8/27/2022

サーキュラーな国④ オランダ

フィンランド同様に、サーキュラーエコノミー先進国といわれるオランダ(人口は約1740万人)は、2016年に、国全体が2050年までに、100%サーキュラーエコノミー化することを宣言しました(宣言はこちら)。

これに先駆けて、2015年に、オランダの首都アムステルダムが、サーキュラーエコノミーのポリシーを発表しています(ポリシーはこちら)。

1企業、1団体ではなく、首都を中心に国全部を2050年までにサーキュラーエコノミー化すると公表したわけですから、本当に実現されれば、とてつもないことだと思います。ただ、ウォッチしているわけではないため、気軽に言及するのは避けるべきでしょうが、フィンランドの全体アプローチなどに見られるような確かさをあまり感じることができないと思うのは筆者だけでしょうか。

事例はたくさんあります。たとえば、賞味期限切れなどの理由から廃棄食材となるものばかりを使ってメニューを提供するレストランのインストック(Instock)、本ブログの事例1で触れたマッド・ジーンズ、汚染された造船所跡地を活用したオフィス/商業ゾーンのデ・クーペル(De Ceuvel)、等々。

ただ、インストックやデ・クーベルのような取組みは、本来のサーキュラーエコノミーといえるかどうかというと、筆者には少々疑問です。というのも、廃棄食材がでないようにするのが本来の主旨のはずですし、フィンランドのノッラのような廃棄物ゼロレストランのほうが資源循環という観点で求められる取組みではないでしょうか。造船所跡地についても、安全性の面で問題なければ(なくて当然ですが)、サーキュラーとして敢えて取り上げるほどのものなのかどうか。オランダとフィンランド、そして日本、お国柄がそれぞれ違いますから、一概に同じようには比較できないとは思いますが、やや表層的なイメージに捉われすぎていないかと感じる次第です。


サーキュラーな国③ フィンランドその2

フィンランドは、国土の75%近くを森林が占めとていると言われています。このため、CEの注力分野に、持続可能な食料システムと、森林を基本とするループが挙げられています。

故に、フィンランドのCE事例には、はじめに廃棄物ゼロレストランのノッラ(Nolla)を挙げたいと思います。ノッラは首都ヘルシンキに店を構える、ゴミを出さないレストランで、ノッラはフィンランド語でゼロを表します。厨房にはゴミ箱がなく、コンポスト(堆肥/compost、堆肥をつくる容器/composterという意味)が1つ置いてあるだけで、調理中に出たゴミとなるもの、たとえば肉や魚の骨、野菜の表面などは全て、コンポスティングする。また、包装容器などはゼロを目指し、できないものは全てリサイクルしているとのこと。

社名と素材の名称が同じのパプティック(Paptic)は、プラスティックの代替素材として注目されています。フィンランドの国立技術センターが基礎技術を開発、自国の針葉樹からつくったパルプ。紙であるにも関わらず、強度が高い一方で、感触が柔らかくしなやかであることから、包装などで繰り返し再利用可能で、欧州の百貨店などで手提げ袋として利用されています。

フィンランドのラハティ市にあるアント・ブリュー(Ant Brew)は、雑草、野生のハーブ、パンや果物の廃棄物、そしてガチョウの糞などを使って、クラフトビール造りを行っています。同ビールは、ウェイステッド・ポテンシャル(Wasted Potential)という名称でシリーズ化されているとのこと。ガチョウの糞は公園で回収され、麦芽を燻すために使われているそうです。これで、市民を悩ましている糞もかなり減っているとか。きわもの的なように思えるかもしれませんが、自然の再生にも貢献している戦略的な取組みとして捉えたほうがいいように思います。


8/20/2022

サーキュラーな国③ フィンランドその1

フィンランドは、北欧5ヵ国の中でも、サーキュラーエコノミー(CE)への取組みが盛んなことで有名です。というのも、フィンランドにはCEを推進する、シトラ(Sitra、フィンランド・イノベーション基金)というフィンランド議会が管轄する機関が、全ての省庁や企業、さらには消費者にまでアプローチして、次々と施策を打ち出しているからです。

2016年に発表した「Leading the cycle - Finish road map to a circular economy 2016-2025」とか、2020年の「How to create a national circular economy road map」などは、参考になるのではないでしょうか。なお、このシトラは、2018年に横浜で、環境省と共同で世界循環経済フォーラム(WCEF)を開催しました。

