1/30/2023

問題解決力 (2)問題とアプローチを考える ①3つのステップ

問題解決は3つのながれ(プロセス)をひとつのセットとして捉え、行うことが重要と前回のブログで述べました。3つのプロセスは、「問題とアプローチを考える」、「問題を解く」、「結果をまとめて説得する」です。(問題解決力 (1)はじめに 全体のながれ)

最初のプロセス「問題とアプローチを考える」は、次の3つのステップで構成します。

1.1 問題を定義する

1.2 問題を構造化する 

1.3 問題解決のアプローチを練る

はじめの「問題を定義する」で、まず検討すべきことは、問題を考える範囲を決めることです。ここで注意すべきは、できる限り視野を広くして、視座を上げて、大きく対象を見ることです。いきなり物事を狭く捉えることは避けなければなりません。ものの見方、問題に対する捉え方は、人(知識、経験、価値観など)によって、部署や立ち位置によって、随分違います。読者の方の中にも、部署異動によって、昨日まで言っていたことと、真逆のことを話したりする(またはそう言わなければならなくなる)経験がある方も、いらっしゃるのではないかと思います。

また、同じ部署内でも、立場によって、考え方、問題に対する向き合い方がかなり違うケースが珍しくありません。筆者の経験でいえば、マーケティング部門などは、その典型ではないかと思います。実務担当者、部課長クラス、担当役員など、それぞれのベクトルがバラバラだったということも少なくありませんでした。見ている方向や考え方などがかなり違うわけですから、問題の捉え方や対処の仕方などは、当然のことながら大きく変わってきます。同じ部門でさえ、そういったことがあるわけですから、部門が異なれば、利害も衝突し、問題解決など到底簡単にはいきません。ましてや、本質的な問題の発見とその解決など、望むべくもないでしょう。ですので、問題を扱う範囲を決めることが非常に重要となります。

それでは、その範囲はどうやって決めるのがよいのでしょうか。やり方は幾つかありますが、筆者は、顧客の利益を達成すべき最優先事項として考え、その顧客の課題を他社とは異なる独自のやり方で解決しているか、そういった問題認識をもって、自分たちの仕事を見るのが最も良いだろうと思います。

ただ、これでは時間もかかるし、少々大仰すぎて、考えること自体をやめてしまう方もいらっしゃるかもしれません。であれば、会社が考えるあるべき姿か自身が考えるあるべき姿と現状のギャップを問題と捉えて、問題を挙げていくのが、その次に良いでしょう。ただ、これも、あるべき姿をはっきりと明示している企業、または述べることができる個人は、そう多くはないように思えます。考えることはあっても、具体的に述べることは難しい場合もあるでしょう。

加えて言えば、ここでも誰の立場で考えるのかが問題です。意思決定者に向き合って考えることが重要にはなりますが、その意思決定者とは誰なのか。会社のトップなのか、事業部なのか、それとも部、課、グループなのか等々。もしくは、それらが何らかの理由で難しいようであれば、自分自身なのか(但し意思決定者ではないかもしれませんが)。ただ、何をもってあるべき状態とするのか、いつまでにあるべき状態にするのか、目指すものにしていくのかといったことに、解をだすのはそう簡単ではないでしょう(とはいえ、それほど複雑に考えなければ、意外と早く答えを出せることも少なくありません)。

そうなってくると、次の考え方は、自分の立場より2段階くらい上の人の目線で、問題を考えてみる、想像してみるのがよいと思います。2段階程度上が難しければ、1段階上でやってみる。事業本部長であれば、たとえば代表権を持つ副社長やトップの目線で、課長クラスであれば部長の頭の中を、思い描いてみる。主査であれば、課長か、思い切って部長が悩んでいることを考えてみる(最近は主査がたくさんいて、主査の上が部長ということもあるため、それほど難しくないかもしれませんが)。そんなのきれいごとだと言う方がいらっしゃったら、あなたの直属上司が抱えている問題を、ひとまずご自身の問題としてみてください。意外と、面白い気づきや、問題を考える上でのキーワードがすぐに得られるかもしれません。


1/23/2023

問題解決力 (1)はじめに 全体のながれ

21年秋にデジタル庁が発足し、デジタル化は官民挙げての取り組みになりました。ですが、相対として成果が多数でているとはいえないようです。そのためか、国内では今、リスキリングが声高に叫ばれています。

デジタル化に直結するプログラミングをはじめとしたIT関連スキルは勿論重要でしょう。データ分析/統計解析や、マーケティングなどのスキルも需要が多いとききます。ただ、デジタル化は目的ではなく、経営などの課題を解決する手段ですから、課題を特定したり、そもそも問題が何かを見極めたりすることがまず必要です。実際、これなくして、習得したスキルを職場で活かそうとしても、そこでの根本的な改善や業績の向上といったことにはつながらないのは明白です。

職場にはたくさんの問題がありますが、本質的な問題を見つけること、これが何より重要です。誤った問題提起に基づいて、解決策を考え、実行に移すことほど、組織を疲弊させることはないといえるでしょう。解決すべき問題自体が間違えているわけですから、問題を根っこから解決することなど期待できるはずがありません。

