ろうともしていないところが少なくない・・・。

また、削減できたコストを、次の成長投資の原資に充てるということも、可能です。ですが、大変残念なことに、有名メーカーや大手小売業であっても、近年、あまり成長していない企業には、このような考えは存在しないことが多いようです。デジタル投資にお金がかかるからといって、組織的なコスト削減の取組みや努力は殆どせず、むしろ何もしないか、或いは、非常識極まりない言い回しで、言いやすい相手/サプライヤーにだけ言うわけですから、不良品や粗悪品が、混じるのはやむをえないのかもしれません(決して、あってはならないことではあるのですが)。

こういった時期だからこそ、全社を挙げて、戦略的にコスト削減の取組みを行う。先に取り組んだ企業が、集団から一歩早く抜け出せるのは間違いありません。過去に一度やったから、もういいやではなく、時期を見て、再度取り組むのが当たり前であり、今まさに、そのタイミングであると筆者は思います。また、組織的且つ戦略的に行うわけですから、退室時にはとにかくこまめに電気を消すとか、少々寒くても(暑くても)エアコンのスイッチは入れないという類いのものではないことは言うまでもありません。


11/01/2022

営業力強化 (2)価値ある提案をするために⑨

繰り返しとなりますが、価値ある提案をするためには、顧客課題に対する仮説を持つことが前提で、この課題仮説が落としどころの検討につながりますこの一連の動きを的確に行うためには、スキルも勿論重要ですが、まずは、自分ごととして考える。そして、この考える行為をルーチン化していくことが必要です。

そのためには仮説が非常に重要となりますが、仮説はどうすればうまく作れるのでしょうか。私たちは、日々の生活では、無意識のうちに、仮説をもって行動しています。たとえば、厳冬になりそうであれば、前もって厚手の服を早めに出したり、乾燥がひどくなりそうであれば、今年は大きめの加湿器の購入を検討しようとか、体を温める鍋メニューを増やそうとか、そういったことを考え、備えることが多いはずです。

ビジネスも同様です。ある時点で、可能性が高いと考えられるものを仮説として位置づけ、いったんは結論づける見た目の現象や会話した時点で、何が言えるのか(⇒仮説)。データからどういったことが導き出せるのか(同左)。こういったことを短時間のうちに、意識して繰り返す。仮説を作ったり、壊したりしながら、検証していく。そういった仮説ベースの思考方法が、価値ある提案を行うためには必要です。

ここでいう価値提案の価値については、両者(顧客と自分)で創造していくという姿勢が重要です。どちらか一方の要求が他方の譲歩になるような関係、ゼロサム的な関係というのでは、関係性は長く続きません。価値を分配するのではなく、価値を創造していき、両者のパイを大きくするといった向き合い方が必要です。逆に言えば、一方的なことばかり、自分のことだけを要求する顧客と接することになれば、さっさと見切りをつけて、別の顧客と会う時間に充てたほうがいいということになります。

価値を創造していくためには、相手との論点を増やしていくことがポイントになります。論点がひとつだけとか、少なすぎる場合は、双方で創造していくことが難しくなるからで、創造できる余地をできる限り多く作っていけるようにすることが重要です。

たとえば、価格や利益、または契約の内容や期間などに関係する経済的価値、モノ本来の働きを表す機能的な価値品質を維持したり納期を厳守するといったような謂わば安定的な価値、双方の協力機会を継続的に創出していくような協調的価値といったような、いろいろな価値が考えられます顧客が何を最も重視するのか、予め価値を洗い出しておいて、仮説を立てていく。商談をとおして検証し、仮説の精度を上げながら、双方にとって最良の合意形成がはかれるようにすることが、営業としての面白さであり、また、難しい点でもあると思います。


営業力強化 (2)価値ある提案をするために⑧

B2Bの広告代理店や、B2Cの注文住宅を扱うハウスメーカーなどとは異なり、店頭販売の小売業は、不特定多数の客を、その場で(基本的に)短時間のうちに、対象にします。扱う商品にそれほど難しいものがあるわけではないと思いますが、種類が非常に多くなるのが特徴的です。百貨店を例に挙げてみましょう。

いきなりで恐縮ですが、何故、百貨店がここまで低落してしまったのか。少々ストレートな物言いで恐縮ですが、主な理由のひとつに、あまりにも百貨店の営業(店頭販売の現場にいる百貨店の社員)が、思考することなく、店頭に立っている(もしくは、店頭にさえ立たない)からだと筆者は思います。そうでない方もいらっしゃるでしょうが、基本的には大半の百貨店の社員が、考えなく、店頭にいるからだといえます(取引先の社員の方々の多くは違うと思いますが)。

店頭で何かを尋ねても(たとえば店内に入っているメーカーの場所とか、扱い商品のようなことでも)、素早く答えられないことが多い。店によっては、社員をまったく見かけないか、ひどい店だと社員が肩で風を切って歩き、お客が避けているなんてこともある始末です。さすがに東京の日本橋の百貨店では、お客を睨みつけたり、品定め的なことをしている社員はいないようですが・・・。

価値ある提案をするために、食品売場などは格好の場所といえます。来店客が衣料品売場などと違って多数いるわけですから、お客を見て、様々な疑問を自分に投げかけることができるからです。たとえば、何故、あの客は他店の食品の袋を持って、当店に来ているのだろうか。何故、あの客は、あそこの売場でしかめ面をして、商品を眺めているのか。何故、あの客は、あそこの売場で店員と笑顔で話をしているのか。何故、あの客はあんなに急ぎ足で売場から去ろうとしているのか、何故、あの商品は買って、これは買わないんだろうか、等々。

全て、理由があるのです。仮説をもって考える必要があります。たとえば、他店の袋を持って来店している客であれば、他店にはない品揃えが当店にあると考えるのが自然ですが、要はそれが何で、何故そうなっているのかを考えることが重要です。通常、袋の中身まで読み取ることはできませんが、想像していくことは十分可能でしょう。

具体的に書くのは少々差し障りがあるため控えますが、日々、店頭は仮説検証の場であり、アイデア(接客改善、商品改廃、売場変更等)の宝庫です。

改革や変革レベルとはいかなくても、改善レベルだと、毎日できます。1日、10人のお客様に対して、疑問を抱き、仮説を立てて考えてみる。これをルーチン化して店頭に立つと立たないでは、1年後、少なくも3年後には、それをしない社員との差は、大きなものになるのは間違いありません。

店頭では、お客だけが知っていて、百貨店の社員が知らないことが多すぎます。極端なことを言うつもりはないですが、少なくとも次のようなことは防げるのではないでしょうか。たとえば、まったく同じ商品(たとえば京野菜の青ネギで生産者は同じ)でも、目と鼻の先にある2つの百貨店で、3倍ほどの価格差(いずれも通常の販売価格!)があれば、誰も高いほうの店では買わないでしょう。そればかりか、その青果売場、ひいてはそういった生鮮の売場には、お客は二度と近寄らないことにならないとも限りません。

百貨店が商品を買い取らないから、百貨店は衰退していくなどといった説は、明らかに誤りだと筆者は思います。場所貸しでもいいのであって、要はお客様をまったく見ていない応対、正確に言えば、お客様の行動を注視しない、思考することなく応対することが衰退を招いているのであって、これではコミュニケーション以前の問題といえます。スキル習得には、かなりの長い時間がかかります。ただ、ここまで来ると、できた暁には、残念ですが多くの百貨店がなくなっているのではないかと思ってしまいますし、また、そう思うのは筆者だけではないと思われます。


営業力強化 (2)価値ある提案をするために⑦

商談の場で、会話を途切れさせないための短い会話のショートトークには、「傾聴と問いかけ」と「常套句」の2つがあります(ショートトークというのは、弊社が使用している名称です。一般的にショートトークと呼ばれるものがこのようになっているわけではありません)。

傾聴と問いかけは、5つのステップで構成します(①から始め、②、③と順に進めます)。

①切り返し、②ショートクエスチョン、③課題/ニーズの確認、④解決法の提示、⑤効果の訴求/見極め

①は、たとえば「〇〇ということですね「、とか「つまり△△ということですね」、または「それは××ということでしょうか」というように、相手の発言に対して、その場ですぐに反応し確認することを、切り返しと呼びます。

商談や会話に主体的に入り込んでいたら、自然にでるリアクションといえますが、他人ごととして聞いていたり、そもそも話を理解できなければ、このようなリアクションにはならず、意識して、切り返すことが必要になります。切り返しにより、確認モレが防げるばかりでなく、相手が自分の話をちゃんと聞いてくれているなという安心感にもつながり、話をポジティブにすすめられるようになります。

②は、「少しお尋ねしてもよろしいでしょうか」、「購入するにあたり、重視されていることは何ですか」、「〇〇はどなたがされるのですか」と、短いフレーズで端的に質問します。

③は、ショートクエスチョンを繰り返すことで、最も重視すべき課題/ニーズを確認することにつなげます。所謂、QCD(Quality, Cost, Delivery)や、QFD(Quality, Function, Deployment)などで、見極めるのが良いでしょう。できる限り、モレなく、ダブリなく絞り込んでいきます。

④は、③の具体的な落としどころになります。もし、具体的なものを提示できそうにない場合は、「それでは、どのようにすればよいでしょうか」とか、「何かよい解決策はないですか」などといって、相手/顧客に直接尋ねてみるのが良いと思います。思わぬ解決策を、相手が提示してくれる場合があります。また、相手が自分でも提示できないとわかれば、求めてくるのを変える(たとえば要望を一段階下げたり、それ以上、無茶なことを言わなくなるなど)ことにもつなげやすくなります。

最後の⑤については、④を選択したことによって顧客が得られるベネフィットや、実現できるであろうゴールなどについて訴求したり、見極め、確認を行います。

常套句とは、ある場面に来たら、定型的な言い回しを使うことをいいます。相手との関係性(たとえば一般消費者か、法人顧客など)にもよりますが、常套句の使い道は、以下のような4つに分けることができます。

 (a)論点を外すことなく、好意的な態度で接する場合

 (b)解決の道筋のあたりをつけたり、意思決定の基準を直接尋ねる場合

 (c)単純化することで、ものごとを理解しやすくする場合

 (d)基本に立ち返り、理詰めで攻めていく場合

たとえば、一例として、(a)は「こういう解決策は考えられませんか」とか「〇〇について、何か方法はありますか」などがあります。(b)は「それでは、判断の基準は何かを教えて下さい」。(c)は「〇〇と△△では、どちらが良い(または大きい、長いなど)でしょうか」。(d)は、たとえば「ビジネスの原理原則に従って、お客様の問題を解決したいと考えています」などが挙げられます。