シトラの21年から24年のテーマは、生物多様性の強化と生態系の再構築をサステナビリティソリューションとして掲げると共に、欧州の価値基準に基づいて人間的で公平なデータが価値を生み出す経済(データエコノミー)を創造し、より良い民主主義と刺激的な未来の構築に影響を与える、としています。なんとも壮大で、挑戦的ではありませんか。

フィンランドの人口は、約550万人と小規模ですが、収入や教育と技能、個人の安全など、全ての点でOECD加盟国の平均値を上回っているとされています(出所: ウィキペディア)。

今日までの国家としての歴史的沿革や、地理的環境など、単純に日本と比較すべきではないでしょうが、人口減ばかりが問題視されている我が国と違って、参考にすべき点が多々あるように思います。また、同じ北欧といっても、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーのスカンジナヴィア系とは大きく異なることも留意が必要でしょう。


サーキュラーな国② 日本その3

日本の伝統産業のひとつ、日本酒づくりに、新しいアプローチで取組み、大きな注目を集めている会社があります、エシカル・スピリッツ社

同社が造る日本酒に、クラフトジンという商品があります。これは、日本酒を造る過程で残滓物として処理されてきた酒粕を再利用して、醸造酒ではなく、蒸留酒のジンとして生まれ変えらせたものです(2020年発売)。

サステナビリティが同社事業の根幹にあるとのことで、ジンについては、自社、米農家、酒蔵の3者による循環型を構築しています。なお同社は、ほかにも、廃棄処分予定のビールを蒸留したものや、「木のお酒」を年内販売予定。この木のお酒、世界初の試みで、製造技術は森林総合研究所が開発し、まずは、杉、桜など4種類になるそうです。

自社でつくる商品が全て上記のような主旨やなりたちではないにせよ、酒粕を商品にする取組みは、以前から行われてきました。そもそも、小売店舗で販売されているパックに入った酒粕があり、粕汁や、味噌と合せたみそ漬け、甘酒などに使います。最近では、チョコレートやケーキ、アイスクリームなどの菓子類にも用いられています。また、以前より、化粧品の原料にもなっています。全てがサーキュラーかといえば、そうとはいえませんが、ものを大切にする日本人の思考や行動、日本の食、自然や四季の豊かさなどを感じることができる取組みであり、サーキュラー的といえるのではないでしょうか。


8/18/2022

サーキュラーな国② 日本その2

日本一の梅の産地として知られる和歌山県のみなべ町と、田辺市が、「みなべ・田辺の梅システム」として、2015年に世界農業遺産に認定されました。梅は古来、中国から薬として伝わったとされていますが、梅干しとして加工し食品にしたのは日本独自の取組みです。

世界農業遺産の認定基準(食糧と生計の保障、農業生物多様性、地域の伝統的な知識システム、文化・価値観及び社会組織、ランドスケープとシースケープの特徴)については、みなべ町のサイト「みなべ・田辺の梅システム 世界農業遺産認定」をご覧ください。なお、現在の日本では、世界農業遺産として認定されているのは、みなべ町と田辺市を含め、全部で13地域あります。

梅システムの特徴は、第一に、開墾した山を全て梅林にするのではなく、薪炭林(しんたんりん)として森を守り、持続可能な農林業を維持しています。第二に、多くの梅の品種は自家受粉できず、ミツバチによる受粉で梅が育つという共生関係があります。実際、世界農業遺産としてこの点が高く評価されたそうです。第三に、あのおいしい南高梅を生み出す梅の収穫と加工生産技術が挙げられ、最後に、薪炭林から海辺まで続く多様な生態系を保持しています(みなべ・田辺の梅システムpdfから引用)。

エレンマッカーサー財団のサーキュラーエコノミー(CE)の3つの定義(廃棄物や汚染を出さずに設計する、製品と資源を使い続ける、自然のシステムを再生する)に対しても、完全に符号するといえるのではないでしょうか(製品を使い続けるという点において、梅干しは一度口に入れたらなくなるため使い続けることはできませんが、梅林は生き続けているという点において「使い続ける」といえます)。

このように、梅干し作りは、まさに、日本が誇るべきCEといえるでしょうし、ほかにも、ハチミツ作りや、米作りもその典型といえるのではないかと思います。ずっと昔から、日本の農家の方々は、何も捨てていない、まさに、サーキュラーなエコノミーを、体現されていると思います。



