4/10/2022

脱炭素経営の取組み (2)Scope2②

前回の「脱炭素経営の取組み」ブログで、スコープ2のCO2排出量削減手段の3つめとして、挙げた自家消費型の太陽光発電は、電力需要家が設備機器を保有する自社保有のものと、発電事業者が保有する他社保有のものに区分できます。

自社保有型は、ソーラーシステムなどを自社で購入し、メンテナンスも自社で行うことから、電気料金はかかりません(但し、電気を全て太陽光で賄うことができる場合に限り無料となり、太陽光以外の電気を使用する場合はその電気料金は有料となります)。

他社保有型は、太陽光設備を第三者(PPA事業者)が保有し、メンテナンスもPPA事業者が行うもので、コーポレートPPAモデルと呼ばれ、近年、注目されています。なお、このモデルは、電気料金を自社消費分であろうと、PPA事業者へ支払う必要がありますが、オンサイトPPAの場合は、通常の電気料金よりは割安になると言われています。(なお、コーポレートPPAモデルは、太陽光に限るものではありません。実用にはまだ至りませんが、風力、水力、地熱、バイオマスなどでも適用可能です。)

このPPAモデルには、オンサイトPPA(フィジカル)オフサイトPPA(フィジカル)オフサイトバーチャルPPAの3つのタイプがあります。PPAとは、Power Purchase Agreementの略称で、電力事業者と電力需要家の間で結ぶ契約モデルのことです。オンサイトとオフサイトを合せて、フィジカルPPAと呼ばれたりもします。オンサイトとは自社の敷地内または隣接地に、オフサイトは自社の敷地外・隣接地外の遠隔地に、発電設備を設置することから、オン・オフと名称を変えています。ですが、この2つには敷地の内外以上に、大きな違いがあります。

電力需要家にとって、オンサイトPPA(フィジカル)初期投資が不要で、設備は発電事業者が設置、運用と保全も行うため、需要家は当該発電事業者からの請求書を受け取り、料金を支払うだけで手間がかかりません。また、自家消費のため、小売電気事業者や送配電事業者を介さず、仲介手数料、燃調費(燃料費調整額)、再エネ賦課金(再生可能エネルギー賦課金)の支払いが不要というコストメリットも魅力的です。更に、メンテナンス費用や固定資産税、保険料などを負担せずにすませることができます。

ほかにも、メリットとして、CO2削減による環境への取組みを訴求できるのは当然でしょうし、災害時における非常用電源としてBCP対策にもなりえます。また、補助金制度もあります。

一方、需要家にとってのデメリットには、PPAの契約期間が15年から25年程度と長く、契約期間中は電力購入の義務が発生し、価格などの見直しや設備を変更することができません。また、契約満了後に設備機器を発電事業者から無償で譲り受けるケースが多いとのことですが、技術の進歩が著しい今日では、必ずしも良いこととは言えないように思います。

とはいえ、太陽光発電のコストが低下してきたことにより、オンサイトPPAを導入する企業が徐々に増えてきています。特別高圧の電力を利用する工場や物流施設、商業施設などにおいて、大量の太陽光パネルを設置するスペースさえ確保できれば、企業イメージの向上にも資することから、今後、導入が活発化すると思われます。よく知られた事例としては、小売流通業のイオンが、自社商業施設の屋上で太陽光発電を実施しています。太陽光発電導入当初は自社保有型でしたが、2020年からオンサイトPPAの利用を開始しています。ほかにも、たとえば、キリンビールが昨年に複数の工場で導入を発表し話題となり、アサヒビールが今年の1月に名古屋工場で導入する計画を決定しました。

但し、再エネ賦課金や託送料金といった系統費用を支払う必要はありませんが、電気料金を大きく削減することにはつながりません

以上を踏まえ、オンサイトPPAについては、電力需要家の本モデル活用主旨とメリットが明確で、導入により実現できる見込みがあれば、この機に積極的に検討すべきモデルだと思います。

オフサイトPPAは、次回の「脱炭素経営の取組み」ブログへまわしたいと思います。


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