営業力強化 (2)価値ある提案をするために⑥

ハウスメーカーの注文住宅ほど、コミュニケーション力が問われる営業はそうないのではないでしょうか。同じ戸建てでも、建売と注文では全く違います。注文住宅はまさにその名のとおり、顧客が注文する住宅ですので、基本的にフルカスタマイズです。通常、商談は1年程度かけて行われることが多く、この間、営業が顧客を理解することは当然といえるでしょうが、顧客も営業の癖や考え方を理解することが暗に求められるといえます。というのも、少し考えてみればすぐにわかることですが、注文住宅づくりは、顧客と営業の一種の共同作業のようなものですので、双方の理解が深まらなければ、両者が納得できる家は完成しないといえるからです。

また、担当営業は、社内の設計や開発、生産、インテリアコーディネーター、外部の住宅設備機器メーカーや金融機関などとも連携する必要があります。全てを細かく決めていかなければならず、仕事量は相当なものになります。コミュニケーションだけでできるわけでは当然ありませんが、コミュニケーション力、そのマネジメントができなければ、仕事が進まないことは明白です。

先の顧客との共同作業ですが、残念ながら、うまくいくケースはさほど多くないようです。というのも、(客の勝手な振舞いはここで除くとして)担当営業は家に関する知識は勿論のこと、顧客の要望に向き合い、そのニーズを満たしていく、ある意味底なしともいえる処理能力のようなものを、備えておかなければなりません。顧客ニーズは多様化し、技術革新や、社会上の要請などもあって、製品(製品そのものである家、部材、サービス等)は進化し続けています。

ですが、そのような進化に対応し続けられる能力を持っている営業など、そう多くはありません(もしかすると、統計上エラーか、それに近い割合かもしれません)。このため、会社の教育もさることながら、自身で絶えず努力し続けなければならず、そこにはかなりの忍耐力も必要となります。

営業にとって、おそらく最もハードルが高いことは、顧客の気持ちや望み、考えなどを理解しつつ、いろいろな制約条件(たとえば顧客が用意できる購入予算)をおさえて、具体的な家にして提示することでしょう。考えればすぐにわかることですが、顧客のほうが、その方面(自分自身が望む理想的な暮らしや住まいなど)については長けています。ましてや、顧客が資産家で、海外暮らしも長く、国内外から時々、知人を招待しパーティを催すなどともなれば、ふつうそのようなことに即、対応できる日本人はそう多くはいないでしょう。ましてや、ハウスメーカーの担当営業は、通常、会社勤めですから、そのような志向や態度などをはじめからちゃんと理解しろというほうが、無茶なことです。

それでも、顧客に向き合い、注文住宅を完成させていかなければならないわけですから、それはもうかなり凄いことだといえます。それでは、何故、それができるのかというと、不断の努力やスキル、センスといったこともありますが、何はともあれ担当営業が顧客のことを自分ごととして捉え、考えていくことができるからということに尽きると筆者は思います。頭がいいとか、そういうことではなく、家づくりに対する情熱と、あと強いていえば使命感のようなものでしょうか。

どのハウスメーカーも、個人の努力に大きく依存しているのが実情のようです。ただ、属人的な取り組みだけでは、いずれ注文住宅は殆ど姿を消すことにもなりかねませんから、メーカーサイドとしてはどうにかしなければいけません。

ではどうすればいいのか。対顧客の観点では、AIやアナリティクスで解を導き出すというのは、建売住宅なら実現可能ですが、注文住宅の場合はそう簡単にはいかず、下手をすれば顧客の怒りを買うだけとなります。現時点での筆者のお薦めは、ショートトークと、過去事例などからFAQを細かく作り、チェックシートで備えを十分にすること。あと、適度なスピード感も要求されますから、契約や書類送付等に伴う営業事務のしっかりした専門家を養成し、プロセスを標準化・共通化して、インハウスでシェアードサービス化すること。加えていえば、商談シナリオのようなものを作っておき、幾つかのパターンに対応できるようにしておくことだと思います。

あと、広告代理店同様に、少なくともプロジェクトマネジメントに関するスキルが必要です。少し長くなってきましたので、ショートトーク(商談の場で、会話を途切れさせないための短い会話)などについては、次回以降に触れたいと思います。



10/25/2022

営業力強化 (2)価値ある提案をするために⑤

強制的に改めさせるには、業績評価の中身を変えていきながら、雇用形態の見直し、就業規則を変更していくことが必要になると思います。幸いなことに、日本の人事制度が、職能から職務へ、ジョブ制度へと、ながれが変わりつつあります。

この点においては、筆者の考えはかなりラディカルなほうですので、あまりご参考にはならないかと思いますが、役職定年制の大幅な引き下げや、雇用のあり方(正社員、契約社員、転勤や残業の有無、真のプロフェッショナル制度の導入など)を、入社後10年以内くらいにいったん見直すといったものが良いと個人的には思っています。

ただ、大多数の会社では、なかなかそういうわけにもいかないでしょうから、結局は教育研修を繰り返し行っていくことになるといえるでしょう。ただ、やりっぱなしでは、頑張る人とそうでない人にはっきり分かれてしまいますので、eラーニング含め、履修すべき必修科目を目的に応じて設定し、合格点をとるまで、毎月毎月テストを行い、その過程は透明性を保つようにする。たとえば、結果は全て公開、ガラス張りにするなど、思いきったやり方が(一時的にせよ)必要になると思います。(ただ、頑張る人はふだんから頑張っているため、会社による半ば強制的な研修は不要かもしれませんが・・・)

その研修ですが、(繰り返しとなりますが)最も重要なものは、やはりコミュニケーション関連のものに行き着きます。というのも、そもそも社内のコミュニケーションさえ、難しくなってきている企業が多いなかで、クライアント/顧客に対して、的確なコミュニケーションなど、できるはずがないからで、交渉力以前の状況といわざるをえない会社も少なくありません。

また、商談にのぞむにあたり、チェックシートを作って、事前に必ず確認し、結果は事後に自身と上司で評価する、そういったことなども併せてすべきでしょう。

そこまではとてもとてもという営業の責任者や担当の方もいらっしゃるはずです。そういう場合は、当該企業における営業パーソンのタスクを全て洗いだし、顧客への直接対応(面談)以外のところ、たとえば営業事務などを、社内か社外かはともかく、他者に委託できるようにすべきです。狙いは、当然のことながら顧客対応時間を増大させること。そのために現状の業務負荷をできる限り軽減することです。事業規模が大きければ、十分可能です(適切に機能しているかどうかはともかく、実際、そのようにしている会社は少なくありません)。

仕事のやり方、業務のすすめ方については、営業パーソンによって違いがあるでしょうが、できる限り標準的なプロセスや型を作る。また、そのパターンは極力ひとつにすることが、最終的には成果を得やすく、且つ過程を測定しやすいといえます。ただ、会社や営業パーソンによって、合う合わない(もしくは、どれだけ頑張ってもできるできない)というのがありますので、組織文化などを考えながら、適用させていくことが重要です。

外資系のコンサルティング会社の提案で、比較的よくあるのは、ハイパフォーマンスな人材の行動様式を分析し、それに寄せていくというのがありますが、やり方を間違えたら、かなり危険(悲惨?)なことになりますので、慎重に検討することが必要です。


10/24/2022

営業力強化 (2)価値ある提案をするために④

広告代理店が、今以上に、価値ある提案をするためには、どうすればいいのでしょうか。シンプルに考えれば、コミュニケーションマネジメントと、プロジェクトマネジメントを、まずは、営業パーソン各人がしっかり自分のものにすることだといえます。

但し、前者のコミュニケーションマネジメントについては、テクニック的なことも重要ですが、何より、クライアントの話をしっかり聞くこと。素直な気持ち謙虚な態度で、顧客と向き合うことから始める必要があります(勿論、全ての営業パーソンがこうしなければいけないというわけではありませんが、少々、わがままな人が多いと思いますので、あえてこのように書いています)。とにかく、自分の考えは、いったん胸の内に秘めておくこと。

その上で、顧客課題に対する仮説を、自分の頭で考えていくという二段構え的なものが必要だと思います。

話は少しそれますが、聞く話す読む書くのなかで、一番難しいのが、聞くこと。その次が、話すことだと筆者は思います。読んだり、書いたりするのは、意外とそう難しくない。何故なら、基本的に自分自身で、その行為が完結するからです。聞いたり、話したりするのは、相手が存在するため、そう簡単ではない。

いずれにせよ、まずはしっかり相手/クライアントの話を聞くこと。これができるかどうかが、最初の関門になります。とはいえ、相手が会ってくれなかったらどうするか。その時は、相手が欲している情報を考えて、それを提供していく。仮に、それが自社で提供できるものではなかったとしても、まずは提供できるようにすることを考えてみるべきしょう。とにかく、相手のことがわかるようになるまで、考え続けることが必要です。はじめのうちは、間違えることも多々あるでしょうが、続けていくことが重要です。

そして、自身で各商談の場に対して、起承転結のイメージを描いてみることが必要になります。自分(自社)の狙いや思惑と、相手/クライアントの状況や理解などについて、イメージしていく、それを膨らませていく、改良を加えていくといったことを商談前の時点ですべきでしょう。商談は1回限りではないでしょうから、都度、行うことが必要になります。

なお、後者のプロジェクトマネジメントについては、紙数の関係もありますので、この場では行わず、別の機会にしたいと思います。

旧来の領域で実績をあげてきた営業パーソンほど、コミュニケーションについては、大きな壁が立ちはだかるのではないでしょうか。時には、ロールプレイングも取り入れて、教育を繰り返し行っていくのが、最終的な近道になるだろうと思います。ただ、時間はそう長く待ってくれませんので、何はともあれ、少し乱暴な言い方になりますが、強制的に行動様式を改めさせることが必要になる場合が少なくありません。大ナタを振るうというのであれば、ここから全てが始まるのだろうと思います。続きは、次回とさせていただきます。


