2/12/2024

ブランディング (3)セグメンテーション ①主旨と要件

ブランドのポジショニングを考えることは、マーケティング活動で最も重要なことと言って良いのではないでしょうか。「製品を売るのではなく、ポジションを作り出すこと」という言葉もあるくらいです。

ポジショニングとは、自社プロダクトが他とはハッキリ異なる点、すなわち差別化のポイントや、利用者にとっての主たるベネフィットを、潜在顧客の頭または心の中に刷り込んでいく活動のことをいいます。ちなみに、直訳では、Positioning(ポジショニング)は位置付け、Position(ポジション)は位置ということになります。位置付けるためには、連続、不連続関係なく、行為が集積されている必要があります。

ジャックトラウトは、差別化できるまでのステップを、分かりやすく4つに分けています。

はじめに、自社と競合が消費者にどのように見られているかを把握する。

次に、他者との違いを考えて自社が差別化できるアイデアを探す

その後、独自性を感じてもらえるように、エビデンスを示しながら、信頼を獲得していく。

最後に、独自性の良さを分かってもらえるように、コミュニケーションを繰り返す。(ツーリズム(5)マーケティングプランニング ②プロセスxv ポジショニングその2)


ポジショニングは、その検討を始める前に、セグメンテーションとターゲティングを考え、決めておかなければいけません。(ツーリズム(5)マーケティングプランニング ②プロセスxiv ポジショニングその1)

ケラーは、消費者のブランドに対する知覚や選好などが人によってまちまちであるため、市場を明確に細分化し、ターゲット市場を選定しなければならないと述べています。ここでいう市場(マーケット)は、当該プロダクト(製品、サービス)に対して顕在化している顧客と潜在顧客の集合体のことをいいます。

市場セグメンテーションとは、消費者の特徴やニーズ、行動などに基づき、異なるプロダクトを求めることが考えられる集団ごとに分類していく行為のことをいいます。ただ、市場をできる限り厳密に分割しようとして、細かく捉えていくことが実効性の面でできればいいのですが、リサーチなどに要する時間や費用などを考慮すると、ほどほどにしておくのが賢明でしょう。

セグメンテーションの変数は、一般的にいって以下のようなものが挙げられます。

  • 地理的/ジオグラフィック変数(国、地域、市、近隣区域、居住地、気候、人口密度、地域特性や都市化の進展度、規制等)
  • 人口動態/デモグラフィック変数(性別、年齢、世代、家族構成、ライフステージ、所得、職業、学歴、人種、国籍、宗教等)
  • 心理的/サイコグラフィック変数(社会的階層、ライフスタイル、価値観、嗜好、趣味、習慣、性格、購買理由等)
  • 行動/ビヘイビアル変数(購買経験の有無など過去の購買状況、ヘビー・ライトなどの使用頻度、品質・サービス・プレステージ・経済性・利便性・迅速性などのベネフィット、購買や返品に関するパターンや仕方等)


攻略したいセグメント、つまりターゲティングを検討する際、定量的に推定しやすいジオグラフィックやデモグラフィックの変数を用いることが、どうしても多くなってしまいがちです。ですが、新しい切り口を見つけ出したところが、他社よりもずっと早く、より大きな成果を得られる可能性が高いことを考えると、サイコグラフィック変数はもっと活用されるべきでしょう


フィリップコトラーは、効果的なセグメンテーションの条件として、次の5つを挙げています。

  • 測定可能性:セグメントの規模、実質賃金などの購買力、プロフィールが測定できること
  • 維持可能性セグメントから十分な利益を獲得できること 
  • 到達可能性:マーケティング活動を行う上で、セグメントに到達できること
  • 実行可能性:セグメントを惹きつけるマーケティングプログラムが実行可能であること(例として、小規模事業者が市場を幾つかにセグメントし、それぞれに対してマーケティングプログラムを策定したくても、人員不足やスキルの欠如などの理由から実行できない場合、そのセグメンテーションは当該事業者には意味をなさないということ)
  • 差別可能性:マーケティングプログラム毎に異なる反応が得られること。(コトラーは例として、未婚と既婚の女性が香水の販売に同じような反応をする場合は異なるセグメントにはならないとしていることに注意が必要です) 


意思決定を含めて、マーケティングプログラムを策定・実行するプロセスを的確に機能させるためには、セグメンテーションが当該事業者にとって実効的でなければなりません。さもなくば、そのセグメンテーションはまったく意味をなさないことになります。

加えて、そのセグメンテーションが、独自性に富んでいることも非常に重要な要件であることは、これまでの一連のポジショニングのブログをお読みになられている方なら、すぐにおわかりになられることだと思います。戦略から実行に至るマーケティング活動は、セグメントが的確か否か、つまり実施するセグメンテーションの質の高低に左右されるといえます。それほど市場セグメンテーションのタスクは重要です。続きは次回とさせていただきます


ブランディング (4)ターゲティング ②セグメントの評価i

市場特性は、様々な要因に左右されます( ブランディング (4)ターゲティング ①セグメントの評価項目 )。 規模と成長率だけを考慮すればいいというわけでは決してありません。 大規模で右肩上がりに成長を続けるセグメントが有望であることは事実ですが、それ以外の要因が同じであることはめ...