1/09/2024

ブランディング (1)ブランディングとは①

マーケティングや新商品開発を考える時、ブランドまたはブランディングは切っても切り離せません。アルライズは、広範囲に及ぶマーケティング活動で、各機能を結合させる役割を果たすものが、ブランディングのプロセスだといいました。さらに、マーケティングプロセスの本質は、消費者の心の中にブランドを築き上げることであるともいっています。

ブランドは不思議な存在です。というのも、たとえば、ブランドの差別化要因は製品パフォーマンスに関連する場合もあれば、たとえば象徴として、または情緒的実体のないものを想起させることでもあるからです。

米国マーケティング協会は、ブランドを「個別の売り手もしくは売り手集団の商品やサービスを識別させ、競合他社の商品やサービスから差別化するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、或いはそれらを組み合わせたもの」と定義しています(なお筆者は、日本マーケティング協会がブランドについて明確に定義しているものは知りません)。

「ブランドには謎が多い」と仰った元東京大学教授の片平さんは、「ブランドのDNA」という書籍で、巷でまことしやかにいわれていたブランド論の嘘に言及し、事例をとおして、本当のブランドとは何かを具体的に示しました。当時(今でも?)信じられていたブランドの嘘とは、たとえば次のようなものです。

  • 優れた商品やサービスが、強いブランドの必須条件である。(本当は「強いブランドには、商品やサービスだけでなく、卓越したストーリーがある」)
  • 強いブランドは変化しない。(本当は「ブランドは一貫した理念の下で変わり続ける
  • 十分な時間をかけないと、強いブランドにはなれない。(本当は「やり方によっては、数年でブランドは強くなれる」)
  • 大量のマス広告がなければ、ブランドはできない。(本当は「強いブランドの多くがマス広告をしていない」)
  • ブランド一夜にして滅びる。(本当は「強いブランドは簡単にはつぶれない」)

つまるところ、ブランドは人々の心の中に存在する無形資産といえるのでしょう。製品は工場で作られますが、ブランドは人々との関係性や信頼によって作られていきます。

今日、ほんもの、にせものを問わず、ブランドやブランドもどきが溢れかえっています。我々は、似たような属性やメッセージを持った類似ブランドに囲まれ、選択に苦慮することが珍しくありません。同じようなことは、ブランドホルダーである、たとえばメーカーにも当てはまります。

  • 当社の製品/ブランドは競合よりずっと優れているはずなのに、何故売れないのか。
  • 当社のブランドは、何故市場に浸透しないのか。
  • 当社の製品ベネフィットは、顧客に魅力あるものとして映っているのだろうか。
  • 新製品を発売する時に、どのようにすれば効果的なブランディングができるのか。
  • どうすればブランドは成功できるのだろうか。

ブランディングで最も重要なことは、ポジショニングをとおして、独自性に富んだ価値提案を確立し、それを人々の心の中に根付かせることだといえるでしょう。では、どうすればそれが実現できるのか。チャレンジングなテーマですが、できるかぎりこの問いに、本ブログで答えていければと思っています。

Reflectionsというタイトルをつけた弊社のブログも、まもなく3年目に突入します。1年目は、ブログのテーマを、弊社ができること・してきたことを中心に据え、その上でできる限りホットなトピックを選びながら、且つテーマは特定のものに偏ることがないようにして進めてみました。

2年目は、弊社の取組みテーマでもあった地方創生/地域課題解決について、ツーリズムを中心に半年以上の期間を充てました。ツーリズムは巨大な産業であるにも関わらず、国内にはまとまった参考文献があまり見当たらないこともあって、ツーリズムにおけるブログのテーマをできる限り連続性を持たせるよう配慮してきました。

そして3年目となる今年は、謎多きブランドの話から始めていきたいと思います。


ブランディング (4)ターゲティング ②セグメントの評価i

市場特性は、様々な要因に左右されます( ブランディング (4)ターゲティング ①セグメントの評価項目 )。 規模と成長率だけを考慮すればいいというわけでは決してありません。 大規模で右肩上がりに成長を続けるセグメントが有望であることは事実ですが、それ以外の要因が同じであることはめ...