営業力強化 (2)価値ある提案をするために③

ここまでの「営業力強化」の「価値ある提案をするために」では、顧客課題に対する仮説を持つことは前提で、課題(仮説)があって、はじめて落としどころ(相手と自分の間での合意形成)を考えることができる。そのためには、まずは、顧客の課題や現状について、自分ごととして考える。それを癖づける、ルーチン化することだと述べました。

ただ、営業といっても、業種、業界によって様々ですので、ここでは、広告代理店(B2B営業)、ハウスメーカー(B2C営業)、対面販売の小売業(店頭販売のB2C営業)で、ひとまず考えてみたいと思います。

広告代理店は、これまでの収益源であったテレビCMや、イベント企画・集客が、主なものでした。ですが、デジタル化の進展と、コロナ禍での在宅時間の増大などから、近年、相対的にいえば、業績が厳しい状況になっています。大手の電通や博報堂などは、10年以上前から、広告宣伝、ブランディング、販促に加え、デジタルマーケティングやアナリティクスなどを活用した広義のビジネスコンサルティング領域へと、業容を広げています。ただ、大手や準大手、総合系やハウスエージェンシー、ネット系など各社を十羽一絡げに捉えることはできませんが、総じて、当初のプランどおりに、業績が伸びていないところが多いのではないでしょうか。

何故、そうなるのか。理由は幾つか考えられますが、従来の広告宣伝領域などは除き、顧客のビジネス課題を、クライアントの立場で考えることができない(または、できなくなってしまっている)から、クライアントにとっての有用性や実効性などを顧みることなく(同様に、自社にとっての再現可能性を考慮することもなく)、提案・実行しているから、というのが大きな理由ではないかと思います(電通や博報堂がそうだと言っているのではありません。あくまでも相対的にいえば、このようなことが言えるのではと書いていますので、誤解されないようにお願いいたします)。

そもそも広告代理店の営業には、メディア、プランナー、クリエイティブ等の各担当とのプロジェクトマネジメント、チームマネジメント、コミュニケーションマネジメントといったスキルが求められます。ただ、現状は、およそ不十分であるばかりでなく、会社としての教育・育成計画も殆どない。感性が強く求められるようで、実はロジカルなものが非常に要求されている。このため、この2つのバランスをどうとるか。そして、営業パーソン各人にとってキャリアアップをいかにはかっていくかが、会社個人双方にとって、重要な課題になっていると考えます。

なんでも、まずは自分でやらなければいけない。そういったことがどんどん増えて、時間に追われていく。上述のような問題が根底にあるため、自ら考えて、主体的にクライアントに働きかけていくことが難しくなり、結果的に御用聞き化してしまう。或いは、左脳と右脳をうまく組み合わせて顧客課題に向き合うのではなく、勢い、感性的なものに強く依存してしまう。こういったことが多いのではないかと思われます。また、これとは別に?顧客課題のことなど、見向きもしない担当営業も少なからず存在し(理由はともかくとして)、自分のことだけしか考えないようになっていく・・・。

このような環境下では、価値ある提案をすることは、ほぼ不可能といえるのではないでしょうか。少し長くなってきましたので、続きは次回とさせていただきます。


10/20/2022

営業力強化 (2)価値ある提案をするために②

自分ごと」として考えるためには、どのようにすればいいのでしょうか。

絶対的な正解があるわけではありませんが、少なくとも、自分ならどうするか、自分がお客様の立場であればどのように考えるのか。そういったことを、常日頃から考えるようにする、いつも思い描く、想像する。いつも、そのような癖づけ、半ば訓練(のようなもの)をし続けるということに尽きるのではないかと思います。

そうすることで、はじめはできなくても、徐々にできるようになり、いずれ意識せずとも、自然にできるようになると筆者は思います。これは、自身がそうだったからです。事業会社時代、大手経営コンサルティング会社在籍時代、いずれもそうでした。

自分自身が興味あることであれば、まだ比較的簡単なはずです。故に、仕事が好きであれば、身につきやすい(というか、自然と身につくことが多い)でしょう。ところが、自分の好きなことを仕事にしている人は、そう多くはいないはずです。となると、どうすればいいか。筆者の結論は、上記のように「癖づける」ということになりました。今だから、言えるようにも思いますが、はじめの事業会社時代は、元々自身が希望していた業界ではなかったため、癖づけるように至るまでは、正直、少々苦痛ではありました・・・。

癖づけるという表現では、あまりコンサルタントらしくないため、言葉を変えると、「ルーチン化する」ということになります。

対象顧客(=お客様企業、一般消費者)の課題と、相手先担当者の課題感について、訪問前、商談前、或いは電話やメールで連絡を入れる前に、要は、何らかの行為をする前に、少し考えてから、行動を起こすということです。

そんなことは当たり前だと言われる方も多々いらっしゃるだろうと思いますが、要は、考える広さと深さをどこまで行うか、また、それを瞬時にできるかということが重要です。B2B系の営業担当の方であれば、まだやりやすいかと思いますが、B2C系となると、パターンがいろいろ増えるため、大変だろうと思います。筆者のイメージでは、最初の段階は、B2Bは深さが必要で、B2Cは広さが重要だと感じています。

少し長くなりそうですので、今回はここで終わりにし、次回は、B2B、B2Cの営業で、もう少し具体的に考えていきたいと思います。


10/19/2022

R&Dと組織横断型活動 (1)はじめに③

2点目の顧客ベネフィットの明確化については、Dアーカーの3つのベネフィット(機能的、情緒的、自己表現)に沿って、考えることが有用です。

機能的ベネフィットとは、商品が有する一次機能的価値のことを指し、食でいえば所謂五感に関係するものや安全安心、簡便性や価格などが該当します。情緒的ベネフィットは、商品を使用することで得られる感情や感覚などの心理的満足感を与える価値のことをいい、気分転換や幸福感の演出、愛情表現などがあてはまります。自己表現ベネフィットは、商品を使用することで表現したい自分の価値観、人から見られたいと思う姿などを表します。

R&Dの場合、機能的ベネフィットとなる技術の中身/用途について、まずは社内で検討し明確にします。ただ、技術に関することですから、通常、顧客には翻訳をして伝達する必要があり、これが情緒的ベネフィットになると捉えるのが良いと思います。つまり、顧客には情緒面での便益、必要に応じて自己表現面での便益も添えて説明していくことになります。また、敢えていえば、機能的ベネフィットは、一歩間違えれば、自社の技術だけを提供する、謂わば下請けに甘んじることにもなりかねず、この点は注意が必要です。

たとえば、分かりやすい例として、秋から冬にかけて出荷されるぶどうで考えてみましょう。ぶどうを絞った天然100%のグレープジュースは、飲みやすく(体に吸収しやすい)、カリウムを多く含んでいるため、高血圧予防によいとされています。ナトリウムを排出して、体内の塩分を調整することから、血圧を安定させるためですが、ほかにも、ポリフェノールを含んでいるため抗酸化作用(アンチエイジング)も期待されているのはよく知られているところです。また、ポリフェノール成分の一種であるアントシアニンも含んでいることから、最近ではスマホ疲れなど、眼精疲労の回復にも役立つことなどから、シニアから若者まで、幅広い人気を誇っています。

グレープカラーのところが、機能的ベネフィットに該当しますが、これを情緒的ベネフィットに変換すると、もっと健康的で、若々しい自分になれるというような表現ができると思います。これを自己表現ベネフィットに押し上げると、人それぞれかとは思いますが、自分らしくいられるとか、自分の理想に近づけるといった言い回しになるのではないでしょうか。仕事にたとえれば、幾つになっても、フットワークよく、効率的で、スマートなビジネスパーソンになれるなどといえるのかもしれません。

これら3つのベネフィットが、どの業務機能で検討され、形作られていくのかは、先述の機能全体一覧次第ではありますが、およそコンセプト開発における品質コンセプトの確認や企画品質、設計品質のところといえるでしょう。この企画品質を設計や適合の品質に、うまく落し込んでいくところが、R&Dの腕の見せどころになります。

いずれにせよ、R&Dにおいて、マーケティング思考で顧客ベネフィットを明確化していく以上は、顧客の立場で考え、且つ顧客に伝わらなければ意味がありません。そのためには、機能的ベネフィットから、情緒的さらには自己表現ベネフィットへと、意味を変換させていくことが必要です。こういったマーケティング思考を組込んだ業務機能と組織体の構築については、次回以降の本ブログで簡潔に述べていきたいと思います。


R&Dと組織横断型活動 (1)はじめに②

前回のブログで、以下3つのHowについて考えていくと述べました。

  • 全体最適に向けた活動の全体俯瞰
  • マーケティング思考による顧客ベネフィットの明確化
  • マーケティング思考を組込んだ業務機能と組織体の構築(マーケティング機能と部門横断型組織の構築)

マネジメント視点で、上記3点を考える際、最も重要なことは、何はともあれ、まずは、およそだいたいこうなっているという概観を掴んでおくことです。ところが、現実は、まったく知らないとか、やたら精緻に理解しようとされる方が、意外と多い・・・。

まったく知らないというのは、マネジメントで如何なものかとなりますし、精緻にというのはおよそ現実的ではないでしょう。営業出身の経営者の方であれば、やたら営業のやり方に口を出したり、自分のやり方や実績などと比較してとやかく言うにも関わらず、それ以外の領域については、殆どといっていいくらい口を挟まないか、もしくは、分からないから、何処までも細かいことまで報告を上げさせる、または自分の考え?などを押しとおしたり、押しつけようとする、等々。

当事者や関係者以外には見えづらいですが、世襲や権力闘争などが絡むなどして、問題視?(注目?)されている経営者のいる会社ほど、意外?と現場の方々は、的確に、しかも対外的な対応をしっかりされている場合が少なくないと感じます(だから、会社がもっているのでしょうが・・・)。こういうケースでは、大変残念なことに、経営はあまりにも事業の実像や、現場をご存知ないことが多い。

マネジメントは、現場の実態や、業務がどのような機能やタスクで構成されているかといったことを理解しておくことは非常に重要で、的確な意思決定云々の前に、管理や執行の前提として、事業活動の全体を俯瞰して、自社の強みや特徴、課題を、ハイレベル(ざっくりとしたレベル、概要レベルや要点など)で掴んでおく必要があります。

