1/26/2026

ブランディング (7)マーケティングミックス⑤ プロモーションその3

ここまでは、プロモーションミックスの5つの要素について述べてきました(ブランディング (7)マーケティングミックス⑤ プロモーションその1その2)。今回は、幾つかのプロモーションを組み合せて、効果的なコミュニケーションを行っていく上で、前提としておさえておくべき事柄について述べてみたいと思います。


広告をはじめとしたマーケティングコミュニケーションの目的は、自社のプロダクトを買ってもらえるように、買い手(消費者、法人企業)に良い影響を与えることです。それぞれのコミュニケーションを的確に機能させ、良い影響を与えられるようにするためには、買い手の購買/利用行動(以下「購買行動」)に与える要因を、把握しておくことが必要です。

購買行動に影響を与える要因には、①購買者の背景と役割②購買者の経験③購買者の情報源の3つがあります。


①は、購買者の地理的、社会的、文化的、個人的といった背景がどのようなもので、どういった役割でプロダクトを購入しようとしているのかということです。

地理的というのは、日本の場合であれば、たとえば関東と関西、もっと絞り込めば東京と大阪では、行動様式や話のすすめ方などが大きく違います(筆者は大阪出身で東京に長く暮らしたため、そのあたりのことが皮膚感覚としてよくわかります)。大阪のほうが東京よりも、より直裁的、実利的に話をする傾向が高いといえますし、そもそも大阪人には今でも話好きの人がたくさんいます。また、最近では外国人が増えてきているため、宗教的・人種的という要素も考慮すべきでしょう。

役割というのは、自分のために買うのか、家族や第三者のために買うのかということです。これに加えて、同じ自分のためであっても、プライベートなのか、或いは仕事でなのかということも把握しておく必要があるでしょう。たとえば新幹線に乗る時、仕事であればグリーン、プライベートなら一般車両という人は少なくありません。

②の購買者の経験については、おそらく最もわかりやすい例のひとつとして、自動車の購入が挙げられます。はじめて車を購入する人と、何度も買い替えている人では、車に対する経験値が全く異なるため、車の購入にあたって、車の性能は勿論のこと、ディーラーに対して要求するサービスレベルも自ずと変わってきます。最寄り品の食品についても、家族に愛情を込めたおいしい家庭料理に作りたいと思っている人と、料理にはできる限り手間をかけずにできれば出来合いのもので済ませたいと思っている人とでは、全く違うのは明らかです。

③の購買者の情報源については、広告、SP、PR、人的販売、ダイレクトマーケティングといったプロモーションミックスのような商業的情報源のほかにも、格付け機関のような(本来は?)半ば公的な情報源、家族や友人・知人などの人的情報源、また自身の購買等の経験で得た情報源などが挙げられます。このように見ると、プロモーションミックスに代表される商業的情報源が、必ずしも買い手に大きな影響を与えているとはいえないことがわかります。

SNSなどの口コミは、人的情報源のようなものといって差し支えないでしょうが、現在の口コミにみられるようなウソや欺瞞に満ちた状態、或いは特定者を攻撃するためにSNSが使われているような状況では、良識ある買い手は何を参考にすればいいのかわからなくなってしまったというのが実情で、それは売り手にとっても同じようなことでしょう。そう考えると、購買行動に影響を与える3つの要因のうち、①の購買者の背景と役割をしっかり把握し、②の購買者の経験を見極めることが、これまで以上に、売り手、買い手双方にとって、ますます重要なことになってきているといえます。


以上を踏まえつつ、マーケティングコミュニケーションをうまく機能させるには、購買者の意思決定における関与の仕方と、重視するベネフィットのタイプを見定めることです。


関与については、意思決定に要する時間や労力、関係する人の数と関わってきます。関与が、ルーチン的な問題解決にあたるものなのか、或いは広範囲に及ぶ問題解決なのかによって、違いが生まれるのは明らかです。前者であれば、たとえば1週間の食事の献立を考えて買物リストを作ること、後者であれば典型的なものとして住宅購入の検討が挙げられます。

ルーチン的な関与に対するコミュニケーションは、相対的にいえば既存顧客の維持が主たる目的になるでしょう。継続的なコミュニケーションにより、商品が繰り返し購入される可能性が高まります。コミュニケーションが途切れれば、顧客は当該商品を思い起こすことなく、他の商品を購入してしまうかもしれません。