8/14/2022

今、何をすべきか。電気料金⑤

何事もそうですが、いつもと同じやり方で、異なる結果を期待するのは正気の沙汰とはいえませんましてや、電気料金が未だ、先が見えない状況下では尚更です。

現行電力会社が値上げの依頼をしてくるか、または現行電力会社との継続取引を断念し、また、打診先の電力会社全てが新規見積に応じられないために、最終保障供給料金でとりあえず現状をしのぐか、こういった状況下では、電力会社の依頼どおりに値上げ価格をそのまま受け入れるか、或いはあきらめて(やむをえず?)最終保障約款へ進むのか・・・

9月1日より、地域電力会社各社が一斉に、最終保障供給を市場連動に改定することを発表しました。

電気料金は、下限値付きの最終保障供給価格となるため、いずれも割高になることは必至だと思われます。これが意味するところは、市場価格が最終保障価格より高くなった場合は、市場価格に連動する。市場価格が最終保障価格より安くなった場合は、最終保障料金のまま据え置かれるということです。

ピンチをチャンスにする。この時期は、自社にとって本当に関係構築すべき電力会社は何処かを見極めるよい機会と捉えることはできますし、再エネ100%などに切り替える契機とみることも勿論可能です。

電力に限らず、この手の話は時間を遡れば、業種、業界問わず、枚挙に暇がないといえます。自社が厳しい時に、手を差し伸べてくれる企業や、この機に積極果敢に攻める企業が、その後の市場プレゼンスやシェアを上げることはふつうにあります。

一方、電力会社にとっても、自分たちも厳しいが、需要家も同様に(或いは、それ以上に)厳しいからと考え、黒字には到底ならない、未だ赤字が続くことを承知で、値上げを小幅におさえたのに、市況が落ち着いた途端に、相見積で、強引な価格交渉をしてくる需要家とは、一定の距離をおきたいと考えるのも自然でしょう

実際、そういうことを実践している、つまり、厳しい時にはお互い手を組んで乗りきっていこうとする電力会社は、新電力サイドにしっかり存在していますので、こういった点には注意が必要です。

弊社では、見積提示そのものが厳しい現状においても、最終保障供給料金を下回る見積提示可能な新電力会社との関係を構築しています。是非、お問い合わせください。info@truerisep.com


8/08/2022

サーキュラーな国② 日本その1

日本には、古くから、自然に、当たり前のこととして、サーキュラーエコノミーを体現してきている産業が多くあります。そして、その筆頭格は、何といっても着物ではないでしょうか。

着物といえば京都、京都といえば西陣です。そもそも着物は、反物からできますが、これは直線です。洋服と異なり、立体裁断はありません。このため、端切れがでることは殆どなく、縫い目も直線のため、仕立て直しが容易く、丈の調節もできます。長く身に着け、傷んできたら、子供用の着物に、また、下駄の鼻緒や雑巾などに、そして最後は燃やして灰にする。反物は、養蚕して生産した絹糸などから作られるため、まさに土から土へ、Cradle to Cradleではないでしょうか。着物には無駄が一切ないといわれる所以だと思います。

その京都ですが、ほかにも、たくさんサーキュラーエコノミーを実現している産業があります。そのなかで、漬物は必ず挙げなければならないでしょう。京都には本当にたくさんのおいしいお漬物屋さんがあります。たとえば、西利では、環境への取組みとして、漬物づくりの過程で生まれた野菜くずを堆肥化し、土づくりをとおして、再び野菜を作るという、まさにサーキュラーな農業を、農業法人の西利ファーム、JA京都と連携して実現しています。

日本酒も同様ではないでしょうか。酒処、京都伏見の代表銘柄でまず挙げるべきは創業1637年の月桂冠でしょう。酒粕中心の有機質肥料で稲を育て、収穫米で酒をつくり、酒粕を肥料として再び土に戻して稲を育てるという、これもまさにサーキュラーな取組みを、滋賀県彦根市のJA東びわこと、1996年より行ってきています。加えて言えば、同社のホームページによると、化学肥料を使わないため、農薬も通常のものと比べて、50%以上削減しているとのことです。

京都の伝統的な企業に限ったことではありませんが、日本企業は、もっと、国内外へ、自社の取組みを発信すべきではないでしょうか。分かる人にだけ、買ってもらったらいいとか、分かってもらえればいいという姿勢は、令和の時代には尚更、不向きだと思います。ただ、伝統、何百年という企業からすれば、バブル経済後くらいから始まった、所謂広い意味でのエコの取組みなど、あまりに近視眼的で、それがどうしたの、我々は何百年も前からこれをやってきていますから、ということになるのかもしれませんが・・・。


