10/19/2022

R&Dと組織横断型活動 (1)はじめに③

2点目の顧客ベネフィットの明確化については、Dアーカーの3つのベネフィット(機能的、情緒的、自己表現)に沿って、考えることが有用です。

機能的ベネフィットとは、商品が有する一次機能的価値のことを指し、食でいえば所謂五感に関係するものや安全安心、簡便性や価格などが該当します。情緒的ベネフィットは、商品を使用することで得られる感情や感覚などの心理的満足感を与える価値のことをいい、気分転換や幸福感の演出、愛情表現などがあてはまります。自己表現ベネフィットは、商品を使用することで表現したい自分の価値観、人から見られたいと思う姿などを表します。

R&Dの場合、機能的ベネフィットとなる技術の中身/用途について、まずは社内で検討し明確にします。ただ、技術に関することですから、通常、顧客には翻訳をして伝達する必要があり、これが情緒的ベネフィットになると捉えるのが良いと思います。つまり、顧客には情緒面での便益、必要に応じて自己表現面での便益も添えて説明していくことになります。また、敢えていえば、機能的ベネフィットは、一歩間違えれば、自社の技術だけを提供する、謂わば下請けに甘んじることにもなりかねず、この点は注意が必要です。

たとえば、分かりやすい例として、秋から冬にかけて出荷されるぶどうで考えてみましょう。ぶどうを絞った天然100%のグレープジュースは、飲みやすく(体に吸収しやすい)、カリウムを多く含んでいるため、高血圧予防によいとされています。ナトリウムを排出して、体内の塩分を調整することから、血圧を安定させるためですが、ほかにも、ポリフェノールを含んでいるため抗酸化作用(アンチエイジング)も期待されているのはよく知られているところです。また、ポリフェノール成分の一種であるアントシアニンも含んでいることから、最近ではスマホ疲れなど、眼精疲労の回復にも役立つことなどから、シニアから若者まで、幅広い人気を誇っています。

グレープカラーのところが、機能的ベネフィットに該当しますが、これを情緒的ベネフィットに変換すると、もっと健康的で、若々しい自分になれるというような表現ができると思います。これを自己表現ベネフィットに押し上げると、人それぞれかとは思いますが、自分らしくいられるとか、自分の理想に近づけるといった言い回しになるのではないでしょうか。仕事にたとえれば、幾つになっても、フットワークよく、効率的で、スマートなビジネスパーソンになれるなどといえるのかもしれません。

これら3つのベネフィットが、どの業務機能で検討され、形作られていくのかは、先述の機能全体一覧次第ではありますが、およそコンセプト開発における品質コンセプトの確認や企画品質、設計品質のところといえるでしょう。この企画品質を設計や適合の品質に、うまく落し込んでいくところが、R&Dの腕の見せどころになります。

いずれにせよ、R&Dにおいて、マーケティング思考で顧客ベネフィットを明確化していく以上は、顧客の立場で考え、且つ顧客に伝わらなければ意味がありません。そのためには、機能的ベネフィットから、情緒的さらには自己表現ベネフィットへと、意味を変換させていくことが必要です。こういったマーケティング思考を組込んだ業務機能と組織体の構築については、次回以降の本ブログで簡潔に述べていきたいと思います。


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