広範囲に及ぶ関与に対するコミュニケーションでは、買い手に新商品を認知させ、商品の特性を理解してもらうことで購買につなげていくことが主な目的となります。謂わば買い手の購買を支援する学習プロセスのような働きを、コミュニケーションが担う役割になるといえるでしょう。


ベネフィットについては、買い手が最も重視しているものが何かを見極めることです。それは機能性なのか、情緒的なものなのか、或いは自己を表現できるものなのかといったことです(ブランディング (3)セグメンテーション ②消費者市場SMM (4)サービス企業の論点 ②明快なサービスコンセプト)。


ルーチン的な問題解決にあたる関与では、日常的な購買行動に該当することが多くなることから、一般的に言えば、機能的ベネフィットが最も重視されるといえるでしょう。仮に、日常的な購買行動のなかで、情緒的ベネフィット、または自己表現ベネフィットが重視される場合は、衝動的な買い方が行われる時で、これには商品に関する表現やメッセージが大きな役割を果たします。

一例として、ぶどうを絞った天然100%のグレープジュースは、飲みやすく(体に吸収しやすい)、カリウムを多く含んでいるため、高血圧予防によいとされています。ナトリウムを排出して、体内の塩分を調整することから、血圧を安定させるためですが、ほかにも、ポリフェノールを含んでいるため抗酸化作用(アンチエイジング)も期待されているのはよく知られているところです。また、ポリフェノール成分の一種であるアントシアニンも含んでいることから、最近ではスマホ疲れなど、眼精疲労の回復にも役立つことなどから、シニアから若者まで、幅広い人気があります。

上記文字のグレープカラーのところが、機能的ベネフィットに該当しますが、これを情緒的ベネフィットに変換すると、もっと健康的で、若々しい自分になれるというような表現ができると思います。これを自己表現ベネフィットに押し上げると、人それぞれかとは思いますが、自分らしくいられるとか、自分の理想に近づけるといった言い回しになるのではないでしょうか。仕事にたとえれば、幾つになっても、フットワークよく、効率的で、スマートなビジネスパーソンになれるなどといえるのかもしれません(R&Dと組織横断活動型活動(1)はじめに③)。


広範囲に及ぶ問題解決にあたる関与では、3つのベネフィットどれもが該当しますが、おそらく買い手が最も重視するのは、結果として、自己表現ベネフィットになると筆者は思います。高額品であればあるほど、その傾向は高まります。たとえば、住宅であれば、通常注文住宅が最も高額になります。買い手が仮に機能性を重視し追求していった結果が、その人のスタイル、つまり自己表現として、注文住宅が出来上がることになるからと言えるからです。

次回は、効果的なコミュニケーションの開発とながれについて考えていきたいと思います。


1/19/2026

ブランディング (7)マーケティングミックス⑤ プロモーションその2

前回(プロモーションの1回め)は、広告と販売促進(SP)について述べました。今回は、PR、人的販売、ダイレクトマーケティングについてです。


PR(Public Relations)は、通常はマーケティング部門に属さない機能で、日本語では一般的に、広報と訳されます(厳密にいえばPRと広報は目的や役割が少し異なります)。SNSが普及した今日、情報は双方向から多方向、多次元化しており、PRや広報を介しての包括的コミュニケーションの重要性が一段と増しています。

プロダクトや企業に対して好感を持ってもらったり、魅力を感じてもらうためには、優れたアイデアを生みだし、他者と的確にコミュニケーションができるビジネスパーソンが、これまで以上に求められているのは間違いありません。このようなことから、PRは今日では、プロモーション・ミックスというよりは、コミュニケーションミックスとして捉えたほうが適切でしょう。


人的販売は、メーカーなどのセールスパーソンや、小売業などの販売員などを指します。業種・業態によって、人的販売のやり方は異なりますが、営業/販売機会を把握し、その確度を評価して、事前準備をしながら、説明やデモなどで消費者(または法人企業担当者)に対応します。販売/成約、売り逃し/不成立、必要に応じてフォローアップというながれは、業種・業態を問わず、およそ共通しているものといえるでしょう。