では、どのようにすれば把握できるのか。これをこのブログの場でわかりやすく述べていくことは、少々無理があるのですが、極力シンプルに記載すると次のようになります。

まず、バリューチェーンの主だった機能を列挙します。たとえば、商品企画、研究開発、調達、生産、物流、営業、あと経営支援(経営企画、総務人事、財務会計、法務、広報など)として、それぞれ(商品企画、研究開発など)をレベル1とします。次に、各レベル1を1段階ブレークダウンして、各機能(レベル2)を抽出します。この際、視覚的に分かりやすくなるように工夫して一覧化します。この一覧化は、紙1枚、それもできる限りA4サイズで1枚に収まるようなかたちで一覧化します。

そして、この1枚を持って、マネジメント層や部長クラス、または現場などが、現状や問題点などを議論し、その1枚の中身を詰めていく。各機能(レベル1と2)の特徴や傾向をあぶりだしていきます。

少し長くなってきましたので、続きは次回とさせていただきます。


R&Dと組織横断型活動 (1)はじめに①

RとDは、まったく異なる活動であるのはいうまでもありません。Rは研究で拡散的思考で活動をすすめ、Dは開発で収束的な思考で、謂わば着地点を見出すというのは、よく知られるところです。

比較的大きな企業でも、Rが事実上存在せず、DがRも行っているところが少なくありません。現実的で、且つ効率的でよいという捉え方もできますが、業務が一体化してしまっているため、しばしば混乱がみられます。活動のすすめ方、技術的なアプローチや思考法自体が異なるにも関わらず、同じ担当責任者(または同じ担当者)が行っているため、結果的にどっちつかずになってしまうようです。

魔の川死の谷ダーヴィンの海は、はじめが研究と開発の谷間、次が開発と事業化の谷間、最後が事業化と産業化の谷間ですが、このブログでは、如何に魔の川と死の谷を乗り越えていくかについて、マネジメント視点で、できる限り簡潔に触れていきたいと思います。

各企業における研究や開発の大家やベテラン社員の方々というのは、本社管理職や営業サイドからみれば、(失礼ながら)とっつきにくいという印象を与える方が多く、研究は言うに及ばず、開発も象牙の塔になりがちです。実際、研究所や工場勤務が普通でしょうから、尚更コミュニケーションが疎遠になりがちで、これがそもそも最終の製品化や事業化を難しくしてしまっている一因になっているのは明白でしょう。

事業規模の拡大に伴い、組織が縦割り化していくことは多く、自部門の利益を優先させ(部門長であれば、ある意味当たり前のことかもしれません)、所謂、部分最適の寄せ集めとなり、結果的に全体最適どころか、当初企図したとおりに製品が完成せず、関係者全員が不幸なことになるといったことも起こりがちです。

どのようにすればそうならないか、または少なくとも、なりにくいか。古くて、新しいテーマでもありますが、ここは、やはり、第一には、全体の活動を俯瞰して、組織全体として、企業にとって、全体の最適化を考える

第二に、最適化検討のためには、マーケティング思考で、顧客にとってのベネフィットを明確にして、それを拠りどころにする。但し、自社ビジョンやミッションとの整合性が担保されることが前提です。ところで、マーケティング思考という言葉ですが、これはセールス/営業思考でも構わないと思いますが、製品がまだできていないという点において、マーケティング思考という表現にしています。一部、例外もありますが、およそこのような見方でいいのではないでしょうか。

ターゲットカスタマーの嗜好や行動などを読み解き、売れるものを作っていく、または売れるものにしていくのがマーケティング。この定義に従えば、製品/商品(またはサービス)ができあがっていない段階ではマーケティングになります。一方、セールスはできあがったモノを扱う、つまりセールスパーソンが具体的に担当するのは売る行為そのものということになります。マーケティングは今日よりも明日、現在の姿よりもあるべき姿や形を追い求める。営業は、来年よりも今年の売上、明日よりも今日の売上をつくる、あるべきよりも今日を、今週や今月をどうするかを具体的に考え、行動を起こす。どちらが、良いか悪いかの話ではなく、役割の違いです。

第三に、マーケティング思考を埋め込んだ業務機能と組織体を設計し、運用していくこと。その責は、事業部長や、R&D出身のトップ、またはトップに準ずる人が行うこと。

全体最適化を推進するためには、通常は上記3点に尽きるのではと思います。そんなことは分かっている、当たり前じゃないか、問題はどうするかだよという声が一部の方から聞こえてくるようです。これら3点のHowについて、次回以降のこのブログで考えていきたいと思います。



10/09/2022

組織文化 (2)文化の捉え方①

組織文化については、英国経営学の大家であるチャールズ・ハンディ、競合価値観フレームワークで有名な米国経営学者のキムS.キャメロン&ロバードE.クイン、組織文化インベントリーの研究で知られるロバートA.クーク&デニスM.ルソー、人間の基本的な価値観を体系化した学者のシャロームH.シュワルツ等、様々な考え方や捉え方があります。なお、弊社では、エドガーシャインの考え方を参考に、概念化・方法論化しています。

組織文化とは、組織における物事のすすめられ方と捉えることができます。織文化は、組織構成員の思考や行動様式に長期にわたり強く影響を及ぼし、日常業務や意思決定などに反映されていきます。

また、現象面で認知される組織文化は、リーダーの行動や企業ビジョン、評価の仕方などの要素が作用し合い形成されると考えられます。従って、組織文化を変革していく場合は、文化の形成に大きな影響を与える要素を変えることで、組織や個人に影響を与え、結果的に文化の変革を促進していくことができるようになります。

その組織文化の形成要素とは、次の6つになります。

(1)ビジョン・目的・戦略

(2)競争環境

(3)リーダーの行動

(4)組織構造

(5)社員の行動

(6)業績評価

それぞれの内容とその論点については、(本ブログ自体が長くなり過ぎるため)別途、述べることにします。

なお、組織文化全体については、1.組織文化の形成要素、2.組織文化の発現 、3.組織文化から影響を受けるもの、4. 組織文化がもたらす結果(営利企業の場合は業績)、で構成されるものとしています。

次回の本ブログ(組織文化)では、組織文化の発現から始めたいと思います。


地方創生 沿線価値の向上②

沿線価値に、サステナビリティの要素を加えることは言うまでもないでしょう。サステナビリティで最も重要なことは、各施策をアライメントさせることに尽きると、筆者は考えます。要は、会社として、また沿線として、打ち手がチグハグであれば、沿線価値を決めるお客様は混乱します。ですので、全体を俯瞰して、細部を決めていく。または、細部を決めながら、全体とのバランスをとるといったことが必要です。

また、サステナビリティに限ったことではありませんが、複数のタイプの沿線を保有する企業であれば、グループ本社が各事業会社の施策をうまくマネジメントすることが必須となります。所謂ステークホルダー(たとえば、利用客や一般消費者、投資家など)にどう映っているか、また、どう見せていきたいか、そういったことをコントールするのが本社の役割であるのは明白です。そして、このためには、各社、各取組みの現状がしっかり見えているかが、前提として必要になります。

加えていえば、投資家とのコミュニケーションツールとして位置付けられている統合報告書の作成を考えれれば、尚更、統合的な思考で、サステナビリティをとおして、沿線価値を検討することが必須といえます。

サステナビリティには、少なくとも気候変動対応と、生物多様性を外すことはできません。前者には、ネットゼロ(CO2フリー)ヘ向けた様々な打ち手、電力調達の見直しに留まることなく、オペレーションの見直しや、プロダクト/サービスの見直しが必要になってきます。

この見直しのためには、サーキュラーエコノミー(CE)の考え方を取り入れた沿線開発が有効といえるしょう。ただ、ここで気をつけたいのは、日本本来の循環型経済の営みをしっかり活かしながら、投資家向けのコミュニケーションを的確に行うことだと筆者は考えます。つまり、欧米型サーキュラーエコノミーの考え方のみに拘泥することなく、日本独自の、或いは日本がはるか以前から行ってきた循環型経済/サーキュラーエコノミーの良さを、分かりやすく、且つ明確に伝えていくことが重要になります。

生物多様性については、風力や水力といった再生可能エネルギーの活用方法も、一部再考する必要があるように思われます。沿線に、海や山などの大自然があれば、多様性と再エネのバランスを保つことが必要です。

以上のようなことから、沿線価値向上を目的としたサステナビリティについては、ガバナンスを如何に効かせるかといった、持ち株会社のリーダーシップが強く期待されているといえます。





営業力強化 (2)価値ある提案をするために①

お客様に対して価値ある提案をするためには、何をすればよいのでしょうか。

ひたすらお客様の声に耳を傾け続け、お客様の意見に振り回されている方がいます。そうかと思えば、お客様から説明を受けたにも関わらず、まったく何も聞いていなかったかのように、対応しない人がいます(説明事項が何も反映されていないこと自体が信じられませんが)。また、はじめから一方的に自社や自分の都合を言い続ける人もいます。或いは、途中までは、お客様の要望に対応できていたとしても、突然、対応不可になったりする人もいます。ほかにもいろいろあります・・・。

何故、このようなことになるのでしょうか。顧客を理解するというのは、昔からよく言われていることです。理解することを軽視している人は、そう多くはないはずです。では、何故、上記のようになるのか。それは、その人に、顧客が抱える課題や悩みなどに対する思いや気持ち、考えなどがないか、またはかなり希薄だからなのではないかと筆者は思います。要は、「自分ごと」して捉えることができないということ。

営業職を極めていくためには、顧客課題に対する仮説は前提です。課題(仮説)があって、はじめて落としどころを考えることができます。

落としどころが何か、何処かは、通常、そう簡単には分かりません。ですから、仮説を必ず持つことが必須となり、都度、自分で描いた仮説を検証していくことが必要です。検証とは、その仮説が実際に正しいか、正しければ、もっと精度の高い仮説にできないか、正しくなければ、それでは何が正しいのかを、仮説ベースで考えることになります。

それでは、お客様に聞けばいいじゃん、という方が時々おられますが、常にそれがうまく働くかというと、そうでもありません。何故ならば、お客様は意外と自分の本当の思いを分かっていないケースがあるばかりでなく、真の課題に気づいていないことが多々あるからです。

落としどころは、両者が合意する地点といえますですので、もう少しきれいな言い方に変えれば、合意形成に対する仮説をしっかり持つことが必要不可欠ということになります。

若手の営業パーソンで、これを意識せずに行っている人がいる一方で、40や50を過ぎて、十分な経験を有している人が、まったくできていない場合が珍しくありません。こういった組織では、様々な機会逸失や、リスクを内在していますので、組織の長には相当の注意力が必要となります。

