マーケティングミックス2つめのP、価格についての2回めです(ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その1)。
価格やプライシングを検討する時、何から始めればいいのでしょうか。それは、いきなりミクロの観点から入っていくのではなく、マクロな観点でまずは全体を見ることです。こうすることが、その場しのぎの対応に陥ることなく、検討の抜け漏れを防ぐことにもなります。こういったことは、価格やプライシングに限ったことではなく、ビジネスシーンのあらゆる場面に適用できると筆者は思います(論理的思考(2) 論理的思考とは①、論理的思考(2) 論理的思考とは②)。
価格の検討には、業界レベル、製品・市場レベル、取引レベルの3つの視点を統合させて行うべきだと、マイケル・V・マーンをはじめとしたマッキンゼーのプライシングエキスパート(2004年当時)は述べています。
業界レベルでは、需給関係、コスト構造、法規制、技術革新、競争行動、新規参入の可能性等の要因を分析して、業界全体の価格水準を考えます。なかでも、需給とコストの価格水準に与える影響と、競合他社のコスト構造・設備投資・研究開発予算などをおさえて競合の今後の狙いを把握するのが重要だとしています。また、プライシングに長けた企業は、値上げのタイミングと値上げをすべきでない時期をよく理解しているとも述べています。
製品・市場レベルでは、自社製品を競合に対して適切に位置付けることを考えます。つまりターゲットにする市場セグメントで、自社を最適なポジショニングにする価格水準を、消費者の目線で価格とベネフィットのバランスを考慮して決めるのが、このレベルですべきことになります。併せて、消費者が他社と比較してどう考えているのかも理解する必要があります。価格を上乗せしてもよいのか、或いはもう少し下げて提供すべきなのかといったことは、他社に対する消費者の認知、認識などを知らなければ、最適な価格設定が困難になります。
取引レベルでは、製品・市場レベルで決定した価格を基本ラインとして、顧客ごとに、一つひとつの取引で、適切な価格を設定できるようにすることが狙いとなります。主として法人顧客、商品納入先が卸売業・小売業が対象になるレベルです。対象が消費者であれば、車をはじめとした主に高額商品のカテゴリーになります。
3つのレベルを統合させるというのは、はじめの業界レベルでは、業界全体の特徴を理解し、価格に影響を与える要因全てを掴んでおく。
次の製品・市場レベルでは、業界レベルでおさえた背景や傾向、要因を踏まえて、ターゲットセグメント固有の価値、ベネフィットに着目して、価格の基本ラインを設定する。
最後の取引レベルでは、各顧客、各取引ごとの価格を設定するということになります。これら3つのレベル全てで優れた企業というのは、たとえば業界で価格が上がりそうだと分かれば、低価格商品の投入を控えて、むやみに市場に値下げ圧力をかけないようにするというようなことができると、プライシングエキスパートは述べています。
次回は、価格をプロダクトレベルの特性で考えます。