6/29/2022

新規事業創出 (4)戦略⑦

前回は事業性の評価の最初のステップ事業の魅力について述べました。今回はステップ2のリスクについてです。リスクは、およそ次の5つに分けて、検討・評価するのがよいと思います。市場のリスク、技術のリスク、組織のリスク、財務のリスク、競争関係のリスクです。

市場のリスクでは、新規事業創出により、市場が形成されるかどうか、形成に係る時間がどれくらいか、多大な時間がかかったとしても相応の規模が伴うものか、といったことを検討します。

技術のリスクでは、そもそも技術開発や製品化などができるかどうか、技術開発の課題を克服できたとしても当社が業界標準またはリーダー的ポジションを握れるかどうか、自社技術で足りない部分がないか、あっても提携などで埋めることができるか、或いはそもそも技術開発が必要ないのか、といったことなどを検討します。なお、この技術には、研究開発上の技術に限らず、生産や営業といった分野も含みます

組織のリスクは、新規事業を開発していくにあたり、本来、当社にその実行能力があるのか、過去に経験のない未曽有の取組みを(極端に言えば)全社挙げて行わないといけないのかといったことから、利害関係のある組織やコンフリクトを起こす事業が自社内にあるのかとか、取組み推進に必要な組織の数や人数などを考慮していきます。なお、ここでいう組織には製販の直接部門に限定することなく、間接部門やその要員も対象になります。新たに必要となる純増分の人員数を考慮しますが、既存事業とリプレースする場合は当該人員全てを検討する必要があります。

財務のリスクは、投資額の大きさに尽きるといえます。研究開発投資はじめ、生産、販売などを対象としますが、人件費は含まないほうがいいでしょう。

競争関係のリスクでは、競争関係の数や強さ・激しさを検討します。競争がまったくないということは通常考えにくいですが、もしないとすれば、それは非常に低リスクになることになります。

これらリスクについては、基準値を設定し、5段階くらいに分けて、定量的に採点することが、検討・評価をやりやすくできます。全てを同じように評価するのでも構いませんが、自社が重視するものに合せて、重みづけするほうがより現実的かと思います。事業の魅力についても、同じやり方で統一します。

なお、事業の魅力とリスクは、多くのケースにおいてトレードオフの関係にあり、通常、大きな魅力がある事業には、大きなリスクが潜んでいると考えるのが妥当でしょう。

最後の事業化可否評価は、事業の魅力とリスクを組み合せて、最終判断するところになります。筆者個人としては、事業の魅力とリスクの評価結果から、GOの判断をすることに少々躊躇するところがあったとしても、最終の意思決定者が、新規事業開発メンバーの顔触れや、リーダーの実績や覚悟、肝の据わり方次第では、先へ進めてもいいのではないかと思います。人の関わり方次第で、状況は変わる、または変えることができることと、潜在的な可能性全てを評価が反映しているわけではないから、というのが理由になります。

なお、評価基準には定性的な要素が入り込まざるをえず、また、評価者の主観も入ってきます。また、ご推察のとおり、重みづけの仕方によっては、評価結果が大きく変わる可能性も否定できません。このようなことを絶対的に回避する方法はありませんが、ひとつには評価のタイミングと内容を増やしたり、変えたりすることで、魅力度の精度を上げたり、リスクを低減させることができます。実際、事業性の評価フェーズ以降において、たとえば事業検証フェーズで、最終評価・判断をするのがふつうです。

ふたつめには、新規事業開発案件のナレッジを蓄積し、社内でいつでも参照できるようにしておくことが挙げられます。新しいことに取り組むにあたり、過去事例を参考にするのは、時には制約となったり、問題が生じたりすることもありますが、何もないよりははるかにましですし、生産性の高い効果的な評価ができる素地を整備することに役立つはずです。また、最終責任者が誰になろうとも、過度な属人化を防ぐことにも資するはずです。



6/27/2022

新規事業創出 (4)戦略⑥

「イノベーションマネジメント」ブログでは、新規事業戦略策定を3つのフェーズで構成しています。はじめに「アイデアの創出と定義」、次に「事業デザインの策定」、最後は「事業性の評価」です。今回は、3番目のフェーズである事業性の評価について、簡潔に述べたいと思います。

