5/28/2023

ツーリズム (2)プロダクトとしてのデスティネーション ②10As

前回デスティネーション4Pについて述べました。今回は、デスティネーションを成功させるための着眼点として、10Asについて書いていきます。Aで始まる10の英単語の頭文字から10As(テン・エーエス)と呼びます。

  • Awareness/アウェアネス・認知
  • Attractiveness/アトラクティブネス・魅力
  • Activities/アクティビティ・活動
  • Access/アクセス・近づきやすさ
  • Availability/アベイラビリティ・入手可能性
  • Appearance/アピアランス・見た目や外観
  • Appreciation/アプリシエイション・感謝
  • Assurance/アシュアランス・保証
  • Action/アクション
  • Accountability/アカウンタビリティ・説明責任

アウェアネスは、観光客のデスティネーションに対する知識のレベルに関係します。観光客が、当該デスティネーションのことをまったく知らなければ何も起こりません(そのデスティネーションにとっては、何もhappenしません)。デスティネーションは、来てもらいたい観光客(ターゲット顧客)の自身(当該デスティネーション)に関する認知度を上げることが必要で、これが全ての始まりといえます。また、デスティネーションは自身に対する認知度のレベルに応じて、観光客に対する打つべき手を変えることが必要で、有効な打ち手は絶えず複数のものを用意しておくことが、すべきことになります。

特に重要なことは、観光客はどういった検討過程をとおして、最終的にデスティネーションを選択するかを理解しておくことです。通常、人は複数回のデスティネーションを評価する過程を経て対象(訪れる観光地)を決定します。はじめは、強く意識することなくデスティネーションを絞り、その後、積極的にデスティネーションを選定する行為をとることが多いのが実情です。したがって、まずは観光客の考慮対象に入る(もしくは、残る)ための施策を考えることが不可欠となります。アウェアネスのレベルに合わせて、打ち手を変えていくということが、このような観点で極めて重要です。10Asの全ては、このアウェアネスから始まります。このため、ツーリズムデスティネーションを成功させるための大変重要な属性といえます。

アトラクティブネスは、ターゲット顧客(ターゲット観光客)を惹きつける魅力あるものは何で、それにはどういったものがどれだけあるかを検討します。惹きつけるものは、その数が多いだけでなく、多様な側面、様々な魅力を備えたもののほうが、デスティネーション全体の魅力向上につながります。但し、ターゲット顧客にとってという点が重要で、ターゲットが不在であったり、誰に対してもということであれば、総花的なものになってしまい、かえって中途半端でありきたりのものになりがちとなるため、注意が必要です。

アクティビティは、観光客が行う活動を指し、参加したり、体験できる活動の数や範囲などを考えます。

アクセスは、言うまでもなくデスティネーションへのアクセスの良し悪しを考える属性ですが、どういった交通機関や移動手段があるか、どれくらいの時間がかかるのか、手間や負荷はどれくらいかといったことを、行きだけでなく帰りも含めて考察することが必要です。そして、より重要なことは、その交通機関や移動手段などは、ターゲット顧客にふさわしいものかという点です。アンマッチは珍しいことではありません(たとえばシニアの富裕層をターゲットにしながら、その人たちが利用するタクシーがその地であまり走っていないなど)

アベイラビリティは、デスティネーションの観光に伴う予約や手配などが簡単に済ませられるか、また、どういったチャネルを使って行うかといったことなどが該当します。

アピアランスとは、観光客のデスティネーションに対する見た目の印象のことをいいます。到着した時の第一印象や、滞在中に抱く印象全般などを指します。あくまでも見た目、外見、外観の範囲内での印象です。AppearanceはSubstance/実体とは異なるため、観光客にはどのように見えるか、映るのかという観点です。ツーリズムの場合は、特に重要といえるでしょう。

アプリシエイションは、観光客がデスティネーションで、もてなされたり、良いサービスを受けるなどして歓迎されていることを感じられるかどうかを考察します。

アシュアランスは、安全安心に関係する属性です。

アクションは、中長期で観光に関するマーケティングマネジメントのプランが的確に策定されているかを検討します。

アカウンタビリティは、デスティネーションで観光業に携わる人、たとえばDMOが自身のパフォーマンスを評価するものになります。

10Asは役立つフレームワークです。今後、本ブログでも時折、実際に用いながら考えてみたいと思います。


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