今回は、昨年11月中旬から7回にわたり取り上げてきたジョン・R・ロシターとラリー・パーシーのブランドポジショニングに関する3段階手法を、要点を簡潔にまとめて終わりたいと思います。
両氏の3段階手法は、はじめに、ブランドのポジションをX-YZモデルで決定します。このモデルは、そのブランドは何で[X]、誰を対象にして[Y]、何を提供するのか、つまりどういったベネフィットをYにもたらすのか[Z]を説明します。
ここでは、当該ブランドを、カテゴリーの中心に据えるか、差別化したポジショニングにするかのどちらかを選択しなければなりません(ブランディング (5)ポジショニング ⑤3段階手法i X-YZモデルその1)。
商品カテゴリー自体または商品カテゴリーにおけるニーズを表すXの選択は次のとおりです。先発ブランドや、先発ブランドでなくてもマーケットリーダーであれば、中心的ポジショニングを選択します。
後発の模倣ブランドは先発ブランドやリーダーと同等のベネフィットを低価格で提供できる場合は、ポジショニングは中心的なものに据えるのが正攻法といえます。
それ以外のブランドは全て、差別的なポジショニングを選択しなければなりません。というのも、そうしなければ生き残ることが出来ないからです。
Xが決まれば、次はY(消費者など)とZ(ベネフィット)の選択へすすみます(ブランディング (5)ポジショニング ⑤3段階手法ii X-YZモデルその2)。
ここでは、マーケティング/ブランド担当者は、YとZの両方を選択するのではなく、YかZのどちらかを決めることになります。Yは基本的に、ターゲットユーザーが技術的な商品の活用にあたり初心者である場合か、商品の購買動機が社会的承認に該当する場合に限定されます。したがって、大半のケースにおいて、担当者はZである商品のベネフィットに基づいて、ポジショニングを行うことになります。
X-YZモデルでXYZそれぞれが決まると、次は、ブランドが持つベネフィットのうち、何を強調するかをI-D-Uモデルで決定します(ブランディング (5)ポジショニング ⑤3段階手法iii I-D-Uモデルその1)。
Iは重要性(Important)、Dは実現性(Delivery)、Uは独自性(Uniqueness)を表しています(ブランディング (5)ポジショニング ⑤3段階手法iv I-D-Uモデルその2)。
ロシターとパーシーは、ベネフィットを7つの購買動機で考察することを推奨しています。7つのうち、4つが負の購買動機、3つが正の購買動機になりますが、いずれの動機であろうとも、ポジショニングを検討する時は、ブランドがまだそこにポジショニングしていない場合に限定されます。
つまり、ブランド独自のベネフィットを見つけ出して、それを強調することが、ここでの最も重要なポイントになります。
その後、競合ブランドと同等のベネフィットに言及して、最後に、自社ブランドが劣っているベネフィットを他のベネフィットで相殺してしまうか省略するというながれになります。
このことは最も重視される購買動機(一次的動機)に基づいてポジショニングしなければならないということになりますが、仮にその独自の一次的購買動機を作り出すことができなければ(他のブランドがすでにそこにポジショニングしている場合には)、次に重視される購買動機(二次的動機)に基づいてポジショニングします。
I-D-Uモデルの後は、属性、ベネフィット、情動のどれにフォーカスして、ポジショニングするかをa-b-eモデルを使って決定します(ブランディング (5)ポジショニング ⑤3段階手法v a-b-eモデルその1、ブランディング (5)ポジショニング ⑤3段階手法vi a-b-eモデルその2)。
属性へのフォーカスは、ターゲットが専門家、提供物が無形サービス、同質的なベネフィットを有するブランドが情動へフォーカスする場合の代替案、以上3つの状況で行うことが望ましいとロシターとパーシーは述べています。
ベネフィットへのフォーカスは、他社が模倣しにくいベネフィットをブランドが保有している場合、ブランドが情報として負の動機づけになる場合、情動による強固な態度に対して論理的に攻撃する場合に行うことが有効であり、なかでも他社が模倣困難な場合は必ずベネフィットへフォーカスすべきとしています。
情動へのフォーカスは、模倣がたやすくできるようなベネフィットを持つブランド、情報として正の動機づけになるブランド、属性に従った強固な態度に対して情動的に攻撃する場合の3つがあり、簡単に真似されてしまうベネフィットしか持たないブランドには、情動にフォーカスすることが薦められています。
ポジショニングを決めることこそ、マーケティング活動の中で、最も重要な意思決定といって差し支えないでしょう。
ポジショニングは、そのブランドが何で、誰のために、何を提供するのかを明示するものです。ただ、ロシターとパーシーも述べているように、どうやってそれを見せたり、伝えたりするのが最もよいやり方かといったことまでを、ポジショニングが示すことはありません。それは媒体の領域になります。このため、何をどう表現するかによって、ポジショニング戦略の結果(実行による成否)が大きく左右されることには注意しなければなりません。