3/29/2022

脱炭素経営の取組み (1)はじめに③

脱炭素の範囲について、まだ馴染みがないという方は、こちらのURL(環境省・経済産業省のグリーン・バリューチェーンプラットフォーム)にある絵をご覧ください。

範囲は自社と他社に区分され、前者はスコープ1(直接排出)と、2(間接排出)、後者はスコープ3となります。なお、ここでいう自社とは、自身の会社だけを指すのではなく、グループ企業を含み、グループ全体の本社や、子会社などのオフィスビル、工場、社用車等々が入ります。

スコープ1は、燃料使用量を指し、自社の敷地内で直接排出される温室効果ガスの排出量が対象です。スコープ2は、他社から購入したエネルギーを自社の敷地内で使用することによって排出される温室効果ガスの排出量を指し、電力使用量などが該当します。(温室効果ガスはCO2に換算)

前回の脱炭素ブログでも触れましたが、2050年のカーボンフリーに向けて、まずすべきことは、二酸化炭素に関係する活動量か、排出係数を計画的に下げていくことですので、最低限、数式はおさえなければなりません。(数式は、各スコープについて記述するブログで記載予定)

スコープ2は、3つのスコープの中で最もシンプルに捉えることができます。自社の間接排出であるエネルギー(電気、熱、蒸気)は、調達先のエネルギー会社が排出するCO2係数を、使用するエネルギー量に掛け合わせることであり、スコープ1よりはずっと手間取りません。といっても、電気の場合は、調達する電源(火力、石油、石炭、天然ガス、原子力、太陽光・風力・水力・バイオマス等の再生可能エネルギー)を、費用対効果含め、いろいろ検討し始めると、そう簡単なものともいえない側面はあります。

スコープ1は、工業プロセスや、製造設備などでの燃焼から生まれるもの、焼却炉から排出されるものなど、自社から排出されている温室効果ガスが対象です。但し、工業プロセスについては、JCCCA(全国地球温暖化防止活動推進センター)によると、「セメントの焼成キルンなどで石灰石を加熱することにより二酸化炭素を排出する生産工程のこと」を指すとしているため、大半の企業は工業プロセスにおける温室効果ガスを意識する必要がないといえるでしょう。

スコープ3は、自社(自社グループ)に関係する企業・サプライヤーや、顧客全てが関係してくるため、時間がかかる上、何かと大変です。それぞれに対して基本的にはヒアリングなどをとおして確認する必要があります。サプライヤーは上流、顧客は下流に該当し、15のカテゴリーに分類されます。スコープ3は、企業規模にもよりますが、相応の時間をかけて可視化せざるをえないため、排出量の大きいカテゴリーのあたりをつけて、まずはそこから着手するとか、効果が大きそうなところを狙い撃ちするなど、取組みに濃淡をつけることが重要です。一から全てを詳細に可視化していくといったやり方は現実的ではありません。

このように考えてくると、日ごろからの問題認識や仮説、なによりビジョンやバリューとの関係を強く意識した取組みにならざるをえないといえます。この数年来、盛んに使われている言葉でいえば、パーパス(存在意義)経営に沿った取組み推進が不可欠になってきます。

こうなってくると、経営陣は脱炭素に対する自社の見解やメッセージを積極的に発信していくことが求められてきます。自社の進むべき方向やあり姿と、現在のギャップを埋めるためのトランスフォーメーション、各部門の変革が必要になるはずです。そう考えていくと、脱炭素経営の取組みを、CO2フリーにすることをゴールとするのか、またはCO2フリーはあくまでも手段的な位置づけとし、真の狙いは新しい社会・産業に適応できるようにするための自社の変革とするのでは、描くロードマップの中身が変わってくることになります。ましてや、自らが新しい社会・産業の担い手になる、主導するという決意であれば、尚更であるのは言うまでもありません。


