11/01/2022

営業力強化 (2)価値ある提案をするために⑧

B2Bの広告代理店や、B2Cの注文住宅を扱うハウスメーカーなどとは異なり、店頭販売の小売業は、不特定多数の客を、その場で(基本的に)短時間のうちに、対象にします。扱う商品にそれほど難しいものがあるわけではないと思いますが、種類が非常に多くなるのが特徴的です。百貨店を例に挙げてみましょう。

いきなりで恐縮ですが、何故、百貨店がここまで低落してしまったのか。少々ストレートな物言いで恐縮ですが、主な理由のひとつに、あまりにも百貨店の営業(店頭販売の現場にいる百貨店の社員)が、思考することなく、店頭に立っている(もしくは、店頭にさえ立たない)からだと筆者は思います。そうでない方もいらっしゃるでしょうが、基本的には大半の百貨店の社員が、考えなく、店頭にいるからだといえます(取引先の社員の方々の多くは違うと思いますが)。

店頭で何かを尋ねても(たとえば店内に入っているメーカーの場所とか、扱い商品のようなことでも)、素早く答えられないことが多い。店によっては、社員をまったく見かけないか、ひどい店だと社員が肩で風を切って歩き、お客が避けているなんてこともある始末です。さすがに東京の日本橋の百貨店では、お客を睨みつけたり、品定め的なことをしている社員はいないようですが・・・。

価値ある提案をするために、食品売場などは格好の場所といえます。来店客が衣料品売場などと違って多数いるわけですから、お客を見て、様々な疑問を自分に投げかけることができるからです。たとえば、何故、あの客は他店の食品の袋を持って、当店に来ているのだろうか。何故、あの客は、あそこの売場でしかめ面をして、商品を眺めているのか。何故、あの客は、あそこの売場で店員と笑顔で話をしているのか。何故、あの客はあんなに急ぎ足で売場から去ろうとしているのか、何故、あの商品は買って、これは買わないんだろうか、等々。

全て、理由があるのです。仮説をもって考える必要があります。たとえば、他店の袋を持って来店している客であれば、他店にはない品揃えが当店にあると考えるのが自然ですが、要はそれが何で、何故そうなっているのかを考えることが重要です。通常、袋の中身まで読み取ることはできませんが、想像していくことは十分可能でしょう。

具体的に書くのは少々差し障りがあるため控えますが、日々、店頭は仮説検証の場であり、アイデア(接客改善、商品改廃、売場変更等)の宝庫です。

改革や変革レベルとはいかなくても、改善レベルだと、毎日できます。1日、10人のお客様に対して、疑問を抱き、仮説を立てて考えてみる。これをルーチン化して店頭に立つと立たないでは、1年後、少なくも3年後には、それをしない社員との差は、大きなものになるのは間違いありません。

店頭では、お客だけが知っていて、百貨店の社員が知らないことが多すぎます。極端なことを言うつもりはないですが、少なくとも次のようなことは防げるのではないでしょうか。たとえば、まったく同じ商品(たとえば京野菜の青ネギで生産者は同じ)でも、目と鼻の先にある2つの百貨店で、3倍ほどの価格差(いずれも通常の販売価格!)があれば、誰も高いほうの店では買わないでしょう。そればかりか、その青果売場、ひいてはそういった生鮮の売場には、お客は二度と近寄らないことにならないとも限りません。

百貨店が商品を買い取らないから、百貨店は衰退していくなどといった説は、明らかに誤りだと筆者は思います。場所貸しでもいいのであって、要はお客様をまったく見ていない応対、正確に言えば、お客様の行動を注視しない、思考することなく応対することが衰退を招いているのであって、これではコミュニケーション以前の問題といえます。スキル習得には、かなりの長い時間がかかります。ただ、ここまで来ると、できた暁には、残念ですが多くの百貨店がなくなっているのではないかと思ってしまいますし、また、そう思うのは筆者だけではないと思われます。


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