事業性の評価は、3つのステップで成立することにします。第一に「事業の魅力」、第二に「リスク」、第三に「事業化可否評価」などとなります。あと、ゼロ番目のステップとして「事業性評価指標の定義」を、状況に応じて加える必要があるでしょう。ただ、用いる指標は基本的に、新規事業創出共通にすべきで、統一した基準で運用する必要があります。新規事業創出案件ごとにならないようにする注意が必要です。なお、1番目と2番目のステップはオーソドックスなものにしましたが、ほかにも自社適合度を別枠で取り上げたり(特に、海外市場に参入する場合、当該地域によっては必要になる場合があるでしょう)、また、事業性評価を取組みのかなりの初期段階で行う場合は、企画の成熟度実行可能性などで行うといった工夫も重要になると思います。

事業の魅力については、市場の魅力自社戦略との適合性獲得価値などを、評価項目とします。各項目について、いくらでも細分化していくことができますが、あまりにも多くの事項を盛り込んだり、総花的になるのは避けるべきで、尖った新規事業案を殺してしまいかねません。また、何度も繰り返し時間をかけて慎重にするのもNGで、環境が変わってしまう可能性があります。

ここでいう市場の魅力には、市場規模と顧客ニーズの大きさや強さなどを、主な判定指標とするのがよいでしょう。そして、結果として参入機会がどれくらいかを判断します。

自社戦略との適合性では、当該新規事業の戦略的な狙いが当社事業全体とアライメントしているか、中核となる実行能力は備えているか、また、新規事業をグイグイと引っ張っていく、或いは確実な後押しや、何かあった時の責任は俺がとる的なリーダーシップも、重要な判定項目になります。どれだけ、美しいコンセプトをうたっていても、それを最後まで執念をもってやり遂げる態度や気迫といったものが希薄であれば、新規事業が成功することはおろか、実現されることもおぼつかないかもしれません。

獲得価値については、利益獲得の方法を評価するわけですが、結果としては数値、営業利益と売上、あと利益や売上に表れない無形資産として何が得られるかという点も重要になるといえます。たとえばブランド価値の向上(算定式はありますが、実際のところどうなのか)とか、新しい技術力の獲得、他事業への水平展開の可能性、特定機関などとの関係強化、社会貢献などが該当します。なお、営業利益については、利益高よりも利益率のほうが、売上を指標に入れていますので、適切だろうと思います。

リスクは、次回のブログで述べることにします。


6/21/2022

新規事業創出 (4)戦略⑤

事業デザイン策定の2回目は、3つめのステップ「活動範囲と重点管理項目の設定」になります。

活動範囲は、自社で行う業務の機能を明確にします。もしくは、自社では行わない機能をはっきりさせておくということ。また、できれば特に注力する機能についても検討しておいたほうがいいでしょう(自ずと注力する機能が分かる場合もありますが、そうでない場合はメリハリをつけるという意味でも、誰にもわかるようにしておいたほうがいいと思います)。

併せて、自社製品/サービスを補完する周辺の製品/サービスがすでに存在している場合などは、その周辺製品/サービスを提供している企業と協力関係を築くか。或いは、上市スピードを上げるために他社と共同して開発または生産するのか、その場合は誰と行うのか。実行にあたり、投資は必要か、新たに工場を建設するのか、買収するのか、ライセンス契約を結ぶのかなど。

重点管理項目は、提供価値もさることながら、価値獲得の方法をどのように管理するかを検討します。この段階で、あまり細かいところを考えるのではなく、バリューチェーンを横断して、管理すべきところを見ておくべきです。たとえば、バリューチェーン上で、誰が最もパワーを持っているのか、その者は価格決定権をどれくらい有しているのかといったことになります。仮に、自社にとっては新規でも、すでにその市場に他社が数社程度参入している場合、その所与の条件下における参入障壁はどれくらいあるのかなどを検討します。

パワーを持つプレイヤーの競争力の強さを、事前に確認し関係者で共有することは重要です。たとえば、業界標準はあるのか、最終的なバリューチェーンの支配者は誰か、新規事業が対象にするエリアにおいて絶対的なポジションを築いている者はいるか、(自社から見て)優良とする顧客とのリレーションを先行して築いている者はいるか、技術力は、コストは、等々。

こだわって検討すればきりがないという面がありますので、全てを完全にこなすというよりは(勿論、それができれば素晴らしいですが)、濃淡をつけて素早く全体をおさえていくことが、前へ進めるという観点でははじめは重要だと思います。ただ、自社でここだけは必ずはっきりさせなければいけない、ここはこだわりどころというところが幾つかあると思いますから、そこは少々時間をかけてでもしっかりやっておくということでいいのではないでしょうか。