3/28/2022

脱炭素経営の取組み (1)はじめに②

何事も取組みをすすめる際、ゴールを設定することは必須であり、その達成過程や行程を明確にすることが重要です。取組みのゴールやマイルストーンがない企業は、率直にいって一流とはいえません。会社の規模や歴史などは関係なく、漫然と取組みをすすめる会社が少ながらず存在することは残念な限りです。ただ、脱炭素の取組みでは、ことさらそういった会社の重みのようなものは通用しないばかりか、障害にさえなりえます。何故なら、ゴール(2050年のCO2ゼロ)が予め決められているからです。

温室効果ガスを2050年にゼロ2030年に46%削減するために、エネルギー源の転換、製造プロセスの改革/改善、ライフサイクルアセスメントによる製品の改革、工場・オフィス棟の省エネ推進、輸配送の見直し等を実現する必要があります。

このような事業活動の広範囲にわたる取組みを、長期間行い続けるには、ロードマップを策定しなければ、方向感や継続性を維持することができません。実際、経営上、大きな決断を伴うことがありえるため、前もってそれに向けた準備も必要となるでしょう。また、日々の業務改善の積み重ねの結果が、イノベーションにつながることも十分に考えられ、行動計画の修正が必要になることも想定しておくべきです。変化対応できる企業こそ、最も強い企業といえます。

脱炭素実行に向けたロードマップには、少なくとも3つのポイントを盛り込むことが求められています。

①2030/2050年目標値と整合性のある数年毎のCO2排出上限値
②再エネ・原子力・火力の目標比率達成に向けた調達エネルギー転換の仕方
③上記①と②の進捗を測定評価するKPI

上記を踏まえたロードマップをすでに策定された企業は少なくないと思います。ただ、CO2削減に影響を与える変動費の中身を細かく分解して把握している企業は、まだそれほど多くないのではないでしょうか。まずはマイルストーン的なものをざっくり引いてからというところが多数を占めるのではと思います。ですがご存知のとおり、しっかり可視化して、優先順位をつけながら、削減すべきところの当りを具体的につけておかないと、現実的に進めることが早晩難しくなるのだろうと思います。

(言うまでもないことですが)経済と環境の両立に向けた脱炭素の取組みで、まずすべきことは、二酸化炭素に関係する活動量か、排出係数を下げていくこと(どちらか片方、または両方とも)です。ですので、そのためには、モニタリングできるよう基盤を整備し、且つ何より、方向を定める前に現状を見る・見えるようにすることが必要であり先決でしょう。但し、全てを完璧にするというのでは決してなく(実際、そのようなことはできません)、できるところから、或いは効果が大きく見込めそうなところから、まずは着手し、改良を加えながら、範囲を広げる、精度を高めていくということが重要です。可視化をするなら、徹底して正確に行うというのは、脱炭素の取組みには関しては適切ではありません。

余談になりますが、新しいことや、まだよくわからないことを始める時には、このやり方(大掴みで全体観を把握、当りをつけながら前進し、改良を加えていくこと)が最良です。ざっくり捉えて、先へ進めていくことが、何より肝要なのです。ここを間違えると、頓挫したり、あらぬ方向に行ってしまったり、時間ばかりかかってしまい、結局、木を見て森を見ず、というようなことになってしまうため注意が必要です。

次回の「脱炭素経営の取組み」ブログでは、CO2削減対象の範囲(SCOPE1,2,3)について、触れていきたいと思います。


3/23/2022

脱炭素経営の取組み (1)はじめに①

新型コロナが収束(または社会と共存)していくことに伴い、脱炭素の議論や取組みが、なお一層強まることは間違いありません。資源高という逆風は一時的にあるかもしれませんが、我々は、(信じようが、しまいが)気温上昇による気候変動リスクに向き合わざるをえないのです。

