前回は、コミュニケーションを効果的に行うための8つのステップの6番目「コミュニケーションミックスの選択と予算配分」における「選択」について述べました。今回は、「予算配分」についてです。
6.「コミュニケーションミックスの選択と予算配分」(続き)
コミュニケーションミックスの予算配分は、次のaからeの要素によって決定されます。
a) 企業の目的
b)ターゲット市場の特性
c)プロダクトのタイプ
d)消費者の購買段階
e)プッシュ戦略とプル戦略
a)企業の目的: プロダクト市場での知名度向上を企図するのであればPRか広告を、多くの人に試用してもらいたいのであればプロモーションを、というように企業の目的によって、選択するコミュニケーション手段は変わります。
企業の市場ポジションも、目的設定を検討する上で重要な要素になります。リーダーとチャレンジャーやニッチャーでは、目的自体が異なるものになるはずです。あと、当然のことながら、企業に十分な資金があれば、マス広告は選択できますが、そうでなければ費用が少なくて済むPRをうまく使うことになるでしょう。
b)ターゲット市場の特性: ターゲット市場における見込み客の数が少なかったり、プロダクトの説明に十分な時間をかけるほうが実売につながる確度が高まるのであれば、訪問販売などによる人的販売が効果的です。数が多ければ、PRや広告のほうが適切でしょう。
c)プロダクトのタイプ: プロダクトが高額であったり、購入検討にあたり専門的な知識が求められる場合は、通常、人的販売のほうがより適しています。一方、日常で使用するバストイレタリー製品や、何処の家庭にでもある一般的な食品調味料などであれば、プロモーションや広告に注力するのが妥当でしょう。
プロダクトのライフサイクルも重要です。プロダクトがライフサイクルのどの段階にあるかで、コミュニケーション手段の効果が異なってきます。プロダクトの導入期であれば、全てのコミュニケーション手段が重要なものとなり、それらを効果的に組み合わせることが必要です。なかでも、広告とPRは、プロダクトの認知度向上に特に重要な役割を果たします。
成長期には、消費財製品などであれば、小売店頭での人的販売で試用機会を拡張させたり、口コミを活用するなどして需要をさらに広げていくことになります。この段階では、プロダクトの売上げが伸びていくために、小売流通企業に対する協力金などインセンティブの必要性は減少します。成熟期では、広告によるブランド力の維持に努めたり、イベントやSP、人的販売をとおして市場への浸透をはかります。衰退期では、SPは引き続き重要な手段として残りますが、それ以外は縮小または中止していくのが一般的です。
d)消費者の購買段階: コトラーとケラーは、プロダクトの認知段階では広告とPRが最も重要な役割を果たし、消費者の理解を求める段階では広告と人的販売が、消費者が確信する段階では人的販売が威力を発揮すると述べています。また、最終的に販売(リピート購入含む)を成立させるのは、主として人的販売とSPだとしています。
e)プッシュ戦略とプル戦略: プッシュ戦略とは、小売卸売企業への販促資金投下などのプロモーションを行うなど、流通チャネルをとおしてプロダクトをプッシュしていくやり方です。プル戦略とは、消費者の需要を喚起するために、広告やイベント、消費者向けのプロモーションを行い、流通チャネルをとおしてプロダクトをプルするやり方です。このプルというのは、消費者の需要が流通シャネルをとおしてプロダクトを引く或いは引きつける(プル)ためです。
多くの企業が、プッシュとプルの両方を用いますが、消費財の小事事業者はプル戦略のほうを多用しているように思われます。国内では、小売企業に対して販促資金などをそれほど提供しなくても、プル戦略によって、新商品のユニークなベネフィットをうまく訴求できれば、少なくとも一度は取扱いの機会を得られる可能性が高くなるからです。
コミュニケーション投資を効果的なものにするためには、コミュニケーションミックスの多様な要素を、共通の目的のもとに統合しなければなりません。このためには、マーケティング・コミュニケーションの予算を一本化し、コミュニケーション投資に責任を持つマネージャーを配置することが必要です。コミュニケーションチームを編成し、戦略策定と実行の方法を検討します。そして全社的な目標を基準にして、コミュニケーション戦略の結果を上席のディレクターが評価します。かつて最強と謳われた世界有数の広告主であったP&Gが、行っていたことのひとつがこのやり方でした。
次回は、7つめのステップ「コミュニケーションの効果測定」についてです。