日本は「単独世帯」(1人暮らし)、所謂おひとりさまであるソロ(1人)の世帯が急増しています。内閣府の男女共同参画白書の令和6年版では、2020(令和2)年には、単独世帯が全体の38%を占め、全世帯で最も大きな割合となり、1985(昭和60)年の20.8%から大幅に増加したとあります。また、単独世帯と「ひとり親と子供世帯」を合わせると、47%と全体のほぼ半数を占めるようになっています。
おひとりさまが増えているのは、結婚しない若者が増え続けていることが大きな理由といわれています。「令和3年度 人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査」によると、20代の女性で配偶者や恋人がいない人が51.4%、20代の男性では65.8%。「これまでの恋人の人数・デートした人数」では、恋人がゼロ人でデートした人数もゼロ人の20代女性はおよそ25%、男性の場合は(信じられないことに)40%ほどもあるわけですから、ある意味頷けるように思います。ただ、荒川和久氏によると、40年前も今も、年齢に応じたデート経験率は同じとのことで、特に今の世代は、コロナ禍で、外出できず、デートもできなかったからではないかと指摘しています。
結婚しない人が増え続けている理由には、将来の生活に希望が持てない、結婚という形に縛られたくないとか、結婚という形にこだわる必要がないというのが主だったもののようです。みずほリサーチ&テクノロジーズの調査によると、50歳時点で一度も結婚をしたことのない人の割合をいう「生涯未婚率」は、男女ともに1985年まで5%以下で推移していたものが、1990年以降は急激に上昇し、男性の生涯未婚率は2015年に23.4%になったとのことです。
未婚率や離婚率の上昇による単独世帯の増加は、我々の暮らしや消費、産業社会、経済全般に大きな影響を与えることは明らかです。日本の人口は減少し続ける一方で、世帯数は増加の一途をたどるとすれば、さしずめ住宅や、食品・飲食、小売、旅行・観光などに関係する産業は、前提にしていた需要の形態が変わることで、非常に大きな影響を被ります(というか、すでに影響を受けています)。なかでも住宅は、戸建て、集合住宅に関わらず、商品や売り方、サービスのあり方を抜本的に見直さざるをえません。最大手の大和ハウス工業が、事実上、注文住宅から撤退し、建売・分譲住宅に大きくシフトしたことは、部材の高騰や住宅購入者の世帯(または世帯主)収入の低下だけが理由ではないでしょう。
2020年の国税調査に基づき、20~50代に限定してのソロ消費の市場は家族消費市場を上回り、その内訳はソロ活市場が3964万人以上、独身市場は2787万人、家族市場は3407万人になると、荒川氏はソロ度4象限の市場規模を算出しています。
こういったソロ社会の出現は、所得や資産の多少が大きく影響しているのは間違いないでしょう。ただ、高所得ゆえに結婚しない女性が増えてきていることなどを考えると、所得が少ないから結婚しないというのが一番大きな理由になるとは必ずしも言えません。女性の人口が男性よりも多い現状を踏まれれば、女性の市場をどのように捉えていくかが今後さらに重要なものになります。
ソロについて評論したり、研究する人の中には、世代ごとの価値観やライフスタイルなどを考えてマーケティングすることはもはや無意味とする人がいますが、それは違うだろうと筆者は思います。経済力の有無や、取り巻く人間関係含めた環境が重要であることは間違いありませんが、それはおひとりさまマーケティングがここまで注目されるようになるずっと前から、可処分所得や生活環境の違いが重要視されてきたからです。また、一足飛びにこれからはマスマーケティングではなく、パーソナライゼーションだと言う方もいらっしゃいますが、筆者にはそうは思えません。形は変えながらマスは存在し続けるわけで(マスの定義にもよりますが)、マスが消滅するわけではないと思います。
おひとりさまを対象にしたマーケティングでは、一人暮らしなのか、家族と暮らしているのか、家族と暮らしていてもひとり感が強いのか或いはそれを大事にしているのか、所得や資産はどれくらいなのか、あと、性別と年代、暮らしている地域などを考えることが少なくとも必要だと思います。