脱炭素に向けて、日本は2050年にカーボンニュートラル、即ち「脱炭素社会の実現」を表明しました(20年10月の菅首相所信表明演説、所謂「カーボンニュートラル宣言」)。宣言の経緯に鑑みれば、ゼロ化の時期は早まることはあっても、先延ばしになることは考えにくく、また、その過程において、社会・産業の構造や仕組みが大きく変わる可能性も否定できないことから、事前の備えをしっかりしておくことが肝要です。また、その際、脱炭素をリスクとして捉えるのではなく、自社のビジネスに活かしていくというプラス思考でのスタンスでのぞむことが重要だと思います。

ところで、カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを表します。環境省の脱炭素ポータルでは、排出ゼロの意味を、「二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量から、植林、森林管理などによる吸収量を差し引いて、合計を実質的にゼロにすること」とし、温室効果ガスの排出量削減に加え、吸収するものについても強化する必要性があるとしています。

その温室効果ガスには、二酸化炭素はじめ、メタンや一酸化二窒素、代替フロン類4種、計7つが、地球温暖化対策推進に関する法律で定めらています。この7つのうち、最も排出量が多い温室効果ガスは、二酸化炭素、次にメタンとされています。気象庁によれば、2010年度で二酸化炭素が温室効果ガス排出量の76%を占めると発表しました。また、JCCCA(全国地球温暖化防止活動推進センター)では、その割合が2018年度で91.7%としています。

データは計測の仕方や分析手法の用い方などによって、結果に違いが生じるため、どちらがどうとは一概には簡単に言えませんが、いずれにせよ、二酸化炭素が温室効果ガスでは多くを占めているというのは間違いありません。実際、二酸化炭素を排出する人間の世界人口は、2020年で約78億人、1970年はその半分の37億人だったことからもうなずけるのではと思います(国立社会保障・人口問題研究所の人口統計資料集 表1-9 世界人口の推移と推計)。

では、二酸化炭素は(人間以外で)どういうものから出されるのかといえば、電気、ガス、ガソリンなどであり、2019年度の家庭からの排出量は、各割合が電力で45.1%、ガスは22.7%、ガソリン25.1%となっています(JCCCA 家庭からの二酸化炭素排出量)。

以上のようなことから、二酸化炭素で電力が、カーボンフリーを考える時に、真っ先に話題に上がる理由だろうと思います。また、実際、我々の生活者の視点で捉えても、二酸化炭素と電力が、最も身近な存在だからともいえます。

今回は、いつもより少し短いですが、区切りがよいため、これで終わりとし、次回の「脱炭素経営の取組み」ブログへつなげたいと思います。


3/20/2022

管理職4つの壁(2) 理解の壁②

理解の壁、3つのタイプ(思い込み・勘違いなどのタイプA、思考停止のタイプB、責任回避のタイプC)は、前提として、問題が見える場合見えない場合に分けて考える必要があります。問題が見える場合、たとえば、購入した商品が傷んでいたら、我々はどうするでしょうか。食品であれば(たとえば、リンゴだったら)、傷みが激しければ分かりやすく、すぐに対処・交換か、もしくは商品を外から見てそれが一目瞭然の場合は、その商品ははじめから買わない、事前に回避するといったことができます。

PC、スマホ、エアコンや車など、機械ものが不具合をおこしたり、故障した場合も同じこと。すぐに対処・修理を依頼するか、事前に予防やメンテナンスをします。という具合に、問題が見える場合は、非常に分かりやすく、また発生を未然に防止することもできる場合がありますし、また、そうすべきでしょう。

ところが、一見して、問題が見えない場合はどうなるでしょうか。見ることができないものとか、見ているが実はまったく気づかないことは珍しくありません。

たとえば、コロナ禍での在宅勤務の状態化により、部下や同僚のモチベーションが低下していることなどは、通常、見ることができない、または見えづらい問題として挙げられるでしょう。というのも、人によって見方や解釈が異なり、コロナの前と今で、モチベーションなど何も変わらないとみている人もいるからです。また、人によっては、見ているが気づかない例として、企業や事業の統廃合による組織文化の変容などが該当します。組織文化の問題などは、後でじわじわ来る、5年、いや10年以上も経って、はじめて少し気づく、「何か、少し違うな、変だな」という類いのものです。