一度きりの面談/商談で、両者が合意を形成できればいいですが、そういうケースは言うまでもなくそう多くはありません。ましてや、モノ/サービス提供の対価として支払われる価格が高額なもので、且つ購入/使用決定まで、相応の時間がかかるものであれば尚更です。

落としどころの仮説の精度を高めるためには、まずは、「自分ごと」として考えてみる。少し長くなってきましたので、続きは次回へまわしたいと思います。


サーキュラーなオペレーション

サーキュラーなアプローチでは、主としてサーキュラービジネス機会の検討を対象にしました。

一方、このサーキュラーなオペレーションでは、前提としておさえておくべきオペレーションについて、簡潔に記載したいと思います。

オペレーションでは、まずはサプライチェーン、特に、廃棄物管理と、使用する資源の効率性が焦点になります。

廃棄物管理では、ゆくゆくは廃棄物をゼロにしていく、そういった企業姿勢に注目が集まります。これはメーカーであっても、小売業であっても、サービス業であっても同じことです。とはいえ、完全にゼロにすることはあまりにも現実的でないと思いますので、リサイクルができないものについては、エネルギーの回収がポイントになると思われます。

廃棄物管理におけるエネルギー回収とは、ZEB(Zero Energy Building)を指します。つまり、高断熱化や電力消費量などエネルギーを省く、太陽光発電などによるエネルギーを創る、燃料電池などによるエネルギーを蓄えるといったことなどになります。

使用する資源の効率性では、資源を無駄にしないオペレーション、ひいてはビジネスモデルを追求していくことが、社会的使命を帯びてくるといえるでしょう。サプライチェーン領域では、特に、より精度の高い生産計画とこれに連動する在庫管理及び需要予測、ならびに物流(たとえば配車計画)が重視されます(ひいては、自ずと使用する原材料なども関係してきますので、ここまで来ると、前提となるオペレーションを超えていくことにはなりますが・・・)。

このようなことを、ホームページなどで、数値を用いて公開していく情報開示の姿勢も、早晩求められると思います。このような観点にたてば、一部でみられる循環型経済をうたった、耳障りの良い商品訴求(たとえば、モノを回収してモノを作るといったような商品)だけでは十分とはいえません。透明性を保持した企業全体の取組みが、社会から求められることになります。

10/05/2022

今、何をすべきか。電気料金⑥

電気料金が上がり続けています。以前のブログ(電気料金)で、電気代が売上に占める割合は、大きい場合で10%程度と記載しましたが、今であれば、さらに大きなものとなり、経営に与える影響はもはや看過できません。死活問題といっても、差し支えないでしょう。

このような状況下では、電気料金、電力調達を見直すことは必須です。とはいえ、在、大多数の電力会社が新規見積の提示に応じないため、選択肢は限られます

電力は、2016年4月に実施された小売全面自由化によって、制度が大きく変わりました。電力は発電、送配電、小売の3事業に分類され、地域電力(沖縄を除く国内9社は北から順に、北海道、東北、東京、北陸、中部、関西、中国、四国、九州)各社は、3事業を保有しています。

たとえば、関東圏の電力を担う東京電力の場合であれば、発電事業は東京電力フュエル&パワー、送配電事業は東京電力パワーグリッド、小売は東京電力エナジーパートナーになります。ちなみに、東京電力の場合は、ほかに再生可能エネルギー事業を担当する東京電力リニューアルパワーという会社もあり、これら4社を親会社である持株会社の東京電力ホールディングスが統括しています。

ところで、前回のブログ(電気料金⑤)で、最終保障供給料金が市場連動型になると記載しました。

最終保障供給とは、高圧または特別高圧で電力供給を受けている需要家が、万が一、電気の安定供給を受けられない事態が発生した場合に、当該地域における送配電事業者(関東圏では東京電力パワーグリッド社)が、電気料金標準価格の20%増で、電力を通常1年間限定で供給するという取り決めのことをいいます。

この最終保障供給で約束されている電気料金が、標準価格を上回っているのであれば、問題はないといえるのでしょが、逆転現象(つまり、標準価格のほうが最終保障供給料金よりも高くなる)が発生したため、小売電力事業者などは、従来どおりの継続取引が困難になるところが続出しました。

地域電力からであろうと、新電力からであろうと、相応の安価で電力を調達してきた需要家の多くが、今、最終保障供給料金で電気の供給を受けています。また、最終保障供給には至らずとも、契約更改時などに、電気代が大幅増になっている事業者が大半のことでしょう。一方、国挙げての脱炭素への取組みは加速することはあっても、やむことをありません。

原材料価格の高騰は未だ出口が見えず、商品代金やサービス料金に上乗せして値上げするにも限界があることは言うまでもありません。電気料金ひいては電力調達を見直すことが、今、経営の喫緊課題であり、コストが大きい品目の削減は、待ったなしの状況です。電気料金でお困りの方は、是非、お問い合わせください。info@truerisep.com

トゥルーライズパートナーの電力調達見直しサービスは、こちら


10/01/2022

組織文化 (1)競争力の源泉

組織文化こそが、他社が模倣できない、最強の企業競争力の源泉になりうると、筆者は随分前から考えるようになりました。(故に、弊社トゥルーライズパートナーは、事業設立の根幹に、組織力強化をおいています。)

どれだけ優れた戦略を策定したとしても、実行できなければ何の意味もありません。実際、今日、似たような戦略は偏在しているといっても過言ではないでしょう。

バブル経済崩壊後、企業における各組織の要員数は減らされ、一人当たりの業務負荷が高まりました。これだけが理由ではないですが、結果的に仕事の質的低下が起こってきたのは明らかでしょう。

このような状況が常態化するにつれ、そこで働く集団の実行力の高低が、企業間競争の結果を決定づけるようになり、かなりの時間が経過しました。そして今はデジタルの時代。この傾向は、ますます顕著になっています。

組織文化の大家、エドガーH.シャインは、組織文化を「ある集団がその歴史の中で環境に対して生き残り、またお互いが協力していく中で蓄積していった知識」としています。

ヘンリーミンツバーグは、「マネジャーが組織文化を強化する目的は、メンバーのコミュニティ意識を高めることにより、メンバー一人ひとりが適切な行動をとるものと期待できる状態をつくりだすこと」としています。

日本の経営学の分野では、伊丹と加護野の両教授が、組織文化とは「組織のメンバーが共有するものの考え方、見方、感じ方」と定義しています。

本ブログでは、この組織文化について、弊社の考え方や向合い方などを盛込みながら、具体的に説明していきたいと考えています。

最後に、シャインは組織文化の重要性を、次のように述べています。リーダーが行う真に重要な唯一の仕事は、文化を創造し管理すること。リーダーとしての独自の資質は、文化を操作する能力

組織文化こそ、今、あらためて我々が考えなければならない最重要なテーマといえるのではないでしょうか。



地方創生 沿線価値の向上①

地方創生に、交通機関が果たす役割は非常に大きく、特に電車はバス以上に、集客・送客含め、より広域への影響力が大きく、重要であることは言うまでもないでしょう。

地方創生には様々なテーマがありますが、上記のような理由から、まずは沿線価値について考えてみたいと思います。沿線の価値を高めるためには、何を、どのようにすればいいのか。どういった視点や切り口が適切なのか。今日の大きなテーマである脱炭素やサステナビリティについて、沿線の認知度や注目度を上げていくためのアプローチは何か、等々。

価値は、お客様が決めるものです。およそ全てのビジネスがそうであるように、沿線の価値も同様です。ただ、どういったお客様に、その価値を決めてもらいたいのか。そのためには、お客様のことをいろいろ知る必要があります。

ですが、その前に、自分たちは、どういう沿線でありたいか。そこで、どのような価値を提供していきたいのかを、事前に明らかにしておく必要があります。

自分たちが思い描く沿線の価値と、お客様が実際に認識する沿線の価値が、合致してこそ、優れた沿線、適切な価値を創出できます。本ブログ(地方創生)の沿線価値については、こういった観点で考えていきたいと思います。少し短いですが、区切りがよいため、続きは次回とさせていただきます。


営業力強化 (1)はじめに その3

業界を問わず、ソリューションビジネスへの転換が国内で叫ばれて、もう20年近く経ったのではないでしょうか。

この点において、国内外でのIBMの取組みは、今でも大いに参考になると筆者は思います。自身が在籍し、当事者でもあったわけですから、当然といえば当然なのかもわかりませんが、先んじていたのは事実でしょう。

国内で、よく知られたものに、小松製作所の事例があります。ご存知の方も多々いらっしゃるでしょうから、詳細は省きますが、要は、世界中で展開する建機をネットワークでつないで、GPSで建機1台ごとに個体認識し、メンテナンスや、遠隔操作で盗難防止などをはかる。そういったことを実現するシステム(KOMTRAX/コムトラックス)を構築し、運用したという事例です。これが、(単なる)製品の販売から、ソリューションへの転換、顧客課題を解決した、日本発の先駆的な事例で、もう20年以上も前のことになります。昨今IoTが取り上げられていますが、これなどは、時代を考えればまさに革命的といっても、差し支えないでしょう。

そして、今は同じ製造業ならブリジストンが、少し前なら金融ではメガバンクが、よくニュースに取り上げられました。

少し話が飛躍するかもしれませんが、コロナ禍で、従来のビジネスモデルが崩壊し始めている業界が少なくありません。

先の住宅・不動産業界もそうですが、化粧品業界、特に高級化粧品などが該当します。百貨店などでの店頭販売/カウンセリングが基本的にできない状態(または、相当の制約を受け続けている状態)が3年以上続いているわけですから、当然といえば当然です。特に、外資系のトップメーカーであるクリスチャンディオールやエスティローダーなどは、大変な状況下で、想像を超える努力を、営業パーソン(店頭販売員)の方々はされていらっしゃいます。ただ、経営層が見落としてはならないことのひとつに、個人個人の努力ではもはやどうしようもない状況にあるということ。

そういった企業や業界と比べて、口でどれだけ危機感を唱えていても、事実上、何も実行していないような企業(さすがに固有名詞を述べることはできませんが)は、衰退、事業縮小、場合によっては清算されてもやむをえないことですし、また、そうなるべきだろうと、筆者は思います。

