今回は、マーケティングプランニングシステム(MPS)における「3.2 マーケティングの目的と戦略」についてです。(MPS全体のながれはこちら)
「目的と戦略」としたのは、ツーリズムにおけるマーケティングの意図をハッキリさせるため、「戦略」の前に敢えて「目的」を付けて強調しました。目的とはデスティネーションでマーケティングが実現したいことを指し、戦略はその目的とゴールを達成するためのマーケティングの打ち手をいいます(以前にも触れましたが、戦略とは、ゴールを達成するために、競争優位を発揮できるものを整合的に束ねた打ち手のまとまりです)。
なお、ここでいうマーケティングの目的は、プロダクト(商品/サービス)と市場に限定させるべきでしょう。何故なら、事業者(デスティネーション)は、個人法人を問わず、第三者に対して、何がしかのプロダクトを提供してはじめて、自らの事業を成立させることができるからです。ここでは、シンプルに考えることが重要です。広告宣伝・販促、価格、チャネルといったものは、マーケティングの目的に付随するものと考えることが、マーケティングの本質を捉えやすいといえるでしょう。マーケティングの目的は、次の4つのいずれかを対象にしたものになります。
A. 既存プロダクト x 既存市場
B. 既存プロダクト x 新規市場
C. 新規プロダクト x 既存市場
D. 新規プロダクト x 新規市場
Aはプロダクト改良による市場浸透、Bは潜在ニーズを発掘して市場拡大、Cは商品ライン拡張などによる商品開発、Dは主として技術革新による市場創造(多様化によるポートフォリオ管理)といえます。
マーケティングの目的は、測定できるものにする必要があります。大事なことは、当該マーケティング活動のゴールと成果を明確にすることです。マーケティングは人間を相手に行うものであり、デジタルの最新手法に惑わされることなく、原理原則にそって計画し、実行する姿勢を保つことこそが成功の秘訣です。
繰り返しますが、マーケティング戦略はマーケティングの目的を達成するためのものであり、通常マーケティングミックスに関係しています。
- プロダクト: プロダクトブランディング、プロダクトポジショニング、プロダクトの改廃と追加、デザイン、パッケージなど
- プライス: マーケットセグメントにおけるプロダクトグループのためのプライシングポリシー
- プレイス: 販売チャネルと顧客サービスレベルに関するポリシー
- プロモーション: 顧客とのコミュニケーション(広告宣伝、販促、営業パーソン、コールセンター、オン/オフラインのメール、パブリックリレーション、展示会、トリプルメディアなど)についてのプロモーションポリシー
マーケティングミックスのそれぞれ、または全部を見直すことで、マーケティング戦略を策定するわけですが、マーケティング戦略を成功させるためには、突出した何かが必要であって、ひととおり競合と同じようにできるというのでは競争に勝てません。また、マイケルポーターが主張しているとおり、競合より少しうまくできたとしても、それは戦略とはいわず、業務の効率化になってしまうということにも注意すべきです。
マーケティングを戦略的に行うということは、自身の強みを如何なく発揮できる顧客セグメントに狙いを定めて、攻略に必要な要件と能力を検討することだといえます。顧客があるデスティネーションを選択する、或いはそこのプロダクトを購入することが自身にとって明白なベネフィットとなる、そういったことを見出せるようにすることが必要です。所謂、顧客提供価値をはっきりさせなければなりません。
最後に、情報が溢れかえっている現在では、いかにデスティネーションを目立たせるか、顧客が得られるベネフィットを明確にするということが、成功の鍵を握るといえるでしょう。そのためには、突出した何を見つけ、磨き上げていくことが必要です。セスゴーディンは「消費者は目新しいものに気づく」といっています。また、「物語は第一印象から始まる」とも述べています。