2/19/2024

ブランディング (3)セグメンテーション ②消費者市場

今回は、前回のブランディングについてのブログで述べたセグメンテーションの変数をベースに、消費者を直接相手にしている市場(Business to Consumer)について、特に消費者向けのプロダクト(製品/サービス)を提供している消費財(Consumer Products)の市場で少し考えてみたいと思います。

はじめに、おさえておかなければならないことを書き留めておきます。消費財市場では、特に、セグメンテーションを考える際、基礎的な前提事項が2つあります。

第一に、顧客はモノやサービスとしてのプロダクトそのものよりも、むしろプロダクトから得られるベネフィットを求めているということ。その得られるベネフィットと、その対価であるコストとの組合せを絶えず考慮している。

第二に、顧客や潜在顧客は自分たちが経験してきたプロダクトの利用状況などから、利用可能な代替できるプロダクト、つまりとってかわることのできるベネフィットを常に検討している


消費財市場では、セグメンテーションの変数は、およそ次の大きな2つに大別できます。(消費特性は「態度」特性と「行動」特性に分けて考えることができますが、ここでは極力シンプルに捉えられるように、「消費」特性として一括りでまとめています)

消費者特性:客観的な尺度(ジオグラフィックとデモグラフィックの変数)、主観的な尺度(サイコグラフィック変数)

消費特性品質・サービス・プレステージ・経済性・利便性・迅速性などのベネフィット購買経験の有無など過去の購買状況、ヘビー・ライト・未使用などの使用者のタイプ、認知・関心・購買意思などの購買に至る段階、熱狂的や否定的などのプロダクトに対する態度、購買や返品に関するパターンや仕方、コミュニケーション行動、等

ここで注意しなければならないことは、消費者特性は、消費者が誰であるかを示してはくれるが、消費者が何故そのような行動をしたのかという理由については明らかにすることはないということです。このため、消費特性を把握することが、消費者特性の不十分さを補い、何故そういった行動をしたのか、その理由に近づくことができるようになります。


ベネフィットとは利用者にとっての便益、ここでは消費者にとって便利で得になること、良いことといったものなどを表します。コトラーが過去に言及したベネフィットのわかりやすい例に、歯磨き粉があります。通常、歯磨き粉を買う人は、それを所有したいから買うのではなく、歯磨き粉がチューブに入ったものを使って歯磨きすることで、大きく分ければ、以下のようなものを求めているといえます。

薬用効果(虫歯の予防、歯槽膿漏の予防、煙草のヤニの除去など)

健康/ビューティ志向(白い歯・健康的に見える歯、爽快感、口臭予防など)

味覚志向(主に子供向けの味・フルーツやミント味など)

ほかにも、感性消費、たとえば旅行で得られるベネフィットなどは、比較的イメージもしやすく、わかりやすいのではないでしょうか。アクセス性や経済性以外にも、JR東海エージェンシーの調査では、①「特性体感・経験」、②「自己拡大」、③「リフレッシュ」、④「関係強化」、⑤「自然満喫」、⑥「現地交流」を用いて、「観光地としての価値ベネフィットに関するイメージ分析」を行っています。①から⑥のイメージは、それぞれ次のとおりです。

「その場でしかできない経験ができる」「ワクワク・ドキドキを味わえる」「話題になっている場所を訪問できる」

「自分の生活や生き方について考えることができる」「自分自身を見つめ直すことができる」

「気分的にリフレッシュできる」「日頃の疲れを癒すことができる」

「同行者と今まで以上に仲良くなれる」「同行者と語り合うことができる」

「大自然を満喫できる」「自然を身近に感じることができる」

「さまざまな人たちと出会うことができる」「現地の人たちと仲良くなることができる」

D・A・アーカーは、四半世紀以上も前に、ベネフィットを機能的情緒的自己表現の3タイプに分け、情緒的と自己表現ベネフィットを追求すべきと述べました。

市場はどのようにセグメントできるのか。細分化した各市場には、どのような人たちが、どういったベネフィットを求めているのか。プロダクトに求めるベネフィットに応じて、消費者をグルーピングしていくことが必要です。新商品開発に携わったことのある方なら、活動の最初から最後まで、ベネフィットという言葉がついてまわることをよくご存知のはずです。それほどベネフィットは重要であり、誤解を恐れずにいえば、ベネフィットこそが最も重要なものといえます。

最後に、セオドア・レビットは、消費者セグメントについて、次のようにいっています。心に留めておくべき名言だと思います。「消費者はひとつのセグメントに属しているのではなく、同一時間帯の中でも、その都度多種類のセグメントに属していると見なければならない


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