ただ、どのような新規事業であっても、必ず注力して頂きたいことは、選定したターゲット顧客に対して、どういった価値を提供するのか、この1点については、徹底した議論、検討を行って頂きたいと思います。特に、B2C領域であれば、はじめから存在しない顧客とか、もう興味を失ってしまっている顧客層などをターゲットに掲げ、新規事業のアイデアを正当化する(意識することなく、自然と正当化してしまう)ことがそう珍しくないからです。

次回は、「事業性の評価」フェーズについて、触れたいと思います。


6/19/2022

新規事業創出 (4)戦略④

今回のブログは「アイデアの創出と定義」の次の段階(フェーズ)にある「事業デザインの策定」の1回目になります。このフェーズでは、これまでの拡散的思考から、収束的思考法へ、つまりロジカルシンキング的に議論を行うことが重要となります。このように書くと、拡散思考をやめなければいけないのかと解釈される方が稀にいらっしゃいますが、そうではありません。思考を拡散させているだけでなく、ロジックを用いて収束させる思考法も取り入れないといけない、そういったことに注意してくださいということを申し上げているわけです。

また、そのように言うと、今は何も分からないから、見えないから出来ないなどという方がでてきます。新しいことに取り組む時、考える際には、前提をおく仮説をもって考え、行動する、検証するということが不可欠です。もし、これができない、やりたくないというような人や組織がいらっしゃるようであれば、その時点で新規事業に向き合うことは即時やめられたほうがいいでしょう。時間を浪費するばかりですし、何より、新規事業(ならびに新製品や新サービス)開発の醍醐味は、分からないからやるのであり、分からないからやらない、やりたくないでは、本末転倒だと筆者は思います。わかっていることだけを、何故いつまでもやり続ける必要があるのでしょうか。

事業デザイン策定には、「ターゲット顧客の選定と提供価値の明確化」、次に「価値獲得モデルの検討」、最後に「活動範囲と重点管理項目の設定」の3つステップがあります(名称が少し長いですが、ここではこれでいくことにします)。

提供価値(Value Proposition)は、選定したターゲット顧客にとっての価値です。その新規事業が提供するモノを、顧客が購入/利用することで、どういう利点が得られるのかということです。提供側からすれば、何の価値を、どのように提供するのかということになり、これが他社と同じ(或いは、顧客にとっては同じように見える)であれば、顧客にとってのスイッチングコストを考慮した場合、その価値は殆ど意味を成さない(価値がない)ということになります。

価値獲得(Value Capture)は、その価値を提供することで、提供側はどのように利益を上げることができるのか、その利益獲得の方法のことをいいます。単なる提供(=販売)価格ではなく、〇〇%コストを低く抑えることで利益を高めるとか、そのためには競合他社も保有している基盤技術(もしくは量産技術、包装技術など)の△△を徹底してダウンサイジングする、或いはアライアンスを組んだり、外部に委託することで簡素化するなど。或いは、ライフサイクルを考慮した取引規模や、顧客とのリレーションの深さや広さ(特にB2Bの場合)、他顧客セグメントへの水平展開、または景気循環を踏まえるなど、というようなことを検討し、詰めていきます。少し難しく感じるかもしれませんが、まずはシンプルに考え、現行事業の利益獲得方法と何が違うのか、同じなのか、といったことから考え始めればいいのではないかと思います。

続きは次回で述べることにしたいと思います。


6/15/2022

新規事業創出 (4)戦略③

今回のブログは、「アイデアの創出と定義」の2つめのステップ「新規事業のアイデア創出」から始めます。ここでは、前ステップのアウトプットである戦略仮説について、関係者で議論し、皆が共通の理解を持つようにすることが重要であり、これがひとつめのタスクになります(候補アイデアの良否や当該アイデアに対して同意できなくても、考え方や候補アイデアの主旨は理解できているということが重要です)。

次に、想定している顧客に対する提供価値を考え、新規事業の候補となるアイデアを作成していきます。作成する際、アイデアは複数あるべきです。ひとつかふたつ程度しか候補となるアイデアがない場合は、視点を少し変えるなどして範囲を拡張し、候補アイデアをたくさんだせるようにしておくべきです。

