9/09/2024

ブランディング (5)ポジショニング ①差別化の方法i 商品の機能による差別化

ポジショニングとは、自社プロダクトが他とはハッキリ異なる点、すなわち差別化のポイントや、利用者にとっての主たるベネフィットを、潜在顧客の頭または心の中に刷り込んでいく活動のことをいいます。(ブランディング (3)セグメンテーション ①主旨と要件)

また、他社との棲み分けをしっかり行える場所を確保して、消費者が競合を想起しないようにもっていくことができるのが、優れたポジショニングです。(ブランディング (1)ブランディングとは②)

要するに、ポジショニングでは、差別化の方向をハッキリさせて、自社プロダクトを確実に選んでもらうために何をすればいいのかを考えなければならないということです。


それでは、差別化の方法には、主にどういったものがあるのでしょうか。マイケルポーターは、競争優位の戦略で、差別化には、製品の特徴、機能間の連携、タイミング、地理的ロケーション、製品の品揃え、他企業との関係性の強さ、評判(ブランド)という7つの源泉があるといいました。これまで、本ブログでは、製品/サービスを一括りにしてプロダクトと呼んできましたが、サービスという言葉から連想されるやや曖昧な捉え方を避けるために、本稿では、「商品」に統一したいと思います。なお、ここでのブランディングは、はじめにお断りしたとおり、コーポレート・ブランディングには主眼をおかず、商品を中心としたプロダクトブランディングのポジショニングに関するものとなります。

差別化について、筆者は大括りとして以下にある5つの方法を挙げたいと思います。

商品の機能による差別化

サービスによる差別化 

人による差別化 

チャネルによる差別化

イメージによる差別化 


これら5つの方法は、ブランディングのポジショニングについて、顧客(消費者、企業)との接点が生まれるところに、差別化の機会があるということを示しています。

セオドア・レビットは、競争の観点からいえば、差別化できない製品など存在せず、全ては差別化であり、実際、現実に殆ど全てのものが差別化されていると述べました。(Marketing Success Through Differentiation-of Anything, HBR, Jan-Feb 1980)

とはいえ、いずれの製品も十分な差別化ができているかというとそうとはいえず、企業はコストとのバランスを考慮しながら、差別化する方法を慎重に検討しなければなりません。ですので、差別化はポイントを絞って、それを徹底して磨き上げることによって、他社とは異なる独自のもの(差別化のポイント)を、顧客から瞬時に識別されるようにすることが重要です。

また差別化のポイントは、顧客が識別できることが前提ですが、その差別化ポイントを顧客が望ましいものと捉えてくれることが必要です。その上で、顧客が、その商品を提供する企業には、それを実現する組織的な能力が備わっているとイメージしてくれることが非常に重要で、それは謂わば企業に対する信頼感のようなものだといえるでしょう。


商品の機能による差別化 

これは、商品のパフォーマンス、商品の使用をとおして、その働きから得られる効果によって差別化するものを指します。

ここでよく出てくるのが少し古い例ですが、安全な車ならボルボというものです(筆者は乗ったことがありませんが)。一方で、故障しにくい車ならトヨタ(もしくは日本車)です。 今だと、軽自動車の概念を変えたホンダのN-BOXなどになります。ほかに乗り物でいえば、大型バイクのハーレーダビッドソンが挙げられます。

商品のパフォーマンスについて、筆者の独断でほかに幾つか書かせて頂くと、たとえばタッチーキーの感触が良く、安定性高くしかも頑丈すぎるほど頑丈なPCやタイプライターならIBM(今はもう生産していませんが)。壊れにくいといえば、テレビやビデオデッキをはじめとしたパナソニックのものがあります。そのパナソニックがかなわないのが、見やすく操作しやすいインターフォンを作っているアイホン(AIPHONE)です。同じく住設機器で、もうひとつ挙げれば、座り心地の良いトイレのTOTOでしょう。 

ほかにも、ソフトな消費財関連でほぼ意見が一致するだろうものには、たとえば、まるでオーダーしたかのような履き心地の良い靴をつくるイタリアのサルバトーレフェラガモ。そのフェラガモがジッパーで採用する多くのものがYKK(当然でしょうが)。イタリアのトマトは最高ですが、日本だと熊本県産が甘くて赤い。食品は地域性もあり、中小零細企業に非常に優れたものが多いため、ここで記載するのは少々不適かと思いますので、1点だけ挙げると、誰もが知る加工食品のロングセラーブランドで、最も簡単においしい中華が作れる味の素のクックドゥ。まだまだほかにも挙げられます。

デザインも差別化が可能です。洗練されたおしゃれなデザインで一世を風靡したのが旧ソニーのVAIO。これより少し前の時代になりますが、カラフルでファッショナブルな腕時計で一大ムーブメントを巻き起こしたスイスのスウォッチ。親しみやすい操作性と美しいデザインで、多くの人を魅了したアップルコンピュータ。そのアップルは、iPhoneでシンプルで直観的な操作を可能にし、多くのアプリを生み出して、人々の暮らしを変えてしまいました。

このように商品の機能による差別化には、性能や信頼性、耐久性、おいしさや味覚といった品質面でのものを挙げることができます。ほかにも、大きさや形状などの物理的な構造、デザイン、色スタイルなどの働きによって得られる効果で、差別化することができるといえます。

品揃えも含めなければならないでしょう。たとえば、生活で必要なものは何でも揃えているアマゾン(アマゾンはサービスでも特筆すべき差別化ポイントがあります)。店舗面積がわずか50~60坪のところに約3500アイテムを揃えているセブンイレブン(ほかのコンビニとは商品の集積力がやはり違うと思います)。あと小売業でいえば、各地域で多くの品揃えをする地域一番店の各食品スーパーなどが該当するでしょう。 ドン・キホーテの品揃えも、大きな差別化ポイントです。圧縮陳列された多種多様な商品に加え、まるでジャングル(?)の中を見て回るような商品配置は、品揃えによる差別化を超えて、レイアウト自体もほかの小売企業と大きく異なり、差別化の一端を担っているといえます。

メーカーについても品揃えは差別化の要素になりうるといえますが、デジタルカタログが当たり前になった今日、たとえば住設機器メーカーのカタログには一見すると無限大ともいえるくらいの製品アイテム/SKUが掲載されています。日本特有の現象でしょうが、バイヤーや消費者にとっての分かりやすさという点では改善点があるように思え、これだけの品目数を生産・在庫する手間やコストのことなどを考えると、できるだけたくさんものを揃えるというのが、果たしてどこまで、競争優位につながっているのか、個人的には検証が必要だろうとは思います。

このように、商品の機能による差別化には多くのものを挙げることができます。人によって捉え方は少し異なる場合もあるでしょうが、今日のデジタル社会では、それほど大きな違いを生む商品があるとは思えないもののほうが多いのではないでしょうか。いずれにせよ消費者にとって、機能による差別化というのは、捉えやすい差別化であることには変わりありません。というのも、消費者がその差別化のポイントを捉えにくい場合は、商品提供者がそれをわかりやすく、時にはやや誇張して(?)、伝えることで、理解をたやすくすることもできるからです。

長くなってきましたので、サービス、人、チャネル、イメージによる差別化については、次に回したいと思います。



ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その1

現在、景気は大きな後退局面にあると言えるのではないでしょうか。 賃上げにより(賃上げがあったとして)、名目賃金は増えても、モノの多くが1.5倍くらいはふつうに値上がりしているようなこの 異常な価格高騰により、所得は 実質目減りしています。 消費者は価格に敏感にならざるを得ず、価格...