2/20/2023

問題解決力 (2)問題とアプローチを考える ③思考の罠i

問題を定義するには、前々回の本ブログ(②問題を定義するi)で、3つのC(Context, Criteria, Constraint)を活用して、考察することが効果的と述べました。また、その検討過程では、問題を解く人が、その解く問題を的確に捉えることが、まずはじめに、何より重要であるということも記載しました。

ですが、問題を解く人、(仮にそれが読者のあなたである場合)ご自身が解く問題を、あなたの上長(たとえば経営者)が、自分と同じように、正しく理解するということはそう多くはなく、ましてや共に行動していくということは、極めて稀といえるはずです。理解が十分ではないわけですから、判断が適切に行われることはないでしょう。

上長の意志決定がしばしば誤ったもの(もしくは自分が期待していたものとは異なるもの)になるのは、主として以下にあるような理由によると考えられます。

第一に、予め用意された解/ソリューションに当てはめるかたちで問題を定義するということが挙げられます。

20年程前の所謂ビッグバンといわれたERP導入、今日でいえばデジタル化などがその好例といえるでしょう。IoTであれば、「IoTで何かできないか」から始まり、最後に問題が列挙されるといった具合です。

たとえば、農業分野では、IoTで解決できることは、問題全体の一部であり、IoT以外で問題を解決することのほうが多いことは、誰にとっても想像に難くないはずです。更に、仮にそのIoTをうまくはめ込むことができたとしても、POC(Proof Of Concept)をないがしろにして、いきなり開発・実装・運用へとすすめば、トラブルなくうまくいくことのほうが珍しいのではないでしょうか。根底にある問題をしっかりあぶり出し、課題を特定していくことが、はじめにすべきことです。

それでも、課題特定の前に、IoTを使って生産性を倍増させたような隣町の農家の話などをはじめに聞かされたり、知識人と言われるような人々や農家内で影響力のある人物の発言などが頭の中に強く残っているとすれば(たとえば「IoTで効果が出るのは明らかだからすぐにやるべき」云々)、それに引きずられて、自分のところの農家の問題を適切に洗い出すことなく、いきなりIoTで問題を解決しようとする。こういった傾向は、利用可能性ヒューリスティックがもたらすバイアスと呼ぶべきものといえます。

ヒューリスティックとは、単純化された方策と定義できます。PCにたとえるならば、頭の中のショートカットキーと呼べるようなものではないでしょうか。日々、多忙な時間を過ごす上級管理職、ましてや経営トップともなれば、自社を取り巻く複雑な状況に対して、(もっともらしいと思われる)単純な方法を用いて対処することは、ある意味至極当然なことともいえるでしょう。実際、ウィキペディアでは、ヒューリスティックを「必ずしも正しい答えを導けるとは限らないが、ある程度のレベルで正解に近い解を得ることができる方法」と記載されています。

利用可能性ヒューリスティックとは、想起しやすい(出現頻度が高い)、利用しやすい事柄を優先して判断することといえます。ですが、いくら想起しやすいからといって、それが解になるのとは、まったく別の事柄です。

そして、この場合のバイアスはどういった類いのものかといえば、それは、はっきりとした新しい記憶(しかも、その新しいものを活用して問題解決することが奨励されている)と、その新しさに基づく想起の容易性といえるのだろうと思います。

上長の意志決定がしばしば誤ったものになる理由の二つめに、もっと大きな問題があるにも関わらず、見逃してしまうといったことが挙げられます。

そして三つめとして、問題の根源を取り除こうとせずに、現象や一時的に発生した問題だけに対処すること、こういったことも珍しいことではなく、頻発しているといえるでしょう。

この二番目と三番目については、ブログの長文化を避けるため、次回で述べてみたいと思います。


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