組織として、営業力を強化していくためにはどうすればいいか。あまり大上段に構えすぎると、日常のささいなこと、でも非常に重要なことを見落としてしまいがちです。ですので、次回の本ブログ(営業力強化)では、まずは個人ベースでできることから、考えていきたいと思います。


営業力強化 (1)はじめに その2

随分前の話になりますが、ある大手小売業のIT部門責任者の方がこう仰られました。SI(システム導入)について「こちらから連絡をする前にすでに来ているのがNEC、連絡したら来るのが富士通、連絡しても来ないのがIBM」。ことの真偽はともなく、筆者もそのイメージ感は共有可能です。

これを持って、NECは良く、IBMが駄目というのではありません。同じサービスを提供していたとしても、会社によって、やり方、また、当該お客様企業への向き合い方は異なります。(とはいえ、昔?のNECが凄いのは事実ですが。)

ただ、問題は、各社がこれを意識して、やっているかということです。おそらく上記3社は、意図的にこれをやっていると理解しておいて問題ないと筆者は思っていますが、世の中には、何もわからず、結果的にそうなってしまっている個人や企業が、意外にもかなり多いと感じています。業界によっては、トップ企業群(リーダー企業またはリーダー的企業の一団)に属する会社であってもそうですから、かなり驚かされます。コロナ過では、それが、簡単に見えるようになってしまいました・・・。

見方を変えれば、それだけ業界や産業におけるポジショニングが重要といえなくもないですが、この変化激しい環境下では、一度築いたポジショニングがそう長く続くことはありません。

筆者は、デジタルの時代こそ、営業の時代だと思っています。営業力を強化することこそ、今、企業が取組むべき最優先課題と言いきっても差し支えないのではないでしょうか。

営業力強化は、他の取組みと異なり、かなりの時間を要します。各社各様ばかりでなく、各人各様な一方で、営業の成否こそが、企業業績の良し悪し、時には企業イメージ全体に対する実際の評判を決定づけることもあるからです。

特に、B2B企業なら、一般消費者には見えづらいですが、B2C企業、特に高額品を時間をかけて扱う住宅・不動産業界であれば、尚更でしょう。自動車や家電、IT製品であれば、同じB2Cでも、プロダクトやブランドのイメージ、広告宣伝などによって、また、販売店の優劣によって、営業力がそこまで要求されないこともしばしばあると言えるでしょうが、住宅・不動産は、なかなかそういうわけにはいきません。

また、B2Bでも、サービスを扱う業界なら、同様に、お客様企業が考えていることを瞬時に把握し、提案するものに反映させる必要があります。特に、契約形態において、請負をビジネスの中心に据えている会社が、委託や委任のビジネスを取り扱う際などには、細かい注意が必要となります。大手広告代理店が、何故、コンサルティングビジネスをうまくできないのか、原因のひとつはここにあるでしょう。どちらがいい悪いというのではなく、両者の相互理解が少なくとも前提として必要になることに、留意する必要があります。

ほかのブログでも触れたことではありますが、今までと同じやり方で異なる成果を得ようとするのは正気の沙汰ではありません。何故ならば、そんなことはできるはずがないからです。

このような状況下においても、業界や産業を問わず、現状をブレークスルーしていく力となれるのが営業職だと、筆者は思います。営業は体力勝負と心底思っておられる方が、時折、企業の上層部に今でもいらっしゃることには、失望します。ご自身の経験や、成功体験から、そう信じておられるのかもしれませんが、自社を取巻く外部環境のみならず、当然のことながら、営業パーソン自身も変わってきています。

営業の方とお話をしていて、強い愛社精神をお持ちの方に時々出会います。ご自身でいろいろ優れた取組みや試みを実践されている一方で、組織として、どのようにすればいいのか、悩まれているのがはっきり伝わってきます。そういった方々のお役に、このブログがなればとも思っています。


営業力強化 (1)はじめに その1

デジタルの時代といわれ、何処もかしこもデジタル一色の感があります。そして、今、物が売れなくなってきています。価格高騰がその要因のひとつであることは間違いありません。

言うまでもなく、営業という職務はあらゆる仕事に必要です。

筆者には、営業関連のプロジェクト経験が幾つかあります。また、仕事で、社内外の営業パーソンの方々と、行動を何回も共にしました。加えて、当然のことですが、生活のいろいろな場面で、メーカーや小売業(店頭販売員)の営業の方々と接してきています。

営業の方には、これまで驚かされることがたくさんありました。たとえば、

もう随分前のことになりますが、大手電機メーカーの方とお昼に丼ものをご一緒した際、その人は丼をほぼ1分かからずに、全て平らげました。前職では、他業界で営業をしておられ、その時は1日200社外回りしているとのこと。「信じられないでしょうが、やろうと思えばできるんです」と仰っておられました。筆者には到底できませんが、どうすればそれが実現できるのかはわかります。

ITサービスを扱う外資系勤務の営業パーソンの方の得意先(企業数)は800社。自分で工夫しないと、到底、外資系のチャレンジングな予算を毎回達成できるはずはありません。ですが、その人は、ほぼいつも達成するばかりでなく、休みもちゃんととっておられました。

大手精密機械メーカーの営業部長、若い頃は担当先のお客様企業は1社だけ。ただ、競争環境が非常に厳しい上に、決裁権を持つ責任者が研究所に常駐。毎日、長時間をかけて日参し、購入してもらうまで、そこに居座り続けたとのこと。研究所の入口を通過するだけでも、一工夫いるのは想像に難くなく、ただ、単に、そこに座り込んでいたのではないのは言うまでもありません。

こういった話はまだまだほかにもあります。筆者個人としては、こういった方々は凄い人たちだと思いますし、また、頭が下がる思いです。

ただ、このような人たちは、通常、組織の構成員においてはほんのごく一部で、大半の人には真似はできないでしょう。ではどうすればいいのか?

本ブログ(営業力強化)で、少し時間をかけながら、考えていきたいと思います。


9/17/2022

サーキュラーなアプローチ②

前回の本ブログでは、サーキュラーエコノミーのビジネスモデルは、6つに分類できると述べました(サーキュラーなアプローチ①)。

顧客関係性のあり方に直接影響を与える「モノのサービス化」及び「消費や利用の共同化」と、それ以外の4つのモデル(「原材料の改変」、「資源の再利用」、「デザインによる廃棄物ゼロ」、「商品ライフサイクルの拡張」)では、「型」構築に費やす時間や、おさえるべきポイントが異なるところはありますが、全体アプローチは次のように同じものとなり、3つのフェーズで捉えることが分かりやすいでしょう。

1. サーキュラービジネス機会の評価
2. サーキュラー戦略の策定
3. サーキュラー化の実行

3つのフェーズのうち、最初の1「サーキュラービジネス機会の評価」が、型を検討する上で非常に重要です。このフェーズは、基本的に、以下のような3つのステップで考えるのが適切です。

(1)ビジネス機会の定義
(2)フォーカスエリアの抽出
(3)フォーカスエリアの精査と特定

上記3つのステップは、次のようなタスクの幾つかの組合せ(または全て、順不同)で構成されます。

  • 外部環境を分析し、事例を作ってみる。
  • 事例を分類し、気づきをまとめる。
  • 組織横断型のチームを編成する。
  • 多様なビジネス機会を一覧化し優先順位付けする。
  • 有効なビジネス機会を評価する。
  • ビジョンを描く。
  • 市場/事業規模を算出する。

  • 競争に必要となる能力(リソースケイパビリティ)を考察する。
  • 必要なテクノロジーを検討する。
  • 有効なビジネス機会を評価する。
  • ビジネスケースを作成する。
  • ターゲットモデルを選定する。
  • 事業活動全体を俯瞰して判断する。 
  • 自社の変革許容度を評価する。
  • 短長期のロードマップ素案を立案する(必要に応じて、資金、協業先、ガバナンス等も考慮する)。
  • サーキュラーエコノミーのフレームワークを設計する。

    自社が目指すところやゴールをはじめ、当該組織の文化やサーキュラーに対する成熟度などによって、評価の仕方はひとつだけではないことには留意が必要です。また、A社にとっては必要なタスクであったとしても、B社ではそうとは限りません。

    上記タスク実施に費やす時間は、範囲や体制などにもよります。理想は1ヵ月以内に終えることですが、少々タイトな感がありますので、3ヵ月を目途にいったん終わらせるのが望ましいといえるでしょう。評価の中身は勿論重要ですが、初期的段階では、精度より、スピードを重視すべきです。サーキュラーエコノミーの分野は、自社を取巻く環境変化は絶えず起こっていることには注意が必要です。


    9/16/2022

    デジタル化⑤

    ③すすめ方についても非常に重要です。どう工夫するかで、デジタルに対する取組みの成否が、かなり左右されるといっても過言ではないでしょう。

    基本は、はじめに現状を見える化し、次にあるべき姿を作ります。

    新規顧客100人開拓であれば、現状をどのように行っているのか。これに対してどうしたいのか。これまでと異なり、新たな100人をどのような方法で獲得したいのか。また、どういった顧客層にしたいのか、等々。

    現状をまったく顧みないで、あるべき(または、ありたいと願い)今後の姿を描くことは、通常、現実的ではありません。

    あるべきを考える時は、現状にできる限り拘泥することなく、思いきった、場合によっては、不可能とも思える姿を思い描くのがコツといえるでしょう。

    ④体制は、自社内のチーム体制、誰が責任者で、誰がメンバーか。

    ⑤スケジュールは、できれば少しストレッチして、短めにするのが大事だと思います。時間は、引いた線だけ、人は使う傾向が高いですから、早めに仕上げられるようにすることが重要です。何といっても、デジタルの取組みですから。


    デジタル化④

    ①の取組みの目的とゴールを終えたら、次は、②範囲を決めていきます。

    ②は、目的に沿ったゴール達成のために、必要となる範囲を指します。必要というのは、たとえば、100人達成のためには、まずは(イ)自社の営業(つまり、当該活動の方策、プロセス、人員、体制など)を主たる範囲とします。

    次に、上記(イ)は自社内のことですので、接点となる(ロ)社外を検討します。たとえば、お客様先や取引先などです。両者が(イ)のデジタル化により、影響を受けなければ考慮しなくてもよいかとは思いますが、何らかのインパクトがあれば、範囲に含めたほうがよいです。

    最後に、(イ)と(ロ)に関係する自社の活動(ハ)を範囲に入れるか否かを検討します。自社の経営企画や経理などが、関係するのであれば、副次的な範囲として、設定したほうがよいでしょう。