ほかにも、問題はおよそ分かっているが(或いは、分かっていると思っているが)、原因が分からないとか、根本的な対策を練ることができない・分からないものもあります。こういった問題を素早く察知し、いち早く効果的な対策を打っていくためには、視点を変えたり、視野を広げたり、視座を上げたりするなど、知識や経験を次の実践の場に活かせるような知恵が必要となります。

それでは、これらの見えない問題を発見し、解決するためにはどうすればよいのでしょうか。それは、問題は何か、何故それが問題なのかをはじめに明確にする、問題を定義することから始めることが適切だといえます。問題は、現状とあるべき姿のギャップと、「論理的思考」ブログの「問題を見つける①」で述べました。

上記ブログと重複する部分がありますが、問題は現状とあるべきのギャップ、これが意味するところは、究極的には次のとおりとなります。すなわち、具体的な目標意識やイメージなくして本質的な問題を見つけたり、根本的に解いたりすることは難しいということ。何故ならば、問題は人や組織によって認識の仕方が違う上、解決に向けた時間軸(いつまでに)も異なることから、問題解決アプローチが自ずと異なるものになっていきます。また、問題解決のステップや手順、ロードマップやスケジュールなども一様ではありません。さらに、あと一つ加えるならば、(これを言ってしまえば終わりの感があるかもしれませんが)経験上いえることのひとつに、現状を変えようとする意識のない人には、問題は見えません。これが言い過ぎであれば、問題が見えないケースが非常に多いといえます。

ただ、それでも、問題を解決しなければいけない立場の人にとって、周囲に気づきを与える、解決の場に参画してもらう、或いはそうさせるためには、

現状を見えるようにする、いわゆる可視化・見える化が有効です。但し、見えない人に対して見えるようにするには、その問題実態が、目の中に自然と飛び込んでくるような状態にすること、強制的ともいえる仕掛けが必要です。

従って、問題の内容にもよりますが、たとえば、模造紙を使った巻紙分析(或いは、弊社のダイナミック・ビジュアリゼーション・モデル/DVMと命名しているボトムアップアプローチのコミュニケーションツール)や、分かりやすいプロセスマップなど、ファクトを有無も言わせず、視覚的に整理して提示することが効果的です。

また、説明する対象が経営層などであれば、あまり細かすぎる、部分的な事実提示ではなく、トップダウンアプローチで、対象の全体像を分かりやすく俯瞰できるようにすること、たとえばそういったマップ(弊社ではこれをビジネス・ファンクション・マップ/BFMと命名し、頻繁に活用しています)を用いることが威力を発揮します。

ほかにもオーソドックスなところでは、ロジック/イシューツリーや、3C(Customer, Company, Competitor)はじめとしたフレームワークなどを使います。(ですが、残念なことに、これらオーソドックスなものでは、上述の目の中に飛び込んでくるような状態にすることは、難しい場合が多いです。)

問題はおよそ分かっているが(または、分かっていると思っているが)、原因が分からないとか、対策を練ることができない場合には、問題・原因・対策を定義する基準を明確にしたり、あるべき姿やゴールの設定と共有、イメージをとにかく素描してみることが有効です。また、制約条件の確認と期日の設定、問題の構造化と展開、解決シナリオを作成するといったことが、問題を見えるようにする鍵となります。状況に応じて、やり方はいろいろありますが、およそ多くの場合、論理的な思考が求められます。少々長くなりましたので、続きは次回のブログとします。


