9/18/2023

ツーリズム (5)マーケティングプランニング ②プロセスii

前回の続きで、今回はマーケティングプランニングシステムの「2. 状況確認/Situation Review」についてです。(2. 状況確認/Situation Reviewは、「2.1 マーケティング監査」と「2.2 SWOT分析と課題特定」で構成しています)

2.1のマーケティング監査では、デスティネーションのパフォーマンスに影響を与えるものを広く体系的に検討します。定期的に行うことの重要性を考え、「監査」という言葉を用いました。日本ではあまり見かけないかもしれませんが、欧米ではふつうに使われている用語です。フィリップコトラーは、大著マーケティングマネジメントの中で、次のように述べています。

マーケティング監査とは、問題のある分野と事業機会を特定し、起業のマーケティングパフォーマンスを改善するための活動計画を推奨する目的で、企業または事業単位のマーケティング環境、目的、戦略及び活動に対して包括的、系統的、独立的、定期的な調査を行うことであるとしています。

コトラーは監査のような徹底した調査の実施を奨励し、行う際には、監査の鉄則として、当該組織のマネージャーから聞きとりを行うだけでなく、顧客と取引先など外部の意見も必ず求めるべきとしています。

ツーリズムはステークホルダーの多さに加え、小規模事業者が多いことから、マーケティング監査を行う意味合いが大きいといえるでしょう。というのも、ツーリズム産業に限らず、産業共通で散見されることに、相対的にいって、事業規模が小さい企業/事業体ほど目的や目標の設定が曖昧だったり、パフォーマンスを評価し改良するためのやり方や手順がはっきりしていません。そればかりか、見直しを行うことさえない場合もあるなど、いつまでたっても同じ誤った(もしくはどうやっても効果など出しようもない)やり方を続けていることがあるためです(ただ、大企業でも、適切な仕組みを持たない企業を筆者は何度も見てきましたが・・・)。

マーケティング監査は2つの柱で構成するのがわかりやすいと思います。ひとつめの柱は今、実践していることが効果・効率よく行われているかを検証します。他方は、そもそも当該デスティネーションの競争環境や業界構造がどうなっているか、内部資源の状況たとえば模倣困難性などを検証します。このブログでは、前者をプログラム監査、後者をストラテジー監査と呼ぶことにします。どちらの監査から始めるのがよいか、正解はありませんが、ふつうはストラテジー監査から行うのが一般的でしょう。

ストラテジー監査は、3つの項目で構成します。第一に業界の競争構造、第二に業界における自身(当該デスティネーション)の競争ポジション、第三に自身の内部資源の希少性と模倣困難性です。

業界の競争構造は、マイケルポーターのファイブフォース(5F)に、PESTを併用して現況を把握します。ただ、業界の捉え方には少し工夫が必要でしょう。デスティネーションを基点に、ツーリズム/観光業界とするのでも構いませんが、かなり幅広い対象となり、工夫を凝らさなければ焦点がぼやけてしまう可能性があります。そのため5F分析をした後に、それで何なの?とか、そんなことわかりきっているじゃないかとなりかねません。そこで、市場を細分化して、該当する業界をより詳細に定義できれば、競争要因の状況や要件などが絞り込めるでしょう。たとえば、欧米からの観光客とか、国内の遠方から列車で訪れる(首都圏から近畿圏に来るような)高齢の観光客、宿泊をする観光客、神社寺院仏閣を見に来る観光客など、いろいろ考えられると思います。(但し、この場合は「業界」の競争構造という言葉は変更したほうがしっくりくるかもしれません)

業界における競争ポジションは、おそらくコトラーのマーケットポジション分析の枠組みを参考にするのが良いと思います。内部資源については、ジェイバーニーのVRIO(ブリオ)を活用します。続きは、次回とさせていただきます。


ブランディング (4)ターゲティング ②セグメントの評価i

市場特性は、様々な要因に左右されます( ブランディング (4)ターゲティング ①セグメントの評価項目 )。 規模と成長率だけを考慮すればいいというわけでは決してありません。 大規模で右肩上がりに成長を続けるセグメントが有望であることは事実ですが、それ以外の要因が同じであることはめ...