8/07/2022

サーキュラーな国① イタリアとフランス

歴史と伝統から、サーキュラーエコノミー本来の考え方を継承しているの代表格に、イタリアフランス、そして日本が挙げられると筆者は考えます。あと、ドイツイギリスも、その後に続くのではないでしょうか。

一方で、歴史と伝統があっても、引き継いでいない国(または、引き継ぐことができなかった国)には、ひとつには中国を挙げることができ、それは歴史を見れば明らかです。何故なら、物質的な面では、全てがスクラップ&ビルド的に歴史を積み重ねてきているからであり、この点において、サーキュラーエコノミーの概念にはそぐわないと言えるでしょう。

イタリアは、元々、ローマの太古からの歴史を有しますが、実際のところは、幾つもの領主国が集まって、今のイタリアができました。ですので、イタリアは地方によって、様々な個性・特性がありますし、北部と南部では、ものの見方や考え方なども大きく異なります。そのように見ると、地産地消は当たり前のことですし、本来、ものを大事にする(というか、次々と新しいものに変えていくという発想がなく)親から子へ、そして孫へと様々なものが引き継がれています。

フランスでは、有名な話があります。一流のパリジェンヌになるのであれば、おばあちゃんのお下がりのシルクのスカーフを、素敵に身につけることができてこそ、おしゃれなパリジェンヌ、という話もあります。

ドイツは、昔からマイスター制度というのがありました。途中、東西が分断したため、20世紀後半におよそ途絶えてしまったように見えますが、今でも、その精神は引き継がれていますイギリスは、富裕層を除き、あまり裕福な国ではないと思えるのですが、先祖代々伝わる銀食器やティーセットなどは大切にされています。

このように、これらの国では、暮らしの隅々に、あえて意識せずとも、サーキュラーの考え方が浸透しています。日本については、次回のこのブログで取り上げたいと思います。


8/03/2022

今、何をすべきか。電気料金④

前回の「電気料金」ブログから随分と時間が経ってしまいました。前回では、現在、電気料金が上がり、当面その傾向が続くことが予想されていると書きましたが、それは今もまだ続ています。そして、今、現在、価格は市場連動型への移行が確実視されているようです。

電気料金削減交渉は、電力の市場価格が下げ基調の時と、上昇時では自ずと変わらざるをえません。これは電力に限らず、他の購買品目でも同じことだと思います。今日のような、謂わば価格の先行きが未だ見えないような時には、どういった交渉スタイルやスタンスで臨むのが良いのでしょうか。

まず前提として知っておかなければいけないことは、市況上昇時には、電力会社各社の営業戦略が随分異なるということです。勿論、下がっている時でも、電力会社のそれには各社違いがありますが、上昇局面では、相当の違いが出てくるといえます。一見、同じように見えるかもしれませんが、慎重にみれば、かなりの違いがあることがわかります。ただ、異常ともいえる価格高騰が始まった直後であれば、各社同じ(または、殆ど同じ)ようなことになってしまうのは、やむをえませんが・・・。

ただ、こういった時期こそ、より積極的に、新規の電力需要家を取り込もうとする会社は存在します

世の中、これだけ価格が上がっているのだから、現行電力会社からの価格改定通知があった場合、受け入れざるを得ないと考えている電力需要家がいらっしゃったとしても不思議ではありません。ですが、再度、記載します。電気料金の売上に占める割合は、見過ごすには大き過ぎます。販管費に占める割合は、尚更だと思います。電気料金の上げ幅をできる限り小さなものにする、またはこの機に、自社の方向や戦略に沿った電力プランや料金に変えていくなどして、この難局をうまく乗り切ることが重要です。もし、電力会社のご紹介を必要とされている電力需要家の方がいらっしゃいましたら、info@truerisep.comまでお問い合わせください。


ブランディング (4)ターゲティング ②セグメントの評価i

市場特性は、様々な要因に左右されます( ブランディング (4)ターゲティング ①セグメントの評価項目 )。 規模と成長率だけを考慮すればいいというわけでは決してありません。 大規模で右肩上がりに成長を続けるセグメントが有望であることは事実ですが、それ以外の要因が同じであることはめ...