3/17/2022

管理職4つの壁(2) 理解の壁①

前回の「管理職4つの壁」初回ブログから、1ヵ月近くが経ちました。今回のブログでは、理解の壁が生まれる原因と対処案について触れていきます。なお、「論理的思考」ブログをまだご覧になられていない読者の方がいらっしゃいましたら、目をとおして頂くことで、理解がより容易くなるのではないかと思います。(必須のスキル論理的思考とは①論理的思考とは②)


理解の壁には、主に3つのタイプがあります。

タイプA: 思い込み、勘違い、決めつけ、一人よがり
タイプB: 思考の停止(そもそも分からないか分かろうとしていない、何が本当のことか分からない)
タイプC:
責任の回避(なんでも他人事、共感なし納得なし)

これら3つのタイプには、現象として以下を見てとれることができます。

タイプAでは、「問題はこれだ」、「これに決まっている」、「それは問題ではない」、「このやり方の何処が悪いんだ」、「(今までこのやり方でやってきたから)これでいい」といった言動が散見できます。

タイプBには、「それは分からない」、「言っていることが分からない」、「話が入ってこない」、「データがないから分からない」、「ちゃんと見ないと何も言えない」、「全てをやらないと何とも言えない」、「起こっていないから分かるはずがない」、「全てが問題だ」など。

タイプCは、「それは自分の仕事ではない」、「それは〇〇の担当」、「他社はやっていない」、「問題などない」など。

何故、こういうことになるのか。読者のなかにも、同じような経験をされた方が少なからずいらっしゃるはずです。筆者は仕事柄、いろいろな職種や職位の方とお話する機会がふつうの人と比べれば多いといえますが、上記のいずれかの言動をする人は、ほぼ決まって、(ストレートに言わせてもらいますが)仕事ができません。それは、お恥ずかしい話ですが、コンサルタントでも同じです。

何故、そういうことになるのか。原因は、タイプAの場合、事実・事案や取り巻く環境に向き合おうとしていない(或いは、向き合い方が分からない)ということになりますが、事情は各人各様です。向き合い方が分からない人は別にして、向き合うことが何かと自分にとって都合が悪かったり、体裁が悪い、格好悪い、これまでの自分を否定しなければいけなくなるなど、いろいろでしょう。

タイプBでは、仮説をもって考えたり、前提をおいて判断しようとしないという一語に尽きます。経験上、仮説(仮説という言葉を使うかどうかはともかくとして)を持たない人や、前提をおかない人に限って、言い訳が多かったり、リスクを口にする傾向が強いと感じています。また、このタイプの人にはイエスマンが多い・・・。

タイプCは、自分では何もやりたくないということが主だった原因といえます。しかも、このタイプの傾向が強い人は、上から指示があっても、何かと理由をつけて、その場はうまく避けています。逃げきれれば、ある意味いいのかもしれませんが、いずれ、何処でどうなるかは誰にも分かりません・・・、

続きは、次回のブログに記載することにします。


3/12/2022

論理的思考(3) 問題を見つける①

問題とは、現状とあるべき状態(または、ありたい姿や期待される結果等)とのギャップといえます。あるべき状態は、会社、事業部、部、課、グループ、個人などによって、様々であり、一様ではありません。誰の立場で考えるのか、何をもってあるべき状態とするのか、目指すべきものにするのかといったことは、意外と難しい場合が少なくありません。

たとえば、筆者は多くの新商品開発プロジェクト(企画から販売までの一連のながれを最適化したり、より良いアイデアの出し方を考えたりコンセプトそのものを作ったり、新しい市場を創造したり、新しい売り方などを考えたりするプロジェクト)を担当してきましたが、どれひとつとっても、社内各部門での問題の捉え方は異なるものでした。マーケティング、研究開発、生産、営業、経営/事業企画等、まちまちで、極論をいうつもりはありませんが、ほぼ全てのケースにおいて、責任の所在は自部門にはなく、マーケにとっては営業、生産にとっては営業か開発に問題ありといった具合です。その問題の中身もいろいろなものがありました。

