前回の価格その20は、ネイゲルとホールデンの7つのプライシング・セグメントの2つめから4つめまで、「購入場所によるセグメント化」、「購入時間によるセグメント化」、「購入数量によるセグメント化」について触れました。今回は、残りの3つについてです。
5つめの「製品デザインによるセグメント化」は、サイモンとドーランのプライス・カスタマイゼーションの「製品ラインアップによるフェンス」のなかの一つに含めることができるでしょう(ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その16)。
ネイゲルとホールデンは、このセグメント化の例として、航空会社のビジネストラベラー向けフライトスケジュールの調整が容易いタイプの航空券と、多くの観光旅行者向けのフライト日程変更不可の航空券の違いや、石油会社の精製コストは、レギュラーガソリンとプレミアムでは殆ど変わらないにも関わらず、販売価格には一定の違いがある例などを挙げ、売り手が再販を制限できるプロダクトを扱う場合には、このセグメント化は容易に行うことができるとしています。
6つめの「製品とりまとめによるセグメント化」は、7つめの「抱き合せ販売によるセグメント化と測定」と併せて、サイモンとドーランの「取引特性によるフェンス」(ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その18)のなかの一つに含まれます。
グロッサリーストアやファストフード店などでの商品購入で得られるスピードくじ、レストランで単品注文よりもお得なセットメニューなど、日本でもお馴染みのものですが、米国では一層ポピュラーなもので、食品や日用品などの最寄り品でよくみられるセグメント化です。
専門品の代表的な商品である車では、たとえば新車購入時に、モノやサービスなど様々なオプションをつけて販売しています。とりまとめて一括購入すると、個別に購入するよりも、安く、何より手軽に手に入れられるのが買い手からはメリットでしょうし、売り手もあまり手間をかけずに売上げを伸ばすことができます。パッケージ旅行商品にあるオプショナルツアーなどもこれに含まれ、選択可能な付加価値的とりまとめをするセグメント化といえるでしょう。
最後の「抱き合せ販売によるセグメント化と測定」は、おそらく最もよく知られるものに、製品とメンテナンスサービスの組合せが挙げられます。日本でも、マンションなどの集合住宅や業務用エレベーターなどは、その代表例といえるのではないでしょうか。ほかにも、複写機とインクカートリッジや、PCとソフトウェア、また、DVDでの人気ソフトとそうでないものとの組合せなどがあります。ところで、この7つめのセグメント化での「測定」というのは、製品の使用頻度をモニタリングし、サービスを付加して、つまり抱き合せて提供するということが、このセグメント化の目立った特徴(但し、全てがそうではありません)であるためです。固定費が高い業界では、このセグメント化は効果的といえるかもしれません。
プロダクトの何処に着目すれば、より利益を生み出すプライシングが可能になるのか、優れたセグメント化が実現されるのかといったことは、マーケティングマネージャーの卓越した市場インサイトにかかっているといえるでしょう。