ところで、商品をとおして人的販売を考えると、低価格のものは手間をかける必要はなく(営業/販売の活動量が少ない)、高価格のものは活動量が増えるということは必ずしも言えないことがわかります。というのも、相対的にいえば、高価格帯の商品ほど差別化しやすく、最寄り品のような低価格商品群については差別化が容易ではないという前提にたてば、差別化が難しいからこそ、人的販売で商品特性についてしっかり説明をしていく必要があるためといえるからです。

また、販売コストの観点からも、予め差別化がはっきりと出来ている商品に対しては、商品機能の専門的な説明を行う必要がある場合を除いて、活動をおもいきって減らすことができるとも言えるでしょう。なお人的販売については、プロモーションミックスの1つの要素として述べるには、あまりにも大きなトピックのため、別の機会で行いたいと思います。


ダイレクトマーケティングは、企業が消費者に直接つながるチャネルを利用してプロダクトを提供するマーケティング手法のことで、所謂D2C(Direct to Consumer)と呼ばれるものの1つです。これには、ECサイトをはじめ、eメール、ダイレクトメール、テレマーケティング、カタログ通販、TVショッピングチャネルなどが含まれます。

近年のファンマーケティングも、ダイレクトマーケティングの一種といっていいでしょう(但し、ファン同士がオンライン上で交流する場合のファンコミュニティは、企業が直接関わらない場合もあるため、ダイレクトマーケティングにはなりません)。

ダイレクトマーケティングの利点には、メッセージを消費者に合わせてカスタマイズしやすいこと、そのメッセージは即時的に伝達でき且つ相手の反応に合わせてアップデートできることなどが挙げられます。

ところで、千趣会やニッセンなどのカタログ通販の業績低迷が、10年ほど前から言われています。業績不振に陥った理由が、インターネットへの進出が遅れたためという論調をよく見かけます。一つの理由であることは間違いないでしょうが、それよりも取扱商品の内容や構成、その見せ方や顧客との接し方などが不振の根本原因ではないのかと思うのは、筆者だけではないでしょう。

ダイレクトマーケティングは、顧客との長期にわたる関係を築く上では、非常に優れたマーケティング手法です。営業パーソンを多数抱える費用は非常に高く、昨今の給与の上昇を考えると、ダイレクトマーケティングをもっと活用できないものかなどと筆者は思ってしまいます。業績が低迷している上記のような企業は、顧客の成長と共に、自らも大いに学習すれば、もっと成長できたのではないかと思えてしまい、残念な気持ちになってしまいます。


ここまでプロモーションミックス(広告、販売促進、PR、人的販売、ダイレクトマーケティング)のそれぞれについて見てきましたが、これらのプロモーションの組み合わせは、どのように決めればいいのでしょうか。次回は、プロモーションミックスをベースにして、効果的なコミュニケーションのあり方を考えてみたいと思います。


1/13/2026

ブランディング (7)マーケティングミックス⑤ プロモーションその1

マーケティングミックス4つめのP、プロモーションについてです。

プロモーションは、ブランディング (7)マーケティングミックス① 4P概論でも触れましたが、単なる販促と狭義に捉えるのではなく、プロダクトのメッセージをターゲット顧客に伝える全てのコミュニケーション手段として考えることが必要です。そのためには、広告セールスプロモーション(販売促進)PR、人的販売ダイレクトマーケティングという5つの要素を組合せたプロモーションミックスを効果的に行い、相乗効果を発揮させなければならないと、フィリップ・コトラーは『コトラーの戦略的マーケティング』のなかで述べています。


広告は、電波媒体(テレビ、ラジオ)、インターネット媒体/Webメディア(ニュースサイト、SNS、グーグル検索エンジン、企業サイト、ブログ等)、デジタル媒体(デジタルサイネージ等のディスプレイ、DVD/ブルーレイ、CD等)、紙媒体(雑誌、新聞、カタログ・チラシ等の冊子、ポスター、名簿等)の4つに大別できます。なお、媒体はメディアともいわれ、情報を対象者に伝達する手段の総称です。

20世紀の主力媒体は、誰もが知るように電波、特にテレビ広告でした。テレビ広告は、広く一般的に知ってもらうにはよい手段でしたが、ターゲットグループのみに訴えかけるということは通常できません。また、広告をしたからといって、大半のケースではすぐに売上げに直結するということもありません。デジタル媒体や紙媒体も、広告である限り、およそ同じようなものだといえるでしょう。

