デスティネーションにおけるマーケティング活動の重要性は、どれだけ強調しても足りないくらいでしょう。ツーリズムにおけるマーケティングのプリンシプル(原理・原則)には、以下のようなものが挙げられます。
A. デスティネーションの成否は、顧客のニーズとウォンツに基づく。
B. デスティネーションにはライフサイクルがあり、6つのステージで構成される。
C. デスティネーションが大きな成功をおさめるには、マスマーケットを狙うのではなく、市場を細分化し、具体的なターゲット層を設定する。
D. デスティネーションのマーケティングミックスは、古典的な4P(プロダクト、プライス、プレイス、プロモーション)だけでは十分とはいえず、他の要素を加えたものを適用する。
Aについて、異論を唱える人はいないでしょう。ニーズ(必要性)は目的、ウォンツ(欲求)は目的達成の手段、たとえば前者は喉が渇いたので潤したい、後者はミネラルウォーターを飲みたいとなり、ウォンツに実際に支払える購買力が伴うと、デマンド(需要)になります。
ここで注意しなければいけないことは、顧客とは誰にとっての顧客かということです。顧客には、一般のレジャー客もいれば、ビジネス客もいます。ビジネス客であれば、個人だけでなく、法人や行政機関などの団体客も存在します。ほかにも、地域住民も顧客になりうるでしょう。
Bついては、プロダクトライフサイクル(導入、成長、成熟、衰退)のような知名度、浸透度はありませんが、ツーリズムのライフサイクルとして、1980年にR.W.バトラーが、デスティネーションの成長を6つのステージで表したものがあります。
1. 探検/Exploration
2. 参加/Involvement
3. 発展/Development
4. 完成/Consolidation
5. 停滞/Stagnation
6. 衰退/Decline、または再生/Rejuvenation
Cについては、ポジショニング理論を含めて、別枠で述べることにしたいと思います。
Dは、先述のツーリズム4P(ツーリズム (2)プロダクトとしてのデスティネーション ①4つのP)で、フィジカルプロダクト、プログラム、パッケージ、ピープルについて述べました。ほかにも、サービスマーケティングの観点であれば、8つのPというものがあります。
Product elements/サービスプロダクト
Place and time/場所と時間
Price and other user outleys/価格とその他のコスト
Promotion and education/プロモーションと教育
Process/サービスプロセス
Physical environment/物理的環境
People/人
Productivity and quality/生産性とサービス品質
ラブロックとウィルツは、サービスマーケティングの8Pを、8人の選手がオールを漕ぐシェルボートのレースに例え、統合による相乗効果がなければ、サービスの競争には勝てないと述べています。このサービスマーケティングの8Pをはじめ、サービスマーケティング&マネジメントについては、いずれ詳細にとりあげていきます。次回からは、マーケティングのプランニングについて述べていきたいと思います。