5/01/2023

ツーリズム (1)はじめに①

観光業の将来は非常に明るいと仰る専門家や関係者の方が少なくありません。コロナが収束方向にあることが大きな理由のひとつなのかもしれませんが、ツーリズムを専門にしてきた者ではない筆者からみればまったく逆で、観光業の展望ははっきりいって、このままだとかなり暗いんじゃないかと思っています。

量的拡大、数で勝負するようなやり方で成長してきた観光業が、これまでと同じようなやり方や向き合い方(たとえば、インバウンド偏重、マス/ボリューム重視、リピート需要軽視など)で、デジタル化を推進しても、状況はあまり変わらないばかりか、推進方法を誤ると、観光業の大きな後退につながる可能性さえあるのではないかと思ってしまいます。

また、地方創生、地域課題解決も根っこは同じ問題じゃないかとも思います。要は、(ストレートな言い方で少々恐縮ですが)虫が良すぎるんじゃないかと。先日、複数の地方自治体による観光に関するプレゼンを見ましたが、いったいどういう人たちを対象にして説明をされているのか、皆目わかりませんでした。あまり具体的に記載すると差し障りがあるため控えますが、アグリツーリズム的なものとして、当該地域の特徴や農産品の良い点、苦労談などを強調しながら説明されていらっしゃいました。ですが、筆者から見れば、いったいどういった人たちが「一度行ってみたい」と思うのか、正直言って想像しづらいものでした。

そもそも観光客が、農家の方々と同じような体験をしてみたいと思うかどうかは甚だ疑問です。なかにはそういう方も少しはいらっしゃるでしょうが、多くはそうでないはずです。しかも、たとえば、高齢者の方々が体を小さく丸めて草木をとるといったようなことなど、筆者には到底イメージできません。若い人なら、まだできるでしょうが、それでもそれをやってみたいと思う人はそう多くはないのではないでしょうか。

何をどのように訴求すべきか。観光客の立場で考えることができなければ、取組みは空回りするばかりです。加えていえば、そのような企画をしている人たちは、これまでいったいどういった観光をしてきたのか、聞いてみたいくらいですし、そもそも旅行自体、ちゃんとしたことがない人さえいるんじゃないかとも思ってしまいます。

その地へ行けば、その観光客は何が得られるのか、何故その地でなければいけないのか、他では得られないものがここにあるから、だから一度来てみませんか、といったようなことが、見たり聞いたりしている人たちに伝わらない限り、いつまでも同じことの繰り返しになるばかりでしょう。そして、その来て欲しい人たちは、いったいどういう人たちなのかをしっかりおさえておくことが重要であるのは当たり前といえるでしょう。ですので、そのためには、まずはそのイメージをしっかり持つことが必要です。

以前の地方創生ブログにも書きましたが、筆者はかなり旅行好きだったと思います(地方創生(1)はじめに ①行ってみなければわからない)。筆者にとっての旅の大きな楽しみは、やはりその時々の自分にとっての非日常体験、そこに行ってみなければわからないことに出会える体験ではなかったかと思います。

ところが、今の国内の状況はどうでしょうか。少々極端なことを言うようかもしれませんが、象徴的な名所旧跡や建造物などがあるところは別にしても、大半が何処も同じように見えてしまう。同じようなまちづくり、同じような施設で、同じようなモノを、同じような言い回しや見せ方で、観光客に向き合っているように感じます。実際は、それぞれが違うにも関わらずです。

また、車で何処でも手軽に行けるようになったようには思いますが、その分、旅の楽しさ、醍醐味、回り道してゆったりと時間を過ごすなどといったことは難しくなってしまったように思います。JRの駅も無人化しているところも多いようで、寂しさというか、虚しさのようなものを感じることさえあります。余談になりますが、自動車社会の到来と共に、多くの地域が結果的には、独自色を失い、衰退していくことにつながってしまったと思うのは筆者だけではないでしょう。

また、自家用車で観光する場合、当該地域にどれくらいのお金を落してくれるのでしょうか。時間は目的地で使ってくれるでしょうが、お金は使ってくれるかどうか。お昼の食事や飲み物は他所で購入したものを持参し現地で摂り、ゴミは現地に捨てていく。それに、そもそも車から降りない人だって少なからずいるように思います。加えて言えば、遠出するにも限界があって、せいぜい2時間前後くらいまでが多数ではないかとも思います。もしそうであれば、大半の地域にとって、観光客として成立する数はかなり限定されてしまう。つまり、公共交通の便をよくしない限り、多くの観光客には来てもらえず、当該地域の観光産業は縮小の一途をたどることになってしまうといえるのではないでしょうか。

ブランディング (4)ターゲティング ②セグメントの評価i

市場特性は、様々な要因に左右されます( ブランディング (4)ターゲティング ①セグメントの評価項目 )。 規模と成長率だけを考慮すればいいというわけでは決してありません。 大規模で右肩上がりに成長を続けるセグメントが有望であることは事実ですが、それ以外の要因が同じであることはめ...