「アイデアの創出と定義」では、選定した範囲を対象に、外部と内部の環境を詳細に分析します。PEST、5F(ポーターのFive Forces)、3C、SWOTなどを使って、深く考えることが重要です。SWOTや5Fなど、当たり前すぎて、それで大丈夫なのかと思う方が稀にいらっしゃいますが、分析ツールはシンプルなものほど、使い方次第で、大きな発見や、誰にもわかりやすいものに整理することに役立つといえます。凝ったフレームワークが駄目というわけではありませんが、フレームワークの形(他者からの見え方や一種の自己満足感)にこだわりすぎて、中身が薄っぺらい、表層的なものになるようでは本末転倒ですので、ここのところは十分に気をつけたいものです。実際のところ、SWOTマトリクスから、戦略仮説は導くことができます。
シンプルにいえば、ある対象(選択した市場・顧客、製品/サービス、技術、機能、提供価値など)に対して、強い問題認識があれば、競合・代替、リソース、チャネルとの組合せや対比などによって、自ずと領域・ドメインが選定でき(問題意識が強いからこそ、選定できる)、そこから仮説が導出できます。
「アイデアの創出と定義」をオーソドックスに行う場合、ながれは3つのステップで構成します。はじめに「戦略仮説の導出」、次に「新規事業のアイデア創出」、最後に「新規事業のアイデア定義」となります。
各ステップは、幾つかのタスクで成立します。たとえば、ひとつめの戦略仮説の導出では、外部環境の分析、内部環境の分析、環境分析のまとめ、戦略領域の選定、などとなります(この場合は4つのタスクで成立します)。
環境分析のまとめでは、たとえばSWOTマトリクスを使って、分析した結果を整理していきます。マトリクスでは、自社の技術開発や製品開発、マーケティングや営業、調達や生産、また、人材や組織文化など、自社内部の環境を分析したSWの縦軸と、外部の環境変化が事業に与える影響をOTの横軸に据えて、立体的に考察します。
最も優れた強みと、最も好い機会を組み合せるか、強みと脅威を合せるかなど、マトリクスで検討を重ね、戦略領域を選定します。内外環境を広く、深く、的確に分析できていれば、確実に複数の領域が浮かび上がり、そこが攻めるべきホワイトスペースとなります。
ところで、各タスクを行うにあたり、インプット情報、たとえば外部環境の分析タスクでは、市場や顧客、競合の動向が必要になります。これらのインプット情報を使って、タスクを実行し、アウトプットが作成されます。なお、後日、「イノベーションマネジメント」ブログで、プロセスについて記載しますが、このインプット~タスク(または広くプロセスと呼ぶ)~アウトプットの関係を、一対のものとして捉えることは非常に重要です。担当者の勝手な思い込みを排除したり、成果(=アウトプット)につながらないタスクを、状況やバランスの問題はあるにせよ、とりやめることにも役立ちます。さらにいえば、研究だから、プロセスは関係ないだろうなどといって勝手自由に振る舞う研究者が、しかも上席でいるようなことがあれば、即座に退場してもらわないと、その組織に未来はないといえるでしょう。
続きは、次回のブログへまわしたいと思います。
3C: Customer(顧客), Company(自社), Competitor(競合他社)
SWOT: Strengths(強み), Weaknesses(弱み), Opportunities,(機会) Threats(脅威)