6/29/2022

新規事業創出 (4)戦略⑦

前回は事業性の評価の最初のステップ事業の魅力について述べました。今回はステップ2のリスクについてです。リスクは、およそ次の5つに分けて、検討・評価するのがよいと思います。市場のリスク、技術のリスク、組織のリスク、財務のリスク、競争関係のリスクです。

市場のリスクでは、新規事業創出により、市場が形成されるかどうか、形成に係る時間がどれくらいか、多大な時間がかかったとしても相応の規模が伴うものか、といったことを検討します。

技術のリスクでは、そもそも技術開発や製品化などができるかどうか、技術開発の課題を克服できたとしても当社が業界標準またはリーダー的ポジションを握れるかどうか、自社技術で足りない部分がないか、あっても提携などで埋めることができるか、或いはそもそも技術開発が必要ないのか、といったことなどを検討します。なお、この技術には、研究開発上の技術に限らず、生産や営業といった分野も含みます

組織のリスクは、新規事業を開発していくにあたり、本来、当社にその実行能力があるのか、過去に経験のない未曽有の取組みを(極端に言えば)全社挙げて行わないといけないのかといったことから、利害関係のある組織やコンフリクトを起こす事業が自社内にあるのかとか、取組み推進に必要な組織の数や人数などを考慮していきます。なお、ここでいう組織には製販の直接部門に限定することなく、間接部門やその要員も対象になります。新たに必要となる純増分の人員数を考慮しますが、既存事業とリプレースする場合は当該人員全てを検討する必要があります。

財務のリスクは、投資額の大きさに尽きるといえます。研究開発投資はじめ、生産、販売などを対象としますが、人件費は含まないほうがいいでしょう。

競争関係のリスクでは、競争関係の数や強さ・激しさを検討します。競争がまったくないということは通常考えにくいですが、もしないとすれば、それは非常に低リスクになることになります。

これらリスクについては、基準値を設定し、5段階くらいに分けて、定量的に採点することが、検討・評価をやりやすくできます。全てを同じように評価するのでも構いませんが、自社が重視するものに合せて、重みづけするほうがより現実的かと思います。事業の魅力についても、同じやり方で統一します。

なお、事業の魅力とリスクは、多くのケースにおいてトレードオフの関係にあり、通常、大きな魅力がある事業には、大きなリスクが潜んでいると考えるのが妥当でしょう。

最後の事業化可否評価は、事業の魅力とリスクを組み合せて、最終判断するところになります。筆者個人としては、事業の魅力とリスクの評価結果から、GOの判断をすることに少々躊躇するところがあったとしても、最終の意思決定者が、新規事業開発メンバーの顔触れや、リーダーの実績や覚悟、肝の据わり方次第では、先へ進めてもいいのではないかと思います。人の関わり方次第で、状況は変わる、または変えることができることと、潜在的な可能性全てを評価が反映しているわけではないから、というのが理由になります。

なお、評価基準には定性的な要素が入り込まざるをえず、また、評価者の主観も入ってきます。また、ご推察のとおり、重みづけの仕方によっては、評価結果が大きく変わる可能性も否定できません。このようなことを絶対的に回避する方法はありませんが、ひとつには評価のタイミングと内容を増やしたり、変えたりすることで、魅力度の精度を上げたり、リスクを低減させることができます。実際、事業性の評価フェーズ以降において、たとえば事業検証フェーズで、最終評価・判断をするのがふつうです。

ふたつめには、新規事業開発案件のナレッジを蓄積し、社内でいつでも参照できるようにしておくことが挙げられます。新しいことに取り組むにあたり、過去事例を参考にするのは、時には制約となったり、問題が生じたりすることもありますが、何もないよりははるかにましですし、生産性の高い効果的な評価ができる素地を整備することに役立つはずです。また、最終責任者が誰になろうとも、過度な属人化を防ぐことにも資するはずです。



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