さらに、問題をいつまでに、あるべき状態にするのかが問題です。ビジネスでは絶えず制約がついてまわるため、その条件をおさえることが非常に重要ですし、制約条件が問題発生の間接的な原因にもなりえます。サプライチェーンにおける在庫の問題などは、その典型のひとつといえるでしょう。

シンプルでオーソドックスな例をとって、少し考えてみましょう。A社は新商品のZを発売、首都圏の主要スーパーのエンドでボリューム陳列を行うなどして一斉に販促を実施しましたが、売上げは伸び悩み、原因として以下のような事実が判明しました。

①各店舗での告知体制が、不十分で目立たなかった。
②販売員が不在で、終日セルフ販売だった。
③競合するB社が、似通った商品をすぐさま開発し、値引きして販売した。
④商品コンセプトのメッセージが、来店顧客に響かず、購入を促すには至らなかった。
⑤販促期間中、ほぼ毎日雨が降っていた。

どれが、問題(問題点)でしょうか? 問題(問題点)でないものがあるとすれば、それはどれでしょうか? 答えは⑤で、これは問題(問題点)ではありません。何故なら、雨(天候)だけは、我々の力ではどうしようもなく、手を打つことができないからです。

念のための補足ですが、問題と問題点は違うものです。通常、問題点とは、問題の原因と考えられるものを指します。ただ、ここであまり厳密に記載することは、問題の捉え方の意味を説明する主旨に従えば、理解を妨げ混乱を招く可能性がありますので、あえて同じようなものとして扱い、述べています。

さて、この問題、どのように捉えていくのがよいのでしょうか。筆者の場合、フレームワークを用いるならば、3つのCで問題を考えます。

Context(コンテクスト) 

Criteria(クライテリア) 

Constraint(コンストレイント)

一つめのCのコンテクストでは、問題はどういう文脈にあるのか、状況や関係などはどうなっているのかといったことを考えます。二つめのCのクライテリアは、そもそも何をもって問題とするのかという基準を検討します。三つめのCのコンストレイントは、インプットを制限したり、活動を制限するような制約条件は何かを考察します。

コンテクストは、たとえば、当社・顧客・競合はどのような関係にあるのか、当社の競争優位はバリューチェーン上の何処にあるのか、ビジネスシステムではどういったものなのか、業界のチェンジドライバーは何か、現行組織はどのような状態にあるのか、といったことなどを考えます。

次のクライテリアは、たとえば、業績(売上、利益、コスト)や、当社との適合性(ビジョンとの整合性、戦略との一致、価値観との調和、リスクなど)、タイミング(主だったものとの連続性、初期投資の期間、保留中のイベントなど)を検討します。

最後のコンストレイントでは、データや情報、人材(質と量)、組織単位、事業分野などを見ます。

以上のことは、問題を見つけるなかの問題を定義するという行為に該当します。少し長くなりましたので今回はこれくらいにして、次回の「論理的思考」ブログでは、問題の定義に続いて、問題を構造化することについて、少し考えてみたいと思います。


3/09/2022

今、何をすべきか (2)有望な事業の売上を最大化させる。デジタルマーケティング①

デジタルマーケティング(以下「DMK」と略します)は、よく分かるようで分からない。そうおっしゃる方が、少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。

DMKは今日、マーケティングの非常に重要な構成要素となっていますが、何故、分かりづらいのでしょうか。思いますに、ひとつには、テクノロジーの進化と共に(または、それ故)、テクニックが先行し過ぎてしまい、当事者以外には分かりにくく、とっつきにくいものになってしまっていることが挙げられると思います。

ふたつめに、そのテクニックと表裏一体となるべきマーケティングとしての理論や概論が、少なくとも国内では、一般的には体系化されず(或いは、体系立てる時間がないのかもしれません)、モノは売れ続け、マーケティングマインドを持たない(または重視する必要がない)一部の事業者がDMKサービスを間断なく提供する。このため、この間に、利用者のスイッチングコストはどんどん高くなり、お手上げ状態になっていく(⇒丸投げ的な状態になり、それが続いていく)、というようなことが挙げられるのではないかと思います。