まず新規事業のアイデアシートが必要です。なるべく多くのアイデアを発想し、記録に残しておき、後に参照できるようにしておくためには、この段階では1アイデアにつき、シート1枚が適切だと思います。特に、マネジメントの観点では尚更そうでしょう。シートには、誰に対して、どのような価値を提供するかを記載します。その際、何がそのアイデアの魅力になるかをできる限り明確に記すことが重要です。また、併せて、どのように利益を上げられるのかについても、言及できればそれに越したことはありません。

3つめのステップとなる「新規事業のアイデア定義」では、前ステップの「新規事業のアイデア創出」のアウトプットを絞り込むことが主たるタスクになります。絞り込むためには、複数、できれば5つ以上くらいのアイデアは必要だと思います。もし、ひとつしかない場合は、前ステップまたは前々ステップに戻って、タスクをやり直したほうがいいでしょう。

絞り込むにあたり、当該アイデアの魅力リスクなどを検討します。魅力については、そもそも当該アイデアが魅力あるものかを、顧客、市場、製品/サービスなどの観点で評価します。併せて、当該アイデアの自社適合度もスクリーニングします。当社事業にフィットするか、コストはどれくらいかかりそうか、当社事業に何をもたらすのか、といった視点で検討します。

リスクについては、この段階ではあまり考慮しなくてもいいと筆者は思いますが、それでも過去からよくみられる事案や、経験などから顕在化しそうなリスクがあれば、識別できるようしておく、先手を打てるようにしておくことは重要です。ただ、リスクについては、判断する個人ごとに異なることが珍しくないため(特に、伝統のある歴史が長い企業では尚更)、組織的に対処できるような分析的・科学的、体系的なリスクの捉え方・対処の仕方を備えておくことがよいといえるでしょう。ビジョンをしっかり作っていても、リスクを好まず排除する傾向が社内や組織に強くあれば、どれだけ優れたアイデアがあっても育ちません。

また、リスクに関係するものとして、サイコトラップというものがあります。本題ではないため、ひと言だけ書いておくと、心理的な落とし穴を検討することによって、評価の実効性を高めることにつなげます。よくある例では、木を見て森を見ずというものがあり、たとえばアイデアを断片的にみて解決しようとする、あれもこれも必要としてつけ足していくというもので、これは避けなければなりません。

この段階で、全てをふるいにかけて、候補アイデアをひとつに絞り込むのは到底適切とはいえないため、仮に10のアイデアを絞り込むのであれば、3つから4つ程度にするのが、現実的だろうと思います。また、この段階では、あくまでもアイデアですので、判断が付きかねる場合は、次の段階(事業デザインの策定)へ進めてみるのがよいといえます。

なお、仮に、ひとつにせざるをえない(たとえば、残り全てのアイデアはいずれも魅力的でない場合など)は、絞り込みの基準を改めるか、絞り込む人(評価者)の見方を確認し、評価者を増やすか変えるか、或いは、再度、前ステップに戻ってやり直すかといったことをすべきでしょう。

6/12/2022

新規事業創出 (4)戦略②

アイデアの創出と定義」では、選定した範囲を対象に、外部と内部の環境を詳細に分析します。PEST5F(ポーターのFive Forces)、3CSWOTなどを使って、深く考えることが重要です。SWOTや5Fなど、当たり前すぎて、それで大丈夫なのかと思う方が稀にいらっしゃいますが、分析ツールはシンプルなものほど、使い方次第で、大きな発見や、誰にもわかりやすいものに整理することに役立つといえます。凝ったフレームワークが駄目というわけではありませんが、フレームワークの形(他者からの見え方や一種の自己満足感)にこだわりすぎて、中身が薄っぺらい、表層的なものになるようでは本末転倒ですので、ここのところは十分に気をつけたいものです。実際のところ、SWOTマトリクスから、戦略仮説は導くことができます。

シンプルにいえば、ある対象(選択した市場・顧客製品/サービス技術機能提供価値など)に対して、強い問題認識があれば、競合・代替リソースチャネルとの組合せや対比などによって、自ずと領域・ドメインが選定でき(問題意識が強いからこそ、選定できる)、そこから仮説が導出できます。

「アイデアの創出と定義」をオーソドックスに行う場合、ながれは3つのステップで構成します。はじめに「戦略仮説の導出」、次に「新規事業のアイデア創出」、最後に「新規事業のアイデア定義」となります。

ステップは、幾つかのタスクで成立します。たとえば、ひとつめの戦略仮説の導出では、外部環境の分析内部環境の分析環境分析のまとめ戦略領域の選定、などとなります(この場合は4つのタスクで成立します)。