インターネット媒体については、電波媒体などと違って、ターゲット層にアプローチしやすく、費用が比較的安価で効果も得やすい上、データ分析も容易だといわれています。ただ、今日のような情報が氾濫している状況で相応の効果を得るのは、それほど簡単なことではないでしょう。一過性で終わらせずに続けられるかどうか。SNS上での話題づくりに成功して、一時的に売上げを上げることができたとしても、持続的な事業成長につなげられるかは、また別の問題です。プロダクトの購入/利用前に、ファンになってもらったとしても、継続してファンの期待値を超える、またはコントロールすることができるかどうかは、非常に難しい問題です。


セールスプロモーション(SP)は、広告と違い、消費者に直接的な行動を促すため、即時的な効果が見込めます。けれども消費者向けのSP、特売をいつも行っていると、通常価格と割引価格の違いが消費者には分からなくなるのは当然です。その結果、消費者はいつでも安い価格で商品が購入できると期待するようになります。そのためどのような消費者を相手にすれば、SPの効果をより高くできるのか、慎重に検討しなければなりません。

ここで重要になるのが、参照価格(ブランディング(7)マーケティングミックス③ 価格その11)と商品カテゴリーの関係です。ターゲット消費者の当該商品カテゴリーにおける購入サイクルを把握することが必要になります。仮に購入頻度が2ヵ月ごとであれば、毎週のようにSPをやっても効果は得られないばかりか、参照価格の低下を招くことになり、まったくの逆効果になってしまいます。通常、小売店舗内のSPは、ブランドスイッチを頻繁に行う消費者には大きな効果が見込めるため、店内チラシにクーポン付きで載せるなど、ターゲットを絞った工夫が必要です。

小売流通業向けのSP、所謂拡販費・協賛金の効果については、筆者が知る限り半世紀近く前からある懸案事項です。拡販費を投入すれば短期間で売上げを上げることはできますが、あくまでも期間限定の取組みに過ぎません。大事なことは、製販共に年間とおして安定的に売上げを確保することです。そうするためにはプロモーション全体におけるSPの割合は低めにおさえるべきで、価格が予め設定した価格帯の下限値を下回ることがあってはなりません。


ところで、広告及びSPと価格の関係はどのように捉えればいいのでしょうか。四半世紀以上前から米国を中心とした研究でよく知られていることは、比較的安価な消費財製品、たとえば食品関係であれば、量販店やコンビニなどで売られている即席麺や菓子類、冷凍食品、清涼飲料水やビールなどのアルコール類といった高頻度で購入されるもの、所謂最寄り品(ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その3)は、広告によって販売数量が増えるということです。つまり、広告が商品の需要における価格弾力性を大きくしているということです。

従って、シンプルに考えれば、広告を増やすことで、低価格商品の販売量は増やすことができるということになります。考えてみれば当たり前のことかもしれませんが、高価格帯の商品であれば試し買いというのはなかなか難しい一方で、低価格帯のものであれば試してみるというのは十分ありえるからです。

そうなると、最寄り品については広告をすることを前提に、SPをいつ頃、どれくらいの頻度で、どういったチャネルを使って、どのように提供していくのかということが、買回り品や専門品以上に、重要になってくるといえるでしょう。但し、最寄り品とはいえ、明らかに他の商品とは異なり、差別化が効いたものであれば、広告をそれほど打たなくても、SPをうまくやるだけで販売量を増やせるかもしれません。というのも、明確に差別化された商品というのは、広告をたくさん出して、他商品との違いをあえて訴求する必要はないといえるからです。成熟しきったような商品カテゴリーでは、決して容易なことではありませんが、不可能なことではないと思います。

次回は、PR、人的販売、ダイレクトマーケティングについてです。


ブランディング (7)マーケティングミックス⑤ プロモーションその10

今回は、コミュニケーション開発を効果的に行うための8つのステップの5番目と6番目についてです。4番目までのステップ については、以下をご覧ください。 1 「 市場の理解とターゲットオーディエンスの明確化 」 、2 「 コミュニケーション目的の設定 」 、3 「 コミュニケーション...