7/01/2023

ツーリズム (4)デスティネーションプランニング ①長期プランの重要性

ツーリズムのプランニングは、他産業のものと比べて、より多くのステークホルダーが関係するため、その人たちをうまくプランニング活動に巻き込むことが重要です。行政、観光協会やツーリズムのプロフェッショナル、DMO、商工会議所/商工会、大学等アカデミックな機関、宿泊/飲食/商店/交通等の関係者、地域住民等といったところかと思います。

あと、忘れてはならないのが消費者です。公開されているツーリズムプランニングのドキュメントやプロセスについて、ソーシャルメディアを使って、オープンなディスカッションを望む人たちがいます。こういった人たちをないがしろにするわけにはいきません。中には、外国人の方もいるでしょう。インバウンド需要で恩恵を被っているデスティネーションであれば尚更です。

そういった消費者からの意見や、期待、思いといったものを、一次調査をとおして収集分析し、プランニングの重要なインプットにすることが必要です。デジタル社会でのツーリズムプランは、日々進化(またはアップデート)することが周囲から期待されるため、自ずと包括的・統合的であることが求められることになります。

ツーリズムプランは短期も重要ですが、何より長期の視点が欠かせません。様々なデータを時系列でおさえながら、観光客と地域住民の双方を見て、プランを立て実行していくには、相応の時間がかかります。デスティネーションプランの目標値や成熟度などで相違はあるものの、通常2~3年程度で実現できるものではありません。

長期でプランを立てるベネフィットには、以下のようなものが挙げられます。

  • 将来の展望を描けること(描かざるをえなくなること)。

  • ビジョンとゴールが設定でき(同上)、依ってたつところを明確にできること

    • 地域や社会などからの注目が集められること
    • ビジネスなどの機会探索の場として活用できること
    • プランニングの過程でステークホルダーをしっかり巻き込むことによって、それぞれのオーナーシップを喚起できること

    長期プランのタイムフレームは、5年から長いもので30年くらいまでと考えるべきでしょう。今年は2023年ですから、区切りがいいところで2030年や2050年ということになるのだろうと思います。

    モリソンは、ツーリズムプランニングには次の5つのアウトカムを備えておくべきだと述べています。

    • 取りうる選択肢が確認できること(デスティネーションにとって重要な要素、たとえばマーケティングや商品開発などに対する幾つかのオプションが提示されているなど)
    • 予期せぬ事態に適応できていること(経済情勢の変化や電気・ガス等インフラの需給状況、地場産業の業績、法規制、テクノロジー動向などについて言及されているなど)
    • 他所にはないユニークなものが保持されていること(伝統・文化・自然、祭りやイベントといった地域固有のものが維持されているなど)
    • 優れた価値が生み出されているものであること(ツーリズムにおけるサステナブルな開発、ツーリズムに対するコミュニティの理解、ツーリズムに対するビジネス上の協力姿勢、ツーリズムに適した組織体制、ツーリズムに関する情報が整備されているなど)
    • 不適切なものが回避されていること(不要な競争環境や過度な摩擦、地域住民との敵対的・非友好的な関係、自然や歴史遺産の破壊、文化的アイデンティティの喪失、公害、過度な季節間格差などが回避されているなど)

    以上のようなことを盛り込んだ長期プランの策定及び実行には、どうしても担当責任者に相応のリーダーシップが求められることになります。次回はプランの内容について述べてみたいと思います。



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