4/11/2025

ブランディング (7)マーケティングミックス① 4P概論

セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングのながれで、差別化のポイントを明確にしたら、差別化のための具体的な打ち手を、マーケティングミックス(所謂4P、Product/プロダクト、Price/価格、Place/プレイス、Promotion/プロモーション)で行います。

マーケティングミックスは、上記の4Pが基本形です。サービス業では、service Product/サービスプロダクト、Price and other user outlays/価格とその他の支出、Place and time/場所と時間、Promotion and education/プロモーションと教育、という4つのPに加えて、People/人、 Physical environment/物理的環境、service Process/サービスプロセス、Productivity and quality/生産性とサービス品質、という新たな4つのPを加えて、8Pで検討することが一般的です(SMM (2)サービスの構成要素 ③サービスマーケティングミックス)。

なおツーリズム、特にデスティネーション関連では、Physical Product Elements/形のあるプロダクト、Programs/プログラム、Packages/パッケージ、People/ピープルという4つのPで検討することがあります(ツーリズム (2)プロダクトとしてのデスティネーション ①4つのP)。


ほかに4Pに関係するものに、4Cがあります。Customer solution/顧客ソリューション、Customer Cost/顧客コスト、Convenience/利便性、Communication/コミュニケーション、という4つのCで、顧客視点のフレームワークとして知られています。

このように、マーケティングミックスには幾つかの種類がありますが、本稿(ブランディングのマーケティングミックス)では、最もポピュラーで汎用性の高い4P(Product、Price、Place、Promotion)を用いて話を進めていくことにします。

この売り手の4Pは、買い手の4Cに対応しているとされています。プロダクトは顧客ソリューションに、価格は顧客コストに、プレイスは利便性に、プロモーションはコミュニケーションにです。実際、フィリップコトラーは、マーケティング/ブランド担当者は、はじめに顧客視点の4Cで考え、それを4Pに置き換えてマーケティングミックスを作ることを薦めていた時期がありました。なお、コトラーはマーケティングミックスは、戦術レベルの取組みだといっています。

何故なら、4Pを検討する段階では、ターゲットが選定されていて、ポジショニング戦略が決まっていなければならないからです。


ところで、ケビン・レーン・ケラーは、マーケティング戦略は、プロダクトそのものを超えて、消費者とのより強い絆を作り出すものでなければならず、そのためにはブランド・レゾナンスを最大化させる必要があると説いています。ブランド・レゾナンスとは、顧客がブランドにどれだけ同調しているかを示すもので、①「行動上のロイヤルティ」、②「態度上の愛着」、③「コミュニティ意識」、④「積極的なエンゲージメント」に分類できるとケラーは定義しています(ブランディング (2)ブランド用語②)。

上記①から④は、所謂ワン・トゥ・ワン・マーケティング、パーミッション・マーケティング、経験価値マーケティングといった手法の考え方に基づいたものです。ういった一連の手法を用いた活動は、リレーションシップ・マーケティング、またはカスタマー・リレーションシップ・マーケティング(CRM)といわれ、2000年代にはよく話題に上がったものです近年では、デジタル技術の進展、SNSの浸透などにより、コミュニティ・マーケティングやファン・マーケティングが盛んに取り上げられています。


もはや4Pや4Cだけでは、現代のマーケティングを語ることはできないということになってくるのですが、そうはいっても、昨今のマーケティングプログラムの状況は、あまりにも手法に依存(より厳密に言えば、ツールに依存)し、やり方だけを追求している感が強すぎます。

そもそもパーソナライズしたブランド体験を、顧客に継続的に提供することが技術的に可能なのか、プライバシー・データセキュリティの面で安全なものといえるのか、仮にそうであったとしても、顧客が自らの嗜好などに相手が継続して入り込んでくることに抵抗感はないのか。抵抗がない人もいるでしょうが、そのパーソナライゼーションは果たして本当に、顧客を真に、継続して理解しているものなのかといったことには、大きな疑問が残ります。


顧客を真に継続的に理解しようとするのであれば、それは本来、範囲を限定しても、ホリスティックな観点、つまり物事を全体的に、包括的に見て行うべきものということになるのですが、そこまでの投資にふさわしいと企業が判断できる顧客がいったいどれくらいいるのか。たとえ、新規顧客獲得は既存顧客の満足度を維持させることより数倍以上のコストがかかるとか、顧客の離反率を少し減らすだけで利益が大きく(場合によっては倍近く)増えるといったことをわかっていたとしてもです。加えていえば、パーソナライゼーションに対するレベル(高低、広狭)の捉え方次第ではあるものの、他社と同じことをしていては、競争に勝ち抜けません。頭でわかっていても、いざ実行の段階になって、他社より先んじて、または他社よりもずっと長い期間取組み続けることが、今の日本企業にできるかというと、相対的にいって難しいと言わざるをえないでしょう。これについては、マーケティングミックスのプロモーションのところで、少し触れたいと思います。


さて、ブランディングの主旨は、プロダクトが売れ続ける仕組みづくりと捉えれば、最初のPであるプロダクトが最も重要な要素であり、基点になるのは当たり前といえるでしょう。最初のPであるプロダクトでは、消費者や法人企業などに提供するプロダクト(商品、製品/サービス)の具体的な中身を決定します。ここで最も重要なことは、自社プロダクトの独自性、差別化要因を具体的に形作るということです。


2つめのP、プライスについては、プロダクトの値決めになりますが、これはプロダクトのベネフィットと価格のバランスをどう考えるかということです。平たく言えば、お買い得なのか、割高なのか、価格相応なのかといったことになります。コトラーは、ベネフィットと価格の関係を、バリューポジショニングと呼んで、5つに分けています(ブランディング (5)ポジショニング ⑥バリュー・プロポジション)。

3つめのPであるプレイス(流通経路)では、消費者や法人企業といった自社の顧客に、プロダクトをどのような方法で提供するのか、アクセスやアプローチの仕方を決めていきます。リアル、バーチャルのいずれか、或いは両方を検討する前に、プロダクトを顧客へ直接販売するか、或いは卸などの流通業者を通して販売するかを決めることも必要です。

最後のPであるプロモーションは、販売促進などの単なる販促と狭義に捉えるのではなく、プロダクトのメッセージを顧客、特にターゲット顧客に伝える全てのコミュニケーション手段が対象になります。それは、広告、PR、セールスプロモーション(販売促進)、ダイレクトメールやインターネットを含めたダイレクトマーケティング、営業パーソンを含めた人的販売が主なものになります。

次回は、4Pの最初のプロダクトについてです。


ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その3

マーケティングミックス2つめのP、価格についての3回めです( ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その1 、 同その2 )。 製品やサービスの特性は、価格の決定に影響を与えます。たとえは、 モノ は多くの場合、在庫が発生するため、納入先である流通業(卸・小売)が納...