環境分析のまとめでは、たとえばSWOTマトリクスを使って、分析した結果を整理していきます。マトリクスでは、自社の技術開発や製品開発、マーケティングや営業、調達や生産、また、人材や組織文化など、自社内部の環境を分析したSWの縦軸と、外部の環境変化が事業に与える影響をOTの横軸に据えて、立体的に考察します。

最も優れた強みと、最も好い機会を組み合せるか、強みと脅威を合せるかなど、マトリクスで検討を重ね、戦略領域を選定します。内外環境を広く、深く、的確に分析できていれば、確実に複数の領域が浮かび上がり、そこが攻めるべきホワイトスペースとなります。

ところで、各タスクを行うにあたり、インプット情報、たとえば外部環境の分析タスクでは、市場や顧客、競合の動向が必要になります。これらのインプット情報を使って、タスクを実行し、アウトプットが作成されます。なお、後日、「イノベーションマネジメント」ブログで、プロセスについて記載しますが、このインプット~タスク(または広くプロセスと呼ぶ)~アウトプットの関係を、一対のものとして捉えることは非常に重要です。担当者の勝手な思い込みを排除したり、成果(=アウトプット)につながらないタスクを、状況やバランスの問題はあるにせよ、とりやめることにも役立ちます。さらにいえば、研究だから、プロセスは関係ないだろうなどといって勝手自由に振る舞う研究者が、しかも上席でいるようなことがあれば、即座に退場してもらわないと、その組織に未来はないといえるでしょう。

続きは、次回のブログへまわしたいと思います。

PEST(ペスト): Political(政治的), Economical(経済的), Social(社会的), Technological(技術的)
5F(ファイブフォース/Five Forces): 売り手の交渉力、買い手の交渉力、新規参入の脅威、代替品の脅威、業界内での競争関係
3C: Customer(顧客), Company(自社), Competitor(競合他社)
SWOT: Strengths(強み), Weaknesses(弱み), Opportunities,(機会) Threats(脅威)
SWOTマトリクス: SO(強みx機会), ST(強みx脅威), WO(弱みx機会), WT(弱みx脅威)


6/08/2022

新規事業創出 (4)戦略①

戦略を創る。そう簡単なことではありませんが、時間は有限、ましてや新規事業の場合、どのホライゾン象限を選択しようとも、効果は勿論ですが、できれば効率よく(少なくとも必要以上の時間はかけないで)策定していきたいものです。

戦略を策定する際、できる限りフレームワークを効果的に使って、進めていくに越したことはありません。あまり込み入ったフレームは逆にそれを埋めるための作業に時間を費やしてしまいがちです。適度にシンプルなもの、でも見落としがちなポイントなどはしっかり押さえてあるものが望ましく、自社に合ったものを採用するのがよいでしょう。望ましいのは、自社固有のものを作り(または何かを改良して)、方法論していくことがベストです。

話が少しそれますが、大手経営コンサルティング会社の場合、何故、経験の浅い若手や、当該領域において実績のない者がコンサルティングできるかというと、方法論があるからというのが大きな理由のひとつになります。時々、「コンサルは地頭がいいのが集まっているから、出来るんだろうけれど・・・」などと仰る方がいらっしゃいます。まったく外れているわけではないのかもしれませんが、筆者個人の感覚では、本当に地頭のいいのはそんなにいないと感じています。むしろ必ずやり抜くとか、絶対成功させるといった、謂わば執念というか、執着心のようなものが、もしかすると一般的な企業に在籍する人たちよりは強い(または多い)ように感じることが少なくありませんでした。執着心も、プロジェクトですから、期日が決まっているため、プレッシャーと共に、更に強くなったりします。

コンサルティング会社には、多くの場合、独自の方法論があって(分野・領域によっては当然ない場合もありますし、会社によってはかなりの差はあります)、それをうまく活用しています。「うまく」というのは、そのまま適用する場合もありますが、担当コンサルタントの経験値・知見や、対象案件を取巻く環境などに合せて、方法論をカスタマイズする(コンサルタントなら誰でもできるし、やっているわけでありませんので誤解ないようにお願いします)、そういった点が、多くの一般企業とは異なります。方法論+執着心で、かなりのことができると言えるはずです。

