6/15/2022

新規事業創出 (4)戦略③

今回のブログは、「アイデアの創出と定義」の2つめのステップ「新規事業のアイデア創出」から始めます。ここでは、前ステップのアウトプットである戦略仮説について、関係者で議論し、皆が共通の理解を持つようにすることが重要であり、これがひとつめのタスクになります(候補アイデアの良否や当該アイデアに対して同意できなくても、考え方や候補アイデアの主旨は理解できているということが重要です)。

次に、想定している顧客に対する提供価値を考え、新規事業の候補となるアイデアを作成していきます。作成する際、アイデアは複数あるべきです。ひとつかふたつ程度しか候補となるアイデアがない場合は、視点を少し変えるなどして範囲を拡張し、候補アイデアをたくさんだせるようにしておくべきです。

まず新規事業のアイデアシートが必要です。なるべく多くのアイデアを発想し、記録に残しておき、後に参照できるようにしておくためには、この段階では1アイデアにつき、シート1枚が適切だと思います。特に、マネジメントの観点では尚更そうでしょう。シートには、誰に対して、どのような価値を提供するかを記載します。その際、何がそのアイデアの魅力になるかをできる限り明確に記すことが重要です。また、併せて、どのように利益を上げられるのかについても、言及できればそれに越したことはありません。

3つめのステップとなる「新規事業のアイデア定義」では、前ステップの「新規事業のアイデア創出」のアウトプットを絞り込むことが主たるタスクになります。絞り込むためには、複数、できれば5つ以上くらいのアイデアは必要だと思います。もし、ひとつしかない場合は、前ステップまたは前々ステップに戻って、タスクをやり直したほうがいいでしょう。

絞り込むにあたり、当該アイデアの魅力リスクなどを検討します。魅力については、そもそも当該アイデアが魅力あるものかを、顧客、市場、製品/サービスなどの観点で評価します。併せて、当該アイデアの自社適合度もスクリーニングします。当社事業にフィットするか、コストはどれくらいかかりそうか、当社事業に何をもたらすのか、といった視点で検討します。

リスクについては、この段階ではあまり考慮しなくてもいいと筆者は思いますが、それでも過去からよくみられる事案や、経験などから顕在化しそうなリスクがあれば、識別できるようしておく、先手を打てるようにしておくことは重要です。ただ、リスクについては、判断する個人ごとに異なることが珍しくないため(特に、伝統のある歴史が長い企業では尚更)、組織的に対処できるような分析的・科学的、体系的なリスクの捉え方・対処の仕方を備えておくことがよいといえるでしょう。ビジョンをしっかり作っていても、リスクを好まず排除する傾向が社内や組織に強くあれば、どれだけ優れたアイデアがあっても育ちません。

また、リスクに関係するものとして、サイコトラップというものがあります。本題ではないため、ひと言だけ書いておくと、心理的な落とし穴を検討することによって、評価の実効性を高めることにつなげます。よくある例では、木を見て森を見ずというものがあり、たとえばアイデアを断片的にみて解決しようとする、あれもこれも必要としてつけ足していくというもので、これは避けなければなりません。

この段階で、全てをふるいにかけて、候補アイデアをひとつに絞り込むのは到底適切とはいえないため、仮に10のアイデアを絞り込むのであれば、3つから4つ程度にするのが、現実的だろうと思います。また、この段階では、あくまでもアイデアですので、判断が付きかねる場合は、次の段階(事業デザインの策定)へ進めてみるのがよいといえます。

なお、仮に、ひとつにせざるをえない(たとえば、残り全てのアイデアはいずれも魅力的でない場合など)は、絞り込みの基準を改めるか、絞り込む人(評価者)の見方を確認し、評価者を増やすか変えるか、或いは、再度、前ステップに戻ってやり直すかといったことをすべきでしょう。

ブランディング (4)ターゲティング ②セグメントの評価i

市場特性は、様々な要因に左右されます( ブランディング (4)ターゲティング ①セグメントの評価項目 )。 規模と成長率だけを考慮すればいいというわけでは決してありません。 大規模で右肩上がりに成長を続けるセグメントが有望であることは事実ですが、それ以外の要因が同じであることはめ...