4/02/2022

イノベーションマネジメント はじめに

イノベーションとは何か。定義はかならずしも一様でなく、論争が巻き起こる分野でもあるため、あまり定義には言及したくない、厳格に捉え云々するのはどうなんだろうか、というのが筆者の正直な気持ちです。実際、過去に在籍したIBMでのイノベーションの定義は広範囲に及ぶものだった記憶があります。学術の世界ではなく、ビジネスの世界、それも営利企業を対象にすれば、イノベーティブな組織とは、およそ以下のいずれか(青字記載箇所)を備えており、イノベーションとは製品やサービスを生み出す、他社には簡単に真似のできないプロセスやビジネスシステムといった仕組み全体を指すことでよいのだろうと思っています。製品やサービスは、あくまでもイノベーティブな活動の結果です。

それでは、そのイノベーティブな組織とは、どういう特性を兼ね備えているかといえば、

優れた製品やサービスをとおして、市場で圧倒的な競争優位を構築している。

技術を駆使し、継続して、また、効率よく、企業価値向上に直結する革新的な製品やサービスを輩出している、またはそれを実行するビジネスプロセスを有している。

アライアンスなどで、外部とのネットワークを構築・活用して、自社に足りないものや技術を実現させ、企業価値を高めている。

といったものになると思います。

したがって、イノベーションとは、世の中が一変するような新たな価値を創造するものだけではない、と筆者は考えます。狭義に捉えれば、変革だけが対象になることが多いといえますが、実際には改革や、改善も、その内容によっては、イノベーションの対象になると筆者は思います。ただ、改善まで含めるとなると、誤解も生じかねないため、もう少し丁寧にいえば、継続的な改善活動を積み重ねた結果、これまでには存在しない新しい製品やサービスが生み出された場合、その改善活動全般をイノベーションということができるはずです。

では、そういったイノベーションを、どうマネジメントしていけばいいのでしょうか。また、イノベーションを創出するコツや秘訣とはどういったものなのでしょうか。この「イノベーションマネジメント」ブログでは、これまでのプロジェクトをはじめとした筆者の経験や、独自に学んだことなどを組み合わせながら、適度に分野(たとえば、新規事業創出、製品/商品開発プロセスなど)や、領域(ビジョン、プロセスなど)を設定し、それぞれに対して、できる限り簡潔に体系化させ、述べていきたいと思います。

なお、1つお断りがあります。それは、このブログは研究者の視点で書かれるものではなく、また研究者のためだけでもありません。あくまでもマネジメント(経営のマネジメントに限定するものではなく、ミドルクラスのマネージャーなども含め、もっと幅広く、セルフマネジメントする人たち全体)の視点で記述していきます。

「イノベーションマネジメント」ブログの初回の最後に、1点強調しておきたいことがあります。それは、企業にとって、仕組みは必須だということです。ただ、仕組みは作って終わりではなく、実行し、改良を加えていくことが肝要で、これは強調し過ぎてし足りないことはないと思います。筆者はこの仕組みと、教育、あと、組織文化が、企業の持続的成長には不可欠で、最も重要なものだと考えます。それは、自身のプロジェクト経験で痛感させられることがあり、それがコンサルタントしての大きなターニングポイントにもなりました。

また、遡れば、筆者が社会人になって初めて働いた会社、当時のセゾングループの基幹会社西武百貨店に対しても、そう感じています。小売・流通業界は西武百しか受けませんでしたが、縁あって採用され、10年勤めました。西武百はじめグループ全体が、ファッション、文化、感性といったものばかりに目がいきがちですが、かならずしもそればかりではなかったと思います。たとえば、80年代前半から半ばには、すでにクレジットのクレディセゾンはじめ、損害保険・生命保険、自動車販売等々の企業を擁し、「生活総合産業」を標榜していたイノベーティブな企業集団でした。

バブル経済の崩壊と共に、グループも解体などといわれ、実際そのとおりなのでしょう。ただ、何が最大の根本的な問題だったのかというと、個人的には、仕組みの欠如と、その仕組みを、組織文化を顧みることなく、西武百などの特性を考慮せず、導入しようとした点だったのではと思っています。

西武百に限らず、組織文化をないがしろにして、仕組みをつくり、崩壊または衰退していった会社はたくさんあります。仕組みがないのは致命傷になると思いますが、個性や特性を活かさず強制的に行うと、死に体になるのは当然で、これは国内外、共通しています。

読者の方々は、今後のブログを、自社に合うか、合わないところがあるとすればそれは何処かといった点などに留意されながら目をとおして頂ければと思います。仕組みは、必ず備えなければいけません。ただ、どのように作るのかが問題です。ですが、個人の能力や感性のみに依存するばかりで、仕組みを持たないのは問題外であるのは言うまでもありません。


ブランディング (4)ターゲティング ②セグメントの評価i

市場特性は、様々な要因に左右されます( ブランディング (4)ターゲティング ①セグメントの評価項目 )。 規模と成長率だけを考慮すればいいというわけでは決してありません。 大規模で右肩上がりに成長を続けるセグメントが有望であることは事実ですが、それ以外の要因が同じであることはめ...