さて、新規事業の戦略を策定するにあたり、はじめに前提としておさえておくべきことがあります。それは、なんでもかんでも自社でやろうとしないことです。あらゆることに提供できるリソースを持っている企業であれば、それでもかまわないかもしれませんが、普通にいえば全てに対応できる企業などはまずない(または、殆ど存在しない)と言っていいでしょう。

スピードは非常に重要です。令和の時代、こんなことは分かりきったことではあるのですが、本当に得心しているのであれば、少なくともマネジメントは外部リソースをもっと思いきって活用すべきでしょう。

自社にとって、または経営者にとって、社内で行った聞こえのいい環境分析などは、何の役にも立たないばかりか、打ち手を考える上で、障害にもなり、時には致命傷をもたらす結果を招きます。時間をしっかり切って、冷静な分析と判断が、最初の段階(たとえば、自社や自社製品/サービスなどの現在の位置づけや、技術開発に対する現状の取組み方など)では、必須です。

また、併せて現状認識と方向感などについて、社内でしっかり共通認識を持つことが非常に重要です。さもなくば、都合のいい解釈を勝手にする人がいたり、いつまでも延々と技術開発をし続けている人がいるなどで、いざ、何かアクションをとろうとすると、ベクトルが合わないばかりか、一歩も先へ進まないということになりかねません。

新規事業戦略策定で、大きなポイントとなるながれは次の3つになります(シナリオとビジョンは終了しているものとします。つまり、新規事業の領域選定は終わっていることになります)。

1.アイデアの創出と定義
2.事業デザインの策定
3.事業性の評価

次回の「イノベーションマネジメント」ブログでは、1の「アイデアの創出と定義」について、簡潔に述べていきたいと思います。


6/05/2022

新規事業創出 (3)アイデア③

前回の「イノベーションマネジメント」ブログで、アイデア創出の3番目のステップに、アイデアのスクリーニングがあるとしました。そこで今回は、このスクリーニングについて述べてみたいと思います。

新規事業に限らず、新製品/商品開発で、アイデアのスクリーニングは行われますが、筆者が担当したプロジェクトの多くで、次のような意見がミドルマネジメント含めた現場の方々からしばしば聞きました。役員の意見が一貫していない、よく変わる、いったん決定したことが後から覆る、判断の過程や基準がよく見えない、結果だけが通知される、決定が非常に独断的(または独善的)、等々。

こういったことは、現場と役員クラスの信頼関係はもとより、現場のモチベーション、ひいては組織全体における生産性の低下を招きます。ただ、なかには勝手気ままな役員もいらっしゃいますが、役員が意図せずして(または、よかれと思って)とった行動が悪くとられてしまったり、昔猛烈に働いた結果、今のブランドをその役員が築き上げた場合などは、現場の取組み姿勢が非常に物足りなく感じ、ついついしぼり上げていくといったことがあるなど、必ずしもどちらか一方が悪いとは言えません。

このようなケースにおいては、筆者が担当したプロジェクトでは、スクリーニングの内容や基準、検討の進め方などを透明化し、はじめに関係者に開示してもらうようにしました(より正しく記載すると、あるべきプロセスと評価内容を設計し、パイロットで実効性を検証、その後に定着をはかるということを行いました)。

たとえば、何を成功とし、何が失敗なのかといった基準を設けて、アイデア創造を本格的に行う前の謂わばプレ段階において、ものの見方や考え方を関係者で共有することにしました。共有の場を設定する際もちょっとした工夫が必要になる場合がありますが、少なくともこのような仕掛け・仕組みを設けることが、アイデアを短時間で効率よく生み出すことにつながります。

このケースが示すことは、対象を明確にする・絞り込むということです。スクリーニング段階で、ものの見方を共有しておくことが、漠然としたアイデア出し、まとまりがつかないブレーンストーミングに陥らずにすむことができるといえます。読者の方のなかに、スクリーニングで試行錯誤されていらっしゃるのであれば、一度、試されることをお薦めします。

最後に、
アイデア創出に長年携わってこられている方は、この先もっと知りたいと思われるでしょう。筆者には、20年来のコンサルタントとして実施したプロジェクトのナレッジがあります。具体的にアイデアを創出していくための手順はもとより、マネジメントにとっての評価手法等、方法論を保有しています。アイデア創出について、仕事をとおしていろいろな面で悩まれ、ご質問も多数あるかと思います。プロジェクトベース、或いは教育・研修ベースなど、ニーズに合せたサービス提供が可能ですので、お気軽に、info@truerisep.com までお問い合わせください。

