ツーリズムの長期プラン策定プロセスには幾つかのパターンがありますが、代表的なものは、以下の3タイプになるでしょう。
1. ステップ・バイ・ステップ
2. ストラテジック・プランニング&マネジメント
3. シナリオ・プランニング
漸進的にプランを策定していくステップ・バイ・ステップ(SBS)がおそらく最もポピュラーなものだろうと思います。ストラテジック・プランニング&マネジメント(SPM)と重複するところは多くありますが、異なる点として、SPMでは当たり前とされている環境スキャニング(Environmental Scanning)を、SBSでは通常行わないことが挙げられます(但し、SBSとSPMを組み合わせれば、環境スキャニングは行われることになります)。
SBSの進め方(ハイレベル)は、次のとおりです。
1.1 現状分析
1.2 ビジョニング
1.3 ゴールの設定と戦略の方向導出
1.4 プラン策定
1.5 プラン実行とモニタリング
1.6 プラン評価
1.1では、デスティネーションのフィジカルプロダクト(デスティネーション4Pのひとつ)や、ツーリズムに関係するプログラム(イベントやアクティビティ等観光客のために催される出来事全般、デスティネーション4P)をはじめ、ツーリズムのマーケット動向、政府や自治体の政策などに関する分析を行います。その後、分析の結果を強みと弱み、問題やイシューなどにまとめて、デスティネーションに関する論点を整理します。
次に、状況に合わせてリサーチを詳細に行い、精査していきます。たとえば、スポーツイベント(プログラムのひとつ)に関する他デスティネーションとの比較や競争環環境などについて、10Asのフレームワークなどを用いて考察を進めます。これにより、他所にはない競争優位や、見直さなければならない機能、リソースの再配置、更には需要がまだ開拓されていないような市場などが明らかにしていきます。
1.2は、ビジョンを策定するステップです(参考:新規事業創出 (2)ビジョン②)。ここでのインプットは、前ステップの1.1現状分析の各アウトプットから結論として何が言えるのかを導出したものが該当します。中でも観光客のデスティネーションに対する認知度にどう向き合うかが重要なポイントです。アウトプットは、ビジョンステートメントになります。デスティネーションマネジメントの組織、マーケティング、商品開発それぞれの活動をその中身も含めてどのようにしたいのか、あるべき姿はどういったものかということを検討し、書面化します。
1.3でまずすべきことは、ゴールセッティングです。これまでもほかのブログで何度か述べてきましたが、はじめにゴールで、次に戦略ですので、これは絶対間違ってはなりません。ゴールなきものは戦略とは呼べません。ゴールは前ステップのビジョンステートメントに基づき設定します。長期プランですから、直近のことばかりを見ていては、大胆なゴールにはなりえません。
長期をいつの時点とするかは、デスティネーション次第ですが、およそ5年からくらい先が妥当なところだろうと思います。ただ、前年対比数%増で5年を積み上げたものを数値として設定するということは、できる限り避けたいものです。というのも、設定するゴール次第で、戦略が変わってくるからであり、あまりにも小さくまとめたゴールであれば、戦略もこれまでとさして変わらないありきたりのものになるのは避けられず、であれば長期プラン策定の意義の多くが失われてしまうことになるからです。戦略の方向導出については、どうしても長文化しますので、これは回を改めて、また、1.4以降についても同様とさせていただき、次回はストラテジックプランニング&マネジメントについて述べていきたいと思います。