11/17/2024

ブランディング (5)ポジショニング ⑤3段階手法i X-YZモデルその1

ポジショニングについて、ジョン・R. ロシターとラリー・パーシーが、ブランドコミュニケーションの観点から、マクロレベル、メゾレベル、ミクロレベルの3段階手法というモデルを、およそ四半世紀前に提唱しました。今日においても効果のある枠組みだと筆者は思いますが、近年ではあまり語られることがないように思えるため、このブランディングブログで概説していきたいと思います。


ポジショニングの3段階手法は、次の3つのモデルで構成されます。

X-YZモデル (マクロレベル)

I-D-Uモデル (メゾレベル)

a-b-eモデル (ミクロレベル)


X-YZモデルは、ポジショニング上の位置づけを目的としたもので、3段階手法に基づいたポジショニングはこのモデルから始まります。

I-D-Uモデルは、X-YZモデルの次に来るもので、ベネフィットを選択するために適用されるモデルです。

a-b-eモデルは、I-D-Uの後に来る最後のモデルで、ベネフィットをミクロレベルでフォーカスするために用いられるモデルです。

以下に、それぞれのモデルを数回に分けて、できる限り簡潔に説明していきたいと思います。


マクロレベルのX-YZモデル

X、Y、Zはそれぞれ次のものを表します。

Xは、商品カテゴリーにおいて、対象にする自社のブランドをどう位置付けるかを決める因子で、商品カテゴリー自体か、商品カテゴリーにおけるニーズを表します。つまり、そのブランドはいったい何なのかを端的に表現するものになります。

Yは、ユーザーを表し、競争相手のブランドに対して、自社ブランドをどう位置付けるかを決める因子で、そのブランドは誰のためのものを表します。ユーザーとは消費者や法人などの利用者を指しますが、本稿では消費者を念頭においているため、以降はユーザーの代わりに、消費者として記述していきます。

Zは、ベネフィットを表し、Y同様、競合ブランドに対する自社ブランドの位置付けを決めるものです。ブランドのベネフィットを示すため、そのブランドは何を提供するのかということを表します。

まとめると、X-YZモデルは、そのブランドは何で[X]、誰を対象にして[Y]、何を提供しているのか即ちどういったベネフィットをYにもたらすのか[Z]を説明し、これをもってマクロレベルのブランドポジションを表します。

このX-YZモデルの後に、I-D-Uモデルとa-b-eモデルの2つが続くことになります。ロシターとパーシーは、このX-YZモデルを、ブランドポジションについて、消費者の頭または心の中に、当該ブランドは何で、誰を対象にし、どういったものを提供するのかを位置付けるもので、「上位のコミュニケーション効果」と述べています。


X-YZモデルのXは、上記のとおり、カテゴリーそのものかカテゴリーのニーズを表すもので、その決定に関する選択肢はハイレベルでXaとXbの2つ、それぞれが更に2つに分かれて、計4つの選択肢になります。

Xa. 中心的ポジショニング: 

Xa1. 先発ブランドか市場リーダー 

Xa2. 模倣ブランド(但し、ベネフィットがXa1と同等と消費者が判断でき、且つXa1より低価格で提供できる場合に限定)

 

Xb. 差別的ポジショニング

Xb1. その他全てのブランド 

Xb2. 後発の模倣ブランド


はじめにブランド/マーケティングの担当者は、ポジショニングを中心的か差別的かのどちらかを選ばなけれななりません。

選ぶ基準は、上記のとおり、カテゴリーに1番乗りするブランドは、自ずと中心的ポジショニングを選択することになります。というのも、その最初のブランドが、当該カテゴリーそのものを定義することになるからです。

定義するものは、商品カテゴリーの属性、属性の望ましい水準、ターゲット顧客による属性の組み合わせ方(または選択の仕方)です。こういったことは、後発ブランドに非常に大きな影響を与えるため、当該カテゴリーにおける主要なベネフィットを提供し、消費者が実感し続ける限り、先発ブランドは優位性を獲得し続けることができるといえます。


Xa1かXa2以外のブランドは全て、差別的ポジショニングを選択しなければいけないと、ロシターとパーシーはいっています。


Xb1はXa2になれないブランド、つまりXa1の先発リーダーか市場リーダーが提供するブランドのベネフィットが、消費者からみて同じものと認識されることに加え、価格が先発ブランドより低価格で提供することができること、この両方を実現できないブランドがXb1ということになります。これは後発の模倣ブランドも差別化する必要があるということにつながるため、Xb2はXb1の差別化ブランドを模倣するということになります。

4つの選択肢は、Xa1、Xa2、Xb1、Xb2の順で検討していきます。何事もそうかもしれませんが、最初が肝心です。ここでのポジショニングに関する意思決定(どの選択肢にするかを決めること)は、ポジショニング全体を考える上で、非常に重要な部分になります。というのも、これまで繰り返し触れてきましたが、ポジショニングは消費者の頭(または心)の中を対象にするため、一度決めた選択肢を後から変更することは容易ではなく、下手をすればブランドの存在価値自体が否定されることにつながりかねないため、慎重に検討しなければなりません。

X-YZモデルのYとZについては、次回にまわしたいと思います。


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