10/01/2025

ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その20

前回の価格その19は、プロダクトの提供方法の変更をとおして、異なる価格設定の重要性について述べました。そのなかで、ネイゲルとホールデンの7つのプライシング・セグメントの有用性について触れ、1つめの「買い手の身元確認によるセグメント化」について概説しました。


今回は、2つめの「購入場所によるセグメント化」から始めます。このセグメント化は、日本でも広く行われている一般的なやり方です。なお、このセグメント化は、サイモンとドーランのプライス・カスタマイゼーションの4つの方法のひとつである利用可能性によるフェンス」の購入場所の限定と同じ考え方です(ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その17)

価格その17の内容と重複しますが、場所によるセグメント化の例として、たとえば、ホテル客室内のミニバーや冷蔵庫にある飲料などが通常価格より大幅に高いこと、宅配ピザと同じピザを店内で食べた時の価格の違い、外国人が日本以外の居住地で日本国内の列車チケットを購入する時の割引料金、競争の激しいエリアとそうでないところの同一小売チェーンが扱う同一商品の価格の差異、オフィス街にある自販機で売られている飲料の価格とリゾート地やへき地などでの価格の違い、地域によって送料が異なるケースなどが挙げられます。

また、グローバル化が進行しているとはいえ、同じ商品でも国によって取り巻く競争環境が異なるため、価格に大きな差異が生じていることは珍しくありません。広く知られているコカ・コーラやマグドナルドのハンバーなどが、為替や物価水準を差し引いても、国や地域よってかなりの違いがあるのはこのためです。


3つめの「購入時間によるセグメント化」は、サイモンとドーランのプライス・カスタマイゼーションの「取引特性によるフェンス」のひとつに該当します(ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その18)飛行機や列車、ホテルなどの早割、高速道路の深夜割引をはじめ、自動車保険等の契約更新前の早期割引、電気やガスなどのインフラ料金の時間帯別割引などが挙げられます。ほかにも、ファッション衣料雑貨のシーズン終了後のバーゲン価格や、型番が古くなったPCほかのIT関連製品、車のモデルチェンジ直前の現行モデルのディスカウント、さらにはレストランでのランチタイムのお得価格なども該当するでしょう。


4つめの「購入数量によるセグメント化」も、「取引特性によるフェンス」のひとつに数えられます。価格その18ではFSPなどのポイントアップ・プログラムについて触れました。ネイゲルとドーランは、購入数量割引には、「ボリューム割引」、「オーダー割引」、「段階的割引」、「二重価格」の4つの種類があるといっています。

両氏のいうボリューム割引とは、基本的に法人の大口顧客向けで、ビジネスを継続させるために適用されるものです。一般消費者向けは、オーダー割引という名称となり、少しでも多くの量を、注文金額をより大きなものにするために行われるものです。たとえば、飲料やアルコール類の1ケース売り、菓子類の4袋まとめ売り、最近ではアマゾンの4点買うと5%オフなどになるでしょう。

段階的割引は、指定数量を上回って購入した場合に割引が適用されるものをいいます。両氏は、電気料金を例に説明していますが、日本ではあまり一般的とはいえません。おそらく最も知られているものは、ポイントアップ・プログラムで、年間購入金額が一定額を上回ると、ポイント還元率がアップするというものでしょう。リアル、ネット問わず、この段階的割引の仕組みを取り入れている企業は少なからずあります。

ここでの二重価格とは、ひとつのプロダクトの消費に対して、異なる2つの請求をすることをいいます。基本料金と個別の利用量、たとえば、スポーツジムやフィットネスクラブの年会費と時間帯別利用料金、比較的高額なレストランでのメニュー料金とサービス手数料などが代表的ではないでしょうか。

両氏は、二重価格によるセグメント化は、高頻度利用者には有利に働く一方で、低頻度利用者にも魅力あるサービス提供を維持継続させることを可能にするとしています。フィットネスクラブを頻繁に利用する人は、年会費を利用回数で割ると1回当りの額が低くなり、あまり利用しない人にとってはいつも使っている人でも飽きがきにくい設備・仕様環境を楽しめるからということになるのだろうと思います。

5つめの「製品デザインによるセグメント化」以降については、次回といたします。


ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その23

新商品についてのプライシングのすすめ方は、次のとおりです。 1. 新商品の位置付けの明確化 2. 新商品のベネフィットの評価 3. 新 商品の価格帯の決定 4. 市場規模の予測 5. 新商品の価格提示と価格帯の調整 前回(価格その22) は、上記1の「 新商品の位置付けの明確化」...