6/01/2022

新規事業創出 (3)アイデア②

アイデアを効果的に創出するうえで、非常に重要なことのひとつに、はじめの段階はロジカルシンキング(論理的思考)は使わないということです。ロジカルシンキングではなく、クリエイティブシンキングという思考法で用いることが重要です。

ロジカルシンキングでよく見かける言い回しは、次のようなものになります。

何故そうなのか、何故そういえるのか、だから何なのか、イシューは何か、正しいのはどれか、間違いはどれか、モレやダブリはないか、前提は何か、フレームワークに落とすとどうなるのか・・・

一方、クリエイティブシンキングでは、

それもいいね、ほかに何かある? それから連想されることは何だろう? どんなイメージかな? 正しくなくてもいいんだよ、 何でもありだよ、 枠なんか外して考えよう・・・

クリエイティブシンキングは、突拍子もないアイデアを歓迎したり、何事も否定せず固定概念にとらわれないといった、思考モードの切り替えが重要です。また、はじめは直接的な言葉だけで表現するのではなく、 絵を使ったり、比喩表現を用いたりするなどのイメージで考えることが必要です。また、アウトプットしていくという姿勢や理解や(インプット過多にならない)、思考の過程をアウトプットすることも重要です。アウトプットしながら思考を重ねていくというイメージです。ラテラル的思考を取り入れることも必要となるでしょう。

クリエイティブシンキングのツールとしては、ブレーンストーミング、SCAMPER、オズボーンのチェックリスト、アサンプションスマッシング、マインドマップ・・・、等があります。

誤解を恐れず、少し大胆に言えば、ロジカルシンキングは単純化(または概念化)やフレームワーク化、事実に基づき解を求めるのに対して、クリエイティブシンキングは感性や微妙なニュアンスを大切にし、勘に基づいて判断していくということになるのではと思います。

クリエイティブシンキングは、アイデア創出の初期段階で威力を発揮します。常識にとらわれず、枠にはめることなく、自由に発想していきます。とはいえ、創出の最後まで、クリエイティブシンキングでいくと、収まりがつかなくなる可能性があります。

それではどうすればいいかというと、クリエイティブシンキングとロジカルシンキングは相互に補完し合うものとして、両方を使うということです。ロジカルシンキングはアイデアを収束させるために、クリエイティブシンキングはアイデアを拡散させるために、という捉え方です。

アイデア創出をプロセスで考え、大きく3つのステップで構成するとした場合、はじめに「アイデアの創造」、次に「アイデアの絞り込み」、最後は「アイデアのスクリーニング」になります(実際は、3つのステップをそれぞれブレークダウンしていくことになります)。

2番目のアイデアの絞り込みで、ロジカルシンキングを使って、客観性、妥当性、論理的に、アイデアを絞り込むのが適切と筆者は考えます。但し、絞り込んだアイデアがその時点で幾つなのか、どの程度具体的なのか、モノにもよりますが、一般的に言えばひとつでないことが多いというか、望ましいため、後工程で、再度、クリエイティブシンキングで拡散させていくことが多いといえるでしょう。

アイデア創出プロセスについては、体系化して、組織として誰でも使えるようにしておくことが望ましく、そのためにはプロセスの要件は定義すると共に、”アイデアシート”は適度に標準化して、いつでも、どこでも再利用できるようにしておくことが良いといえます。一度、お蔵入りしたアイデアでも、また、陽の目を見る機会があるはずです。(なお、そのアイデアシートは、コンセプト開発の段階で、より具体化させていくのは言うまでもありません。)

プロセスの要件を構成する要素は、①活動(または手順的なもの)、②活動がもたらすアウトプット、③活動に必要なインプット、④用いる手法やツール、⑤プロセス実行に要する時間(リードタイム)や時期、⑥実行上の留意点、あと、そもそもの⑦プロセスの目的、となります。

体系化できれば、成果が上がるばかりでなく、圧倒的にスピード向上、生産性向上に直結します。ご質問がある場合、お気軽にお問い合わせください。info@truerisep.com


ブランディング (4)ターゲティング ②セグメントの評価i

市場特性は、様々な要因に左右されます( ブランディング (4)ターゲティング ①セグメントの評価項目 )。 規模と成長率だけを考慮すればいいというわけでは決してありません。 大規模で右肩上がりに成長を続けるセグメントが有望であることは事実ですが、それ以外の要因が同じであることはめ...