問題解決は、次のような3つのながれ(プロセス)で考えるのが適切です。

1. 問題とアプローチを考える

2. 問題を解く

3. 結果をまとめて説得する

詳しくは、次回以降の本ブログで述べていきたいと思いますが、その前に、問題解決で必ずおさえておかなければいけない重要なポイントを3つ、ここで触れておきます。

第一に重要なこと、そしておそらく最も重要なことは、目的やゴールに沿って、問題を考えるということです。何に対する問題なのか。また、誰の(またはどの部門の)どういった立場で問題を考えるのか。それによって、問題そのものの見つけ方や捉え方が変わってきます(論理的思考(3) 問題を見つける①)。それ故、はじめに、問題に向き合うにあたり、その主旨や意図を考え、はっきりさせておくことが、非常に重要となります。

別の言い方をすれば、的確な問題の発見/定義なくして、問題の解決にはつながらないといえます。ましてや、自分の周りから見てとれる現象だけを捉えて、即、解決策をだすということはあってはなりません。たとえば、売上げが低迷しているから販促費をもっと投下しようというのは、その典型といえるでしょう。過去の成功体験や経験則にのみ頼って打ち手を考えるのではなく、事実を見つけ、積み上げていく。思い込みを排除して、論理的に考えていく。問題を深堀して、要素を分解/構造化していくことが必要です。(論理的思考とは①論理的思考とは②)

次に重要なことは、定義した問題の解決策を考える時は、必ず取組みの優先順位付けを明確にすることです。問題は複雑に絡み合っていることが多く、大半の場合、取捨選択が必要になります。全ての問題を濃淡つけずに、片付けようとするのは、あまりにも非現実的です。人・もの・金・時間などの経営資源は有限ですから、その配分は戦略的に行わなければなりません。また、優先順位づけることで、社内外に対して、該当する問題の重要性や、当該担当部門(または会社)の意志などをはっきりと示すこともつながります。

なお、取組みの順序は、取組みがやりやすいものからではなく、インパクトの大きさや、リスクの程度、関係者の権限や責任、能力、職場の力学や癖、組織文化、リーダーシップなどを考慮します。問題の緊急性重要性と、立案した解決策の実行可能性や難易度、解決に要する時間などで決定することになります。

3つめに重要なことは、3つのプロセスをひとつのセットで捉えること(考える~解く~説得する、以上が1セット)です。問題解決は、この3つ全てを時間を空けず一気通貫でやらなければ成功はしませんし、また、意味がありません。

ビジネスパーソンにとって最も重要な能力は、問題を解決する力だと筆者は思います。問題解決力を磨いていくためには、まずは自分の頭で考えてみること、問題解決の第一歩はここから始まるといっていいでしょう。そして、考え続けること。問題だらけの世の中ですから、職場などは言うに及ばずです。問題解決力を習得し、実践に活かす。そして、また更なる習得・向上を果たし、それを再び、実際の問題解決に適用させていく、つまり実践する。こういった観点では、職場はまさに問題解決を実践する宝庫です。今すぐにでも、いろいろなタイプの問題に、向き合うことができます。

ところが、コロナ禍が長く続いていることもあってか、問題を解決する能力はおろか、問題に向き合おうとさえしない、或いは問題を回避する、もしくは問題を決めつける、または誰かが言ったもっともらしい問題と解決策に同調するというような傾向が、以前にも増してますます強くなっていると感じます。更にいえば、問題はわかっているにも関わらず、何もせず放置する。2010年代半ばくらいからでしょうか、日本人なら誰もがその名を知る大手企業でさえ、そういうことが散見されるようになりました(大手企業だからなのかもしれませんが、そういう会社は幾つもあります)。人手が少なくなり、各人の職務に余裕がなくなったというようなことだけでは説明がつきません・・・。

このブログReflectionsは昨年の2月から始めました。その5回目でも触れましたが、今の世の中、はじめに感情が来て、それだけで判断してしまうといったことが非常に多くなっていると感じるのは、もはや筆者だけではないでしょう。我々の日常生活でもそうでしょうが、ビジネスであれば尚更、「感情」は結論を出したあとにすべきです。

つまり、はじめに「事実」、次に「論理」、その後に「結論」、このながれを崩さないようにすること。感情はその後に表すことが重要です。今の時代こそ、まさにこういった思考法や考え方が必要とされていると筆者は強く思っています。(論理的思考とは①)

このようなことですから、リスキリングがブームになりつつある今、あらためて問題を解決することについて、真正面から取り上げてみたいと思いました。問題解決は奥が深く、また、難解なものになりがちですが、できる限り体系的でわかりやすいものにし、述べていくようにします。

問題解決こそ、頭を使って考える知的作業です。昨今、転職は珍しくなくなりましたが、問題解決力を正しくデモンストレーションできれば、年齢を問わず、異業種への転職なども難しくないでしょう。応用はいくらでも効くはずです。

次回は、問題を定義することから始めます。Reflectionsの「論理的思考」における「問題を見つける」で記載した内容と、どうしても重複するところがでてしまいますが、この点はどうかご了承ください。


ブランディング (4)ターゲティング ②セグメントの評価i

市場特性は、様々な要因に左右されます( ブランディング (4)ターゲティング ①セグメントの評価項目 )。 規模と成長率だけを考慮すればいいというわけでは決してありません。 大規模で右肩上がりに成長を続けるセグメントが有望であることは事実ですが、それ以外の要因が同じであることはめ...