9/08/2023

ツーリズム (5)マーケティングプランニング ②プロセスi

ツーリズム産業にはステークホルダーが多く、業種や職種も多岐にわたります。そのため、マーケティングプランを策定する際は、できるかぎりよく知られている手法を用いて、全体構成をわかりやすいものにすることが重要です。さもなくば、ステークホルダーのエンゲージメントを上げていくことは難しいでしょう。

また、策定プロセスをひとつのシステムとして捉え、繰り返し活用できる(アセットとして活用できる)ものにすべきで、ステークホルダーの誰もが策定に参画(またはレビュー)できるようにしておくことも必要だと思います。

ツーリズムにおけるマーケティングとは何か。デスティネーションと消費者(観光客ほか)双方の目的を達成するために、デスティネーションが提供するモノやコトと、消費者のウォンツをマッチングする機能だといえるでしょう。マーケティングのプランニング全体のながれ(マーケティングプランニングシステム)は、以下のようになります。

1. ゴールセッティング

1.1 ミッションステートメント

1.2  パフォーマンスサマリー

2. 状況確認/Situation Review

2.1 マーケティング監査

2.2 SWOT分析と課題特定

3. マーケティング戦略策定

3.1 マーケティング仮説

3.2 マーケティングの目的と戦略

4. リソース配分とモニタリング

1のゴールセッティングが、プランニングプロセスで最も難しいものかもしれません。言うまでもなく、マーケティング戦略は一貫していなければなりません。ぶれないようにするためには、何よりプランニングの最初のステップで、デスティネーションのゴールをしっかり定めておくことです。そのためには、次のような問いに答えられる必要があるでしょう。たとえば、

  • 我々(デスティネーション)は何者か。
  • 我々が、他のデスティネーションより優れている点は何か。
  • 我々が目指す方向は何処か。

このような問いは、ミッションステートメントを作ることの助けになるはずです。もしミッションという言葉がしっくりこないようであれば、パーパスステートメントと呼び変えてもよいでしょう。ミッションとは、通常、事業者(ここではデスティネーション)の存在目的と事業を表現しているもののことを指します。前者の存在目的はやや抽象的なもの、後者の事業は具体的な部分となり、この2つが合わさったものが、ミッションステートメントになります。少し余談になりますが、日本企業の場合、存在目的を経営理念(もしくは企業理念)、事業をドメイン(事業領域)として、別々に表すことが珍しくありません。

具体的には、次のようなものを1ページ程度に記載しておくことがよいだろうと筆者は思います。

  • マーケティングの役割または貢献(以下のいずれかについて具体的に記載)

売上げ/利益、もしくは提供サービス、或いは機会探索 

  • マーケティング活動の定義(同上)

活動がもたらすベネフィット、もしくは、

活動をとおしてデスティネーションが獲得できるもの

  • 傑出したコンピタンス(具体的に記載)

成功に必要なスキルやケイパビリティ(競合を凌いでいると考えられるもの。もし競合を上回るものがなければ、それは傑出した強みということにはなりません)

  • 将来への示唆(同上)

マーケティングがすること

マーケティングがするかもしれないこと

マーケティングが決してしないこと

ところで、しばしば混同されるものに、ビジョンとバリューがあります。ビジョンとは事業者の願望を表現しているもののことをいい、バリューはその事業者の価値観を表しているものになります。

Hawaii Tourism Authority(ハワイ州観光局)は、ミッションを次のように述べています。

Our mission is to strategically manage Hawai‘i tourism in a sustainable manner consistent with economic goals, cultural values, preservation of natural resources, community desires and visitor industry needs. (出所: https://www.hawaiitourismauthority.org/who-we-are/)

We aim to manage tourism in a way that helps improve the quality of life for residents and communities across the state. Our marketing now includes teaching visitors to be responsible, with the goal of sustainable tourism.

HTA supports the United Nations 17 Sustainable Development Goals (SDGs), and the UN 2030 Agenda for Sustainable Development. HTA is promoting the visitor industry in alignment with the Aloha+ Challenge.

Our measures of success are: visitor satisfaction, resident sentiment, per person per day spend, and total visitor expenditures.

マーケティングマネージャーは、消費者がデスティネーションの4P特にフィジカルプロダクトからどのような体験や経験をしてもらいたいのかを考え、評価の視点(KGI,KPI)を決める必要があります。ゴールなきところに戦略は存在せず、ましてや戦術などあるはずもないからです。プランニングは、具体的なゴール達成に向けたものでなければなりません。


ブランディング (4)ターゲティング ②セグメントの評価i

市場特性は、様々な要因に左右されます( ブランディング (4)ターゲティング ①セグメントの評価項目 )。 規模と成長率だけを考慮すればいいというわけでは決してありません。 大規模で右肩上がりに成長を続けるセグメントが有望であることは事実ですが、それ以外の要因が同じであることはめ...