    あまり厳密に捉えて、先へ進めなくなるようであれば、②の検討はほどほどにしたほうがいいですが、(イ)はしっかり決めておきたいものです。というのも、ここがぶれたら、デジタルの取組みが遅れたり、進む方向が変わったり、挙句の果てには頓挫してしまうからです。ですので、イメージとしては、柔軟に対処するというよりは、どちらかというと、しなやかに検討していく、決定するという姿勢が適当だと思います。

    (続きは、次回へ)






    デジタル化③

    最重要課題を選んだなら、次は、それをデジタル化する場合の成功ポイントを考えてみることをお薦めします。どのように進めていくか、どういった体制で取組むか、といったことなどを考える前にです。その理由は、あまり既成概念にとらわれないようにすることが重要だからです。デジタルでは、これまでの仕事の仕方とは全く違うからです(たとえ、DXであろうとなかろうと)。

    仮に、その成功ポイントが、強い牽引力を持って全体を引っ張っていくことだとすると、多くのケースでは会社のトップ、もしくはそれに準ずる人に、責任者として取組みに入ってもらうということになります。そして、そこから、どのように取組んでいけばいいかを考えていきます。

    これには、以下の点をおさえることが必要です。

    ①取組みの目的とゴール、②範囲、③すすめ方、④体制、⑤スケジュール、あと、費用感です。

    ①のゴールというのは、何が達成できたら、その取組みは成功と言えるか、ということを、できる限り数値で表したものです。但し、3ヵ月以内に、その取組みを終えるというのではNGです。というのも、それは⑤で決めることができる上に、そもそもその期間は、この取組みの目的とは何も関係ないため、不適切です。仮に、目的が、新規の顧客開拓であるとすると、ゴールは、たとえば、100人となります。また、この場合の100人というのは、いつまでの間に達成するかというのを明らかにしておきます。1年以内か、3年かなどです。自社のビジネス(デジタルとは関係なく)の現状と照し合せた上で、設定します。

    (続きは、次回へ)



    9/11/2022

    地方創生 はじめに②

    地方創生の問題について、何から、何処まで言及するのが、Reflections(弊社トゥルーライズパートナーのブログ)として適切か。

    弊社は地方創生を専門に扱う会社ではありません。ビジネスコンサルティングサービスを事業の主軸におく経営コンサルティング会社またはビジネスコンサルティング会社(以下、「コンサルティング会社」)ですので、この視点で、地方創生について考えていきたいと思います。

    コンサルタントの武器や強みは何か。意見はいろいろあるかもしれませんが、その昔は、”論理的思考”、”フレームワーク”、”方法論”だったと理解しています。また、その後、大前研一さんは”構想力”と仰られました。まさにそうだと、当時、強く思ったのを今でも覚えています。

    筆者は、事業会社出身で、海外留学を経て帰国し、40才でコンサルティングの世界に入りました。随分遅いというか、その頃で言えば、少なくとも外資系経営コンサルティング会社においては、殆ど前例がありませんでした。このため、周囲から見れば、ある面で、石器時代的な人間のように映っていたかもしれません。当時、個人的には、”想像力(創造力ではなく)”が最も重要だと思い、生え抜きの先輩諸氏や同僚に、そのように言うと、失笑を買ったような記憶があります。そして、その人たちは、今、何処へ行ってしまったのか、わかりません。

    あれから、20年以上の月日が経ちました。入社時に思っていたことは、間違いではないばかりか(想像力が最も重要かどうかはともかく)、それは確信であることに気づきました。

    想像力なくして、問題解決はおろか、問題考察の入口にさえ、立つことはできません。経験の有無を埋めるのが、想像力ではないでしょうか。筆者はそう考えます。

    この想像力を駆使しながら、創造性を発揮し、ものごとを構想していく。これに、前提となる論理的思考、フレームワーク、方法論を混ぜ合わせる。

    地方創生に関する著述やトピックは数多ありますが、その殆どは、地方の創生に資するものとはならず、幾多の失敗例を生み出しました。

    筆者の考えやアプローチなどが、地方創生に少しでも役立てば、その地で生計を立てている方々や、そこで暮らす人々の質的向上に資すればと考えています。

    この地方創生ブログについては、全体俯瞰的なことはあまりやらずに、また、あまり細部に拘泥することもなく、思いきってすすめていきたいと思っています。


    デジタル化②

    デジタル化と、デジタルトランスフォーメーション(DX)は、異なります。トランスフォーメーションは変革の意味ですので、前者はツールを指し、後者はツールを活用して仕事の仕方を変え、ビジネスの価値を向上させることをいいます。

    従って、デジタル化自体はあまり意味がなく、要は、何を、どうトランスフォーメーションするかが重要です。

    このためには、自社がどうなりたいか、何を目指すのかといったことを、デジタル化の前(また、DXの前)に、明確にしておくことが必要となります。

    では、どうするか? 次のような問いかけを、自身(自社)にしてみることが有用でしょう。

    自社の問題は何か? 

    ひとつだけではないでしょう。ですので、複数あるなかで、まずは最も解決すべき問題を課題として位置付けます。(問題と課題は、本来、異なるものです)

    最も解決すべき問題とは何か? 捉え方は幾つかできますが、ここでは、自社が直近で、最も望むことができるようになること。つまり、これが出来ていないから、今こうなっているという、何かを選び出すことになります。

    たとえば、コロナ過のため、従来の販売ができないから、オンラインで販売したい(だが、手段がないから出来ずにいる)とか、

    業績があまりにも厳しいから、従業員数を減らさざるをえないが、仕事の数を減らすことはできないため、単能工から多能工に変える必要がある(同上)、など。

    幾つか挙げられるはずです。この中から、最も重要と思われるものを、最重要課題にします。

    (続きは、次回へ)


    デジタル化①

    弊社クライアントならびにReflectionsをご覧頂いている方の多くは、何故、今更デジタルなのかと思われるかもしれませんが、デジタルの取組みが当初企図したとおりに進まず、成果を得られなかったり、大手でさえ事実上未着手の企業もまだあることなどから、ここで取り上げることにしました。

    そもそもデジタルとは何でしょうか。筆者が以前、在籍したアクセンチュアでは2014年時点でデジタルを大きく扱い、自身もクライアントへ度々、ご説明したものです。筆者にとっては、遡れば、米国滞在時の96年、MBAのITのクラスでアマゾンを取り上げ、ディスカッションしたことが今でも記憶にあります。その後、98年に、米国商務省がデジタルエコノミー、デジタル革命と銘打って、レポートを発表し、大きな反響を呼びました。そして、今日、デジタルといえば、アナログ以外の全てを指すことになったようです。

    では、筆者が考えるデジタルとは何か。それは、仕事を変える手段です。デジタルは目的ではなく、手段なのです。本末転倒にならないように気をつけなければいけません。つまり、企業規模が大きかろうと小さかろうと、業種がなんであろうと、同じことなのです。意志を持って、デジタル化に臨むことが重要で、これなくして、デジタルによる成功はおぼつかないでしょう。

    このブログをお読み頂いている読者の方の層が広がってきていることを踏まえ、筆者の考えなどを、何回かに分けて、少しご紹介できればと思います。すでに、筆者ならびに弊社をよくご存知の方々には、既知のこととなりますが、この点、どうかご了承ください。

    9/03/2022

    地方創生 はじめに①

    弊社クライアントから、何故、あなたが地方創生に取組むのかと尋ねられました。また、別のところでは、何故この地域なのかと聞かれたこともあります。筆者からすれば、特段変わったことではないのですが、その理由や経緯などについて、筆者のキャラクター的なものも交えながら、この地方創生ブログを始める前に、触れておきたいと思います。

    直近でのきっかけは、弊社の中四国オフィス(岡山市北区)にあります。岡山は、豊かな食、歴史と文化、地域に根差した産業など、見るもの、誇るべきものが多数あり、知れば知るほど、驚かされます。

    ですが、相対的に言って、日本全国、特に東京などから見ると、これが目立たないというか、その良さが具体的には殆ど知られていないのが実情です。また、実際のところ、県外に対する発信力が弱いというか、うまくないと県外から来た私のような者には映ります。

    こういうと、何を偉そうに、何と比較してなどと言われる方もおられることですので、筆者がこれまで見てきたまち、場所の数々について、以下に少し長くなりますが記載させていただきます。

    生まれ育ったのは大阪(大阪府豊中市出身、茨木市と大阪市内にも在住経験あり)です。東京では目黒区祐天寺と中央区日本橋に、20年以上暮らしています。また、滋賀県大津市神奈川県川崎市中原区にも1年程度ずつ暮らしたことがあります。大学は京都ですが、大学院は海外で、米国ニューヨーク州イサカマサチューセッツ州ボストンハワイ州ホノルル(専攻はツーリズム)に、長期のインターン含め、約7年暮らしました。

    旅行者としては、音楽が好きだったということもあって、ニューヨーク市のマンハッタンに少なくとも3ヵ月以上の滞在はじめ、1981年から2002年までの間に、何度も行きました。81年の音楽自由旅行では、ロサンゼルスからニューオリンズシカゴ経由で、最後はニューヨークへとグレイハウンドバスで、往復の航空券だけを持って、ホテルを予約することなく、日本を出て米国大陸を横断しました。翌年82年の欧州は、ジャズ評論家の方やミュージシャン、ジャズマニアの方々と、はじめの2週間くらいはドイツで行動を共にし、その後2.5ヵ月はひとりで、主にロンドンパリローマフィレンツェ郊外に滞在し、ひたすら音楽を聴き続けていました。

    93年からの米国留学時代には、北はニューハンプシャー州ハノーバーから南はジョージア州アトランタ、西はオハイオ州クリーブランドからミズーリ州セントルイステネシー州ナッシュビルなど、フォードトーラスのステーションワゴンに荷物を積んで、自分に合う大学院と街の環境を見て回りました。仕事では、2000年から外資系経営コンサルティング会社に勤めていましたので、ニューヨークを中心に数都市、短い滞在では1泊3日、長い場合は2週間以上の滞在を何度かしています。

