12/07/2023

ツーリズム (5)マーケティングプランニング ②プロセスxiv ポジショニングその1

マーケティングプランニングは、マーケティングミックス、所謂マーケティングの4P(Product、Price、Place、Promotion)が、構築の核になります。ただ、フィリップコトラーは、4Pの前に、R(Research)を加え、このRからSTPを導き出す重要性を以前から説いており、そこではSTPが戦略、4Pはツールと位置付けています。今回は、このSTP、特にPについて少し取り上げてみたいと思います

STPは、Segmentation/セグメンテーション、Targeting/ターゲティング、Positiioning/ポジショニング、それぞれの頭文字を表しています。このことはよく知られていますが、一般的にいって、このポジショニングについての理解や解釈が果たしてどこまで適切なものか、それを的確に応用できているかというと少々疑問です。

セグメンテーションについては、そもそも顧客を深く知るために行うものです。通常の年齢・性別などのデモグラフィック分類以外に、ジオグラフィック、職業や所得などのソーシャル、ライフスタイルや性格、価値観などのサイコグラフィックといったものがあり、新しい切り口を見つけ出したところが、早期に果実を得られる可能性が高いといえるでしょう。

ターゲティングは、市場を細分化した各セグメントから、ターゲットにするセグメントを決める行為、過程全般を指します。

ポジショニングは、競合との関係を明確にして自らの立ち位置、ポジションをハッキリさせることです。このためには、何で競合と差別化するかということが鍵となります。ただ、その立ち位置は、顧客の頭の中(または、心の中)にあるというのがやっかいなことで、それは外部から目に見えるものではないばかりか、時には顧客自身が自らの頭の中のことについて、気づいていないことが少なくありません。

ジャックトラウトとアルライズは、名著ポジショニング戦略の中で、次のようなことを述べています。

  • マーケティング戦略の基本中の基本は、ライバルのポジションを崩すこと。
  • すでに強力なポジショニングを確立したライバルに正面攻撃を挑んでも、消費者の頭の中をめぐる戦争には勝てない。迂回しても、潜行してもいいが、直接対決だけは絶対に避けるべき。

  • 大きな成功が消費者の頭の中に強力なポジションを築く。商品ラインを広げればポジションが強力になるわけではない。

  • ポジショニングの問題を解決したいなら、商品ではなく、消費者の頭の中を見つめること。
  • 開発資金をどれだけ投じようが、そのサービスが技術的にどれほど興味深かろうが、消費者の心をつかむには、彼ら彼女たちの頭の中にすでに存在しているものと結びつけなければ意味がない。消費者の頭の中のポジションを無視することはできない。

インターネットが台頭する前に提唱されたポジショニング戦略の考え方は、2020年代においても依然として強力なばかりか、尚一層威力を増しているように思います。今日のような情報が溢れかえっている社会で、消費者の頭の中を制するためには、辛抱強く、一貫性をもって、コンセプトを磨き続ける必要があります。競合とは異なるやり方で、ポジションを固めていかねばなりません。ですが、たとえばウェブサイトを見たとき、メールを受け取った時、そこにあるコミュニケーションメッセージは、どれも似たようなものばかりに見えてしまうと感じる人は少なくないでしょう。

購買の検討対象を考慮集合といいます。人がデスティネーション、またはそこで扱われているプロダクトを選択する場合、一足飛びにあるデスティネーションやプロダクトに決めることは通常ありえません。少なくとも2回程度(もしくはそれ以上)のふるい分けがあるはずです。1回目は、多数の選択肢から、3~5つ程度に絞り込みます。2回目はその絞り込んだ中から、ある一つのものに決めていきます。絞り込んだり、最後のひとつに決めたりする過程は、人によってまちまちでしょうが、ここでまず重要なことは、1回目の選択肢に必ず入るということです。仮に、最初の多数の選択肢にさえ入らないようだと、すなわち消費者の頭の中に浮かぶことさえなければ、それは何も始まらないことを意味しています。

もし消費者の頭の中に、そもそもこちらのイメージが浮かんでいないようであれば、想起させることを第一に考えなければなりません。仮に、想起されるとして、次は、消費者が抱いているイメージを如何に活用するかを考えなければなりません。とにもかくにも、こちらの思いはひとまず横に置いておき、消費者の頭の中のポジションをどうやって獲得していくかに知恵を絞ることが重要です。

このためには、市場を細分化し、ターゲットを絞り込んで、自らのポジションを作り上げていくことです。消費者が選択したものを変えさせることは、容易ではありません。したがって、情報の洪水でオーバーヒートしている頭の中に入り込むには、消費者にとって、消費者の頭の中にとって、新しい何かを提供するのが、早道だといえるでしょう。


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市場特性は、様々な要因に左右されます( ブランディング (4)ターゲティング ①セグメントの評価項目 )。 規模と成長率だけを考慮すればいいというわけでは決してありません。 大規模で右肩上がりに成長を続けるセグメントが有望であることは事実ですが、それ以外の要因が同じであることはめ...