今回は、コミュニケーションを効果的に行うための8つのステップの7番目「コミュニケーションの効果測定」からです。前回までは、以下をご覧ください。
1「市場の理解とターゲットオーディエンスの明確化」(プロモーションその7)
4 「コミュニケーション・チャネルの選択」(プロモーションその9)
5 「コミュニケーション予算の決定」(プロモーションその10)
6 「コミュニケーションミックスの選択と予算配分」(プロモーションその11)
7「コミュニケーションの効果測定」
コミュニケーションの計画を実行すれば、コミュニケーションメッセージの結果を測定する必要があります。メッセージは、コミュニケーションの目的やプロダクト/ブランドが獲得したいポジションを主張する言葉で表現されたものであるべきです。主張を明確にするためには、表現に関するアイデアやコンセプト、戦略が練られていなければなりません。
本来、プロダクトコンセプトには表現コンセプトが含まれているべきです。表現に関するコンセプトテストを行っていれば、その後のマーケティングミックスにおけるコミュニケーションの効果も測定しやすいものになります。
プロダクトの発売に先駆けて、エリア限定でテスト販売することはよくあることです。この段階で、効果を測定し、テスト結果が思わしくなければ、追加の資金を投入することなく、取組みを中止することもあるでしょう。このテスト販売で、選定したターゲットオーディエンスに、次のような内容でメッセージの効果を検証します。
メッセージを認識したか、ユニークさはあるか、何回見たか、覚えているか、どのように思ったか、気に入ったか、強い印象を感じたか、プロダクトは購入したか、誰かに薦めたか等々、メッセージの内容理解、好感、興味、全体の出来栄えなどを確認します。
ここで重要なことは、仮にテスト販売の結果が思わしくなかった場合、その理由が、主にメッセージや表現に問題があったからなのか、或いはそもそもプロダクト自体がターゲットオーディエンスの期待に応えられなかったのかということを把握しなければならないということです。
コミュニケーションの効果測定は、これまで多くの議論を呼んできました。というのも、調査の有効性についての判断が、人の立場によって大きく異なるためです。そういうこともあってか、日本ではあまり効果検証が十分に行われてきませんでした。
特に、クリエイティビティが非常に重視される広告の場合は尚更です。今でも実際に行われていることですが、某大手有名消費財メーカーの場合などは、商品のアイデア創出やコンセプト開発そのものを、大手広告代理店同士が競い合って行い、見事勝ち抜いた代理店がまるごと当該メーカーの広告を受注します。このような状況では、広告効果の把握は勿論のこと、コミュニケーション効果を、作り手(広告代理店ではなく、本件でいえばメーカー)の意志に沿って、検証することは不可能なことになるといわざるをえません。筆者もクリエーターの方は何人か知っていますし、自分の先輩が最大手の広告代理店に勤めていたり、後輩が今でも局長で頑張っていたりなど、知らないわけではないため、むやみに言うのもなんですが、クリエーター任せはもうやめるべきで、せめてUSP(Unique Selling Point)は自分たちで考えるべきだと思います。
8「コミュニケーションの評価」
日常的な購買行動に該当することが多いルーチン的な関与(低関与)か、購買状況が広範囲に及ぶ関与(高関与)かによって、コミュニケーションは異なります(ブランディング (7)マーケティングミックス⑤ プロモーションその3)。
低関与(ルーチン的な関与)の場合、消費者はすでにプロダクトのカテゴリーをよく知っていて購入経験もあるため、コミュニケーションの役割は、消費者に試用してもらうというよりは、競合プロダクトから自社への変更や、自社プロダクトに対する購買習慣を強化することです。
高関与の場合は、競合プロダクトのベネフィット(機能的、情緒的、自己表現)を、消費者は調べています。そのため、ここでのコミュニケーションの役割は、消費者が、プロダクトについて学習し、自社に好感をもってもらい、購買につながるように、情報を提供することになります。このため、売上げが伸びるか、購買者数が増えるかが、主たる評価基準になります。
以上から、高関与の場合は、コミュニケーション投資が価値を生み出したかどうかの判断・評価は比較的容易といえるでしょう。一方、低関与の場合は、コミュニケーション支出の割には、売上げが目立って伸長することがそう多くないことが予想されるため、評価が難しいものになります。
とりわけ成熟化した、或いはコモディティ化した低関与のプロダクトカテゴリーでは、コミュニケーション予算を大きく減らしたとしても、売上げはさほど低下しないばかりか、利益が増大する可能性さえあります。こういった場合、財務部門や経営陣からマーケティング部門に対して、コミュニケーション投資の打ち切りや、予算の減額を要請されることがあるでしょう。もしそういう状況になれば、コミュニケーションの評価などまっとうにしなければよかったのにと思うことがあるかもしれません。それでも、そこは発想を少し変えて、次のように考えるてみるのも一案です。
会社が要請する短期的な利益改善に従えば、売上げの落ち込みはわずか(たとえば5%)かもしれません。単年度ではその程度で済むでしょうが、引き続きSPなどの投資さえしなくなるとすれば、売上げは下降の一途をたどるのは明らかで、そうなると小売店頭で確保している陳列スペースを手放すことになるのは時間の問題です。それでも、売上げは減り、市場シェアが低下しても、利益が出ているうちはいいかもしれません。ですが、2年目以降、維持できるのは利益率だけで、利益高も大きく前年割れとなり、キャッシュフローが大幅に減ることになれば元も子もありません。
そうなることが予想できるのであれば、むしろ販売価格を引き上げて、プロダクトブランドのイメージを毀損させないようにするほうがいいでしょう。プロモーション投資を控えるばかりが、利益の維持または押し上げにつながるわけではありません。価格を見直すことのほうが、プロダクトとして生き残これる選択肢を多く持てるはずだと筆者は思います。
続きは、次回とさせていただきます。