11/01/2022

営業力強化 (2)価値ある提案をするために⑥

ハウスメーカーの注文住宅ほど、コミュニケーション力が問われる営業はそうないのではないでしょうか。同じ戸建てでも、建売と注文では全く違います。注文住宅はまさにその名のとおり、顧客が注文する住宅ですので、基本的にフルカスタマイズです。通常、商談は1年程度かけて行われることが多く、この間、営業が顧客を理解することは当然といえるでしょうが、顧客も営業の癖や考え方を理解することが暗に求められるといえます。というのも、少し考えてみればすぐにわかることですが、注文住宅づくりは、顧客と営業の一種の共同作業のようなものですので、双方の理解が深まらなければ、両者が納得できる家は完成しないといえるからです。

また、担当営業は、社内の設計や開発、生産、インテリアコーディネーター、外部の住宅設備機器メーカーや金融機関などとも連携する必要があります。全てを細かく決めていかなければならず、仕事量は相当なものになります。コミュニケーションだけでできるわけでは当然ありませんが、コミュニケーション力、そのマネジメントができなければ、仕事が進まないことは明白です。

先の顧客との共同作業ですが、残念ながら、うまくいくケースはさほど多くないようです。というのも、(客の勝手な振舞いはここで除くとして)担当営業は家に関する知識は勿論のこと、顧客の要望に向き合い、そのニーズを満たしていく、ある意味底なしともいえる処理能力のようなものを、備えておかなければなりません。顧客ニーズは多様化し、技術革新や、社会上の要請などもあって、製品(製品そのものである家、部材、サービス等)は進化し続けています。

ですが、そのような進化に対応し続けられる能力を持っている営業など、そう多くはありません(もしかすると、統計上エラーか、それに近い割合かもしれません)。このため、会社の教育もさることながら、自身で絶えず努力し続けなければならず、そこにはかなりの忍耐力も必要となります。

営業にとって、おそらく最もハードルが高いことは、顧客の気持ちや望み、考えなどを理解しつつ、いろいろな制約条件(たとえば顧客が用意できる購入予算)をおさえて、具体的な家にして提示することでしょう。考えればすぐにわかることですが、顧客のほうが、その方面(自分自身が望む理想的な暮らしや住まいなど)については長けています。ましてや、顧客が資産家で、海外暮らしも長く、国内外から時々、知人を招待しパーティを催すなどともなれば、ふつうそのようなことに即、対応できる日本人はそう多くはいないでしょう。ましてや、ハウスメーカーの担当営業は、通常、会社勤めですから、そのような志向や態度などをはじめからちゃんと理解しろというほうが、無茶なことです。

それでも、顧客に向き合い、注文住宅を完成させていかなければならないわけですから、それはもうかなり凄いことだといえます。それでは、何故、それができるのかというと、不断の努力やスキル、センスといったこともありますが、何はともあれ担当営業が顧客のことを自分ごととして捉え、考えていくことができるからということに尽きると筆者は思います。頭がいいとか、そういうことではなく、家づくりに対する情熱と、あと強いていえば使命感のようなものでしょうか。

どのハウスメーカーも、個人の努力に大きく依存しているのが実情のようです。ただ、属人的な取り組みだけでは、いずれ注文住宅は殆ど姿を消すことにもなりかねませんから、メーカーサイドとしてはどうにかしなければいけません。

ではどうすればいいのか。対顧客の観点では、AIやアナリティクスで解を導き出すというのは、建売住宅なら実現可能ですが、注文住宅の場合はそう簡単にはいかず、下手をすれば顧客の怒りを買うだけとなります。現時点での筆者のお薦めは、ショートトークと、過去事例などからFAQを細かく作り、チェックシートで備えを十分にすること。あと、適度なスピード感も要求されますから、契約や書類送付等に伴う営業事務のしっかりした専門家を養成し、プロセスを標準化・共通化して、インハウスでシェアードサービス化すること。加えていえば、商談シナリオのようなものを作っておき、幾つかのパターンに対応できるようにしておくことだと思います。

あと、広告代理店同様に、少なくともプロジェクトマネジメントに関するスキルが必要です。少し長くなってきましたので、ショートトーク(商談の場で、会話を途切れさせないための短い会話)などについては、次回以降に触れたいと思います。



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