    欧州は、イタリア(ヴェネツィアからナポリ、アマルフィやカプリ島まで)、ドイツ(10都市以上、東西分断時代の東ベルリン含む)、パリ、ロンドン、マドリードグラナダウィーンジュネーブなど、82年の音楽旅行を皮切りに、自由旅行で5回以上、半年くらいは滞在しました。また、仕事でも、日本→米国→欧州→米国→日本というながれで行ったことがあります(いろいろ回ったため、仕事で欧州はフランスとドイツ以外へは、何処へ行ったかもはやよく覚えていません・・・)

    更に書くと、自由旅行が許されなかった時代の中国では、個人で現地のガイドを雇い、北京上海へ。香港も勿論行きました。

    年を重ねて感じることは、いろいろ見たことは今となっては本当に貴重な経験になったと思うばかりでなく、幾つかは確信をもって話せることがあります。

    まず第一に、行ってみなければわからないということ。この感覚は、その地に長く暮らし、まちを離れたことがない人たちには、わからないことです。

    話を戻しますが、岡山は世界レベルで見ても、かなり魅力的なところです。ところが、それが伝わっていない(正確にいえば、旅行者や短期滞在者には見えない)ところが大きな問題です。

    また、筆者の出身地である大阪も同様の感があります。特に、大阪市中央区以南がそうです。はじめから枠をはめて(もしくは決めつけて)、考え行動している、そういった印象が強く、これでは、あまりにももったいない。こういった点を、新しい視点や視座を用いて解消し、新しい世界を、広く日本全国、さらには国外に向けて発信し、その地域の産業振興に貢献できればと思っています。どれだけきれいごとを言っても、産業、経済の発展なくして、地方創生は成立せず、また、そこで暮らす人々の生活はよくなるはずがないと考えるからです。

    (一部読者の方から、ブログが長いとご指摘を受けた以降は、できる限り長くならないように努めて来ておりますが、途中で区切るのも難しくかなり長くなってしまいました。ご了承ください)

    サーキュラーなアプローチ①

    サーキュラーエコノミーでは、バリューチェーンが所謂従来のリニア/直線型から、サーキュラー/循環型に変わる(または変える)、これが前提です。バリューチェーンが循環型になるということは、通常、原材料の改変、資源の再利用、デザインによる廃棄物ゼロ、商品ライフサイクルの拡張のいずれかひとつ、または全てを適用することが必要になります。

    これまでのサーキュラーエコノミー(CE)のブログで取り上げた事例などから、CEのビジネスモデルは、およそ次の6つに分類できるといえるでしょう。

    (1)モノのサービス化、PaaS(Product as a Service)型のビジネスで、オランダのマッド・ジーンズ(サーキュラーエコノミー事例①)やシグニファイ(事例③)スウェーデンのエレクトロラックス(事例③)、米国のレント・ザ・ランウェイ(事例③)など、多数の参考例があります。

    (2)消費や利用の共同化、広義に捉えれば所有から共有への転換を指し、シェアリングビジネスが該当します。モノや空間、移動に関するシェアが対象で、使用率の向上を意図しています。ステランティスが良い例といえるでしょう(事例③)。

    以上2つは従来のビジネスモデルから大きな転換が必要です。というのも、顧客関係性のあり様に直結することから、(既存事業がある企業にとっては)現行事業とのバッティングにとどまらず、現行事業そのものも破壊しかねません。このため、取組みを実行するには、相応の慎重さが必要ですし、また、実行の難易度も高いものにならざるをえないと捉えるのが自然でしょう。

    上記2つのタイプ以外では、(3)原材料の改変(4)資源の再利用(5)デザインによる廃棄物ゼロ(6)商品ライフライクルの拡張が挙げられます。なお、(5)は(3)に集約させることもできますが、デザインの重要性に鑑み、敢えて別枠で捉えるようにしています。

    本ブログで取り上げた事例には、(3)はフィンランドのパプティックやアント・ブリュー(サーキュラーな国③フィンランドその2)ナイキ(事例②)などが該当します(4)は日本の着物、漬物、日本酒など(国②日本その1)を、まず挙げるべきでしょう。(5)はフィンランドのノッラ(国③フィンランドその2)ナイキアディダス(事例②、ベータ版どまり?)などが当てはまります(6)サルバトーレ・フェラガモやルイ・ヴィトン(事例②)が、古くから存在します。これら事例には、特徴的なものや、すでに我々がよく知っているものを取り上げるようにしましたが、言うまでもなくすでに多くものが登場してきています

    (3)(4)(5)(6)全てに適応しているのが、和歌山の梅システムです(国②日本その2)。但し、より正確に言えば、適応しているというよりも、サーキュラーエコノミーの定義が後からついてきたということになるのだと思います。また、(3)(4)(5)に対応しているのが、エシカル・スピリッツ社のクラフトジンといえるでしょう(国②日本その3)。

    サーキュラーエコノミーのビジネスモデル分類が、これでおよそできたといえますので、次は、これをどのように、各社が取組む際のアプローチとして「型」にしていくか。続きは、本ブログの次回以降で、述べていきたいと思います。


    8/27/2022

    サーキュラーな国④ オランダ

    フィンランド同様に、サーキュラーエコノミー先進国といわれるオランダ(人口は約1740万人)は、2016年に、国全体が2050年までに、100%サーキュラーエコノミー化することを宣言しました(宣言はこちら)。

    これに先駆けて、2015年に、オランダの首都アムステルダムが、サーキュラーエコノミーのポリシーを発表しています(ポリシーはこちら)。

    1企業、1団体ではなく、首都を中心に国全部を2050年までにサーキュラーエコノミー化すると公表したわけですから、本当に実現されれば、とてつもないことだと思います。ただ、ウォッチしているわけではないため、気軽に言及するのは避けるべきでしょうが、フィンランドの全体アプローチなどに見られるような確かさをあまり感じることができないと思うのは筆者だけでしょうか。

    事例はたくさんあります。たとえば、賞味期限切れなどの理由から廃棄食材となるものばかりを使ってメニューを提供するレストランのインストック(Instock)、本ブログの事例1で触れたマッド・ジーンズ、汚染された造船所跡地を活用したオフィス/商業ゾーンのデ・クーペル(De Ceuvel)、等々。

    ただ、インストックやデ・クーベルのような取組みは、本来のサーキュラーエコノミーといえるかどうかというと、筆者には少々疑問です。というのも、廃棄食材がでないようにするのが本来の主旨のはずですし、フィンランドのノッラのような廃棄物ゼロレストランのほうが資源循環という観点で求められる取組みではないでしょうか。造船所跡地についても、安全性の面で問題なければ(なくて当然ですが)、サーキュラーとして敢えて取り上げるほどのものなのかどうか。オランダとフィンランド、そして日本、お国柄がそれぞれ違いますから、一概に同じようには比較できないとは思いますが、やや表層的なイメージに捉われすぎていないかと感じる次第です。


    サーキュラーな国③ フィンランドその2

    フィンランドは、国土の75%近くを森林が占めとていると言われています。このため、CEの注力分野に、持続可能な食料システムと、森林を基本とするループが挙げられています。

    故に、フィンランドのCE事例には、はじめに廃棄物ゼロレストランのノッラ(Nolla)を挙げたいと思います。ノッラは首都ヘルシンキに店を構える、ゴミを出さないレストランで、ノッラはフィンランド語でゼロを表します。厨房にはゴミ箱がなく、コンポスト(堆肥/compost、堆肥をつくる容器/composterという意味)が1つ置いてあるだけで、調理中に出たゴミとなるもの、たとえば肉や魚の骨、野菜の表面などは全て、コンポスティングする。また、包装容器などはゼロを目指し、できないものは全てリサイクルしているとのこと。

    社名と素材の名称が同じのパプティック(Paptic)は、プラスティックの代替素材として注目されています。フィンランドの国立技術センターが基礎技術を開発、自国の針葉樹からつくったパルプ。紙であるにも関わらず、強度が高い一方で、感触が柔らかくしなやかであることから、包装などで繰り返し再利用可能で、欧州の百貨店などで手提げ袋として利用されています。

    フィンランドのラハティ市にあるアント・ブリュー(Ant Brew)は、雑草、野生のハーブ、パンや果物の廃棄物、そしてガチョウの糞などを使って、クラフトビール造りを行っています。同ビールは、ウェイステッド・ポテンシャル(Wasted Potential)という名称でシリーズ化されているとのこと。ガチョウの糞は公園で回収され、麦芽を燻すために使われているそうです。これで、市民を悩ましている糞もかなり減っているとか。きわもの的なように思えるかもしれませんが、自然の再生にも貢献している戦略的な取組みとして捉えたほうがいいように思います。


    8/20/2022

    サーキュラーな国③ フィンランドその1

    フィンランドは、北欧5ヵ国の中でも、サーキュラーエコノミー(CE)への取組みが盛んなことで有名です。というのも、フィンランドにはCEを推進する、シトラ(Sitra、フィンランド・イノベーション基金)というフィンランド議会が管轄する機関が、全ての省庁や企業、さらには消費者にまでアプローチして、次々と施策を打ち出しているからです。

    2016年に発表した「Leading the cycle - Finish road map to a circular economy 2016-2025」とか、2020年の「How to create a national circular economy road map」などは、参考になるのではないでしょうか。なお、このシトラは、2018年に横浜で、環境省と共同で世界循環経済フォーラム(WCEF)を開催しました。

    シトラの21年から24年のテーマは、生物多様性の強化と生態系の再構築をサステナビリティソリューションとして掲げると共に、欧州の価値基準に基づいて人間的で公平なデータが価値を生み出す経済(データエコノミー)を創造し、より良い民主主義と刺激的な未来の構築に影響を与える、としています。なんとも壮大で、挑戦的ではありませんか。

    フィンランドの人口は、約550万人と小規模ですが、収入や教育と技能、個人の安全など、全ての点でOECD加盟国の平均値を上回っているとされています(出所: ウィキペディア)。

    今日までの国家としての歴史的沿革や、地理的環境など、単純に日本と比較すべきではないでしょうが、人口減ばかりが問題視されている我が国と違って、参考にすべき点が多々あるように思います。また、同じ北欧といっても、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーのスカンジナヴィア系とは大きく異なることも留意が必要でしょう。


    ブランディング (4)ターゲティング ②セグメントの評価i

    市場特性は、様々な要因に左右されます( ブランディング (4)ターゲティング ①セグメントの評価項目 )。 規模と成長率だけを考慮すればいいというわけでは決してありません。 大規模で右肩上がりに成長を続けるセグメントが有望であることは事実ですが、それ以外の要因が同じであることはめ...