繰り返しとなりますが、価値ある提案をするためには、顧客課題に対する仮説を持つことが前提で、この課題仮説が落としどころの検討につながります。この一連の動きを的確に行うためには、スキルも勿論重要ですが、まずは、自分ごととして考える。そして、この考える行為をルーチン化していくことが必要です。
そのためには仮説が非常に重要となりますが、仮説はどうすればうまく作れるのでしょうか。私たちは、日々の生活では、無意識のうちに、仮説をもって行動しています。たとえば、厳冬になりそうであれば、前もって厚手の服を早めに出したり、乾燥がひどくなりそうであれば、今年は大きめの加湿器の購入を検討しようとか、体を温める鍋メニューを増やそうとか、そういったことを考え、備えることが多いはずです。
ビジネスも同様です。ある時点で、可能性が高いと考えられるものを仮説として位置づけ、いったんは結論づける。見た目の現象や会話した時点で、何が言えるのか(⇒仮説)。データからどういったことが導き出せるのか(同左)。こういったことを短時間のうちに、意識して繰り返す。仮説を作ったり、壊したりしながら、検証していく。そういった仮説ベースの思考方法が、価値ある提案を行うためには必要です。
ここでいう価値提案の価値については、両者(顧客と自分)で創造していくという姿勢が重要です。どちらか一方の要求が他方の譲歩になるような関係、ゼロサム的な関係というのでは、関係性は長く続きません。価値を分配するのではなく、価値を創造していき、両者のパイを大きくするといった向き合い方が必要です。逆に言えば、一方的なことばかり、自分のことだけを要求する顧客と接することになれば、さっさと見切りをつけて、別の顧客と会う時間に充てたほうがいいということになります。
価値を創造していくためには、相手との論点を増やしていくことがポイントになります。論点がひとつだけとか、少なすぎる場合は、双方で創造していくことが難しくなるからで、創造できる余地をできる限り多く作っていけるようにすることが重要です。
たとえば、価格や利益、または契約の内容や期間などに関係する経済的価値、モノ本来の働きを表す機能的な価値、品質を維持したり納期を厳守するといったような謂わば安定的な価値、双方の協力機会を継続的に創出していくような協調的価値といったような、いろいろな価値が考えられます。顧客が何を最も重視するのか、予め価値を洗い出しておいて、仮説を立てていく。商談をとおして検証し、仮説の精度を上げながら、双方にとって最良の合意形成がはかれるようにすることが、営業としての面白さであり、また、難しい点でもあると思います。