ターゲットセグメントを特定するためには、自社の現行マーケットポジション、自社の経済的・技術的ポジション、自社の特徴の3つを、評価することが必要です。前回は自社の現行マーケットポジションについて述べました。今回は、残りの2つについて簡潔に記述しておきたいと思います。
自社の経済的・技術的ポジション
相対的なコスト構造は、特定セグメントにおける競争力の優劣を決める可能性があります。つまり、相対的に低い技術開発コスト、生産コスト、マーケティングコストは、市場競争において優位に立てるということです。価格感度が高い商品、特にSMやCVSなどが扱う最寄り品などを低価格で提供できるというのはひとつのアセットになります。
一方で、ハイエンドな車や衣服などの専門品においては価格がそれほど重要とはいえないため、コスト優位は強力なアセットにはなりにくいといえるでしょう。なお、家具家電などの買回り品については、一部のハイスペックな製品や、マニアック的なファンがいる製品(たとえば、TVはソニー製でなければいけない)などは除いて、低コスト構造は競争優位を発揮することに役立ちます。
技術開発力は、市場競争上、非常に重要であるのは明白です。技術開発力といっても、先駆的なものもあれば、設計の仕組みづくりや、設計対応時間の速さのような変化に即応できる力、アーキテクチャー全体の構想力など多様です。時には、最新技術ではなく、低い技術レベルで市場に対応することが適切な場合も多々あるはずです。いずれにせよ、ターゲットセグメントの顧客が何を求めているかを見極め、当該顧客の課題を解決するために、技術を調和させることが、最も重要なことになります。
生産能力は、トヨタ生産システムに代表されるように、製造業にとって極めて重要な要素であり、超高効率を実現する生産システムは、企業間競争の要ともいえるでしょう。また、中小規模の製造業であれば、生産能力の最大活用、最適水準の見極めとその達成が最も重要なことであるはずです。
自社の特徴
人的資産、特に経営層のリーダーシップが、ターゲットセグメントを特定し、製品やサービスの開発プロジェクトを成功裏に終わらせる鍵になることが少なくありません。
戦略を実行できる組織とできない組織では何が違うのでしょうか。実行できない組織には、リーダーのコミットメントが欠如していることがよくあります。目標が曖昧だったり、アカウンタビリティが欠如していたり、典型的な縦割り組織が業務の進行を阻害していたり、こういった問題を抱える組織は、トップが責任をもって関与しない限り、根本的に解決することはできないでしょう。
川上や川下をコントロールできる力とその範囲は、日本の総合商社の動きを見れば、その重要性がわかります。原材料供給の川上、流通チャネルの川下、これらの領域での企業のパワーが強ければ、統合レベルを高めるほど、競争相手よりもはるかに強大なポジションを構築できることは明らかです。
ターゲットセグメントで、自社が強みを発揮できるかどうかは、前回と今回に述べたような項目で、検討を重ねることが必要です。ここで、見極めるべきことは、自社の強みが、特定したセグメントにおける顧客の諸要求に関係していることと、同一セグメントを対象にしている競争相手にも関係していることです。これが非常に重要です。区切りがよいため、続きは次回とさせていただきます。