12/07/2024

ブランディング (5)ポジショニング ⑤3段階手法iv I-D-Uモデルその2

前回は、3段階手法でブランドのポジショニングを考える際、強調すべきベネフィットの決定には、消費者の購買動機に基づくI-D-Uモデルを用いて行うことを述べました。今回は、そのI-D-Uモデルの重要性(Important)、実現性(Delivery)、独自性(Uniqueness)について、概説していくことから始めたいと思います。


重要性とは、購買者のブランドを購入する動機と、ブランドを購入することによって購買者にもたらされるベネフィットとの関連性を指しています。なお、ここでいうベネフィットは、購買動機を当該ブランドが満足させる機能を有する場合に限ります。

ロシターとパーシーは、コーヒーのラベルを例として挙げています。たとえば毎日飲用するコーヒーブランドを選択する時には、感覚的満足が購買動機となり、コーヒーラベルが高級感を漂わせる必要はない一方で、来客用のコーヒーの場合には、社会的承認が必要となる場合が多いため、ラベルから高級感が感じられるという重要性が必要になることが多いとしています。

この例に従えば、たとえば今の時期の日本だと、一般的にいえば、アールスメロンを自宅で食べる場合には、高知県産や熊本県産などは味が良い割には、価格はそれほど(かなり?)高いものではないということになるかもしれませんが、進物にするメロンとなれば、社会的承認の高い静岡県産になるといったようなことが該当します。

ベネフィットの重要性は、購買動機を満たす全てのブランドについて当てはまります。この重要性は、知覚される競合ブランドの集合である市場や商品カテゴリーの区分において普遍的なものであり、ひとつのブランド特有のものではありません。


I-D-Uモデルでの実現性とは、主観的なものであって、客観的事実に基づくものとは限りません。該当するブランドが、ベネフィットを提供できることに関する知覚を指しています。従って、ブランドベネフィットの実現性は、常に知覚的なものとなり、購買者のいわば信念のようなものや確固たる考えに基づきます。先のアールスメロンの例でいえば、静岡県産のメロンは高級なものという消費者の知覚に依存しています。ですので、静岡県産メロンのベネフィットの実現性とは、それが有するベネフィットを実現することについての知覚を指しているということになります。


独自性とは、端的に言えば、差別化された実現性のことを指します。当該ブランドは、競合ブランドに比べて、より良くそのベネフィットを実現できると知覚されていること、他ブランドよりもより優れた実現性を持つと知覚されるもののことを表します。先のメロンの例でいえば、静岡、高知、熊本、各県産のアールスメロンが、ある特定のベネフィットについて等しい実現性を持つとすれば、そのベネフィットに沿って、購入するメロンを決定することはできません。同等に実現するベネフィットは、選択の基準にはなりえません。従って、各県産の間で知覚差異を生み出し、相対的な独自性を生み出せるひとつ、またはそれ以上のベネフィットを強調する必要があり、それが進物の場合であれば、一般的にいえば、高級感ということになります。


以上から、ロシターとパーシーは、ブランドは重要なベネフィットを実現しなければならず、少なくともひとつの重要なベネフィットについて、相対的に独自なかたちで実現しなければならないと説いています。ここで考慮すべき点は3つあります。ひとつめが重要なベネフィットを決めること、2つめが重要なベネフィットを実現すること、3つめがその実現は独自性を発揮しなければならないということになります。


I-D-Uモデルのルールは、まずブランド独自のベネフィットを強調することであり、これが最も重要なポイントです。次に、競合ブランドと同等のベネフィットに言及すること。そして最後が、自社ブランドが劣っているベネフィットを他のベネフィットで相殺してしまうか、省略してしまうということです。

もし、ブランドが独自に実現できる重要なベネフィット持っていない場合はどうすればいいか、それは何が何でも一つは見つけ出すこと、創り出さなければならないいうことになります。というのも、それができなければ、そのブランドは市場に埋没し、退場せざるをえなくなるからです。


最後に、ロシターとパーシーのブランド態度を明確にするための多属性戦略を引用して、I-D-Uモデルを終わりにしたいと思います。

1. ブランドベネフィットの知覚実現性を高める。

2. ブランドが独自に実現するベネフィットの重要性を高める。

3. 競合ブランドのベネフィットにおける知覚実現性を弱める。

4. ブランドが独自に実現できる重要なベネフィットを追加する。

5. 自分のブランドが有利になるように、ブランド選択のルールを変える。


次回はミクロレベルのa-b-eモデルについてです。


ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その1

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