6/10/2023

ツーリズム (3)DMOの役割とタスク

観光庁は、DMO(Destination Management Organization)を、以下のように定義しています。(DMO=観光地域づくり法人)


観光地域づくり法人は、地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりの舵取り役として、多様な関係者と協同しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人です。このため、観光地域づくり法人が必ず実施する基礎的な役割・機能(観光地域マーケティング・マネジメント)としては、以下の点が挙げられます。

(1)観光地域づくり法人を中心として観光地域づくりを行うことについての多様な関係者の合意形成

(2)各種データ等の継続的な収集・分析、データに基づく明確なコンセプトに基づいた戦略(ブランディング)の策定、KPIの設定・PDCAサイク ルの確立

(3)地域の魅力の向上に資する観光資源の磨き上げや域内交通を含む交通アクセスの整備、多言語表記等の受入環境の整備等の着地整備に関する地域の取組の推進

(4)関係者が実施する観光関連事業と戦略の整合性に関する調整・仕組みづくり、プロモーション

出所: 観光地域づくり法人(DMO)とは?


「稼ぐ力」については、別途記載することにして、DMOに最も要求される能力は何になるのでしょうか。上記1から4に従えば、リーダーシップとコーディネートする力が最初に挙げられるでしょうし、マーケティングリサーチ、マーケティングプロモーション、ブランドマネジメントいったものが続くように思われます。ほかには、ステークホルダーマネジメントやチームビルディングといったプロジェクトマネジメント全般のスキルも必要になるでしょう。

1から4では具体的には記載されていませんが、3に関係するものとして、観光客のマネジメント、たとえば観光客のエクスペリエンスをデザインしたり、需給を調整したり、万が一の災害発生などを考慮した広義のリスク管理といった能力なども求められるでしょうし、モノやサービスに関係する新商品開発力などは必須となるでしょう。ただ、こういったもの全てをDMO単体で全てを行うのはおそらく不可能ですし、また、実際その全てを行う必要もありません。従って、DMOが最も具備すべき能力は、プロジェクトマネジメント能力、なかでも多岐にわたるステークホルダーとの利害を調整し、方向感をひとつにしていくといったようなコミュニケーション能力や交渉術が、極めて重要になってくると筆者は考えます。

ハワイ州観光局(State of Hawaii, Department of Business, Economic Development & Tourism)は、①ビジネス開発とその支援機能を部門として設置し、次に、②外国人観光客対応の部門、フィルムやアート、カルチャーなどを対象にする③クリエイティブ・インダストリー部門、④リサーチや経済分析を行う部門、ほかには⑤スモールビジネスの規制審査委員会、最後に⑥デジタル関連のオフィスという組織編成になっています。

オーストラリアクイーンズランド観光局(Tourism and Events Queensland)は、マーケティング、イベント、エクスペリエンスのデザインと開発、ステークホルダーエンゲージメント、クルーズ・先住民&自然等へのアクセシブルツーリズム、様々な教育機会の提供といったことを行っています。

日本のDMOはまだ歴史が浅いこともあってか、少々堅いイメージで、やや抽象的なように感じます。具現化していくのは、各地方に存在するDMOということになるのでしょうが、その際、まずは前提として、現状と課題認識を共有することが不可欠です。そのためには、多様なステークホルダーを束ねて、進む方向をひとつにしていくことができるリーダーシップとコーディネートする力、あと、財源の確保、謂わば地域の利益となる稼ぐ力を如何に醸成し、定着させていくかということになります。国内で有名なDMOにおいても、ステークホルダー間でのコミュニケーションに齟齬をきたしているケースは少なくなく、このあたりからまずは見直していくことが必要なように思います。


ブランディング (4)ターゲティング ②セグメントの評価i

市場特性は、様々な要因に左右されます( ブランディング (4)ターゲティング ①セグメントの評価項目 )。 規模と成長率だけを考慮すればいいというわけでは決してありません。 大規模で右肩上がりに成長を続けるセグメントが有望であることは事実ですが、それ以外の要因が同じであることはめ...