そこで、このブログでは、このDMKについて、少し整理をし、読者の方々の中でお一人でも多くの人が「じゃあ一度、(本格的に)やってみようか」と思って頂ければ幸いですし、またそのように願っています。

DMKを構成する要素(ハイレベル)は、以下のとおりです。

1. 3つのデジタルメディア(DMKの実行手段であるオウンドメディア、ペイドメディア、アーンドメディア)

2. ターゲット顧客の購買要件とプロセス

3. ターゲット顧客(消費者または事業者)(ここでいう「顧客」は、既存/新規、潜在、見込み等の顧客全般を指します)

4. マーケティング戦略

5. 組織(または事業/企業)の目的とゴール

DMKといえば、ついつい1のトリプルメディアばかりに目がいきがちですが、2から5までの要素が前提としてあってこそ、1が的確に機能します。したがって、取り組む順序としては、5から始まり4へ、その後3から2を検討し、1へと進むことになります。いきなり、1、2、3が混然一体となってしまうと、わかりづらくなり、余計な時間やお金をかけてしまうことになりがちです。アジャイルで1から、というのもありだとは思いますが、早晩、見直しを迫られることになるか、機能不全的な状態になるように思います。

ところで、ここで1点、是非、今回のブログで強調しておきたいことがあります。それは、4は5があってはじめて成立するということです。時々、4から5へと検討の過程が進められたり、また、一部のビジネス書には、戦略があって、ゴールが来るなどと記載しているものもあるようですが、これは間違いです。戦略とは、マーケティングに限らず、営業であろうと、事業や企業全体の戦略であろうと、ゴールを達成するための打ち手が戦略です。より正確にいえば、戦略とはゴールを達成するために、競争優位を発揮できるものを整合的に束ねた打ち手のまとまりのことを指します。ですので、この点を誤って理解していると、本末転倒な施策がでてきたり、単なる辻褄合わせの言葉の羅列になったりします。

紙数を少し超えてしまいました。次回のブログでは、1のデジタルメディアのうち、オウンドメディアについて考えてみたいと思います。


3/06/2022

論理的思考(2) 論理的思考とは②

ものごとを整理する際、順序を決めて、または一定の規則性をもって検討することは、論理的に極めて重要で、前提と言っても差し支えないはずです。順序だてることで、モレやダブリの発生を、(少なくとも、バラバラに考えるよりは)未然に防げる可能性が高まります。また、何より、相手に対して分かりやすく説明することができたり、容易に理解を得ることができます。

たとえば、方角について、洩れなく重複することなく、端的に述べるとしたら、どちらが分かりやすいでしょうか?

①「東・西・南・北」
②「西・北・南・東」

答えは、誰にも一目瞭然のはずです。どちらも方角を構造的に捉えていますが、①は我々がふだん使う一般的な言い回しのため、自然に収まります。

それでは、次は、どちらでしょうか?

③「江戸・明治・大正・昭和・平成・令和」
④「昭和・江戸・令和・明治・大正・平成」

ふつう、大多数の人にとって、③がわかりやすい、または、しっくりくるはずです。何故なら、③は時間の流れに沿っているからです。

もうひとつ、序列で捉えた場合、

⑤「大・中・小」
⑥「小・中・大」
⑦「中・大・小」

このうち、⑦だけがNGです。⑤と⑥については、どちらを先に示すかだけの違いですから、この場合は、どちらでもいいということになります。

大事なことは、序列を口頭で話したり、表記したりする場合、そのルール(話す順序や説明の仕方など)を自分の中で決めておくことです。

大から言うのであれば、その他、似たようなことを話す場合は、大きいほうから順に話し、小さいところへ進めていく。また、高いところから、話を始める場合は、低いところへ落としていく、といった具合にすると、聞いている側にとっては、分かりやすく、すっと話が入ってきやすく、理解を得られやすくなります。

