3/12/2022

論理的思考(3) 問題を見つける①

問題とは、現状とあるべき状態(または、ありたい姿や期待される結果等)とのギャップといえます。あるべき状態は、会社、事業部、部、課、グループ、個人などによって、様々であり、一様ではありません。誰の立場で考えるのか、何をもってあるべき状態とするのか、目指すべきものにするのかといったことは、意外と難しい場合が少なくありません。

たとえば、筆者は多くの新商品開発プロジェクト(企画から販売までの一連のながれを最適化したり、より良いアイデアの出し方を考えたりコンセプトそのものを作ったり、新しい市場を創造したり、新しい売り方などを考えたりするプロジェクト)を担当してきましたが、どれひとつとっても、社内各部門での問題の捉え方は異なるものでした。マーケティング、研究開発、生産、営業、経営/事業企画等、まちまちで、極論をいうつもりはありませんが、ほぼ全てのケースにおいて、責任の所在は自部門にはなく、マーケにとっては営業、生産にとっては営業か開発に問題ありといった具合です。その問題の中身もいろいろなものがありました。

さらに、問題をいつまでに、あるべき状態にするのかが問題です。ビジネスでは絶えず制約がついてまわるため、その条件をおさえることが非常に重要ですし、制約条件が問題発生の間接的な原因にもなりえます。サプライチェーンにおける在庫の問題などは、その典型のひとつといえるでしょう。

シンプルでオーソドックスな例をとって、少し考えてみましょう。A社は新商品のZを発売、首都圏の主要スーパーのエンドでボリューム陳列を行うなどして一斉に販促を実施しましたが、売上げは伸び悩み、原因として以下のような事実が判明しました。

①各店舗での告知体制が、不十分で目立たなかった。
②販売員が不在で、終日セルフ販売だった。
③競合するB社が、似通った商品をすぐさま開発し、値引きして販売した。
④商品コンセプトのメッセージが、来店顧客に響かず、購入を促すには至らなかった。
⑤販促期間中、ほぼ毎日雨が降っていた。

どれが、問題(問題点)でしょうか? 問題(問題点)でないものがあるとすれば、それはどれでしょうか? 答えは⑤で、これは問題(問題点)ではありません。何故なら、雨(天候)だけは、我々の力ではどうしようもなく、手を打つことができないからです。

念のための補足ですが、問題と問題点は違うものです。通常、問題点とは、問題の原因と考えられるものを指します。ただ、ここであまり厳密に記載することは、問題の捉え方の意味を説明する主旨に従えば、理解を妨げ混乱を招く可能性がありますので、あえて同じようなものとして扱い、述べています。

さて、この問題、どのように捉えていくのがよいのでしょうか。筆者の場合、フレームワークを用いるならば、3つのCで問題を考えます。

Context(コンテクスト) 

Criteria(クライテリア) 

Constraint(コンストレイント)

一つめのCのコンテクストでは、問題はどういう文脈にあるのか、状況や関係などはどうなっているのかといったことを考えます。二つめのCのクライテリアは、そもそも何をもって問題とするのかという基準を検討します。三つめのCのコンストレイントは、インプットを制限したり、活動を制限するような制約条件は何かを考察します。

コンテクストは、たとえば、当社・顧客・競合はどのような関係にあるのか、当社の競争優位はバリューチェーン上の何処にあるのか、ビジネスシステムではどういったものなのか、業界のチェンジドライバーは何か、現行組織はどのような状態にあるのか、といったことなどを考えます。

次のクライテリアは、たとえば、業績(売上、利益、コスト)や、当社との適合性(ビジョンとの整合性、戦略との一致、価値観との調和、リスクなど)、タイミング(主だったものとの連続性、初期投資の期間、保留中のイベントなど)を検討します。

最後のコンストレイントでは、データや情報、人材(質と量)、組織単位、事業分野などを見ます。

以上のことは、問題を見つけるなかの問題を定義するという行為に該当します。少し長くなりましたので今回はこれくらいにして、次回の「論理的思考」ブログでは、問題の定義に続いて、問題を構造化することについて、少し考えてみたいと思います。


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