このように、論理的な順序付けを決めて、相手と話す、議論する、資料を作るといった場合に、分かりやすい、理解を得やすい、結論を早く出しやすい、といったことにつながります。

論理的であることは、所謂MECEであること(ダブリやモレがないこと)、ピラミッド構造であることといわれています。(Mutually Exclusive Collectively Exhaustive、互いに排他的・集めると全体的)

あと、抽象度のレベルが揃っていることも必要です。今まで住んだことのある街は何処ですかと尋ねられたら、イサカ、マサチューセッツ州、ホブロンレーンなどと答えればバラバラのため、イサカ(米国NY州)、ボストン(同MA)、ホノルル(同ハワイ州)と答えて、都市名で統一する、抽象度を揃えることが必要です。勿論、イサカなどと答えても、普通、それは分からないため、アメリカニューヨーク州にあるイサカ市というほうが、相手の理解にとっては親切です。ましてや、ホブロンレーンなどは通りの名称ですから、当然です。

人によって、ものの見方や考え方は異なるため、論理的に考え、話をすることは、ビジネス社会では必要不可欠ですし、また、話し合うことの前提条件といえるでしょう。でなければ、日々の仕事で、問題を見つけたり、解決するというのは、かなり難しくならざるをえないと思います。


3/01/2022

今、何をすべきか。電気料金③

電気料金の削減について、弊社事例のひとつをご紹介します。

21年夏から初秋にかけて、大手消費財製造業の関東圏における工場・本社棟、計10施設以上(年間電気料金15億円以上)の料金見積を行いました。

弊社の見積前は、関東圏の地域電力会社1社が全ての施設に電気を供給していましたが、見積後は3社が担当することになりました。いずれも、市場では有名な電力会社ばかりです。

紙数の関係で詳細は割愛させて頂きますが、本件の結果から、次のような仮説または指針を導き出すことができました。

1. 複数年契約は、単年契約と比べ、電力会社にとってリスク発生要因となるため、思い切った価格の削減につながらない。

2. 包括契約は、事業会社毎に削減額でかなりの差が発生し、電気支出量の大きい事業会社にとっては、削減余地を残したままの契約となる(支出量の小さい会社が得をする傾向が強い)。

3. 電力会社との交渉過程は、戦略的に且つできる限り透明化し、結果は都度、電力会社含め関係者で即時共有する。

1については、意外に思われる読者の方が多いかもしれません。1年契約よりも2年、3年と契約期間を延ばせば、その分だけ安くなる(または安くできると聞いている)と思い込んでいる方もいるはずです。

2については、1以上に驚かれる方がいると思います。本件の電力需要家が、まさにそうでした。持ち株会社視点で見れば、良いかもしれませんが、それでも程度の問題がありますし、持ち株会社下の事業会社各社にとっては看過できない事柄です。

3は当たり前のように思われる方が多いはずです。ただ、いかに戦略的であるべきか、また、透明性の担保の仕方と共有方法には工夫が必要です。だからこそ、タイムリーなコスト削減につなげることができます。

残念ながら、ここで詳細に記載することはできませんが、本取組みによる定量成果(コスト削減額など)について、ご関心がありましたら、お問い合わせください。→ info@truerisep.com

上述の仮説や指針の妥当性を、実感頂けるものと思います。なお、弊社の電気料金削減の取組みは成果報酬形式のため、もし成果(=現行価格を下回ること)がでなければ、費用が発生することはありません。


ブランディング (4)ターゲティング ②セグメントの評価i

市場特性は、様々な要因に左右されます( ブランディング (4)ターゲティング ①セグメントの評価項目 )。 規模と成長率だけを考慮すればいいというわけでは決してありません。 大規模で右肩上がりに成長を続けるセグメントが有望であることは事実ですが、それ以外の要因が同じであることはめ...